定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

設楽町のカツ丼と東栄町のパン屋さん - 秋の奥三河ライド -

いつも奥三河のことを話題にしながら、最近は新城より北に行っていなかった。

家族から自由な時間を貰ったので、半日、設楽町東栄町を自転車で回ることにした。

 

朝、長男に呼び止められスタートが遅れたため、車で新城市の鳳来エリアまで移動する。夕方は『風の自然学校』のサイクリングで浜名湖に泊まりで行っている長女を湖西市まで迎えに行くため、遅くとも3時には車に戻ってくる必要がある。

制約はあるが、時間が取れて幸いである。

まずは四谷の千枚田を目指す。

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少し前にショップからロードバイクのホイールをレンタルしており、最近はこのホイールのテストをしている。カンパニョーロのBORA WTO60だ。リムハイトが高く、巡航性能の高いホイールだが、この手のホイールは山岳エリアには向かないと言われる。山での使用感を実際に試すいい機会だ。

 

時間的制約もあるので出来るだけ平坦なルートを選んだこともあるが、テストホイールの効果で多少の上りでもよく進む。練習不足でスピードが出ない分を補うには十分な性能だ。

最近にしては少し暖かで、素晴らしい晴天だ。ときおり強い風が吹く。

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周囲の山々はまだ紅葉していないが、もう少し北に上がれば色づいた山の木々が見られるかもしれない。

 

仲間とよく走る旧田口線廃線跡を北上し、四谷の千枚田の入り口に来る。もう稲刈りも終わって静かなものだが、それでも何組かの観光客の姿があった。

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正面に見える鞍掛山は頂上付近が赤く、紅葉が始まっている。

いつもなら上の駐車場に寄り道するところだが、今回はそのまま千枚田を抜け、設楽町との境にある仏坂峠に向かう。

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仏坂トンネルを抜け、設楽町神田地区に出る。川沿いの下り坂をスピードに乗って降りていく。

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色付いた木々が目に入り、自転車を止めて河原に降りていく。紅葉した木々とその間から見える空が美しい。

再び自転車にまたがると国道473号との合流地点に出る。時間はもう昼近い。そのまま東に向かい、東栄町に抜けようかとも考えたが、たまには設楽で昼食を食べようと、西に向かい、設楽町の中心部を目指した。

 

ほどなくしてJAの加工場の手前にキノコの置物が並んでいるのが見えてきた。

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こんなのいつの間にできたのだろう。

自然に囲まれたこの設楽の風景の中で、原色のペンキで塗られたキノコはなかなかのインパクトだ。

キノコ好きで奥三河の観光の仕事をしている友人に写真を送ると、地元で有名な方のものらしい。まだ土地に余裕がありそうなのでまだ何か増えるのではないだろうか。

 

岩古谷トンネルを抜けて、設楽町田口に出る。

昼はカツ丼を食べようと思っていた。設楽町では今、設楽ダムが建設されており、新グルメとしてダムカレーを売出し中だが、私が前から注目しているのは、カツ丼である。理由はよく分からないのだが、設楽町でカツ丼というとソースカツ丼が出てくる店が何軒もあるのだ(もちろんお馴染みの卵とじの店もある)。今回はうなぎが名物の富田屋でカツ丼をたべようと思っていたのだが、日曜定休であった。

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そしてすぐそばの多津美屋本店もやはり定休日。

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日曜日の設楽町は食堂が開いていないとは聞いていたが、ここまでとは思っていなかった。

私は前に日曜日に行ったことのある「喫茶芳水」に行くことにした。私は再び岩古谷トンネルまで戻った。芳水は旧岩古谷トンネルのそばだ。

 

芳水は幸い営業していた。

しかし、女将さんが手術されるそうでしばらく休業されるようだ。

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店に入ると私はソースカツ丼芳水オリジナル(しょうゆ)を大盛りで注文。普通盛りは小ぶりなので普通に食べる人なら大盛りがいいだろう。

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ソースカツ丼なのかしょうゆ味なのかよく分からない名前だが、甘めのタレが食欲をそそる。ソースというよりみたらし団子のタレに近い感じか。

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いっしょに出できた赤だしの味噌汁に半熟卵が入っていたのが嬉しかった。
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充実のランチを終えると再び神田まで戻ることになった。

全く、日曜日の設楽町ランチ難民問題のおかげで余計に時間がかかってしまった。下調べが甘かった自分が悪いのだが。まあ芳水が安定の美味さだったのでよしとすることにした。

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私は岩古谷トンネルの下りから、その勢いに任せてペダルを踏み続けた。すぐに神田に出る。設楽町神田から東栄町までは下り基調の道で非常に走りやすい。道はやや狭いが、視界もそこまで悪くないのでスピードも出る。ここで時間を稼ぎたいところだ。

しばらく行くと前を行くサイクリストがいたが、すぐに追いついてそのままパスした。

 

道はやがて東栄町に入る。東栄町に入ると空が開けた。月地区である。

たまには寄りたいダイナー月猿虎の店の前を一瞬で通り過ぎ、そのまま踏み続け、国道151号と合流する中設楽の交差点でようやく止まった。多少時間は稼げたようだ。

 

次の目的地は廃校を利用した施設「のき山学校」である。

のき山学校にはカフェの他、手作りコスメ体験ができる場所だ。雰囲気のあるところで本来であれば、ゆっくりしたいところなのだが、今回は時間がない。

 

のき山学校は「軒山」という小さな山の中腹にあり、そのアプローチはなかなかの急坂だ。私はギアを軽くし、一気に登った。

 

のき山学校に着くと、広くはない駐車場は車でいっぱいだった。これからコスメ作り体験があるのだろう。ちょうど車から降りて来た女性たちがそんな会話をしていた。

そんな女性たちは汗だくの自転車乗りのオッサンをどう思っただろうか。

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入り口でナイスなスリッパに履き替え、校舎に入る。私の目的はコスメ作り体験でもなければ、カフェでもない。ここに入る東栄町まちづくり協会である。

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私は協会の会員なのだが、近頃は東栄町に来ていなかったので、今年の会費をまだ払っていなかったのだ。事務所には幸い、知り合いの事務局長さんが見えたので、会費をお支払いし、久しぶりにお話しすることが出来た。

東栄町は「美」をテーマに観光に取り組んでおり、近々開催されるツアー「BEAUTY TOURISM TOUR」のことなどを教えていただいた。都合が合えばぜひ参加したかったが、残念ながら家族でキャンプに行く週末とバッティングしていた。事務局長さんとお別れをし、次は街中にあるパン屋さん「杏の家」に向かう。

「杏の家」は今年7月にオープンしたパン屋さんで、前からInstagramをフォローしていたが、とにかくパンが美味しそうで一度行ってみたかったのだ。

場所は東栄町の本郷と聞いていたが、はっきりとは分からない。唐揚げのうまい「山正」の横を抜け、もう一本中の道に出ようとしたら山正のとなりが杏の家であった。

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外観がとてもかわいい。

ちょうどドアを開けてくれたご主人に招かれるようにお店に入る。

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店内には焼き菓子とパンが綺麗に並んでいた。

私は焼き菓子もパンもかなり好きなほうである。この日から店頭に並び始めたというシュトーレンを選び、あとは直感的に食べたいと思ったお菓子とパンを買うことにし、ご主人と話してオススメのフォカッチャとバタールも買うことにした。

Instagramで見て、前から来たかったと言うと奥から奥様が出てきて、アカウント名を聞かれたので答えると後でわざわざお礼のメッセージを送っていただいた。

 

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帰宅後、買ったパンやお菓子を家族と分けて食べたがどれも美味しかった。自家製酵母のフォカッチャは特別なハーブでも使っているかのような独特の風味があって印象的だった。ワインのお供にもいい。

 

杏の家を後にすると、後はスタート地点の駐車場まで戻るだけだ。

いつもであれば、東栄から県境を越え、静岡県側に入り浦川経由で、新城川合から望月街道をのんびり帰るのだが、いかんせん時間がない。

再びホイールの巡航性能に任せて国道151号をひたすら南に向かってペダルを踏んだ。

 

我ながらなかなかのペースだったと思う。

 

何とか長女の迎えに間に合いそうな時間に車に戻れたのだが、その後の撤収に手間取ってしまい、結局、長女のお迎えには遅れてしまった。

 

膨れっ面の長女に「遅い!」と怒られてしまった。

私は平謝りである。

それから「風の自然学校」の代表、よっしぃにも謝っておいた。全く申し訳ない。

 

帰りの車で長女のサイクリングの様子を聞いていたが、長女は疲れて寝てしまった。

私も久しぶりに爽快な疲労感を味わっていた。

 

再び集うということ - Damonde Trail run for joy -

コロナの影響で春は中止となったダモンデトレイルは、先日、「Damonde Trail run for joy」として開催された。

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ある日、ダモンデの拠点、ヤングキャッスルで山田さんが「秋のダモンデは…」と秋の開催の構想を話してくれた。

「やらないのは簡単だけど、そうじゃないと思うんだよね。」

 

参加人数を抑えた上でレースという形式から大会コースを自由に走るフリーランの形式に変更しての開催にするという。

 

私が聞いた開催への想いはより明確な形で後日、ダモンデホームページにアップされた。

 

『まだまだ予断と緊張を許さない状況下にあって、こうした新しい何らかのアクションを起こすこと、それに伴うリスクを考えれば 考えるほど「何もしない方が良い」という結論に激しく傾きたくなる中で、それでも暮らしも、経済も、地域も、少しずつ新しい 回復軌道に向かうため、いま私たちができること、少しでもスポーツの力で自分たちの暮らす世界を鮮やかに、元気に、楽しい方 向にその歯車を回すようにと考えた末の結論です。こうした決断にはご批判や不安の声もあるかもしれません。しかしこうした新しい挑戦を模索し行動を起こす中にこそ、これからの厳しい時代にあっても、この地域を支える活力や可能性が秘められていると 信じ行動を起こしたいと思います。参加を希望する皆様、支えてくださる地域の皆様をはじめ関係各所の皆様にご理解いただきま すようお願いいたします。』

 

そう、やめてしまうのは簡単だ。

この状況下でイベントを開催するのは相当勇気が必要だったと思う。

 

そして私は今回もスタッフとして声をかけてもらうことができ、新しいスタイルのダモンデに参加することとなった。

 

Damonde Trail run for joy当日。

 

早朝の愛知県民の森にスタッフが集合する。私は家族を連れていたこともあり、やや遅れ気味に到着した。すでにほとんどのスタッフが集まっている。久しぶりに会う人もいてこれだけでもきた甲斐があると思った。

 

無線を受け取ると、山田さんから朝のブリーフィングを受ける。

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山田さんを囲んだスタッフがその言葉を耳を傾ける。

 

我々は戻って来たのだ。

 

ブリーフィングが終わると、各自会場まで歩いていく。私の家族もスタッフに混じって歩いて行く。

子供達も朝早くから眠いだろうが、ダモンデは我が家にとっては大事な年中行事であり、みんな行くことを楽しみにしていた。

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大会のメイン会場の愛知県民の森 芝生広場では出店者の人が開店の準備をしている。

私は自分の準備をし、お店の準備が終わったブースを早速みて回る。

大会が終わってからだと物がほとんどないので、朝、お目当のものがないか見ておくのだ。

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スタッフが落ち着いたところで、私は担当エリアの仲間を集めて簡単にミーティングをした。今回はスイーパーで新しい方が二人来てくれたので、自己紹介をし、我々が担当する右岸エリアのスタッフで基本的な動きの確認をした。

朝食を食べながらのラフな感じだ。

 

私の担当する右岸エリアは一部、足場の悪いところで、ここ数回はこのエリアを任せてもらっている。業務としては、エリア全体を気にしながら、主に選手に注意喚起したり、怪我や事故があったりした場合の対応にあたるのだ。

同じエリアの担当は、通常より人は少ないが友人のタツマくんを始め、いつも一緒にコースを見てくれる人たちで安心だ。

 

打ち合わせの後、担架やAEDなどをコース内に運びながら、コースウォーク。危険箇所の確認と、怪我人が出た場合の動きを確かめる。

 

その際にいくつかコーステープを追加で張る必要があるということになったので、スタート前の配置につくときに対応することにして、我々は一旦本部に戻った。

 

本部に戻ると選手が続々とやって来ていたが、やはりいつもと比べるとかなり少ない。いつもより400人少ないのだから当然である。広い会場が更に広く感じる。

 

見上げると空は快晴だ。青が眩しい。

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本部に戻った子供達が私を見つけて走ってくる。出店ブースも営業を始めたので、焼き菓子のお店「chacha」さんと「ぶどうの小枝」さんに行き、いくつかお菓子を買う。これも毎回の楽しみだ。

 

コーヒーを片手にしばらく家族とブースを見て回る。

自由な時間を満喫している鈴木夫妻はハマーの上にテントを出してコロナビールを売っていた。子供達は早速テントに入れてもらい遊んでいた。特に長男はその後も何度も遊んでもらったようだ。

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鈴木夫妻のとなりは東栄町でゲストハウスをやっている金ちゃんだ。今回はキッチンカーでタコライスとカレーの販売とのこと。そうした出店者の仲間や他のスタッフと話したりしてスタートまでの時間を過ごした。

 

スタートまでの時間は、ダモンデの緩やかな空気とこれから大会が始まるわくわく感に包まれている。

 

時間を見るともうスタート20分前だ。

 

担当エリアの仲間と共にコースに入った。

 

持ってきたコーステープを17番付近の林道に上がるところにコーステープを追加で張る。ここは過去に何度かミスコースする選手が出ている。

 

それから木の階段が1か所割れそうなところがあったのでコーステープを巻いておく。これで選手は危ないところかな、と思ってくれるはずだ。

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あれこれしているうちにスタート時間の10時になった。

特に無線が鳴るわけでもなく、コース内はいつになく静かだ。いつになく川を流れる水の音が大きく聞こえる。

 

私は担当エリアの一番奥、木の橋と階段のあるところで、選手がやってくるのを待った。

 

やがて川の対岸に先頭の選手が見えた。

 

最初の周回は選手が続いてきたが、その後はまばらにくる感じだった。

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フリーランというスタイルのせいか、これまでのダモンデよりも、普段からトレランをやっている人が少なく、家族で走っている人を何人も見かけた。

 

いつもダモンデでハンモックを出して子供達に人気の「新城キッコリーズ」の田實さんも娘さんたちと走っていた。はじめは一緒に走っていたが、娘さんたちはなかなか速く、周回を重ねるうちにバラバラになっていった。

田實さんに「娘さんたち随分先ですよ!」と声をかけると、「いや、こけちゃって」と疲れた様子を見せながらもとても楽しそうだった。

 

そうでなくても緩い大会のダモンデだが、今回フリーランの緩さを象徴していたのはこれである。


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この犬以外にあと2匹、抱っこされたりしながらフリーランを満喫?していた。

こういうのも悪くない。


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それから普段は本部に張り付けのMCハヤッチも走っていた。他にも普段の大会中は持ち場をほとんど動くことのないスタッフも何人かコースを回っていた。

私も担当エリアを中心にコース内を見て回る。

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私の担当エリアの一番南側、小さな沢を渡り、林道に戻る箇所だが、ここは今回、ベテラントレイルランナーの松宮さんが見ていてくれていた。

 

シングルトラックから沢に出るところで急に視界が開けるので、一瞬コースを見失う選手がいるところで、それもあってスタッフが配置されているのだが、松宮さんは石を器用に積んで並べ、コースが分かる様にしてくれていた。
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なかなか見事にならんでいたので、思わず「おおっ」と声を出してしまった。

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普段のダモンデであれば、無線で軽傷者の情報などが流れてきたりするものだが、無線もほとんどなることなく、緩やかに3時間が過ぎた。

 

スイーパーが来ると、我々は慣れた手つきで現場のコーステープなどを回収し、本部に戻った。


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あとで、大会の写真を見て気がついたのだが、毎回、ショッカーの仮装をして走っている選手が今回はいないなと思っていたが、今回はショッカーにならず走っていたようだ。他にも大会の常連さんがたくさん来てくれたことも嬉しかった。

 

いつもなら表彰とじゃんけん大会まで時間があるのだが、今回はそうしたセレモニーはないので、選手たちがはけていくのは早かった。

 

選手たちの多くが会場を後にし、本部の片付けがひと段落したところで、スタッフが集まった。

 

山田さんがみんなにお礼を言う。

そして「こういう緩いのもありだよね、といろんな人が言ってくれました」と。

緩くやれることが、ありなんだって分かったのは、大会のやり方を本当に考えて、ダモンデらしい方法でやれる形にした山田さんがいたからだ。

 

終わりの挨拶をしていた山田さんはいつになく眩しかった。


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春のダモンデで再びここに選手とスタッフが集うことができますように。

 

次女との休日

今回のブログは私と次女のある二日間の記録という個人的な内容なので関心のない方はスルーして欲しい。

しかも書いたら長くなってしまった。

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シルバーウィークの後半、長女と長男は妻とともに「風の自然学校」のキャンプに参加を決めていた。

 

次女も一緒かと思えば、次女は行かない、という。

次女の考えているところは分からないが、とにかく妻たちが一泊二日で出かけている間、私と次女は二人で過ごすことになった。

 

車は妻たちが乗って行ってしまい、使えないのでどうしたものかと思っていたが、ちょうど小学校で貰ってきたチラシに「東三河リアル謎解きゲーム」という公共交通機関を使ったイベントがあったので、それをやってみることになった。

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我が家で出かけるときはほとんど公共交通機関を使わない。そのため、子供たちはほとんど電車やバスに乗ったことがない。

今回は切符の買い方など電車の乗り方を教えるいい機会になるだろう。

 

次女に帽子と水筒を持たせて出かける。

豊橋駅までは市電だ。

市電の駅まで歩くが、次女と二人だけで歩くなんていつ振りだろう。次女は草むらにちょうちょを見つけてキャッキャと楽しそうだ。

 

市電で豊橋駅まで出る。市電は意外と混み合っており、何とか座れたものの、次女とは通路を挟んで向かい合わせになってしまい、話が出来なかった。次女は足をぶらぶらさせながら、吊り広告などをおとなしく眺めていた。

 

豊橋駅で市電を降りて、観光案内所に向かう。観光案内所に貼られたポスターにQRコードがついていて、それをスマホで読み取ると謎解きのヒントが出る、という仕組みになっている。

今回の謎解きは鉄道の駅を回る初級編が2コースと行き先の駅からバスに乗る上級編があり、我々はまず初級編のうち、東海道本線コースの謎解きをすることにした。

 

QRコードで得られた最初のヒントを見て、私は答えが何となく分かってしまった。次女はヒントを見てもさっぱり分からないといった様子であった。

 

切符売り場まで移動し、次女に切符の買い方を教えてお金を渡す。次女の身長は券売機の上のほうのボタンにギリギリ届くぐらいで、金額を押し間違えないか少しヒヤヒヤした。

 

改札をひとりで通るのも初めての次女は切符を持っていささか緊張していたようだが、ちゃんと切符を改札に通し、出てきた切符を取った。

子供料金だと改札から「ピヨピヨ」と音がするのがかわいい。

 

改札中の「ボンとらや」でおやつにピレーネを買い、浜松方面の電車に乗った。

 

最初の目的地、二川までは一駅なので早いものだ。電車には我々と同じくように謎解きのチラシを持った家族を見かけた。

 

二川駅に到着。

改札を抜けると次女が謎解きのポスターを見つけた。QRコードでヒントを読み込む。上級編のバスのほうも読み込むが、まずは初級編をということで、次は蒲郡に向かう。

 

ホームで次の電車を待つ。

私だけなら二川からであれば自宅に戻るのに走ってもなんとかなる距離だ。

それを次の電車が来るのをゆっくり待つ。

 

ホームを端の方へ歩いてみる。

秋晴れの青い空が眩しい。

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こんな近くなのにまるで旅をしているようだ。

昔、18切符で旅をしているとき、こうした小さな駅で次の電車が来るのをのんびり待ったものだ。

懐かしいな。

 

二川駅から再び豊橋駅に戻る。

次女は吊り革が触りたいようで、手を伸ばして何度もピョンピョン飛んでいた。その様子を近くにいた外国人のお兄さんが微笑んで見ていた。

 

豊橋駅で電車を乗り換えて蒲郡に向かう。

 

乗り換えた快速電車の車内で、知らない男性から「安売りしててたくさん買ったからどうぞ」とチョコレートを貰った。

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子供の頃、祖母と電車に乗っていて、向かいに座ったお年寄りからみかんを貰ったことを思い出した。あのときはどうして祖母と電車に乗っていたのだろう。

 

蒲郡駅に到着。

早速、謎解きのポスターを探す。

ポスターを見つけ、初級編のヒントを見る。私は予想通りの答えだと自分の回答に確信を持ったが、次女はまだ何のことか分からないようだった。

蒲郡駅構内の観光案内所で座れるスペースがあったので、そこで私は次女にさらにいくつかヒントを与えると、ようやく答えにたどりついた。

 

これで初級編はひとつクリアだが、ここからバスでいく上級編もある。まだ時間があるので、そのまま上級編を解くことにする。

蒲郡のヒントを見ると場所は遠くないが、蒲郡駅前からバスに乗ったことがないため、行き先のバス停を探すところから始める。

ここでなかなか苦戦して、乗りたいバスが行ってしまった。

困ったことに次のバスまで時間が2時間近くあった。

 

我々は結局、1時間に二本あるラグーナ蒲郡に行くシャトルバスでラグーナ蒲郡に行き、蒲郡みかんジュースを飲んだり、アウトドア用品を見たりして過ごした。

 

再び蒲郡駅に戻り、目的のバスにようやく乗る。謎解きの応募に必要な乗車券を余分に取る。

乗客は我々だけ。私は料金表を指差して、お金の払い方を説明しながら、降りるバス停のアナウンスがあったらボタンを押して運転手さんに「次で降ります」って伝えるんだよ、と次女に教えた。ゆっくりとバスは進み、目的地のバス停が近づいてくる。

次女が降車ボタンを押す。

運賃箱にお金を入れ、運転手さんにお礼を言うと我々はバスを降りた。

 

バス停から少し歩いて、目的地へ。

 

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少し波打ち際で遊んだ後、我々は蒲郡駅に戻り、この日の謎解きを終えた。

 

妻たちはキャンプのため、夜も次女と二人だけである。

 

晩ご飯はどこか外食でもと思っていたが、次女にリクエストはなんと赤飯であった。

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駅ビルの惣菜コーナーで見たら食べたくなったらしい。豊橋駅で赤飯と惣菜を買い、二人で食べた。

次女はお風呂を沸かせてくれたり、食卓の準備やいろいろお手伝いしてくれた。

 

夜は珍しく次女と二人並んで眠った。

こんな風に眠るのは長男が生まれたときにしばらく長女と三人で並んで寝て以来ではないだろうか。

あのとき次女は「おかあさん…」とシクシク泣いていたことを思い出した。

 

翌日。

次女は朝が弱い。長女は早い時間からさっと起きて朝から本を読んだりするものだが、次女は起こさないといつまでも寝ている。

この日も私が起こすまで起きなかった。

 

二日目は謎解き初級編の飯田線コース。飯田線で豊川と新城に行くことになった。

 

まずは豊川駅だ。

しばらくぶりの飯田線を私は堪能していた。次女は相変わらず吊り革に触りたいようで、ときどき吊り革に向かってジャンプしていた。

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豊川駅に着く。

謎解きのポスターのバーコードを読む。まずは初級編だ。こちらも2つ目のヒントで私はだいたい答えが分かった。

バスに乗る指示が出る上級編のバーコードを読むと、なかなか遠い行き先の指示だ。

 

バス停でダイヤを確認するが、やはり本数が少ない。次女と相談の上、上級編は全部で二箇所回ればよいので、今回は見送り、新城駅からのバスの行き先にかけることにした。

 

次の新城行きの電車まで時間があるので、歩いて豊川稲荷まで行き、あたりを少し見て回った。

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普段の観光客の人出が分からないが、そこまで多くないような気がした。少しはお金を落とさないとな、と思い、ソフトクリームと稲荷寿司を買う。

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のんびりしていたら、電車の時間が迫っている。

私は次女を急かせて豊川駅まで戻った。

 

無事に新城方面の電車に乗りこみ、新城駅に向かう。しばらく通勤で使っていたので車窓の景色が懐かしい。

 

新城駅に電車が停まる。

 

ホームに出て、駅舎側のホームに移動するため、高架の方に向かおうとするが、工事していた。そういえば新城駅前は整備が始まったといっていたな。

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高架と反対側のホームの端に作られた階段で駅舎側に移動する。こちらのほうが楽だな。

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改札を出て早速謎解きのポスターのバーコードを読みとる。初級編はこれで答えが分かれば完了だ。次女はまたしても、私からいくつかヒントをもらってようやく答えにたどり着いた。

 

問題は上級編である。

バスの行き先は思った以上に遠い場所だった。

どうしようか。

 

とりあえず昼ごはん時であるので、どうするかは食事しながら考えることにした。

ランチは「大文字」にしようと決めていたので大文字に向かうが、まさかの休業。

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そして我らがヤングキャッスルも休業日である。

 

困った。

 

次女にしては珍しくお腹が空いた、と何度も言う。新城駅周辺で子連れで入るような店を私は思いつかなかった。

私はひとまず、国道の方へ歩いて行くことにした。少なくとも途中にピアゴはあるし、国道沿いまで出れば店はある。

 

歩いていくと中華料理屋が視界に入る。

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あそこではないよな、と思いながら一応「ここのお店じゃないとこがいいでしょ?」と次女に聞くと歩くのをやめて「ここにする。お腹空いたから早く食べたよ。」と言う。

次女がそう言うなら、と我々は店に入ることにした。後から聞いた話だが、新城市民でもこの店に入るのは、ある意味、上級者だと言われた。

 

店内でメニューを見るが、少し予想していた通り薄味好みの次女が食べそうなものがほとんどない。次女はしょうゆラーメン、私は天津チャーハンを注文。

先に天津チャーハンが来た。

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次女に取り分けてあげるが一口食べると「苦手」という。油っこい感じがダメなようだ。ラーメンは大丈夫かと心配したが、ラーメンは何とか食べていた。

運動もしていないのに、危うくボリュームたっぷりの中華を2人前食べるところだった。

 

突発的なドキドキの昼食を終えると、そのまま近くのバス停から目的地に向かう。

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バスに乗り込むと我々のような親子連れがいた。こちらも謎解きをやっているようだ。

 

この謎解き、上級編はなかなか難易度が高い。

豊橋蒲郡は比較的駅から近いところがバスの目的地として指示されるが、豊川と新城はなかなか遠い。バスの本数が少ないので、バスいいタイミングで捕まえられないと待ちぼうけになるし、帰りのバスもうまく乗れる保証はない。

それに行き先がどんなところか想像がつかないと、目的地で食事などに困ることになる。子供をつれているので、あれこれ我慢させるのも難しい。

私は新城あたりは詳しいほうだと思うが、それでも食事やバスへの乗り換えには困った。もしやってみる方がいれば、時間的ゆとりをもっていただいたほうがいいだろう。

 

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いつもは自転車や車で走る道をバスで行くのはなかなか新鮮だった。

次女は相変わらず吊り革に触りたがったが、バスにいろいろ書かれている注意書きを読んで、大人しく座っていた。ときどき私のような凡人には全く予測できない行動をする次女だが、基本は真面目なのだ。

 

バスが目的地に着いた。

我々に続いて、先に乗っていた親子連れも降りた。

 

私にとっては馴染み深い場所だ。

しばらく乗ってきたバスを見送る。

 

我々は謎解きが示した場所まで歩いて行った。

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最後に我々がたどり着いたのはここだ。

 

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我が家が折に触れ、やってくる場所。

静かな時間が流れる穏やかな場所。

自分の立ち位置を確認できる場所。

 

ちょうどこの日は緑のパッサージュがやっている日だった。

 

何人かの人が思い思いにカフェの椅子に座って談笑している。

偶然だが、ダモンデの仲間であるハギヒラ親子がいた。

「ここに来ると、誰かに会えるよね。」

そんな会話をして、私はコーヒーをいただく。

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椅子に身体を沈めて、ボーッとしているとそのまま気持ちよく寝てしまいそうだった。

人見知りの次女はハギヒラさんたちに話しかけられても、懐かないネコのように逃げていく。

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失礼な娘で申し訳ないと思うのだが、そうした次女のことを知っているハギヒラ親子は「そうだよね」という感じであまり気にもとめていない様子だった。

 

私はしばらく自分の時間を楽しみたかったが、遊び相手のいない次女は、

「あー、お父さん寝ちゃだめだめ!」と私の身体を起こしてくる。

「何で?お花でも摘んできないよ。」私がそう言っても「だってつまんないんだもん。」と言うばかり。

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「コーヒー飲んでるからゆっくりさせてよ。」と私が再び身体を椅子に預けるとまた起こしにかかってくる。こんなことをしばらく繰り返した。

 

風の自然学校のキャンプの帰りの足で、そのまま妻が迎えに来てくれることになった。

 

いよいよコーヒーがなくなると次女が勢いづいて「はい、コーヒー終わったねー。行きましょう!」と言う。

 

やれやれ。

私は立ち上がると伸びをした。

 

謎解きゲームで結果ここに来ることになったが、訪れることが出来てよかった。
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よく分からないテンションの次女を連れて私はこの特別な場所を後にした。

謎解きは終わったが、次女という謎は解けないままだ。この先もきっと解けることはないだろう。

 

 

 

 

乗鞍へ - RIDE DaMONDE -

ダモンデの仲間で最近ロードバイクを購入した上野さんとダモンデメンバーでライドに行ったとき、乗鞍の話題になった。ダモンデメンバーで時々一緒に走るえーしは行ったことがないという。

 

乗鞍は日本のサイクリストにとって特別な場所、といえると思う。

日本で最も有名なヒルクライムの大会「全日本マウンテンサイクリングin乗鞍」が開かれる場所であり、自転車で標高2700mまで上がることができる場所は他にほとんどない。

 

我々ダモンデのメンバーも3年前に一度上っている。乗鞍観光センター駐車場から乗鞍岳畳平までの20.5キロ、標高2700mまでのヒルクライムは誰にもとってもチャレンジである。

 

今回のメンバーは初めて乗鞍を登る上野さん、えーしを始め、ダモンデの代表山田さん、早川さん、タツマくん、私の6名である。

早朝新城に集合した我々は途中、えーしを拾い、スタート地点となる乗鞍観光センター駐車場に向かった。

 

現地に着くと素晴らしい快晴。

この場所で既に標高1450mとあって涼しいが、日差しが下界よりきつく感じられる。

 

我々は車からバイクを降ろし、各々準備を始めた。

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タツマくんが「シューズがない」と騒ぎ始める。しばらく車の中を探すが見つからない。

「おかしいな」

 

ロードバイクに乗る場合、ペダリング効率を良くするためにビンディングペダルを使うのが一般的だ。専用のシューズの裏に取り付けられた部品でペダルに足を固定して走る。あるとなしでは足の使い方も違うし、使わないと効率が悪い。

シューズが見当たらないタツマくんは結局、履いていたトレランシューズで登ることとなった。

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準備を済ませ、スタート前の記念撮影。

 

久しぶりの乗鞍へ、ペダルを踏み始めた。

 

我々の乗鞍ライドは、自分を追い込み頂上までのタイムを計測するとかそういう類のものではない。

美しい乗鞍岳の景色を楽しみながら、無理のないペースで仲間と話しながら登って行くのだ。

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ダモンデ山田さんは前日の練習で追い込んだせいか、身体が重いという。しばらくして気がつくのだが、ブレーキがホイールに擦った状態で走っていたらしい。平地ならばブレーキの引きしろの違いで気がつくこともできたのだろうが、乗鞍への道はひたすら登りのため、ブレーキをかけることがなく気がつかなかったらしい。

 

まずはマイカーで入ることができる一番奥の駐車場、三本滝駐車場を目指す。



三本滝駐車場までは軽くサドルトークをしながら順調に上がっていく。

 

初めての上野さんも遅れる様子はない。

上野さんは最近ヒルクライムを積極的にやっているそうだが、もともとやっているトレランで鍛えた基礎もあり、全く心配がなかった。

 

三本滝駐車場に到着。

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ダモンデ山田さんは朝ごはんが足りなかったのか早速ソフトクリームを食べている。

早川さんと山田さんはなぜか自然体でソーシャルディスタンスだ。

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三本滝から先はマイカー規制エリアとなるため、車はバスとタクシーしか入れない。そのあたりも乗鞍をサイクリストの聖地たらしめている所以だろう。

 

規制ゲートのおじさんに挨拶し、我々は先に進む。

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晴天の乗鞍は素晴らしいとしか言いようがない。

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仲間のはしゃぎ振りもなかなかだが、私自身楽しくて仕方がなかった。

 

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トレランシューズのタツマくんは斜度が上がるにつれ、だんだんと遅れ始めた。普段ならスイスイ登っていくタツマくんが苦戦しているのを見て、今更ながらビンディングペダルの恩恵の大きさに気付かされる。

 

しばらくして集団はバラけてくる。

 

冷泉小屋で一度止まり休憩。

周囲には硫黄の香りが漂う。

 

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山田さんがカメラを出してみんなの写真を撮ってくれる。私も久しぶりにロードバイクと一緒に写る写真を撮ってもらった。

 

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さすがカメラマンをしていたことがある山田さんである。このときの写真はお気に入りの一枚になった。


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次のポイントは位ヶ原山荘だ。

ここまではそう遠くないが、まずまずの斜度になっている。

 

時折、上から降りてくるサイクリストと出会うが、ebikeに乗っている人が多い。

自分の足で行きたいと思うのはサイクリストの思想であって、普通の人のアクティビティと考えるとこの使い方は正解だと思う。

 

位ヶ原山荘に着く。

 

ここまでくれば畳平まであと5キロだ。

山田さんは山荘に着くとすぐ、缶コーヒーを買った。

「ここまで飲み物を上げてくれる人がいると思うとね。今はお客さん少ないだろうし」

 

相手のことをいつもよく考えている山田さんらしい一言だ。

我々はそれぞれ飲み物を買い、しばらく休憩。

 

頂上は晴れているだろうか。私は畳平のほうを見上げた。気になるのはそこである。せっかくなら晴れの中を走りたい。

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ゆっくり走ってきたとは言え、15キロ以上続けて登っていればそれなりに疲れてくる。私は集団が分かれてきたところで自分のぺースで行かせてもらうことにした。

 

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標高も2500mを越えてくると空気が薄くなって身体が軽い。もっともその分呼吸は苦しいが。

 

周囲の木々が殆どなくなっていく。

 

森林限界を越えたのだ。

 

ここに来るたびにかつて旅したアラスカの景色を思い出す。全然違うのだけど、どこか通ずるものがあるのだ。ツンドラの向こうにカリブーが走っていって…

私が乗鞍にやってくる理由はここにもある。他では見ることのできないこの景色の中を自転車で走ることができるのだ。


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路肩の広いところで止まり、風景を眺めながら仲間が来るのを待った。ここまでくればゴールの畳平までわずかだ。

 

素晴らしい景色だ。ここでも充分に来る価値がある。


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仲間たちがパラパラとやってくる。


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みんな思い思いに写真を撮っていた。

 

全員揃ったところで記念撮影。


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揃いのジャージで登るのはいいな。

 

山の上から降りてきたライダーが止まった。

先週、新城のイベントに参加していたY氏だ。

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日本も人がいうほど広くない。

 

畳平まではあとわずか。

 

眼下には登ってきた道が広がる。

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そして行手にはゴールの長野県と岐阜県の県境が見える。

 

早くゴールしたい気持ちとこの素晴らしい景色の中でもっと走っていたいという気持ちが交錯する。

 

私は自分のペースを維持しながら、県境に到着した。

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ここはいつも風が強く吹いているが今回はあまり吹いていない。早川さんが驚いていた。

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こちらでも仲間と写真を撮る。

 

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何回来ても「ここまで来たな」と思う。

やはり乗鞍は特別感があるのだ。

 

 

畳平駐車場でバイクラックにバイクをかけるとウィンドブレーカーを取り出してすぐに羽織った。身体が冷えるのが分かる。標高2700mは伊達ではない。

 

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振り返るとと登ってきたエコーラインの方は灰色の雲に覆われ、白い霧がこちらにも流れ込んできている。

我々はほどなくして畳平駐車場を後にした。

 

つい先程まで青空だったのに、カーブの向こうが見えないほどに道は霧に包まれてしまった。

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早川さんとタツマくんは写真を楽しそうに撮っていたが、他のメンバーは順次来た道を降りていく。

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すぐに霧は雨になった。激しい雨が身体に当たる。身体に打ち付ける雨が痛い。海外で雹に降られたときがこんな感じだったので、雹かとも思ったが、その場の状況ではそこまで分からなかった。そんなことより、まずは少しでも早く下に降りることが重要だ。まだウィンドブレーカーは水を弾いていたが、じきに濡れてしまうのは明らかだった。

 

濡れ始めの路面はスリップしやすい。

私は焦る気持ちを抑えながら、バイクコントロールできるスピードを見極め、いつもよりやや速い速度を保った。ウィンドブレーカーはすぐに撥水性を失うと水を吸い、雨と下りのスピードが身体からどんどん体温が奪っていった。

そして、真横で大きな雷鳴が響いた。

「さすが乗鞍」感嘆とも悪態とも分からない言葉を吐きながら、山の下は晴れていることを確認し、早くそこまで行こうと決めた。

 

位ヶ原山荘まで戻る。

 

先行していたえーしが、行こうか止まろうか躊躇していたので、行くように合図する。濡れた身体で待っていては闇雲に体力を消耗するだけだ。

 

私は後続の山田さんが来るの待って、先行する上野さんとえーしが行ったことを告げ、先を急いだ。

 

水がついたホイールはブレーキが効きにくくなってきていた。いつもの力具合でブレーキがかからない。久々の状況に対応しながら、昔の雨のロングライドを思い出したりしていた。思えばこんなことを続けてもう20年になるのだ。

 

三本滝まで無事に戻る。

雨はほとんどあがっている。

 

私は先行した二人に声をかけると、すぐに温かい飲み物を買った。冷えた身体を温める必要があった。

 

後続の山田さんたちはずいぶん遅れて到着した。

その後にいた早川さんとタツマくんに何かあったのではと、位ヶ原で待っていたらしいが、後続の二人は写真を撮って盛り上がっていただけらしい。何とも早川さんらしい。

 

我々は体制を整えるとスタート地点まで戻って行った。

 

スタート地点の乗鞍観光センター駐車場は上とは対照的に穏やかなものだった。各々感想を語り合いながら、落ち着いて撤収を始める。

 

戻ると私はつい先程までいた場所を見上げた。

今回も感動と貴重な経験を得ることができた。

 

またこうして仲間と来よう。

素晴らしい景色の中を走るという、私にとって根本的な自転車に乗る理由を確かめるために。

 

そう思った。

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Dual slalom game in やまびこの丘

イベント自粛が続き、毎年恒例の大会がいくつも中止になっているが、少しずつ再開の動きもある。

 

先日、新城市の「やまびこの丘」でデュアルスラロームの大会が開催された。

 

新城市で地域おこし協力隊として活動するハッチさんと自身マウンテンバイカーで東海エリアの大会でMCをしているYKOくんが中心となって開催された。そして計測は新城を拠点に全国のレースで計測を行なっている「ワキタソフト」今回のレースはワキタソフトの支援の大会でもある。

ワキタソフトさんは長年、地元の自転車レースの計測を担っているほか、我らがカントリーモーニング四耐やダモンデトレイルでも計測を担っているところで、私も昔からよく知っている。イベント自粛の影響をもろに受け、ご苦労されているそうだ。

 

デュアルスラロームはマウンテンバイクでスラロームでのタイムを競うもので、私の苦手な分野の大会だったので、出場するかどうか迷ったが、久しぶりのイベントであるし、エントリーリストを見ると、知り合いがたくさん参加するということが分かったので、締切直前で参加を決めた。

 

会場は新城市ということで自宅から比較的近いので、お弁当を持って家族で出かけることにした。

 

うちはレースに出るのは私だけだが、子供たちも会場で遊べるように子供たちの自転車も車に積んできた。子供車とはいえ、私の自転車と合わせて車に4台積むのはなかなか大変だったが。

会場のやまびこの丘に着くと駐車場に何人かの友人がいた。お互いSNSで近況は承知しているが、こうして会うのは久しぶりだ。

 

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駐車場から子供たちを連れて大会会場のグラウンドに移動する。

 

グラウンドに出るとBUCYO COFFEEのテントとそしてそこで働くBUCYO COFFEの面々が目に入る。

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ああ、いつものイベント会場に戻って来たんだな。

 

BUCYO COFFEEのみんなに挨拶をして、受付をする。

コースの出口に車を横付けしているワキタソフトの脇田さんにも挨拶。脇田さんも久しぶりだ。

 

コースの脇に子供の練習用に小さなコースが作ってくれてあったので、子供たちとしばし、そこで練習。

その近くの日陰にレジャーシートを敷いて子供たちに飲みものを飲ませたりした。

 

子供たちは妻とすぐそばの川に遊びに行くという。

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今回のデュアルスラロームは、100m×30mのエリアにコースが設定された。コースは二人の選手が同時スタートするため、平行して二本のコースが並んでいる。それぞれのコースは短いポールが狭い区間で立てられ、選手はその狭い隙間を右へ左へと走り抜け、タイムを計測する。

また、右のコースを走った選手は次は左のコースを走り、その合計タイムで競われる。

レースは午前に予選、午後に決勝となっており、午前の予選は時間が許す限り何本でも走っていいことになっている。

 

予選の時間となり、選手がスタートに並び始める。

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久しぶりに会う仲間と予選のスタート待ちをしながら、お互いの近況やコースの攻略法などの話をする。

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「久しぶりですね。」何人の人にこう言っただろうか。

みんな口々にこうした機会があることの大切さを話していた。今回の大会は小さなものだが、こうした大会でないと会う機会のない人もいて、各地で定期的開催されるイベントの有り難みを今更ながら思い知らされる。

 

数本予選を試走のように走り、コツが掴めないまま途中で川から戻ってきた息子が一緒に遊びたいというので、まだ時間は残っていたが、あまり走れずに私は予選を終えた。

 

お昼はサンドして食べられるように妻が用意してくれたハムや野菜をパンに挟んで食べた。足りない分はBUCYO COFFEEで買い足す。昼に子供向けに講習会があり、食事を終えると子供たちは講習会に参加した。

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長女と次女は自分で講習を受けていたようだが、長男はなぜかコースを見て怯んでしまい、人がいないときを見計らって、私が横について走った。スラロームは基本的な技術がしっかりしていないとできないので、子供には早くから楽しみながらやってもらいたいと思っているのだが。

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午後の決勝が始まった。

 

みんな午前よりも更にタイムを縮めてきている。流石だなぁ、と感心する。

 

私と言えば、一応決勝には残ったものの対戦相手はどう見ても勝てる相手ではないので、まあとりあえず走ろうとスタートすると、前に出ていた相手の選手が転倒。

「えっ!」

私はやや困惑してゴール。

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勝負は分からないものだ。

とはいえその後は勝てる訳もなく、決勝二回戦で終わった。

 

決勝を勝ち進む選手たちの走りを見ながら、長男とBUCYO COFFEの冷たいうどんを食べ、ノンアルビールを飲む。イベント会場でこうしているのも久しぶりだ。

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表彰式のあと、お楽しみのジャンケン大会。

妻がBUCYO COFFFEのコーヒー豆を取った。子供達は自分で飲むわけでもないのにコーヒー豆をもらって大喜びだ。

 

 

猛暑の一日を外で過ごして家族は大変だっただろうが、それでも子供達は「楽しかったー!」と言ってくれた。またイベントに行こう。

 

今月20日には新城市役所の駐車場で「MOUNTAIN PORT JAMBOREE」が開催される。

https://note.com/mountainport/n/nb28315bf85e3第一回MOUNTAIN PORT JAMBOREE|MOUNTAIN PORT|note

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自転車やトレイルランの体験。そしてアウトドア用品のフリーマーケットがある。我が家も仲間と何か出す予定だ。少しずつ、イベントのある日常が戻りますように。

 

 

 

 

 

 

 

夏の田原

10月3日に初めて開催される「オフロードトライアスロン in 田原」。その運営ボランティアとして参加することになった。

 

オフロードトライアスロン田原市の白谷海浜公園をメイン会場にその周辺エリアを使ってレースが行われる。

普通のトライアスロンと違うのは、スイムの後のバイクとランは未舗装路を走るもので、バイクはマウンテンバイク、ランはトレイルランとなる。

 

大会のプロデューサーは地元出身のプロサイクリストの小笠原崇裕選手。そしてサイクリスト仲間のケンタが現場の責任者の一人として運営に参加している。今回、私はバイクパートのボランティアとして運営側で協力させてもらうことになった。

 

この日、早朝から私はケンタの案内で予定コースを回った。

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以前はライドといえば、渥美半島一周が定番で毎月のように走っていたが、ここのところほとんど来ていない。ライドに一日使うことがほとんどなくなったことや時間があれば、奥三河ばかりに行っているからだろう。

 

まずはバイクパートの後半エリアを徒歩でコースを歩く。普段は自転車で入ることができないところらしい。

真夏とあって朝の山は歩くと汗が滲むものの、爽やかだった。

コースに設定されているエリアは昔、来たことがあるはずだが、ほとんど覚えていなかった。

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ケンタがスタッフの配置や選手の動きを説明してくれる。私は選手の目線でコースがどう見えるのか、考えながら歩いた。

田原の山は標高こそ低いが、海抜ゼロから一気に上がるためか思ったよりも斜度のある道もあった。

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日当たりの具合なのか水の流れ具合なのか、進んでいくと急に植生が変わったりして歩いていても飽きなかった。

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バイクパートの後半エリアを一通り歩くと、一旦車に戻り、休憩。

 

水分を補給し、ケンタから塩タブレットをもらう。日中の気温を思えば比較的歩きやすかったが、それでもかなり汗をかいた。

 

コース上で選手がミスコースをしそうな場所やスタッフの配置で気になるところの対応を確認する。これまで地元の自転車レースなどのイベント運営のボランティアを20年近くやってきたおかけで、そういう見方がだいぶできるようになったと思う。私が指摘したところはケンタが対応を考えてくれるそうだ。

 

休憩の後、前半のバイクパートの下見に行く。こちらは自転車で入ることのできるエリアなので自転車で行く。ケンタが自分の自転車を貸してくれる。

TUNERのシクロクロスだ。

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私はシクロクロスバイクも最近流行りのグラベルロードも持っていないので、この手のバイクの乗るのは久しぶりだ。

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未舗装の道をバイクの感触を確かめながら、ペダルを踏む。なるほど、マウンテンバイクよりはるかに進む。下りもロードバイクより安心感がある。未舗装路もよほど荒れてなければ問題ない。確かにこういうバイクが一台あれば、未舗装路をガンガン走りたくなるだろう。なかなか面白い。少しグラベルの魅力が分かった気がする。積極的に買いはしないが、一台あってもいいな。

 

気がつけば昔ツーリングで立ち寄った場所に出た。

山から見る三河湾が眩しい。

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バイクに乗っての下見は順調に進んだが、下見も終わる頃、私は軽い頭痛を感じた。熱中症になりかけているようだった。

水分補給は気にしていたつもりだが、今年は特に暑い時間の活動をあまりしていないので体が適応していないのかもしれない。毎年熱中症になるくせに認識が甘かったようだ。オフロードトライアスロンの本番は10月だが、当日も気をつけないと。まさかスタッフが倒れるわけにはいかない。

 

下見の最後の最後でフロントホイールをぶつけてしまい、パンクさせてしまった。ケンタには申し訳ないことをした。

 

一通り下見を終え、メイン会場となる白谷海浜公園に戻った。

 

海水客向けに設置されている屋外シャワーを浴びる。照りつける太陽の下、水を浴びるのは何より気持ちがいい。

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ここに来るのも久しぶりだが、椰子の木と青い海、正しい夏の風景が広がり、いいところだなと素直に思った。

 

白谷海浜公園のそばに新しくカキ氷屋ができたというので、クールダウンに寄ることにする。

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様々なフルーツを使ったカキ氷がメニューに並び、どれを頼むかかなり迷ったが、田原らしくメロンのカキ氷を注文。

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火照った体が内側から冷やされていく。氷はふわふわに削られ、すぐに溶けてしまいそうだ。ケンタと無言でひたすらカキ氷を食べる。

クリームやメロンの乗ったカキ氷はデザートだなと思った。カキ氷は何となくデザートに分類されるというより、「カキ氷」というそれ自体がカテゴリーであると勝手に思っていたのだが。

ともあれ美味しいカキ氷であった。

 

順番が逆になってしまったが、カキ氷の後、昼食を食べに道の駅へ。

 

こちらでも田原らしいものをオーダー。生シラス丼である。生シラスなんて久しぶりだ。

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イベントの下見のはずが、ただの田原観光になってしまったが、まあいいだろう。

 

久しぶりに行って田原がいいところを満喫できた。オフロードトライアスロン当日はぜひ選手にも田原を満喫してもらいたい。

 

 

シャワーライド

雨続きで自転車に乗れない日々が続き悶々としていた。土曜日の朝、一週間降り続いた雨が一時的にだが、止んでいた。

このチャンスを逃すと次にライドできるのはいつになるか分からない。私は自転車と自分の体が濡れるのを覚悟で午前中、ライドに行くことにした。目的地は休日営業をしている我らが拠点、ヤングキャッスルだ。

 

自宅を出て、まず静岡県境の多米峠を上り、浜名湖方面に向かう。

まとわり付く空気がいつもより重く湿っている。視界は悪くないが、まるで霧の中を走っているようだった。

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浜名湖に出るといつもの青い水面ではなく、泥の色になっていた。浜名湖にも土砂が流れ込んでいるのだろう。このあたりは大雨被害はどうなのだろうか。

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浜名湖の北岸を掠めて、三ヶ日方面へ。

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静岡県側から新城市に入るのに宇利峠を上るか瓶割峠を上るか少し迷ったが、宇利峠を選んだ。

 

宇利峠はこの辺りの峠にしては斜度も距離もきつくない峠だ。

 

途中、東名高速の上を越える。そこまでで全体の1/3といったところか。道の至る所で山から水が流れ出ていた。濡れた路面では上りでもスリップすることがある。タイヤから伝わる路面の状態を確かめながらペダルを踏んだ。

 

県境の看板が見えてきて、もうすぐ頂上、というところで雨が降り始めてきた。レインジャケットを着るか少し迷うが、降られたら着ればいいと判断し、宇利峠を降っていく。

 

雨はだんだん強くなる。だが身体が冷えるという冷たい雨ではない。

 

「この程度なら」

 

私は雨に濡れるに任せ、そのまま新城市街へ向かった。

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雨はすぐに弱くなった。これならジャージもそれなりに乾きそうだ。

 

桜淵公園そばの庭野の交差点のところに通行止めの案内看板が出ていた。

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乗本付近で崖崩れがあり、県道69号が通行止めになっているとは聞いていたが、もう少し先かと思っていた。現場は市川口の少し先らしい。

現場は新城と北設を結ぶ道の途中であり、日々、奥三河で生活する人々からすれば大打撃だろう。私にとっても、週末ショップライドで走るホームコースの一部である。

早く復旧するといいが。

 

新城市街に入るところで豊川を越える。

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このあたりでは見たことのない水量だった。

 

橋の上から一枚写真を撮り、ヤングキャッスルへ。

 

バイクスタンドに自転車をかけ、ヘルメットを取ると、ダモンデ山田さんが出迎えてくれる。「雨なのに。」

山田さんは濡れた私の姿を見て、やや呆れ顔だった。私からすれば、この気温だし、長旅でもロングライドでもない雨なので、濡れても大したことない、と思っていたが、はたから見たら、濡れた状態でわざわざ来たなぁ、という感じだったのだろう。

 

キッチン担当のりょーこさんがタオルを貸してくれる。

 

店内にはダモンデメンバーの八木さん親子が来ていた。

 

他には客はいない。

「今日はサッパリだよ。」

 

話はやはり長雨のことになる。

九州ほどではないが、長雨の被害は奥三河にも出でている。

県道69号のほか、いくつかの道路が土砂崩れなどて通行止めになり、飯田線新城駅を含めた長山駅から駒ヶ根駅までという長い区間に渡って不通となっていた。

その後、不通区間水窪駅平岡駅となったが、南北が分断されたままで、復旧には3か月かかるという。

 

ちょうど少し前にりょーこさんの家族は飯田線を使って飯田まで旅行をしてきたところで、飯田線の旅行をもっとしたい、と友達と話していたところだという。

私もそろそろ飯田線を使った輪行ツーリングをしようか、と思っていたところだったのだが、まさかこんなに被害が出るとは。

 

昨年、湯谷温泉飯田線を活用した地域活性化についての講演会があった。その中で、廃線になった鉄道の話が出て「昨日まで電車が走っていた線路に電車が走らなくなり、踏切も線路にしないように線路上に柵が置かれる。そして、廃線の日になった瞬間、ウェブの地図から線路図が消えてしまうんです。」という衝撃的な話だった。

 

その時の話とSNSで流れてきた電車の来ない飯田線の光景がその時を思い出させた。

 

飯田線は今のところ復旧するが、将来、こうした災害がきっかけに廃線の話が出てきてしまうかもしれない。そうならないように、大切に思っている人がいろんな使い方をして、その様子を発信していかないといけないと思う。

 

復旧したら、また仲間と輪行ツーリングをしよう。以前秋に訪れた長野、静岡、愛知の三県の県境地域は紅葉が素晴らしかった。

行きたいのは水窪から先の秘境駅区間だが、また水窪周辺のライドもいいかもしれない。

 

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昼時になり、一組お客さんが来たあとはまた身内しかいない状態に。こんな日にわざわざ自転車で来た私はやはりおかしな男なのだな、と思った。

 

お腹が空いたので私は辛いカルボナーラ「カルボロン」のメガサイズを注文した。

りょーこさんが「なかなかのビジュアルだら?」と熱い鉄板の上で高く盛られたパスタを持って来てくれる。

 

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なるほどナイスな見た目だ。大盛りが限界のであると言われる鉄板の上に高く盛られたメガサイズのカルボロン。

胡椒多めの熱々のカルボロンにさらに胡椒をかけ、ハフハフいいながらパスタを平らげた。気軽にパスタが食べれるヤングキャッスルは週末のプチライドにはちょうどいい。

 

パスタといっしょに頼んだコーヒーを一口飲むと、濃い味が口に広がり、最近会っていないBUCYOさんを思い出した。最近イベントもないしな。

 

コーヒーを飲み終えると、レインジャケットを羽織り、ヤングキャッスルを後にした。

 

ヤングキャッスルに来て、山田さんやりょーこさん、それに必ずいる他の仲間と話すといろんな発見がある。今回も飯田線のこともここで話さなければ、そこまで発想が飛躍しなかったと思う。

 

また寄れるときに自然体でヤングキャッスルに寄ろう。

もっとも、次は雨ライドでないときに。

古刹 - ライド新城 -

 

その日は梅雨時期にあって、朝から天気は晴れだった。車で出かける予定があったが、午前中、新城市方面にライドに行くことにした。

 

紫陽花の季節なので、せっかくなら紫陽花を見に行こうと決めた。奥三河で紫陽花というと、設楽町の平山地区、新城市の四谷千枚田それから冨賀寺が知られている。

 

設楽の平山は集落の人が大事に育てた紫陽花が一面に咲く、非常に見応えのある場所だが、今回は時間の制約もあるので、そこまでは行けない。

 

行けたら四谷千枚田、ひとまずは新城市南部にある冨賀寺に向かうことにした。

 

走り慣れた朝の道を北東方向に走っていく。

街場をすぐに離れ、周囲の景色はすぐに田畑になる。つい先日も走ったところだが、田畑の作物は前よりずいぶん大きくなったように感じる。雨の恵みを受けて、ぐんぐん成長しているのだろう。

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郊外のあるカフェの外に出された黒板のメニューがふと、目に入った。

とたんに懐かしい記憶が蘇った。

 

まだ海外を自転車で旅をしていた頃、とにかく毎日お腹が空いていた。

早朝にキャンプを撤収して走り出し、カフェの前を通ると、道のほうに向かって出されていた黒板のメニューをよく眺めていた。

まだカフェに入るには早い、と。昼まで我慢しようと、思い直しそのまま通り過ぎだカフェがいくつあったことか。いつもカフェに入るのはお昼だった。

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旅をしているときのような朝の雰囲気を、朝のライドのどこかで感じていたのだろう、カフェの黒板を見て、そんなことを思い出した。

 

豊橋の郊外から新城市へ入る。

 

冨賀寺に行く前に近くにある車神社に寄ることにした。

 

車神社の社紋は,源氏車の車輪を形象化したものだそうで、交通安全祈願にふさわしい神社として、最近では地元サイクリストにも知られた存在になっている。

私は何十回と車神社の前を通っていたが、訪れるのは今回が初めてだ。車神社の前の道は信号のない開けた直線で、自転車で走っていると気持ちよくペダルが踏めてしまうので、ついつい通り過ぎてしまうのだ。

 

 

田んぼの真ん中にある車神社は山を背にして建っており、道から見ると田んぼの真ん中に浮かんでいるようで、非常に画になる場所だ。

 

いつもは通り過ぎる神社の前で止まり、鳥居をくぐり、車神社に足を踏み入れた。

 

神社の入り口にはバイクラックも設置されており、自転車の人がよく訪れることが伺えた。

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社殿の前には社紋である車輪が左右に置かれていた。

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ひと気のない朝の神社は清々しかった。

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朝の神社はどこか張り詰めた空気があるが、ここは周囲が田んぼで開けているからだろう、とても穏やかなたたずまいだ。

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本殿で安全祈願をし、車神社を後にする。

 

車神社からは、周囲の田んぼの道を走ってみる。途中から未舗装になるが、そのまま舗装路に戻りそうだ。最近、未舗装を走るのがサイクリストの間で流行っているが、脇道にそれて、どこに行くのかちょっと冒険気分になれるのがいいかもしれない。

 

しばらく走るといつもの道に戻った。

 

車神社から冨賀寺まではすぐの距離だ。

 

冨賀寺も実は来るのは初めてだ。

入り口の看板を見ると飛鳥時代からの由緒あるお寺だそうだ。そんな歴史のあるお寺とは知らなかった。

 

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お寺の敷地に足を踏み入れる。

森に囲まれた冨賀寺は先程の開けた車神社とは対照的に奥までいくと少し薄暗く、梅雨の季節のひんやりとした静謐な空気の中に存在していた。

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紫陽花の名所と聞いていたので、紫陽花の花が咲き乱れているような様子を想像していたが、参道に行儀良く咲いていた。

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そうか、ここはこれが正しいのだ。

 

森に囲まれた静かな歴史ある寺院に咲く紫陽花。

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華やかに咲くものばかりを想像していた自分が恥ずかしくなった。

 

本堂から参道の横道を行くと「観音の道」という歩道がある。余談だが、苔むして水分をたっぷりと含んだ道なので、ビンディングシューズのサイクリストは用心して欲しい。私は数回転びそうになった。

 

冨賀寺からはよくショップのライドで行く桧峠を越え、鳳来方面に向かう。

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桧峠は北側の舗装がきれいになっていた。舗装がイマイチなのは南側なのだが。

 

そこからさらに北に向かう。

 

寒狭峡大橋まで来ると下に鮎滝が見えた。前日の雨で水量が多い。

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鮎滝は江戸時代から続く伝統の『笠網漁』と呼ばれる滝を越えようと跳ぶ鮎を、竿の付いた網で捕らえるという珍しい漁法が行われている場所で、ちょうど網を持った人が二人ほど見えた。

 

橋の上で止まったついでに時間を確認する。

 

昼に妻とランチの約束をしているので、このまま四谷千枚田まで行くと時間に間に合わない。

 

私は予定を変更し、鳳来寺山の表参道に向かった。

 

この日はちょうど旧門谷小でカフェをやっているのだ。のんびりコーヒーを飲んでから、山を降りていけばちょうどいい時間のはずだ。

 

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さして時間もかからずに鳳来寺山の参道に着く。門谷小は相変わらず雰囲気がいい。

 

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月火水とこの場所でカフェ爾今の店主トラさんがコーヒーを出している。

何気なく頼んだコーヒーが美味しくてびっくりした。


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私は同じタイミングで来た女性と先客のおじさんとしばらく会話を楽しんだ。

 

コーヒーを飲んでいるとトラさん目当てにいろんなお客さんがやってくる。

どのお客さんも一癖二癖ありそうだ。

そんなお客さんにトラさんは「70年生きてきて今が一番楽しいよ!」と言い放っていた。

全くあやかりたいものである。

 

そのまま鳳来市街へ向かい、車で来た妻と合流した。

 

ランチは新城市の大海にあるイタリアン「St.Thomas」。

以前は豊川に店があり、妻とよく通ったのだが、そちらはしばらく前に閉めてしまい、最近また新城で店を再開したのだ。

この店について書くとブログが3回は書けるので詳しくは書かないが、とにかく好きな店だ。

 

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初めて行く方にはぜひ、ポルチーニかスカンピのクリームパスタを食べて欲しい。濃厚なソースが癖になること請け合いだ。

 

この日は限定でペスカトーレがメニューに出ていたのでそれを注文。

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たっぷりと魚介の入ったパスタが美味しくないわけがない。

お気に入りのお店で久しぶりに妻と二人でゆっくり食事ができた。

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会計の時、店主の中澤さんと話したが、コロナの影響でこちらも客足が遠のいているそうだ。また来るようにしよう。応援らしい応援はそれしか出来ない。

 

「ちょっと食べ過ぎたかな?」

そんなことをいいながら、帰りは妻と車で帰った。

 

 

 

豊川河口へ

日曜日、次女と長男が「風の自然学校」の「アウトドアキッズ」に行き、一日不在となったので、午後から長女とふたりでポタリングに行くことにした。

 

風の自然学校は武田芳男さんが代表の子供向けのフリーキャンプを行っているところで、私は子供が生まれる前はときどきボランティアで手伝いをしていた。

子供が生まれてからは、もっぱら子供を遊ばせてもらうほうになっている。

アウトドアキッズは年長児から小学校3年生までの子供が参加できるデイキャンプで、池でザリガニを捕まえたり、木の実を取ったり、自然の中で子供がしたいことをさせてくれる。

 

風の自然学校ホームページ

https://blog.canpan.info/kaze-nature/

 

下の子供達がいない状態で長女と親だけという機会も貴重なので、本人に何がしたいか聞いてみたが、「自転車に乗りたい」ということだった。

 

一番上の子供はなにかと我慢させることが多く、週末に自転車に乗る時も、下の子供達に合わせたペースで走っており、自分のペースで遠くまで走ることがほとんどない。

私にしても、長女がどのくらい走れるのか、よく分からないので、そのあたりを探りながら走ることにした。

 

どこに行こうか迷ったが、「海でも見に行く?」と聞くと「海まで行けるの?行く!」とやや興奮気味な返事が返ってきたので、豊川沿いに走って海に向かうことにした。

 

豊川沿いの道はしばしば子供達と走るのだが、いつもは左岸を行くことが多い。

今回は「牛川の渡し」から渡し船で左岸から右岸に渡り、右岸の道を行くことにした。

「牛川の渡し」は豊橋市道の扱いになっており、無料で対岸に渡してくれる。

 

長い竹竿一本でおじさんが上手く船を操り、対岸まで運んでくれた。

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うちの子供達は渡し船が好きでたまに乗りに来る。

 

堤防道路に出て、走り始める。

少し走ると土手の下の畑に色鮮やかなキジのつがいがいた。「見てごらん、キジだよ。」

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前を走る長女に呼びかける。「キレイだね。」と長女。キジたちを横目にそのまま走っていく。


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「日差しは暑いけど、風があって暑いのか涼しいのか分からない」と長女が言う。

私は今の季節が自転車乗るのに一番いい季節だと教えた。もっと風が強くて前に進まないようだったらどうしようかと実は心配していたのだが、向かい風も暑さを和らげてくれるぐらいの心地良い風で、その心配は無用だった。


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国道一号線を越えると川には多くの人がいた。河口に近いこの辺りは潮の影響をよく受ける。この時ちょうど潮が引いており、砂地が多くその姿を現していた。みんなシジミを取っているのだろう。

私も子供の頃、よく取ったものだ。
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鉄道の橋をくぐり、いくつか橋を通り過ぎる。

 

10キロほど走ったあたりで休憩。

「川の近くまで行く」と長女は堤防から川のそばまで降りていくと、「カニがいるよ。」と教えてくれた。

砂地に指先ほどの小さなカニがたくさんいた。

よく見るとその小さなハサミを揃って振っていた。

「おもしろいね。」

 

休憩後、さらに進み、国道23号を越える。

もう河口だ。

 

昔、「風の自然学校」のボランティアをしていた頃、数日かけて豊川源流から河口まで子供達と自転車で走るキャンプのスタッフをしたことがあるが、その時の目的地がここだ。

「懐かしいな。」

長女はちょうど参加者ぐらいの歳になった。長女もいろんなことができる歳なんだな、と改めて思った。もっと長女の可能性、本人の「やってみたい!」を伸ばしてあげたい。


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「この辺りで道はおしまいだよ。このままぐるっと回ると、そのまま豊川放水路に続いてるんだ。」

 

私はさらに河口にかかる豊川大橋や港の方を指差して、さらにケータイの地図アプリでどこを走ってきたかを説明した。

 

帰りは豊川の左岸を走っていく。

風は緩い追い風。

長女は軽快に川沿いの道を進んでいった。

 

まだ長女が幼稚園児だった頃、住んでいたあたりを通ったので、昔遊んでいた公園に立ち寄る。

 

私はちょっと久しぶりだなと、思ったぐらいだったが、滑り台が新しくなっていた。

 

アパートから引越した後、何度か子供達にせがまれて来ていたと思ったが、長女は数年ぶりだという。

長女がひどく懐かしがっていた。大人の数年と小学生の数年がどれだけ違うのかを改めて思った。

 

街中まで来たことでもあるし、長女はたくさん走ったので甘いものでも飲んで帰ることにした。

 

今年のはじめにオープンしたというコーヒースタンド「Heart to Heart」という店に寄る。何度か店の前を通っていてちょっと気になっていたところだ。


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韓国風のかき氷「ピンス」がオススメらしい。

長女はイチゴのシェイク、私はキャラメルナッツのピンスを注文した。

ココナッツファインのように細かくなったミルクの氷がカップ一杯に入っており、下にはキャラメルソース、上にはナッツとこれまたキャラメルソースと女子が好きそうなスイーツだ。


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なかなか口当たりがおもしろく、好きなフレーバーだったので、私はペロッと食べてしまった。この日の私の運動量では罪悪感の残る甘さだったが(もっとも、最近は何を食べても大丈夫になるほどハードなライドはしていない)、たまにはこういうのもいいだろう。

長女が嬉しそうにしていたのでそれでいいということにしておいた。

 

甘いドリンクを堪能すると、そのまま走り慣れた道で家に帰った。

この日は20キロほど走ることができて、長女は疲れた様子だったが満足そうだ。

長女はいつまで私のライドに付き合ってくれるのだろうか。もっと遠くへ。いろんな景色を見に行きたい。

集落からの眺め - ライド新城 -

緊急事態宣言が解除された最初の土曜日、それまで控えていた市外へのライドへ出かけた。まだグループライドはやめて、一人で走ることにした。

 

前にも少し書いたが、一人で旅に出るのは好きだが、普段走るのは仲間と一緒の方が好きである。

 

翌日の日曜日は天気が悪そうなので、午後からは子供達と遊ぶ約束をし、私はロードを車に積んで新城に向かった。

 

新城に向かう道はロードでも車でも走り慣れた道だ。田植えが終わったばかりの水田が眩しい。自走すればよかったかな、と少し後悔した。

 

新城市桜淵公園に車を置いて、そこからロードで走り出す。

久しぶりのロード、そして久しぶりのDamondeのチームジャージ。

最近は自粛もあり、マウンテンバイクで近くの山を走るばかりでロードはしばらくぶりだ。ペダルを踏み込むとすぐに加速していく感覚が心地よい。

 

私はまず、新城の市川地区に向かった。

 

市川地区は奥三河に行く際の主要道である県道69号を一本入ったところにあり、山の中に隠れるようにある集落だ。特に用がなければ来るような場所ではない。

 

私も数年前まで行ったことがなかったが、ここ何年かはフォトロゲのチェックポイントになったりして行く機会があった。

知らなければ通り過ぎてしまう分岐を曲がり、集落に向かう坂道を上がっていく。

 

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民家の見えてくるところまではそう遠くない。

 

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集落の入り口に神社がある。大きくも小さくもない、綺麗に保たれた神社。地域の人が掃除しているのだろうか。

三河にはこうした神社がたくさんある。
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神社からの眺めはいいが、集落はまだ上に上にと続く。私は集落の一番上を目指した。

民家の間の坂道を抜け、道のてっぺんに出る。


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市川の集落を見下ろせる場所で休憩する。

集落の向こうには長篠市街が見える。標高は200m程度だと思うが、眺めがいい。

上ってきた道をそのまま進むと集落と反対側の斜面に出る。道は続いているが、ここから先は未舗装路だ。

以前、別の集落を抜けて反対側から市川に来たことがあるので、今回は市川側から抜けてみることにした。

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市川から先の道はロードバイクで行くには少し荒れた道だったが、なんとかなるレベルだ。できるだけフラットなところを選んで走る。

 

薄暗い林道に差す日の光が美しい。

 

林道にはいくつか分かれ道があるので、ときおり地図アプリで現在地を確認しながら、アップダウンの続く林道を進む。

 

林道区間が終わり、また舗装路になった。

 

大平の集落だ。

ここは秋には多くの彼岸花が咲く。隠れた彼岸花の名所だ。

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(この写真は以前来た秋の様子)

 

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こちらも山あいの静かな集落といった佇まいで、優しい景色だ。遠くに農作業をしている人の姿が見える。

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そのまま大平の集落を抜け、県道69号に戻った。

まだ少し時間があるので、もう一つ、小さな山の上を目指すことにした。

大平のすぐ近くにある鳶ヶ巣山だ。

山頂までは短い上りだが、なかなかの斜度である。

途中、長篠市街を望む場所が気持ちいい。

ここは長篠の合戦の際に武田方の砦があったところで、山頂にその様子を伝える看板がある。

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山頂は木々に覆われていて展望は開けていないので、そのまま隣の万灯山に向かう。

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草に覆われた道を進んでいくと視界が開けた。

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しばらく景色を眺めると万灯山を降り、県道69号に戻った。

 

昼食を済ませて帰ろうと、お気に入りのお店「長生うどん」に行くとDaMONDE の仲間たちと偶然会うことができた。

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思わぬところで話が出来てよかった。

 

ずっと食べたかったカレーうどんを平らげると、仲間と別れ、家路についた。

 

ほんの数時間のライドだったが、あまり行かないところに行って、いい時間を過ごすことができてよかった。

三河は素晴らしい。