定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

二つの氷河- cycling NewZealand -

Whataroaという街に着いて、バーガーを待ちながら日記を書いていた。

ハリハリからワタロアまでは二時間弱で到着した。悪くないペースだろう。Mt.ヘラクレスという強そうな地名があったが、走ってみれば大したことはなかった。途中のワタロア川の水の色が不思議な色をしていて美しいかった。もしかしたらフィヨルドランドから溶けた氷河が流れているのかもしれない。

 

それからやけにシッポの長い羊を見かけた。羊のシッポって伸びるのだろうか。

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その後はペースも上がらず、ダラダラ走る。翌日は街の間隔の問題で短い一日の予定だが、その次の日は120キロ越えだ。こんなペースで大丈夫だろうか。

 

走っていると途中で雨が降り、木の陰で止まり、レインギアを出して着たものの、すぐ雨は止んでしまった。相変わらずのニュージーランドウェザーである。このレインギアを着るかどうするか問題はアウトドアアクティビティをするすべての人の悩みだろう。着るのは面倒だし、また脱ぐのも面倒だからである。かといって身体を濡らしてしまうと後が大変である。このあたりをうまく出来る人がベテランということになるのだろうか。

 

ダラダラ走った割に目的地のフランツ・ジョセフグレイシャーには2時過ぎに着いた。その名の通り氷河の街で、観光客が数多くいた。

前日、トーンにトップ10のキャンプ場は街から遠いから、もう一つのキャンプ場がいいぞ。と言われていたので、街の中のキャンプ場「レインフォレストモーターキャンプ」に行く。

こちらのキャンプ場はまだ出来て間もないようだ。テント一泊11ドル。まあ観光地でこの料金ならまずまずだろう。テントサイトが入り口からやや遠いのがやや難点だ。

 

テントを張り、早速、氷河見物に行く。どこからどう行ったらいいのかよく分からなかったが、一番メジャーっぽいルートを進んでいくとDOC(Department of Conservation、ニュージーランド環境保護局)の”Caution!”のテープが張られているが、みんな無視しているのか何なのか、気にした様子もなく、どんどん進んでいく。

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氷河は白くて美しいものを想像したが、砂がついていて、そんな感じではなかった。白い氷河は後にアラスカで見ることになる。

 

実は次の日も山を越えたところにある氷河、フォックス氷河に行く予定ということもあり、他に人がいないところまで行くと戻ってきた。

 

キャンプ場に戻ると、夕食の準備をする。夕食はご飯と鶏肉でとり丼を作ることにした。ご飯を300gと多めに炊いて、鶏肉は醤油と砂糖で煮て濃いめの味付けをする。鶏肉が硬くなってしまった。翌日の昼御飯用に残ったご飯と鶏肉は半分はおにぎりにした。大きめのおにぎりが3個できた。毎日毎日、とにかくお腹が減るが、翌日の昼はこれで大丈夫だろう。

出費を計算してみたが、20ドル程度と当時のレートで1600円ほどだろうか。あまりお金を使わずに一日過ごせて満足した。

 

日付けが変わってフランツジョセフの朝。

この先の行程を考えて、ルートを調整。

この日のルートはフランツジョセフからわずか30キロ先のフォックスまでである。とはいえ峠が3つあるし、フォックスにはフランツジョセフ同様、氷河がある。まあゆっくり観光といったところか。

 

フランツジョセフを出るといきなりの登り。体が温まるまえで足が思うように回らない。一本目の峠は辛かったが、あとの2つは割と楽に登ることができた。峠3本で20キロ1.5時間。悪くないだろう。登りは実家の近くにも多い(本宮山の下の和田より下とか蔵王山の感じ)、ゆるく長く登るタイプの道だった。

 

二日後にはこの旅で屈指の難所、Haast Passが待っている。

ハースト峠はわずか標高600mだが、ニュージーランドの峠は標高が低くても油断出来ない。日本のように峠にトンネルがあるわけではなく、文字通り峠まで登る。そして、ハースト峠は海抜ゼロメートルから600メートルまで一気に上がる。今回の3つの峠は軽い前哨戦といったところだ。

 

フォックスまでわずか30キロということもあり、昼にはフォックスに到着した。

早速キャンプ場に向かう。氷河観光をするにしても、まずはテントを張って荷物を降ろしたい。キャンプ場は一泊13ドル。高い。

これまで一番高かったのはネイピアの14ドルだが、あそこは都市にあって街からも遠くないし、施設が充実していた。ちなみにそれ以外によかったキャンプ場はライティヒあたりか。

ライティヒのキャンプ場はキッチンが清潔で、調理道具や皿も豊富に用意されていた。私は夜は基本自炊をしていたので、キッチンが充実しているキャンプ場は印象がいい。あそこはオーナーが女性だったので、オーナーの趣味かもしれない。ニュージーランドに数あるキャンプ場もオーナーによっていろいろなところがあって面白い。

ちなみにロケーションがよかったのは、ゴールデンベイとグレイマウス。どちらのキャンプ場もビーチまですぐだ。ビールを飲みながら夕陽を眺めるのは贅沢としか言いようがない。

 

キャンプ場に着くと、さっとテントを張って荷物を置く。そしてそのまま連日の氷河観光に向かう。今回はコーヒーを淹れられるようにバーナーストーブとコーヒーセットを持って出かけた。

 

フォックスも前日のフランツジョセフに負けない観光客だ。

私は人の少ないところでコーヒーを沸かそうと思い、コーヒーセットを用意したが、なぜかバーナーストーブに火がつかない。

氷河の下は風が抜けて思いのほか寒い。体がだんだん冷えてくる。持ってくるべきはコーヒーじゃなくてウィスキーだったな、とどうでもいいことを考えた。

私はコーヒーをあきらめ、そのまま撤収した。

2日連続で氷河に行っても感動は薄い。あたりまえか。

 

街に戻っても時間は余裕だ。

なかなか感じのいいバーがあったのでビールにする。

観光地価格で普段の1.5倍くらいしたが、仕方がない。仕方がないから2杯飲む。

 

この頃になると都市部からどんどん離れていったので、食料品の値段がジワジワ上がってきていて、それがストレスだった。

朝はトースト、昼はカフェでランチ、夜はパスタ、というのが定番の食事サイクルだったが、南島に来てからは昼に都合よくカフェがないことが多く、前日の夕食に何か肉を焼いて、サンドイッチを作って、翌日の昼御飯にするようになった。値段の安い挽肉でバーガーサンドということが多かったが、このころになると、挽肉も含め、食料品の値段が上がってきていたのだ。

そんな中、フォックスのスーパーで見つけたのは下味のつけてある鶏肉だった。日本でもスーパーでよくあるあとは焼くだけのあれで、調理も楽で、値段も許容範囲だった。

フォックスんで売られていたのはライムとレモンのフレーバーのついたチキンだった。

カクテル用に使うライムジュースでも使っているのか、容器に入ったチキンは明るい黄緑色のソースに浸かっていた。興味本位で購入。

キャンプ場に戻って早速焼いてみる。チキンから漂ってくる香りはライムのそれというよりは、日本の食器洗剤のものだ。

甘めの味付けがしてあるのか、私の薄いコッフェルの蓋ではすぐに焦げてしまったが、何とか焼けた。

味は思った以上に美味しかった。ライムの人工的な香りが気にはなったが、ライムとチキンの組み合わせは悪くないな、と思った。

 

夜、使えなかったバーナーストーブをばらしてみると、ガスタンクとの接点になる部分のパッキンが劣化していた。裏返してみるとなんとか使えるようになった。

次の大きな街でパッキンを買わないとな。旅は長くなってくると道具もくたびれてくる。

考えてみれば、私のキャンプ道具はほとんどが10年近く使用しており、ここまでよく頑張っていると思う。

 

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