朝、チェンはバスでロトルアに行くため、ギズボンで別れた。
再び、ダニエルとルティア、私の3人になった。私たちはギズボンから約220キロ離れたNapierまで共に行くことを決めていた。
[この日も暑く眩しい日だった]
朝、テント撤収すると、テントのポールが継ぎ目のところで繊維が裂けるようにパキパキと破断した。私は絶句した。旅の中で最も重要な道具といっても過言では無いテントのポール。これがないとテントが自立しない。それほど重要なテントポールが割れてしまったのだ。
このギスボンにアウトドア用品の店などあるのだろうか。
私がおろおろしていると、ダニエルが何事かと近寄ってきた。私は事情を話した。ダニエルは少し考えた後、ポールのリペアパイプを持っていないか私に聞いてきた。
テントは製品によっては、ポールが折れた場合に、応急処置できるようリペアパイプが付属している場合があるが、私のテントには付いていなかった。いろいろな状況を想定してきたはずだったが、ここでテントポールが破断するなんて思ってもみなかった。それだけ甘かったということだ。
ダニエルが何かないかと言われ、タープ用ポールがあるのを思い出し取りだした。長さはテントに使うには短いうえ、太さも少し太い。それを見てダニエルが、「シマ、これ切ってもいいか?」と彼はビクトリノックスのナイフを取り出すと、ノコギリ部分でポールを切り始めた。切り出したポールを少し地面のコンクリートで削って表面を整えると、テントポールの上にかぶせ、グルグルとダクトテープを巻いた。
「これで大丈夫だ、シマ」とダニエルは自身に満ちた笑みを浮かべた。
少し前まで私は何ともならないと思っていたトラブルを解決してくれたダニエル。
旅人としての経験値の違いを実感した。そして、彼が一緒にいてくれたことを心から感謝した。
トラブルも解決し、三人で走り出す。
健脚のダニエルは峠で先にいってしまうこともあったが、遅れるルティアや私のペースに合わせたりもしてくてた。
三人のともお互いのペースに慣れてきて、とても一体感があった。
私は膝の痛みが日に日に辛くなっていたが、ネイピアまでは何とか三人で行きたかった。ネイピアから先は、3人ともそれぞれの目的地に向かうことになっており、そこまではがんばりたかった。
この日の目的地Wairoaに到着。
キャンプ場にチェックインし、おのおの、自分の寝床づくり。
ダニエルに補強してもらったポールは問題なし。驚くことだが、結局そのまま数年間使用した。
テントを張っていると、ダニエルがどこで仕入れたのかビールを持って戻ってきた。
「シマ、今日はビール12本だぞ!」ダニエルは高々とダースのビールを掲げた。
「またそんなに飲むの?」ルティアは呆れ顔だ。
そんな呆れ顔のルティアにも1本ビールを渡し、みんなで乾杯。
ビールを飲みながら、テント設営。そうこうして1本目のビールが空くころ、ダニエルが2本目をよこした。ダニエルはよく分かっている。
[キャンプ場にあった車。開けると・・・]
[バーベキューコンロ!!!]
誰が言い出したか、今日はみんなでステーキを食べに行こうということになり、キャンプ場で紹介してもらった店へ。
三人でステーキを注文し、やっぱり乾杯。
ルティアはパンを使って上品に皿をきれいにして食べていた。
ステーキはなるほど美味しかったが、「おや」っというほど小さく、私もダニエルもペロッと食べてしまった。
[店の入り口のタイル。ブレブレ]
ステーキを食べ、店を後にし、キャンプ場に戻ろうとすると、通りのチャイニーズのtake away(持ち帰り)の店が開いていた。
「なあ、ダニエル、まだフライドライスくらい食べられそうなんだが、いっしょにどうだ?」思った以上にステーキが足りなかったのでダニエルに聞くと、やはり彼もまだ、満腹とは程遠いらしい。
「いいね。コーラも飲みたい」とダニエル。それを聞いたルティアは「あなたたち本気なの?もう。」とまたまた完全に呆れ顔だ。
ルティアは「先に帰るわね」と先にキャンプ場に戻っていった。
[夜の街で出会った犬]
NZ滞在中、米が食べたいときはよくチャイニーズのtake awayをよく使った。持ち帰りのパックのサイズで値段が決まっていて、チャーハン(フライドライス)や春巻、ギョーザなどの惣菜がつめ放題になっている。余談だが、NZのチャイニーズに行くまで春巻の英語がまんま”Spring Roll”というのを知らなかった。
店内にはテーブルがあったので、そこでダニエルとコーラで乾杯し、二度目の晩御飯を二人で満喫した。
空腹を満たしたダニエルと私は、幸せな気持ちでキャンプ場に戻り、再びビールを開けた。
「Prost !」