定着から放浪へ 放浪から定着へ

自転車の旅、そのほかの旅について書いています。

旅の時間 2009年1月4日

昨日、遅く寝た割に早く目が覚めた。
習慣とは恐ろしい。
だが、テントから出る気になれず、グズグズしていた。

顔を洗い、キッチンへ行くとすごい人だった。さすがに人気のキャンプ場だ。

食事をしていると、昨日話しかけてきた日本人夫婦と話をした。
旦那さんはメルボルンで家具職人をされているそうだ。

何でも、以前は日本的なものを作っていたが、
工房が火事になり、今は別の場所で仕事をされているそうだ。

どのくらいのお休みですか、と尋ねると
四週間の有給だという。

うらやましい。

今回はそんな休暇で来ていて、今日は一日歩くらしい。
朝食を済ませ、クレイドルマウンテンに向かう。




クレイドルマウンテンは国定公園になっており(もちろん世界遺産でもある)、
車で行けるアプローチの道が一本しかなく、
途中のビジターセンターからは専用バスでしか行けない。



Dove Lakeがクレイドルマウンテン散策の起点になる。
そこまでのボードウォークでアプローチするRonney Creekというところで
バスを降りようと思っていたのだが、バスのドライバーのアナウンスが聞き取れず、
Ronney Creekのバス停をスルーしてまう。


結局、Dove Lakeのすぐ前のまでバスで来てしまった。

バスを降りると外は素晴らしい快晴。空の青がこれまでにないくらい眩しい。


少し乗り越したぐらい、まあいいじゃないか。




快晴のクレイドルマウンテンとDove Lave。
なんて美しいのだろう。

この一週間の苦労が報われたというものだ。
自然に笑顔がこぼれてくる。

 



クレイドルマウンテンの代名詞の小屋


ここからは予定通りGlacier RockからHansons Peakを回ってDove Lakeのサミット、
それからLake LillaとWombatpoorを回るルートで決まりだ。

というかこのルートぐらいしかDove Lakeをぐるっと回ることができるルートがないのだが。

中央の大きい湖がDave Lake。その周囲を回る。


駐車場からウォーキングトラックに足を踏み入れ、歩き出す。

最初、観光客も多く、イージーなものかと思っていたが、
やがて軽い登山になり、最初のポイント、Glacier Rockを過ぎたあたりから
観光客の姿は見当たらなくなった。

 

 

 

グレーシャーロックから

 

 

 

 

 

 


道は楽ではなかったが、晴天の中、美しい湖を眺めながら歩くのが楽しくて仕方がなかった。

途中、あるドイツ人と一緒になった。
なんとなく一緒に歩く。

彼は名をグレゴーといい、オーストラリア本土に住んでいるそうだ。

日本人でも小柄な私と比べ足の長い彼は、当然のようにトレイルをガンガン進んでいく。

早いよ、グレゴー。



リトルホーンに至る道。この先がやばかった。

Lake Wilkの見下ろせる山で昼食にする。
昼食は昨日作っておいたステーキサンドだ。なかなかうまい。

いつものようにコーヒーを淹れ始めるとグレゴーが
「ここでか?」と聞いてくる。

これは私のこだわりだから仕方ないのだ。

グレゴーはと言うと、マンゴージュースとビーフジャーキーしか持っていないという。
何か食べるか、と聞くが「いいよ」という。昼はあれで足りたのだろうか。

左がLake Wilk,右がDove Lake  

 

湿地帯はボードウォーク

 

 


グレゴーと話しながらトレイルを進む。
彼は日本のサブカルチャーに興味があるらしい。

意外とサブカルチャーは浸透しているんだな。


 

グレゴーが撮影してくれた写真

 

 


私が景色に感動して写真を撮り続けていると
「どうしてアジア人は写真ばかり撮りたがるんだ?」とグレゴーが聞いてくる。

「自分が見ている風景を少しでも、いつでも見られるように残したいからかな。」
私が答えた。

そう答えながら、写真撮らない方がなんとなく格好いいなと思ったが、
こうしてブログを書いていると、写真をたくさん撮ってよかったと思う。

写真でいろいろな記憶がよみがえってくる。
写真も見るまで思い出せなかった些細なことや、旅の空気感も。

 

 

グレゴーは下りも早い

 

 


グレゴーと歩いていると反対側からアジア人の一団とすれ違った。
「おい、写真撮ってやらなくていいのか?」とグレゴーがおどけて言うので
肘で小突いてやった。

 

 

グレゴーはなぜか階段が遅い

Lave Daveはもちろん、Hansons Lakeもその先にあった名前のわからない湖も
どれも美しかった。

ほんとうにここまで来てよかった。

 

一期一会とはまさにこのことだろう

スタートの駐車場まで戻り、グレゴーと別れた。
なかなかおもしろいやつだったな。



バスで自転車を置いてあるビジターセンターまで戻る。

バスで戻る途中、運転手が今日はクリスマス以来のナイスデイだ、と言っていた。
ほんとうについているな。

キャンプ場に戻ってシャワーを浴びよう。
今日はなかなか疲れた。


*************


旅のこうした時間が好きだ。
つまり、特にやることもなく陽だまりの中でぼんやり本を読み、ビールを飲む時間。


今日の場合は、シャワーも洗濯も終わってしまって、かといって夕食には早いから
こうしているわけである。

何にも縛られない、こうした時間の自由さ。

旅の終わりはそう遠くない。あと3日。
3日後にはタスマニアを離れ、メルボルンの空港にいるだろう。

こうして気ままに過ごす時間はもうほとんどないのかもしれない。


「あまり幸せをむさぼってはいけない」

この旅の間、読んでいた隆慶一郎の『一夢庵風流記』の一節だが、
そう思わせるほど、今は幸せだった。


だが、幸せも、ないときにはない。


この一週間のウェストコーストの雨の日々を思えば、
今の幸せもプラマイゼロなんじゃないだろうか。

こうしたことをあれこれ考えることは無意味なことという気がする。

とりとめのない思索を巡らすこと自体、すでに幸せなのだろう。


とりとめのない思索が勝手に進んでいく。


この旅の間、世話になっているカスケードドラフトは
キリンのクラシックラガーの足元にも及ばないが、今はこれでいい。


旅に疲れてきた、というのも実際にある。
そろそろバスタブと天丼と日本のビールが恋しい。


だが、次の旅がいつになるかわからないから
この旅の時間が残り少ないのは何とも言い難い。


今は今を、ただ楽しもう。それでいい。





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