「白倉峡って行ったことあります?」
ある日、職場で会ったタツマくんに週末、一緒にライドに行かないか誘うとそう訊ねられた。
「知らないな。」私は記憶の糸を手繰るが全く思い当たる場所がない。タツマくんによれば、天竜二俣の北に位置する紅葉の名所らしい。周辺のエリアは何度か走ったことがあるところだが、行ったことがない場所だ。いい機会なので二人で白倉峡周辺にライドに行くことになった。
朝、タツマくんに自宅まで迎えに来てもらい、天竜二俣、船明ダムまで車で向かう。
朝は少し冷えるが暖かくなるようだ。浜名湖を横切るとすでに多くのサイクリストが走っていた。今日はライド日和だろう。
天竜川の下流にある船明ダム到着。バイクを下ろしてライドの準備をする。すぐに暖かくなるだろうが、走り出しはウィンドブレーカーを着ることにした。
まずは船明ダムから北に向かう。
天竜川沿いの道はほとんど平坦で走りやすい。船明ダムはボート競技の練習場として有名でこの日も水面を滑るように進む細身のボートが見えた。少しの間、並走する。なかなかスピードが出るものだ。
天竜川を渡る橋を越える。橋の上から河原を見下ろすと釣り人が等間隔をあけてきれいにならんでいる。外遊びには最高の天気だ。
天竜川は普段、私がそばを走る豊川とはスケールが違う。タツマくんとも話していたが、静岡の川は川幅が広くて、とても開けて見える。私は時折止まって景色を楽しんだ。
秋葉ダムまで北上し、ダムを渡り右岸へ。
すぐそばの吊り橋があったので渡ってみる。
中々の高さと、履いていたホイールがディープリムだったおかけで風で煽られて怖かった。
吊り橋から旧龍山村の中心部を抜け、白倉川沿いの道に入る。ここからはしばらく上りが続く。
集落を出たあたりの上りがややキツかったが、そこからはタツマくんとサドルトークをしながら着実に登っていく。
遠くの山々は中腹が紅く染まりつつある。
左手に小さな駐車場と公衆トイレが見えた。
ここが白倉峡への入り口らしい。
案内看板によれば、道路から白倉峡へのアクセスここともう少し先にもう一箇所あり、どちらも遊歩道で繋がっているようだった。
我々はバイクを置くと白倉峡への遊歩道を下り始めた。
遊歩道はコンクリートで舗装されていたが、階段の傾斜が微妙で歩きにくかった。少し歩くと川に降りられるところがあった。
深い緑の水を湛えた淵が美しい。
紅葉はまだここまで降りてきていないが、これは充分に見る価値がある。小さな滝の横にはロープがぶら下がっており、夏場は川で遊ぶ人もいるようだった。
そこからしばらく歩くと赤い吊り橋と滝が見えた。
我々はしばらく静かな渓谷の景色を堪能すると、遊歩道を歩いて戻った。
再びロードバイクでもう一つの遊歩道の入り口に向かう。なかなか斜度がキツい。
次の遊歩道入り口まではそこまでかからなかった。
こちらもしばし散策する。
白倉峡の遊歩道は整備されてから時間が経っているようで設置された看板などは時代を感じるものだった。
白倉峡は大きな一枚岩の白壁に伸びた赤い蔦の葉が美しいそうだが、周囲の木々が伸びていて、あまりよく見えなかったが、なかなか見事なものだった。
例年であれば、もみじまつりが開催されていて、蕎麦などが食べられるそうだが、今年はコロナの影響か特に何もなかった。
お腹が空いた私は妻が持たせてくれたパウンドケーキを食べた。この後、結局、補給が出来たのは昼のくんまの道の駅だった。
道はしばらく上り続けた。
紅葉の進んでいるところもあり、写真を撮りながら走った。
施設らしい施設は何もないところだ。唯一、「龍山秘密村」というキャンプ場が途中にあり、カフェを併設しているようだったが、そこは今の季節は営業していなかった。
名前は秘密村だが、途中やたらと看板があった。
「ぜんぜん秘密にする気ないよね。」タツマくんが言う。全くだ。
秘密村から少し上るとようやく下りになる。
県道9号と合流する。
ここは佐久町の一番南、吉沢地区である。
トイレがあるのでしばし休憩。
ここも案内看板がなかなか年季が入っていた。
小学校も見えるがケータイの電波が入らなくて驚いた。アクセスはそこまで悪くない場所だと思うのだが。
県道9号を南へ向かう。
いい加減お腹も空いているが、この先の道の駅「くんま水車の里」まで何もない。
再び峠を上る。ここは前にもタツマくんと走ったところだ。
トンネルまでスムーズに行き、道の駅まで一気に降る。
くんまの道の駅はちょっとしたイベントをやっているようでかなりの人で賑わっていた。
この道の駅は浜松周辺のサイクリストがよく訪れるようで、この日もたくさんのサイクリストがいた。
空腹な我々は食堂に入り、名物の舞茸の天丼と蕎麦を注文するが、かなり待つことになった。
やはり舞茸は天ぷらだな。
私は土産に舞茸を一つ購入した。
くんまの道の駅からはほとんど下り。
私はこの日まで借りていたディープリムのホイールの巡航性能に任せて南へペダルを踏み続けた。
途中、何人ものサイクリストが反対から登ってくる。やはり地元の定番ルートなのだろう。
ホイールのおかけで、スタート地点の船明ダムまで早く戻ることができた。
車に戻るとコーヒーが飲みたい、という話になり、都田駅のカフェに寄る。
このあたりでは有名なマリメッコのファブリックが飾られたカフェである。
オッサンたちで行くにはかわいいカフェだ。
カフェのすぐ横に列車が来るのはなかなかよかった。ちょっと海外のカフェのようだった。
久しぶりの天竜川ツーリングは休憩多めで、走るとこは走るというメリハリの効いたライドとなった。ただ補給できるところがないので、次回はコーヒーセットと甘いものを持って行こう、ということになった。そんなツーリングもしたいものである。