定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

夕暮れのBridport 2008年12月21日

Rengerwoodで道を尋ねたら、別れ際に、"Have a merry Christmas!!"と言われた。
なるほど、あと数日でクリスマスだ。
こっちはクリスマス期間はお店とか営業するのだろうか?こういう基本的なことが分からない。
まあ、なるようにしかならない。


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朝はいつもよりゆっくり起きて、出発の支度をする。
キャンプ場のキーをスーパーに返却し、デポジットの20ドルを返してもらう。
スーパーには昨日会ったオランダ人サイクリストの夫妻がいた。

昨日はブランクスホルムの手前、Derbyまで行ったらしい。
本当にすごいな。今日はScottsdaleまで行くそうだ。

スーパーの男性にハイウェイを避けて、Rengerwoodという街へ迂回するルートを回った方が激しく坂が少ないからそちらへ行くといいと教えてもらう。

オランダ人夫妻にも教えてやったが、距離が伸びるからハイウェイを行くと言っていた。


走り出すと左の膝が痛む。
道は激しくアップダウンだ。

リンガーウッドに入る。街の入り口に巨大な木のモニュメントがあった。街を進むと至るところにそうした木のモニュメントがあった。



モニュメントの下に何かの碑があるものもあり、お墓かもしれないな、と思った。

リンガーウッドは街というより集落というぐらいのところだが、教えてもらった迂回路がわからず、家の前で芝刈り機で芝を刈っていたおばさんに道を聞いた。

おばさんは「えっ?何?」と芝刈り機を止め、つけていた防音のイヤーマフとサングラスを外して応対してくれた。


すまんすまん。


芝刈り機おばさんによれば、迂回路はずっとダートロードだから、どっちもどっちじゃない?ということだった。



結局、私は近くの道からハイウェイに戻った。
まあ、木のモニュメントも見ることが出来たし、いいとしよう。

ハイウェイを少し行くと、オランダ人夫妻の姿が見えた。
近道を教えておいて、結局遠回りをしてしまい、彼らを抜き去るときなんだか恥ずかしかった。



昨日のブランクスホルムまでの道ももなかなかの坂だったが、スコッツデールまでの道は更に上をいく劇坂アップダウンだ。

 東海岸のアップダウンも「おいおい」というレベルのアップダウンだったが、このあたりは周りが開けている分、よけいに激しく見える。



お年寄りが坂の上で転んだら、どこまでも転げ落ちてしまいそうなぐらいの劇坂だ。

スコッツデールの街。坂が凄過ぎて笑える




今日は天気がいいからアップダウンにはうんざりしながらも、気持ち良く走れるが、雨だったら最悪だな、と思った。



スコッツデールの街へ続くハイウェイは前に伸びているというより、上に伸びているように見えた。

 


苦労の末、スコッツデール到着。
街にはスーパーマーケットのウールワースがあった。
大手スーパーなので、いろいろ安い。ガムテープとツナ缶などを買う。

お腹がすいてきたので、見つけたカフェに入る。
Cafe on kingという店だ。

 



ステーキサンドとMaggcinoを注文。サンド8.5ドルは少々高い。




挟んであるのはチーズ、トマト、レタス、タナネギ、ケチャップ、ステーキか。
半熟の卵と甘いケチャップがうれしい。日本に帰ったら作りたいな。
食べにくかったが、味は良かった。ただ、イマイチ満腹ではない。

サンドを食べていると、奥の席に座っていたじいさんが私のところにやってきて話しかけてきた。

「今日はどこから?」「どこへ?」

私は「Bridportまでだ」と言うと、どこからか地図を持ってきてあれこれ説明してくれた。
全くいい人がいるものである。



スコッツデールからもあきれるしかないアップダウンが続いた。

 

 



とはいえ、午前中よりは順調に進んだ。




今日の目的地、ブリッドポートに近付いた頃、「Garden Cafe」の看板を見つけ、
誘惑に負けて立ち寄った。


このガーデンカフェ、「Flying Teapot」はその名の通り、庭がとても広く綺麗だった。

 
 

 

 
 
 

 


店の中に入ると、なんともかわいい感じだ。


愛想のいい年配の女性が「何にする?」と聞いてきた。
私は迷わずいつもの通り「カプチーノ」と答えた。お腹がすいていたので
「何か甘いものある?」と聞くと店の女性はショーケースのチーズケーキを指差した。

いいねぇ、チーズケーキ。ニュージーランドでは本当によく食べた。

チーズケーキは大変おいしかった。ペロッと平らげる。
 



店には常連だろうか、奥に年配の女性が座っており、いつものように「どこから来たの?」と聞かれたので話す。
「今日はブランクスホルムから走ってきたよ」というと、店の女性といっしょに驚いていた。
私は簡単にこれまでの旅の話をした。


カプチーノを飲みながら日記を書いていると
カフェの向こうの芝生にプロペラ機が着陸した。



おお、なるほどFlying teapot。

プロペラ機から降りたパイロットが飛行場側の入り口からそのままカフェに入ってきた。
なんだか『紅の豚』のワンシーンのようだ。

店の女性はパイロットと話をしていて忙しそうだったので
出発することにした。

会計を済まそうとすると「お構いできないでごめんなさい。4ドルね。」と言われた。
これではチーズケーキの代金は入っていない。
チーズケーキの代金もちゃんと払うと言ったのだが、聞いてもらえなかった。
私は「ありがとう。ケーキとっても美味しかったよ。」と伝え、カフェを後にした。

旅先での善意はほんとうにうれしい。



ブリッドポート到着。ブリッドポートはタスマニア北海岸の街だ。

海沿いの街はどうしてこんなにも眩しいのだろう。

街の入り口でオシャレな建物が出迎えてくれた。街に着くと単純にうれしくなる。今日はここまで。今日も日が高いうちにテントを張ってゆっくり出来そうだ。



街の入り口のリカーストアでビールを買い、キャンプ場へ向かう。

キャンプ場は一泊20ドルと高めの値段だが、海岸のすぐ隣にあり、ランドリーやシャワーなどが充実していた。きっと家族連れなどがたくさん使うのだろう。

テントを張っていると、例のオランダ人夫婦に会った。

旦那さんは相変わらずちょっと偏屈な感じだが、奥さんは優しく話しかけてくれた。

ふたりはテントの横に座って、ワインとチーズとパンを分け合うようにして食べていた。

シンプルな食事。

ああやってずっと旅をしているのだろうか。
いや、そうやって人生をふたりで歩んできたんだろう。
「年を重ねる」ということを垣間見た気がした。


オランダ人夫妻の自転車とテント



自分のテントを張って、海岸に向かった。


キャンプ場を抜け、岩場を越えると海岸線が見えた。


 

 



なんて綺麗なとこなんだろう。


遠くにカヌーが見えた。



この海で遊ぶのは楽しいに違いない。
なるほど、この街にしばらく滞在するのも魅力的だな。
私は海に降りて、しばらく波間を漂った。



キャンプ場に戻り、いつものようにビールを飲みながら夕食を済ませた。


日が傾いてきた。


私はカメラを持って浜辺に戻った。


浜辺に至る道はすでに暗くなっていたが、浜辺に出ると空はまだうっすら明るかった。



岩場に腰を下ろし、私はただ海を眺めた。



浜辺には私しかいなかった。


空が淡いピンク色に染まり、波を浴びた砂浜はその色を優しく映した。




また素晴らしい景色に出会えた。
私はこの景色を決して忘れないだろう。

旅は続く。