気持ちよく下り坂を下っていると先を行くダニエルが、ブレーキをかけて止まった。何かと思えば、前方には牛の群れ。
「すごいな、ダニエル。日本でトラフィックジャムといえば車だが、NZは牛なんだな」と私が言うとダニエルが「ハハッ」と声をあげて笑った。
カールが抜けて、チェン、ダニエル、ルティアの 4人になった我々は、思い思いのペースで走っていた。チェンはロードで平地は楽そうだが、上りはギアが重くとてもつらそうだった。道は朝から上りが多い。
みんなそれぞれのペースなんで、私は景色のいいところで休憩しながら写真を何枚も撮った。
[海沿いの道はアップダウンが続く]
Tolaga Bayという街の素敵なカフェでみんなで休憩。ホテルの一角がカフェになっているらしい。
[洒落た店内に地元の人だろうか、タンクトップの男性がいるのが笑えた]
カフェと言えば、カフェに入るとたいてい、カプチーノかブラックコーヒーを頼むようになっていたが、このころぐらいまでどちらを頼むときも困っていた。
カプチーノを頼むと「Cinnamon or chocolate on top ?」と聞かれることが多いのだが、ずっと「シナモン」が聞き取れずにいつも「チョコレート」と答える日々が続いていた。或る日、シナモンが聞き取れて、「ああ、シナモンね!」と激しく納得したのを覚えている。
それからNZのカフェでコーヒーとオーダーすると、ミルクと砂糖の入ったコーヒーが出てきて、ブラックコーヒーは出てこない。NZの人はブラックコーヒーを飲まないのかとも思ったが、ほかの客を観察しているとそうでもないようだった。こちらも或る日、「Longblack」がいわゆるブラックコーヒーであることに気が付いた。
こんなことに気が付くまでに1週間以上かかっているということから、私の英語力がどの程度かは容易に察しがつくと思う。
ちなみに「Shortblack」と言うとエスプレッソが出てくるそうだ。
[ルティアはテラス席が好き]
[私は旅の間、カフェでチーズケーキとマフィンばかり食べていた]
強烈な日差しが照りつける中、アップダウンの続く道を走り続けるのはなかなか大変だった。この頃、左ひざの調子がだんだん悪くなってきていて、上りが本当につらかった。
[昔、よく読んだウォラーの『ボーダーミュージック』に出てきそうな家]
しばらくいいペースで走り続け、海岸に出られる場所があったので、道を外れ、海岸に出た。
[右からチェン、ルティア、ダニエル、私]
[ダニエルのバイク。スイスのハンドメイドバイクらしい]
比較的早い時間に、目的の街Gisborneに到着。街についてもそこから、スーパーで夕食の買い物をし、キャンプ場まで行って、テントを張り、ビールを飲み、夕食を作ってビールを飲まないといけないから、少し早いぐらいの時間でつくのがいい。
120キロぐらい走った気分だったが、実際は90キロほどしか走っていなかったようだ。
[ルティアのテント。私の好きなJackwolfskinのテント]
[チェンのテント]
[私のテント。使いすぎて床の防水が相当弱くなっていた]
チェンがここで別れることになったので、夜でみんなで飲みに行こうということになった。
まずは各自、腹ごしらえ。
私はスーパーでアボカドが安かったので、それとサーモンを購入し、アボカドサーモン丼を作った。米を炊いている間に、750mlのビールを空けたらけっこうアルコールが回ってしまった。チェンは私の食事を怪訝な表情で見ていたが、あとでなぜか米をくれた。
飲みに出かける前、チェンが「僕、長そでの服とかフォーマルな服持ってないんだ。大丈夫かな」と真面目な心配をしていたので、「そんな店行かないよ。おれだってこの恰好さ」と私はTシャツ、ハーフパンツ姿で答えた。
暗くなる少し前、街に出て小さな店に入った。みんなで乾杯。ダニエルがビールの王冠を素手で開けたのでビックリしていると、なんてことはない、頭は王冠でもスクリュートップになっているのだ。海外のビールではよくあることのようだ。
それぞれのことをあれやこれや話す。チェンはマレーシアの大手通信会社に勤めており、休暇できているらしい。そのうち北海道にも行ってみたい、とも言っていた。店を出る前、みんなでメールアドレスや住所を交換し、暗くなった街をキャンプ場へと戻った。