定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

"Evil Hill"を越えろ -cycling NewZealand -

三人で朝食を食べながら、この日のルートについて相談。120キロ越えのハードなルートだ。

ここ数日間のライドで左ひざと右のくるぶしが痛むようなり、そろそろ休息日を取りたいと思っていたが、目的地のネイピアまで行けば、三人それぞれ別ルートになり、この日のライドで三人一緒に走るのは最後。私は多少無理をしてでも三人でネイピアまで行きたかった。

ルティアが自分のドイツ語のガイドブックを開き、

「今日の峠は"Evil Hill"って言うみたい。いかにも辛そうね。ちょうどいいところにカフェもなさそうだから、スーパーに寄ってランチを買っていきましょう。」と言った。

"Evil Hill"なんて言われて、すこし怯んだが、きっとこの三人なら行ける、そう思った。今であれば、どんな峠だってペダルを漕ぐのを止めなければ、必ず頂上へたどり着ける、と自信を持って言えるが、当時はそこまでの経験も自信もなかった。

大げさだが、"Evil Hill"と言われてそのくらいビビッていたのだ。

 

出発前、ルティアの提案に従い、スーパーで買い物をする。ダニエルと私はマフィンを買った。ダニエルはバナナマフィンが好物らしい。私はブルーベリーマフィンを買った。

近頃は日本でも大きなマフィンを見るようになったが、マフィンが大きなリンゴぐらいあるのに最初は驚いたものだ。今でもバナナマフィンを食べると、ビールとバナナマフィンをこよなく愛するダニエルのことを懐かしく思い出す。

 

買い物の後、私は体を伸ばして二人が準備できるのを見ていた。
「今日はだれが先頭走るんだ?」私が尋ねると、
「シマ、あなたがリーダーよ」とルティアが言った。

私はルティアの言葉に少し驚いたが、なんだか気合いが入った。


「準備はいいかい?」
二人の顔を見る。いつも陽気ダニエルも少し真面目な顔をしてうなずいた。

「もちろん、いいわよ。」ルティアはいつものように今日の旅に期待に胸を躍らせているのがわかった。


ネイピアまで峠二つ含んだ120キロ。不安のあるルート。だが、今日の三人なら行ける、私は確信した。

 

この日の空も青と白の世界だった。

 

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Evil hillはなかなかの峠だった。とはいえ、もっときついのを想像していたので、頂上に着いたとき、やや拍子抜けだった。

頂上近くの原っぱで昼食。

私がコーヒーを淹れ、マフィンを食べていると、ルティアはハンドルバッグの中からナイフとニンジンを出すと器用にニンジンの皮を剥き始めた。そして先っぽからポリポリと食べ始めた。そんなふうにニンジンを食べるのを私は初めて見たので、びっくりした。こっちの人にすればまあ普通のことらしい。

その後もルティアはしばしばニンジンをポリポリ食べていた。

 

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その後、ないと思っていたカフェを見つけて迷わず入る。

なぜかネイティブアメリカンの装飾品の飾られたカフェだった。

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タープの下のテラス席はとても気持ちが良かった。

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日が少し傾き始めた頃、ネイピアの街についた。

 

私は嬉しくて、思わず「着いたぞ!!」と叫んだ。

 

キャンプ場にチェックイン。

ダニエルとルティアは2泊、私は4泊することにした。

「4泊!」とダニエルは驚いていたが、私には休息が必要だったし、久しぶりの街であったから、ゆっくりしながら、今後の計画もゆっくり立てたかった。

 

夜はキャンプ場の隣のレストランで三人でこれまでともに走った日々に乾杯した。

ダニエルとルティア、彼らに出会うことが出来て、ともにここまで来られたこと、そのことに心から感謝した。

そして、二人の笑顔を見ながら、あんな人になれたら、と思った。