定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

自由であること 2006年8月2日

長い一日だった。

居心地の良かった「Go North Hostel」を離れ、Fairbanksを後にした。
北極海まで無事にたどいりついて帰ってくることができたら、
再び「Go North」に戻ってこようと決めた。

アラスカに来る数か月前までニュージーランドを旅していたが、
そのどの宿やキャンプ場に負けない魅力がある。

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アラスカ州のハイウェイマップ。パイプラインと共に北極海に延びるのがダルトンハイウエイ  



Fairbanksから北極海に行くためにはDalton Hwyしかないが、
そこに出るためには、Steese HwyとElliot Hwyを経由していく必要がある。

これら2本のハイウェイは大したことないだろうとたかをくくっていたが、
とんでもなかった。

Fairbanksを出るのにまず苦労した。
街の外れまでは順調に来るのだが、目指す最初の街(集落?)のFoxに出る道がわからない。
とにかくFoxに着いたのは予定よりだいぶ遅くなってからだった。


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Fairbanks郊外のパイプライン。このパイプラインの果てに北極海がある。


ハイウェイの路肩の広いところで休憩。
前日に「Fred Meyer」で購入した長いバゲットのサンドイッチを齧る。

今更気が付いたが、私が走るアラスカのハイウェイにはトンネルがない。

つまり、目の間に広がるアラスカの山々はどこかで必ず越えないと
その先にはたどり着けない。

やれやれ。

しかし、道は確実に存在する。
とにかく走る続けるしかない。

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午後1時頃、Foxから5.5マイルのところにあるHill Topのトラックステーションに着く。
ひっきりなしに客がやってきてにぎやかだった。
この日の出費はここでのコーヒー代1ドル25セントのみ。

道はずっと長い登りが中心で思った以上に距離が稼げなかった。
予定ではダルトンハイウェイ手前のLivengoodまで行けると考えていたが甘かった。
ダルトンハイウェイを前に追加した水と食料の重さがかなり響いて、
登りではセンター×ローのギアを踏んだ。膝に負担がかなりくる。

前哨戦のエリオットハイウェイでこの様では先が思いやられる。



今日はとにかく疲れた。


エリオットハイウェイ29マイルあたりに広い駐車場があった。
トレイルの入り口らしい。

ちょうどいい。
目標よりだいぶ手前ではあるが今日はここまでにしよう。

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トレイルヘッドの看板の写真。いつかこんな旅がしてみたいものだ。


疲れ果てた中、テントを張った。

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洗濯とかもうどうでもいいと思うとヒマでいいなと思った。


一、二時間眠った。


ふいに目が覚め、腹が減ったのでメシを食う。

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メシを作って食っていると何気なく思った。


「あぁ、おれは今自由なんだ。」と。


それまでの私は
「明日は○×まで行きたい。70マイルオーバーで長いから早く寝よう。明日も早起きだ。」
アラスカまでやってきて、時間や走る距離 ばかり気にしていた。

早く、まずはダルトンハイウェイにたどり着かなくては。
早くダルトンハイウェイを北に行かなくてはそんなことばかり考えていた。

未だ 見ぬ辺境のハイウェイに私はいくらか恐れを抱いていた。


だが、どうだ。


何も無いところにテントを張り、自分したいこと、単純な欲求を満たす。
眠り、食い、酒を飲む。
明日は目が覚めたら起きて、行けるところまで行けばいい。
今はただ、アラスカの沈まぬ太陽の日を浴びながら、酒を飲み、本を読む。

包み込むような柔らかい日と、太陽から吹く風が心地よく通り過ぎていく。



自然に流れる時間。



一台の車がやってきた。「ハイ」私は軽く手を上げた。

「極北に行くのか」とドライバーの老人が聞く。

「ああ、プルドーベイまで」私はさりげなく答えた。

このハイウェイ上でどれだけの自転車乗りが同じ会話を交わしたのだろうか。

聞き手はいつも羨望の眼差しで自転車乗りを見るが、
自転車乗りはまだ何かを成し遂げたわけではなく、ただ旅の途中でしかない。
そんなとき自転車乗りはどんな顔をしているのだろう。

車が去るとき、助手席の若い女性が
「よかったら持っていって」といくつか食料を差し出してくれた。

「すまないが、あまり荷物は持てないんだ。一つだけ頂くよ。有難う。」

なぜか好意を断ることに後ろめたさはなかった。
私は彼女から一つだけ食料を受け取った。

「Good luck!」

車は去っていった。

太陽から風は止むことなく吹き続けていた。

世界のあり方が何であれ、今はこの日を感謝しよう。
明日は明日を旅する。

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