朝、腕時計のアラームで目を覚ました。いつも寝過ごすのを防止するためにアラームをかけるようにしている。一日走って、ビールを飲んで寝るとテントが明るくなっても目を覚まさないことがあるのだ。
よく寝たな。
昨夜は10時過ぎには眠ってしまったのではないだろうか。
タスマニアの車のナンバープレート 絶滅したとされるタスマニアデビルが描かれている |
いつも通り朝の支度をする。
キャンプ場は昨日より人が多いように感じた。タスマニアのキャンプ場はオフィスが五時には閉まってしまうのだが、その後で来る人も多いようだ。
いつもより少し準備に時間がかかった。
昨日のオランダ人サイクリストの夫婦はまだ起きたところのようだ。今日はここに滞在するのかもしれない。
ブリッドポートから走り出す。
道は概ね平坦。空には少し雲が多いが、風は弱い追い風。なかなかいいペースだ。
ハイウェイの周囲にはブドウ畑が広がる。このあたりはワイナリーが多く、ハイウェイにはブドウのマークの標識に”WINE ROUTE”と書いてある。
どこかで土産にワインを買いたいなと走っていると、"DELMERE"というおしゃれな看板のワイナリーがハイウェイ沿いにあったので立ち寄る。
ワイナリーのカウンターには綺麗な女性がひとり。もちろんカウンターの上にはワインが並んでいた。
「試飲してみる?どれがいい?」
私が図々しく「全部試したいな。」と言うと、
「いいわ!」と言って、順番に説明しながら出してくれた。
私が日本から来たというと、昔福岡にいたことがある、と言っていた。
前にもNZでそんなことを言っていた女性がいたっけな。
私は甘めのロゼのスパークリングワインを土産用に一本購入した。
荷物が随分重たくなるが、この前のアンティークショップの土産や、最初にホバートで買ったジャムもあることだし、そろそろ一度荷物を日本に送ればいいだろう。
Pipers riverの街でジェネラルストアに立ち寄るが、店員の感じが悪かった。
腹が減ってきたが、食事ができそうな店もないので、
昨日スーパーで買ったビスケットをかじってしのぐ。
次のGeorge Townは大きい街なようなので、そこまで我慢しよう。
NZを旅したときに一時行動を共にしたマレーシア人サイクリストが
ある峠の上でビスケットを分けてくれたことを思い出した。
彼はいつか北海道に行きたいと言っていた。元気だろうか。
道は相変わらずのアップダウン。ほんとにタスマニアはすごいな。
日本のアップダウンは比較的小さいのが続く感じが多いが、
こちらは一つ一つのアップダウンが長い上、その斜度がケタ違いだ。
アップダウンのあとはフラットになる。
意外とよく走ることができた。
ジョージタウンに入る。
ジョージタウンはタスマニア北部の都市Launcestonからバス海峡へ向かって広がる
Tamar Valleyという大きな谷の東海岸に位置する街だ。
タスマニアは北部に街が多い。
南部は州都ホバートがあるものの、
西側は道さえないところもある手つかずの自然が残るエリアだ。
そのあたりは旅の後半に行くことになる。
インフォメーションセンターで道を確認。
空腹なので、その足でカフェに入る。
カフェはそこそこ客が入っていて、なかなかオーダーを取りに来てくれなかった。
ようやくオーダーを取りに来た女性にカウンターの裏の黒板の一番上に書かれていた「Chicken Schnit Zel Berger」とchipsのsmall、それからMoccaccinoを注文した。
バーガーはサクサクチキンのフィレをメインに、パイン、パプリカ、トマト、レタスが入っていた。ちょっと変わり種な感じがしたが、なかなか美味しかった。
食事を済ませ、モカッチーノを飲みながら日記を書く。
ここのラジオの選局はいい。
ジャニス・ジョプリンの「Me and Bobby Mcgee」が聴こえてきた。
さあ、土産を送りにポストオフィスに行こう。
ポストオフィスで荷物を梱包する。
今日買ったワインに、セントヘレンズのアンティークショップで購入したコーヒーカップ、
ホバートのサマランカマーケットで手に入れたジャムとラベンダー柄の豆皿などを
段ボールに詰めた。
船便で100ドル。
私の帰国より後に届くだろう。
帰国後、届いた荷物をほどくと
残念ながら、豆皿とコーヒーカップの2枚あるソーサーの1枚が割れていた。
日本に送ったコーヒーカップ。このソーサーの下にもう一枚ソーサーがついていた。 |
ポストオフィスを出て、出発しようとすると
自転車に乗った少年が勢いよく近づいてきて「この自転車乗ってるの?」と聞いてきた。
「そうだよ。キャンプしながら旅をしているんだ」私が答えると満足したのか、
少年は来た時の勢いでそのままどこかに行ってしまった。
ときどきこういうことがあるんだよな。
なんだか、野良犬みたいで笑えた。
今日の宿泊予定であるLow Headは小さな街のようなので念のため、ビールを買った。
タスマニア産のカスケードペールエール。
この旅で飲んだ中ではうまいビールだ。
ビールを買う頃、雨が降り出してきて
雨の中、走るのはまだしもテントを張るのは気が重いなと思いながら
ローヘッドに向かう。
幸い、雨はしばらくして弱くなってきた。
ローヘッドまでは割と近かった。
本日のキャンプ場は「Low Head Beachfront Holiday Village」。
一泊23ドルと高いが、その名の通り、道を挟んですぐ先が海で
タスマニアのキャンプ場にしては設備が整っていて快適だ。
ニュージーランドの「Top10 Holiday park」がこんな感じだった。
テントを張り、キャンプ場のレセプションに戻り、
近くでやっているペンギンツアーの予約をお願いしにくと
キャンプ場の女性は「予約?要らないわよ。時間になったら、そのまま現地に行けばいいわ。場所は分かる?」と教えてくれた。
ニュージーランドでは宿やキャンプ場のオフィスが
各種アクティビティのあっせんをしてくれるのだが、タスマニアは少し事情が違うようだ。
あたりが暗くなる頃、再びライトハウスを目指す。
眩しい夕日があたりを照らす。
なんて美しいのだろう。
夕日に輝く草の上をタスマニア特有の強風が流れていく。
北から吹くこの風はオーストラリア本土から来るのだろうか。
ペンギンツアーのことを忘れて、しばらく草原のなかに立ち尽くした。
ペンギンツアーは道沿いの小さな小屋で、周囲が暗くなる頃、入り口が開いた。
16ドルを支払い受付をしてもらう。
「日本人?」と訊かれ、「ああ」と答えると、日本語の解説文をくれた。
もっともツアー中は暗くて読めなかったが。
ツアーの客は20人くらいだっただろうか。
ガイドがこのあたりに生息するフェアリーペンギンについて説明をしてくれた。
このあたりはフェアリーペンギンのコロニーで、産卵地になっているらしい。
それ以上は英語が聞き取れなかった。
ガイドに連れられ、波打ち際に行くと、
体長30センチほどしかないフェアリーペンギンが次々と浜に上がって、
ブッシュに入っていく。
すごい数だ。
こうやってペンギンが自然な状態で守られているのはとてもいいと思う。
ツアーのお金やツアーの小屋で売っていた土産はペンギンのための環境保全に使われるそうだ。
あれで16ドル。安いよな。
ただ、英語がイマイチ理解できなくて、そこだけ消化不良な感じだ。
キャンプ場に戻り、自分の英語力のなさを嘆きながら、ビールを飲んで眠りに落ちた。