定着から放浪へ 放浪から定着へ

自転車の旅、そのほかの旅について書いています。

ユーコン川を越えて 2006年8月4日

 

熊に襲われることなく無事に起きることができた。

命の心配をしていた割には間抜けな話だが、
テントが明るくなってようやく目が覚めた。

かなり眠れた。

頭が冴えてくるにつれ、今こうして生きていることに感謝をした。
何事もなく朝を迎えることが出来たのだ。

この当り前の「朝を迎える」ということへの感謝。
自然の中で生きるということは、毎日がこうした生への感謝なのであろう。



テント内で一通り片付けをする。
昨日やはり、かなり消耗したようだ。朝から空腹だ。
バナナにトーストスライスのパンを巻いて食べる。結構うまい。
二つ目もペロリと食べた。

飲み水が心配になってきたが、水はまだ2リットルほど残っており、
ペットボトルに移してみる結構大丈夫そうだった。

蚊の襲撃をかわしてキャンプを撤収。
いつになくクマの気配が強いので少しでも早くここから離れたかった。


 
道は今日も荒れている。そしてアップダウンだ。
ただ幾分か道が締まってきた気がする。

とはいえ、荒れたダートの登りでスピードが上がらない上、風もなく、大量の汗が噴き出してくる。
そんなところへ容赦なく蚊の集団が襲ってくる。

あんな不快な上りは後にも先にもない。

上り終わってそのまま下って、また上る。
振り返ればこんな感じだ。


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そんなことを繰り返し、いい加減うんざりだが、
『Milepost』によれば今日の難所はそろそろだ。

しかし、前方を見ると派手に道路工事をしている。

Stopの看板を持った女性がいて何か言っているがわからない。

聞き返す。
すると工事でこの先進めないので、一般の車は工事車両が先導して行くが
自転車は工事区間の終わりまで車で乗せていってくれるという。


ここで本物の冒険家は「いや、私はなんとしても自力で北の果てまで行くんだ!」
とか言うのだろうが、私はただの旅する自転車乗りで、いわゆるヘタレ野郎だ。


正直、「助かった。」と思った。


かなり待たされたが、ピックアップトラックがやってきて
私の自転車はそのままドンと積まれた。

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搬送される自転車。後ろに続くのは一般の車両。


この日の山場と思っていたところはあっさり終わった。

搬送される車の中からダルトンハイウェイを見る。
道は谷の底まで一気に下りて、再び登っていく。
ハイウェイというより採石場か何かに近い。

ドライバーの女性と話す。
彼女は日本語を習っているそうで「コンニチワー」とか言ってにこにこしていた。
ユーコン川まで出れば、Cafeがあるのでおいしいアメリカンフードにありつけると教えてくれた。

 

 

 



そう、次のポイントはユーコン川ダルトンハイウェイが交差する場所。


中学生ぐらいから読みだした野田知佑の世界と
今、自分が進んでいるハイウェイがまさに交差するのだ。


期待が高まる。


しかし、体は正直で下り基調のアップダウンが続いて
なんだかとても疲れてしまった。



やがてユーコン川が見えた。

 
 
 
 
 
 
 

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ユーコン川にかかる橋
 
 
 
 



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とてつもなく広い川にグレーの水がゆっくり流れていた。まさに大河と呼ぶにふさわしい。
野田知佑が河口に近づくにつれ、水は濁ってくると書いていたがその通りだった。

こんな川を何カ月もかけて下る野田知佑はやはりすごい人だ。
昨日のキャンプの苦労やら恐怖やらの後で、
そんなことをものともしない野田知佑を心からすごい人だと改めて思ったものだ


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ユーコン川へ来た感動を打ち消してしまうぐらい嫌なものを見た。
狼についての警告のビラだ。
7月7日にArctic Circleのキャンプ場で狼がキャンパー襲ったらしい。

おいおい。

熊の心配はしていたがまさか狼とは。
さすがアラスカと言ったとこだが、冗談ではない。
ベアバスターは熊にも効くのだろうか。
そもそもその狼たちは今どこにいるのだろうか。
ハイウェイ上にはいないのだろうか。

狼を見てみたい気はするが、襲われるのは御免だ。

昨日といい今日といい、自然のなかの動物の序列いうものを改めて考えさせられる。


ユーコン川を渡った対岸ににあるユーコンリバーキャンプというところでコーヒーを飲み休憩。
アジア系の顔立ちの店員の女性がとても綺麗だが、英語が早すぎて全く聞き取れない。

『Milepost』を眺めながら今日泊まる予定のキャンプサイトの情報を見る。
キャンプグランドの横にある「Hot Sot Cafe」のバーガーアラスカナンバーワンとある。
今日はそこで夕食だ。


ユーコン川を離れてしばらくすると、向こうからゆっくりやって来た車が止まった。

フェアバンクス「Go North」で一緒だったリチャードだった。


彼もアラスカにやってくる男だけあって筋金入りだ。
彼はときおり皿洗いなどのバイトをしながら車でカナダを横断し、アラスカまでやってきたそうだ。
そしてこれからパナマへ行くという。いやはや。

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オランダ人リチャード。カナダを車で横断し、アラスカからパナマまで行くという



リチャードはフェアバンクスで別れたあと、車で北極海まで行き、泳いでそうだ。
「水温4℃だったけどね。」と笑った。

それからメレウィンとジョッシュからだと言って、チョコレートを二つくれた。
それぞれから一個ずつ、ということだろう。
リチャードとしばらく話し、メールアドレスを交換した。
パナマに着いたら教えてもらいたいものだ。いい男に出会えた。うれしいものだ。




リチャードと別れてすぐ、Five Mile Campgrandに到着。
ここでこの旅初のサイクリストに出会う。

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彼はテイラーサウスダコタ出身でプルドーベイから南下してきているという。
北の状況が気になるのでいろいろ質問をする。

私が「ユーコンからダルトンハイウェイの終わりまではアップダウンでうんざりするぞ」というと
テイラーは「プルドーベイからブルックス山脈まではフラットだ」と教えてくれた。


最近、水が不足するようになり水の心配し始めた後だったので、
水をどうしているか聞くと彼は浄水器を持っていた。
浄水器を買うべきだったかなと少し後悔した。
幸い、このキャンプ場はそのまま飲むことが出来る水があり、しばらくは大丈夫そうだ。


テイラーの自転車はツーリング車だ。
タイヤは私と同じくシュワルベのマラソンだった。
ニュージーランドでも出会ったサイクリストの多くがそのタイヤを履いていた。

私の感覚では海外のサイクリスト50%以上はマラソンを履いているのではないだろうか。
それぐらいの装着率の高いタイヤだ。
そしてまたテイラーも「おれは一度しかパンクしていない。いいタイヤだ。高いけどな。」と話していた。

他にも自転車の話が通じたので、ツールドフランスのことをきいてみた。
「多分優勝はフロイド・ランディスじゃないかな。わかんないよ。」と答えてくれた。
ランディスか。妥当なところだな。


ツールの話をしたところで私は思い出してあるサイクルキャップを取りだした。
アラスカに来る前、当時ブリジストンアンカーのメカニックだったバスマンさんからもらった
カザフスタンの英雄、ヴィノクロフのキャップだ。
テイラーはそれを見てとても驚いていた。
おかげで写真を撮られる。


彼は今日ここに泊まるわけではなく、テント張って少し休んでいただけらしい。
今日はユーコン川まで出るそうだ。

テイラーは去っていった。もっとたくさんのサイクリストに会えるといい。

 




キャンプ場でテント張り、寝袋をテントの中に広げ、晩御飯を食べに行くことにする。

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Hot Spot Cafeの入り口


キャンプ場の横にあるカフェ、Hot Spot Cafeが
アラスカナンバーワンサイズのバーガーを出すという。
ビールないかな。


残念、ビールはなかった。
そのかわりこれでもか、というぐらいの量のコーヒーが出てできた。

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あまり待ってることもなく、噂のビックバーガーが出てくる。
噂ほどのサイズでもなかったが、味は悪くなかった。
しかし今の私には足りなかった。


後でウイスキーと先日、エリオットハイウェイでキャンプしてるときにもらった
ライスチップスで一杯やるとしよう。
バーガーの写真を一生懸命とっていると、
隣のテーブルで見ていたオッサンがおれが撮ってやるといたのでお願いする。

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カフェは土産物も置いてあり、季節外れのクリスマス用の熊のオーナメント買った。
これは2012年の我が家の小さなクリスマスツリー飾り付けられていた。

キャンプ場に戻る。


 

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キャンプ場には比較的多くの人が宿泊しているようだった。どの車もハイウェイのRoaddustを巻き上げて白くなっていた。
 
夕方になって少しキャンプ場がにぎやかになる。
どうやら道路工事の労働者で泊まっている人もいるようだ。


昨日が1人でキャンプをしていたのでこうやって人の中でテントが張れるのがとても有難い。
今日は安心して眠ることができそうだ。

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そう思うとウイスキーも進む。
日記を書き、読書すると眠くなってきたので、テントに入って眠ることにした。
明日はどこまでいけるだろうか。




いい感じにウィスキーが回ったのか
眠るころにはユーコン川で見た狼の警告を私は完全に忘れていた。


 
 



 



 
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