定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

Marlborough地方 -cycling NewZealand -

カトマンズで購入したテントはペグダウンして自立するタイプのテントで、サイドがメッシュになっていて、朝寒かった。
ペグダウン式のテントは雨の日に立てたり、撤収したりするのが大変な上、今すでに寒くてはこの先、ますます寒くなる気候に対応出来る気がしなかった。

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このテントは結局、日本に送り返し、これまでのテントをそのまま使うことにした。防水能力がかなり落ちていたが、防水スプレーをかけたり、テントの下にシート代わりにシャワーカーテンを敷くなどして、帰国までなんとか間に合わせた。


ピクトンを出ると、南のBleheimに向かった。


ピクトンから南に約30キロのところにブレナムの街はある。
このあたりでは大きな街のようで、様々な店があった。

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家電量販店のDick Smith(数年前に倒産したとSNSで見た)で、数日前に紛失したコンセントの変換アダプターを買ったり、アウトドア用品の店でテント用の防水スプレーなどを購入した。それからカトマンズのテントは荷物になるだけだったので、土産といっしょにお世話になっている地元の自転車に送った。

ブレナムからは西に向かった。

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ブレナムはニュージーランドを代表するワイン産地のマールボロ地方の中心地で、ブレナムから伸びる道には、ブドウ畑が広がり、そこに整然と並んだブドウの木が美しかった。

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ニュージーランドはどこも景色が美しいが、このあたりは走っていて本当に気持ちが良かった。

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地元のライダーだろう、GIANTのジャージを身にまとったロード乗りが颯爽と走り抜けていく。こんな素晴らしい景色の中を毎日走れたらなんと気持ちがいいことだろうか。ニュージーランドのことを”pedaler’s Paradise”という人がいるが、まさにサイクリストには最高のフィールドであると思う。

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この日の宿泊はHavelockの街だ。
Musselと呼ばれるムール貝の産地として有名な街らしい。

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 あるMusselの店の前でメニューを眺めていると、地元の老人が「マッスルか!ここはいい店だ。キャンプ場なら向うだ。早く戻ってきなさい。」と早口で話しかけてきた。

 ここ数日はいい加減お金を使い過ぎているので、値段を見て食べようかどうしようか躊躇していたが、そんな風に言われたら食べるしかないな、と苦笑した。

老人に礼を言い、一旦店を離れる。

この日はキャンプ場ではなく、ユースホステルに泊まった。キャンプ場もあったが、どうしてユースにしたのか、今となっては理由が分からない。


ユースに荷物を置いて、周囲が暗くなり始めるころ、先ほどの店に戻る。

マッスルはいくつか調理法があるようだったが、どれがいいのかよく分からなかったので、ギネスで蒸したものとサラダ、ビールを注文した。もちろん、ビールはギネスだ。サラダはそのへんのバーガー並の値段だった。どうしてNZはサラダが高いのだろう。食事におけるサラダの地位が高いのでは、と勝手に思った。

さてさて、マッスルが来た。

鍋ごとテーブルに置かれる。NZのスーパーでは、よくマッスルが売られているのを見かけるが、殻のサイズも大きく、調理できるサイズの鍋も持っていないので買ったことがなかった。

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食べる前は少し磯の香りが気になったが、食べ始めると全く気にならなかった。ギネスのコクと一緒に蒸された細かいベーコンがいい味を出していて、美味しかった。サイズも大きかったので非常に食べ応えがあった。

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支払いをすると、ほぼ一日分の出費(27ドル)で、ちょっとへこんだが、いい食事だった。
満足してユースに戻った。

 

ユースでは、リビングでウエアの修繕をしていると、若い女性に話しかけられた。

彼女は29歳。オランダから来ており、看護師をしていたようだ。NZではトランピング(NZでは山歩きのことをこう言う)を楽しんでおり、この周辺もいくらか歩いているらしい。たまには山歩きの楽しそうだ。私がマウンテンバイクをやる、というとピクトン周辺にあるトレイルを教えてくれた。

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私も彼女もビールを飲みながら、いろいろ話した。私の話になり、学生時代に哲学を学んでいたというと、あれこれ哲学について聞かれた。話したいことはいくらでもあったが、私の乏しい英語力ではロクに伝わらなかった。

 

少し酒に酔っているのか彼女はそんな様子の私をからかって楽しんでいるようであった。

翌朝、リビングで出発の準備をしているとまた彼女に会った。
昨夜のリラックスした格好とは打って変わって、山歩きのウエアに身を包み、大きなザックを持っていた。

昨夜教えてくれたピクトンのトレイルの名前が書かれたメモをくれた。

彼女はテーブルに腰を下ろすと、荷物から缶ビールが出して「今から飲むの」と飲む真似をしたが、「まさか。飲まないよ。あなたにあげる。」と言ってビールを投げて寄越した。

“I’m leaving,bye” そう言ってザックを背負い、この日の旅へ出発していく彼女を私は見送った。