定着から放浪へ 放浪から定着へ

自転車の旅、そのほかの旅について書いています。

Fairbanks,Go North Hostel  2006年8月1日

昨夜、居心地のいいキッチンでのんびりしていると
子供が日本語を習っているという一家と仲良くなった。
「あいうえお」から始まっていろいろ訊かれる。

一家は父親、母親と女の子が二人。

しばらくするとニュージーランドからきたバイク乗りのジョッシュも加わって
日本語講座になった。

日本語を習っているという上の女の子は「送り仮名」について質問してきた。
なかなかいい質問だ。
結局は覚えるしかないけど、日本人もよく間違えるから慣れることだよと言っておいた。

父親の話を聞く。

「小さい頃から他の国の言葉を教わるのはいいことだと思うんだ」
そして、彼も彼の奥さんも子供たちと一緒に日本語の勉強をしている、というより
子供と話しているうちに覚えたのだろう。彼はいくつか日本語の単語を口にした。
とても素敵な一家だった。



こういうところに小さい子供を連れて泊まりに来る家族はとてもいいなと思った。


朝。私は久しぶりにのんびり起きた。

昨日の女の子が「何か日本語の本はないの?」と言うので「この難しいのしかないよ」と
私は隆慶一郎の『死ぬこととみたり』を見せた。

並ぶ漢字を見て「ウッ、難しすぎる!」と彼女。渋くなった顔もかわいらしかった。

それから数年後、高校生になった彼女から突如エアメールが来て驚いた。
「連絡取り合おうね」という手紙だったので返事を書いたが、その後返事はなかった。
女の子は気まぐれだ。


明日からの極北への旅に向け、情報収集と買い物をする。

荷物を外して軽くなった自転車でFairbanksの中心部へ。


まずはインフォメーションセンターに行く。
北極海へ唯一つながるDalton Hwyに行く前に少しでも情報が欲しかった。

インフォメーションには幸いにも日本人女性がいた。
北極海のPrudhe Bayから戻る手段を聞くとバスが使えるらしいことが分かる。

その女性はいろいろ教えてくれた。
話しているうちになぜか人生相談になってしまった。

このころ、付き合っていた女性と上手くいっておらず、
女性はどう考えるのかを教えてもらった。
ただ、この時の自分には何ともできない気がした。

また、この女性は
「あなたが今付き合っている人だけが女じゃないから大丈夫。
今はそう思えないでしょうけど。
たくさんの日本人が、サイクリストが、プルドーベイに行っているけど、
行けばあなたの人生観も変わるわ。無事にフェアバンクスに戻ってきたらまたいらっしゃい」と
言ってくれた。


私はプルドーベイから戻って数年間、この言葉の意味を考えていたが、答えは出なかった。
人生観は変わったかどうかわからなかった。

ただ今になってその意味が少しわかるような気がする。
だから今になってこうして記録を起こしているのだと思う。

インフォメーションのその女性に「写真撮らせてください」と頼むと即座に
「ダメ。でも名刺あげる」と名刺をくれた。

北極海への旅は本当に自分を変えるのだろうか。
私は自信を持って「Yes」と言えなかった。

インフォメーションを後にし、アウトドアショップを回る。
アンカレッジもだが、フェアバンクスにはいい店が多いと思う。
自転車用品も充実していた。

悩んで結局買わず終いだったが、レザーマンが安かったので買っておけばよかった。

これから足を踏み入れる北極圏の寒さに備えて
「PROSPECTOR」という店で薄手のフリース手袋を買った。

「Go North」に戻り、キッチンで食事。昨日の残りのカレーだ。
アメリカのビールはさしてうまくないが、ないよりははるかにましだ。

食事の後、ビールを飲んでいると、昨日話していたニュージーランド人のジョッシュと
彼女のメレウィンがやってきた。

彼らはなぜかトルティーヤとチリコンカンのようなものを食べていた。
聞けば、よく食べるという。

しばらく話す。

メレウィンがクマについていろいろ教えてくれた。
ブラックベアは比較的臆病だが、ブラウンベア(グリズリー)は危険らしい。
耳を伏せているときは特にいけないらしい。

また、ブラウンベアは首の後ろにこぶがあるからすぐわかるそうだ。


彼らがニュージーランド出身というのでニュージーランドの話をする。
 メレウィンは首都ウェリントンの出身らしい。

ウェリントンか。あそこにはいいアイリッシュバーがあったな。なんだっけな?」
私がそう言うとメレウィンはハッとして「ええっと、、、」と店の名前を思いだそうとしていた。

モリーマローンズ!!」思い出して私が言うとメレウィンは満足げにうなずいた。

「私たち旅をして長いの。べつにニュージーランドに帰りたいって思ったことはないけど、モリーマローンズ、あそこになら戻りたいわ。」と遠い目をしていった。

モリーマローンズ。ほんと、あそこはいい店だった。まさかアラスカでそんな話になるとは。

オランダ出身のリチャード。彼も、、クレイジーだ。後にいるのはメレウィン





部屋に戻ると、同室の軍人のような五分刈りのいかつい男が話しかけてきて
食料をくれた。無口でちょっと嫌な奴だな、ぐらいに思っていたが、話してみるといいやつだった。
彼はアラスカの旅を終え、母国へ帰るのだという。

話してみないと分かり合えないものだなと思った。
つたない自分の英語と先入観にとらわれてしまう自分が情けなかった。


ベッドに横になる。


明日から北極海を目指す。いよいよだ。
旅は佳境を迎える。

Ten miles behind me,ten thousand more to go.

広告を非表示にする