定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

トランツアルパイン鉄道 - cycling NewZealand-

アニータとルティアに見送られて、アニータの家を後にした。

 

前に北島で別れた時に言っていたが、しんみりしたのは嫌い、という通り、ルティアとの別れはあっさりしたものだった。

 

ルティアには「あなたは黒い服が多いから、もっと目立つようにしないと車に轢かれるわよ。」と忠告された。その後は彼女のアドバイスに従って、蛍光ベストを使うようになった。

 

レイとは朝お別れが出来なかった。また来月戻ってきたら、そのときにきちんとお礼を言おうと思った。

 

また元のひとり旅だ。

 

一人自転車に乗り、クライストチャーチの街を駅に向かってゆっくり走る。

 

途中、公園を抜ける。クライストチャーチの公園は広くて本当に気持ちがいい。日本の公園は大きな公園でもどこか窮屈さを感じるところがあるが、ニュージーランドの公園は余計な人工物が少なく、作為的な匂いがしないからだろうか、公園が自然の延長といった印象だ。

 

クライストチャーチの駅は街の中心から少し離れていて、駅自体もそんなに大きい造りではなかった。クライストチャーチは駅を中心に街が発展したという訳ではないのかもしれない。とどうでもいいことを考えた。

 

トランツアルパインは一日一便、東海岸クライストチャーチから途中、アーサーズパスを越え、西海岸のグレイマウスまで走っている。私が当時買ったチケットで7500円程度だった。

駅には余裕を持って着いたがすでに多くの人で賑わっていた。

チェックインを済ませ、自転車を荷物ごと預ける。

ホームに待機していた車両に多くの乗客が電車に乗り込んでいく。夫婦や家族連れがほとんどのようであまりひとりの乗客はいないようだ。

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客車の中はグリーンの椅子が印象的な綺麗な特急列車といった感じだった。

 

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発車まで車内を歩いてまわる。食堂車があったが、走り出してしばらくしてからオープンするようだ。

 

定刻通り列車はクライストチャーチを出発する。

 

先週自走で越えてきた道を鉄道は戻っていく。私はまさにトランツアルパインと並走していたのだ。

 

当時の日記には景色を見て感動したような記載はない。どちらかといえばこうしたちゃんとした観光列車よりも、日本のローカル線のほうが楽しいと書いていた。一度走った景色で初めて見る感動、とかそういうものはあまりなかったのかもしれない。

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途中のスプリングフィールドの駅では、キャンプ場の場所を教えてくれた女性を見かけた。スプリングフィールドの駅は街のインフォメーションセンターにもなっているだ。女性は髪をポニーテールにして上品な感じの人だったのでよく覚えていた。短い停車時間にマフィンなどを乗客に売ると、手を振って電車を見送っていた。あの人はああやって電車を見送って、それ以外の時間はインフォメーションでクライストチャーチとアーサーズパスを移動する旅人に案内をしているのだろう。そんな暮らしが少し羨ましかった。

 

食堂車が開く時間になったので、食堂車に向かう。私は軽食とビールを買って席に戻った。

 

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列車には、デッキ車両があった。窓がなく、屋根が付いているだけの車両だ。ローカルな話で全く伝わらない例えだが、昔、飯田線トロッコ列車があったが、あれの椅子がない感じだ。

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デッキ車両は賑わっていた。みんなカメラを片手に持っている。

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サザンアルプスを越えていく列車が起こす風をまともに受ける。これはなかなか楽しかった。

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グレイマウス駅に列車が到着。

ホームで貨物車両の方へ移動し、自転車を受け取り、そのまま駅を後にする。

しばらく振りのグレイマウスだ。

明日からに備えて駅の近くにあるスーパー「fresh choice」で食料の買い出し。

ニュージーランドに来てから好きになったアイリッシュビールのキルケニーが安くなっていたので、迷わず購入。

 

グレイマウスでは、前に来たときに利用したTop10という全国展開しているキャンプ場をまた利用した。

Top10のキャンプ場は清潔で、リビングも広く、当時でもインターネットが使えるところが多かった。この日もメールを何通か確認し、返事を書いた。

 

夕食を済ませて、海岸に向かう。グレイマウスのキャンプ場は海のすぐそばで、キャンプ場でから海岸に降りる小道があった。

 

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前に来たときの夕日がとても美しく、感動したのだが、今回もそれを期待して海に出てきたのだ。

ニュージーランドの西海岸は雨が多いと聞いていたが、今回もいい天気で、また空を真っ赤に焼く素晴らしい夕日を見ることができた。気分が良くなって日本に手紙を書いた。

そして私以外にも夕日を求めてか、何人も人がいた。家の近くにこんなところがあったら素敵だろうな。

 

キャンプ場に戻ると日記を書くため、リビングに行くと誰もいなかった。今日 は静かだな、と思っていたが、しばらくして白人のカップルがやってきて部屋の端に座り、何やら話始める。

何を話しているかは分からないが、それがフランス語というのはなんとなく分かった。

私が日記を書き進めていると、カップルのほうから、チュッチュと後が聞こえてくる。

 

おいおい。

 

イチャつくのはいいが、他でやってくれよ。キャンプ場、広いんだぜ?

 

この日の日記は度々「うるせー、フランス人!よそでやれ!」といった記述で内容が中断している。

 

その後のタスマニアでもキャンプ場のリビングで日記を書いていたらカップルの痴話喧嘩が始まったことがあるが、この時ほどのインパクトはなかった。

 

二人の邪魔をしないよう、気を遣ってテントに戻った。何でこっちが気を遣わないといけなかったのか釈然としなかったが。