定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

2019 DAMONDE TRAIL Autumn - スタッフレポート -

今回のブログは一旦旅の話から離れ、週末開催されたイベントのお話。やや関係者向けの内容ですのであらかじめご了承いただきたい。

 

新城市県民の森で春と秋に開催されているトレイルランニングレース「ダモンデトレイル」。今年6年目を迎えるこの大会は今回11回目。県民の森に作られた特設の周回コースを3時間チームもしくはソロで走り、その周回数を競う大会だ。コースレイアウトは最高の上りを除いてほぼ上りで、初心者でも参加出来る珍しいトレラン大会として知られ、エントリーが始まるとすぐに定員になってしまう人気の大会だ。いろんな出店ブースやでることや大会の雰囲気がいいので「フェスのようなトレラン大会」とも「森に魔法がかかる時間」とも言われている。

 

 

私は今回、家族と前日入りしており、先日、ペダルマークに出た長女もスタッフとしてお手伝いをさせてもらうことになっていた。長女と共に朝6時に集合した。

 

愛知県民の森の建物の前に緑のTシャツを着たスタッフが集まってくる。ほとんど人を知っているが、今回初めてという人もいる。みんな朝からなんだか楽しそうだ。まあ自分が一番楽しみなのだが。

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ある程度のスタッフには運営を取り仕切る一般社団法人ダモンデ代表である有城(山田)さんから事前にマニュアルが配られている。私の担当はコース内の川の右岸エリアの見回りだ。私はここ何年かスタッフをしているが、だいたいこの担当だ。私はいつものように無線を受け取った。

一通りスタッフが集まったところで大会の会長である田村さんからあいさつと、山田さんからのアナウンス。

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山田さんのスタッフへの注意事項はシンプルだ。

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「自分がやられて嫌なことは選手の人にしないでください。選手が何かを聞いて『知りません』って言ったりしないで、『ちょっと確認しますね』とか言ってできる対応してください。困ったらチームリーダーに言ってください。」

 

 

ダモンデのボランティアは運営側の体制が非常にしっかりしていると思う。これはひとえにダモンデ代表の山田さんの采配による。スタッフをしている人で元々トレイルランニングの経験がある人はほとんどいない。そのため、誰でもできるようにスタッフの配置、知り合いの有無などが配慮されている。スタッフの人数が多く、スタッフにかかる負担が少ないことから、スタッフも選手と共に楽しい時間が共有できるようになっている。

 

朝のミーティングが終わり、レース会場に向かう。

 

スタートゴール会場では、飲食や体験など様々なブースが出ている。BUCYO COFFEEブースで朝食のサンドとコーヒーを受け取り、そのまま会場内を見てまわる。BUCYO COFFEEのメンバーが朝から慌ただしく働いているのを見るとこちらもやる気が出る。

 

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焼き菓子を売っているchachaさんのブースを覗く。お店の準備が出来たところでアップルパイを買いに行く。妻からアップルパイ確保して欲しいと言われていたのだ。

chachaさんに「今日は旦那さんと奥のエリア担当なんですよ」と言うと、「聞いてます。旦那が島田さんと一緒だって言ってました。」と答えてくれる。旦那さんがいてくれれば安心だ。

 

みんなが朝食を食べた頃を見計らい、コーススタッフミーティング。

 

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ミーティング後、右岸の担当スタッフとコース内を歩く。今回、ベテランばかりで非常にこころ強い。

 

コース内は前日の雨で予想していたよりも水が出ている。

いつもなら枯れている沢もコースを横切るように水が流れている(no.17)。幅は1m少しといったところ。

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迂回させることができないので、選手にはそのまま渡ってもらうことにする。

ここに立って注意喚起をするご夫妻に加え、よく一緒に自転車で走り、気心の知れたタツマくんにもスタート時にはいてもらうことにした。

 

我々が担当するエリアは車でアクセスができないので、歩けない負傷者が出た場合は担架で運ぶことになる。担架の設置場所から、もしものときはコース内のどこからどこに出すか、導線を確認する。また、選手の意識がない場合などの対応もどうするか全員で共有しておく。

 

奥のエリアの木でできた階段は水をよく吸って滑りやすくなっていた(no.13)。ここは消防士さんと格闘家でマウンテンバイカーのエースくんがいるので、大丈夫だろう。

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本部に戻りながら、コースを再度確認する。途中、上から落ちてきたのだろう、3,4メートルはどの大きな枝がコース脇の木に引っかかっている。おそらく事前にはみ出した部分だけノコギリで落としたようだが、微妙に気になる。「エースくん、これどう?」エースくんに声をかけると、すぐさま枝の二股に分かれたところを掴み、一気に割ってしまった。さすがである。割った枝はコース脇に動かした。些細なことだが、気になるところは処理をしておく。

 

沢を渡るポイントに戻る。

沢から林道に上がるがここで迷う選手が毎年いる。配置に着くとき、コーステープを張ることにした。

 

本部に戻り、コース内の状況を山田さんに報告する。コース内のスタッフは次のミーティングまで時間がある。受付担当のスタッフは忙しいが、コース内担当はこの時間は比較的自由な時間だ。

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この時間、選手たちが続々と会場にやってくる。選手たちはタープを張ったり、ブースを見て回ったり、写真を撮ったりと思い思いに過ごして、スタートまでの時間を待つのだ。

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私はそんな様子を眺めているこの時間が好きだったりする。

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スタート40分前ぐらいからコース内にスタッフが散っていく。

 

私は移動用にマウンテンバイクを持ち込んでいるのでそんなに慌てなくていい。本部エリアでハンモックなどをやっているキッコリーズブースにいた長女に声をかける。入賞者のメダル作りに忙しいらしい。こちらも友人が面倒を見ていてくれるようだ。友人によろしく頼んでおく。長女には「お父さんいくからね。」と伝えると「うん。わかった。」と返事が返ってくる。ダモンデファミリーにも馴染んできたし、大丈夫だろう。

 

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妻と「今日の次女」、長男は泊まっているバンガローを撤収して上がってくるので10時くらいにならないと来ない。

 

私もコース内に向かう。

 

沢のポイントにコーステープを追加する。

 

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タツマくんが階段のところに応援用のシャウティングチキンを3羽縛りつけている。

 

なかなかファンキーなビジュアルだ。

 

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レース中、選手にたくさん押されたせいか、一羽首から上が谷に落ちてしまい、回収に苦労したので次からは設置場所を考えないといけない。

 

午前10時、レースが始まった。無線でMC#masakazu_hayakawaさんの声が聞こえる。しばらくして左岸側を見ると、もう先頭は来ている。

 

私は木の階段のところで一周目の様子見守った。

 

最初の周回は階段で渋滞。しかし、これは最初の一周回目だけ。知り合いのガチャピンは渋滞していてゆっくり歩けるのが嬉しい様子だったが。

 

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注意箇所の様子を見て、少しずつ移動する。

 

選手に注意喚起をしながら、応援をする。毎回見かける選手、コスプレしている選手、真剣に走っている選手とそれぞれだが、どの選手もダモンデトレイルのこの時間を楽しんで貰えているようだ。

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1時間ほどして、担当以外のコースを回り、スタッフに気がついたことや今の様子を聞く。コースの一部だけ見ていると気がつかないことや、トラブルの気配がする情報があったりするので、ときどきそうしている。そのまま一旦本部に戻る。

 

スタート付近の親しいスタッフに状況を聞きながら、本部に寄り、再びコース内へ。

 

ティッシュありませんか」女性の選手に声をかけられる。転倒して手をついたのか、手のひらから血が出ている。いつもなら自分でファーストエイドを持っているのだが、今回は忘れてきてしまった。私はそのまま行ってもらって、コース内の救護のゾーンに行ってくださいと伝える。

選手を見送り、無線を手に取るが、ちょうど別の場所で捻挫した選手がいたらしく、しばらく無線で話せそうにない。私の応対した人のほうが程度が軽いし、仮に私の連絡なくても救護スタッフに声かけてもらえれば問題ないだろうと判断した。

しばらくして無線が一旦途切れたところで、私は無線で救護のいるポイント(no.5)に連絡を入れた。

それからすぐ、選手が来て応対をしてくれたと救護から連絡が入った。

 

しかし、これがもっと大変な状況だったら、どうする?無線が使われている中で、奥で大変な状況が起こったら?奥はケータイは圏外である。無線に割り込むことも必要だろうし、だれかスタッフに走ってもらうとか、そういう対応も考えないと、と思った。私が移動で使うマウンテンバイクをシングル出口に置いておくのは必要かもしれない。そういう状況も想定しておかないとな、と肝に命じた。

 

レースの中盤、沢の手前の下りでミスコースしそうになった選手がいたという(no.16)。こんなところで?と思うポイントだが、足元が滑りやすく、選手の目線は近くなり、あまり遠くが見えてないようだ。ここも念のため、コーステープを追加する。

 

その手前、木の階段がだいぶ削れてきていた。奥のポイント以外に雨で木が水分を含み、選手が踏んでいくことで、少しずつ木が削られ、やがて割れてしまいそうになる。一番痛んできているところはほとんどの選手が踏む階段だ。レース中は持つ、と判断し、問題の木にはコーステープを巻き付ける。

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注意喚起をタツマくんに頼んだ。

 

こうなると奥のポイントが気になる。

やってくる選手が途切れるのを待ってコースを逆走し、奥のポイントに戻る。こちらも階段の木が削れてきている。

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エースくんたちに状況を聞く。下りのほうが勢いをつけて選手が降りてくるため、破損が進んでいる。注意を呼びかけてもときどき階段で滑る選手がいるようだ。疲れているとよくあることだ。私も同じような経験がある。

 

選手の切間を見計らい、こちらもコーステープを端に巻いて選手の目を引くようにした。

 

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残り30分となり、山田さんから無線でコース内のスタッフに再度、注意喚起の連絡が入る。残り時間が短くなるとペースがあがり、選手も焦るからだ。

 

レース終了後の段取りをエースくんたちと確認し、奥の階段付近から、手前の階段の方へ移動する。

 

 

そしてあっと言う間に3時間が終了。

 

レースは3時間過ぎたあと、選手がゴールするまで終わらない。つまり2時間59分59秒でゴールまで戻った選手はもう一周回できる。

 

3時間を過ぎて最高の周回をする選手たちに「お疲れ様!ゴールまで頑張って!」と声をかける。ほとんどの選手が疲れた様子だが、どこか晴れ晴れとした表情の人が多い。選手の中には「ありがとうございました!」と言ってくれる人やハイタッチをしてくれる人がいて、スタッフ冥利に尽きる。

 

 

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最後の選手の後ろに後走のスタッフが着く。後走のスタッフが通過した時点で、コース内のスタッフは自分の周囲の設置物を回収し、本部に戻る。それでコース内スタッフの仕事は終わりだ。

 

私の前を最後の選手と後走のスタッフが通過していく。

 

コーステープやカラーコーン、看板などを撤去し、車のあるところまで手分けして運ぶ。

 

今回も軽傷はあったが、大きな怪我はなくてよかった。快晴の空の下、大会ができたことを感謝した。

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本部に戻ると受付スタッフが慌ただしく働いている。これから表彰式とリザルトの受け渡しであちらはバタバタである。あとはお願いします、というところだ。

 

ほったらかしにしておいた家族を探す。長女はすぐに見つかった。キッコリーズブースのあとはエイドの手伝いをしていたらしい。あとからエイドのスタッフの方々に「たくさんお手伝いしてくれて助かりました。」とお礼を言ってもらえた。真面目な性格の長女のことなので頑張っていたのだろう。そうやって誰かに仕事振りを認めて貰えて、私も嬉しかった。

 

コース内スタッフとお昼ごはんを食べ、ブースを見てまわったりして過ごす。

 

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やがて表彰式が始まる。

 

表彰式ではダモンデスタッフの子供たちがプレゼンターを務める。いつ見ても微笑ましい。長女も手伝っていた。

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最後にみんなのお待ちかねジャンケン大会があり、奥三河の特産品や協賛メーカーのアイテムなど豪華賞品を獲得しようと、大人も子供も選手もスタッフもブース出している出店者も本気である。

 

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ジャンケン大会が終わると山田さんのあいさつ。

 

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いつも控えめな態度と関係者への感謝、次のダモンデでもしまた会えたら、という言葉。

山田さんが話が終わり、MC#masakazu_hayakawaが最後を締める。

 

会場から湧いた拍手がやがて鳴り止み、選手たちが去っていくと、森にかかった魔法はゆっくりと解けていく。

 

私も家族と帰り支度をして、みんなに挨拶しながら、森を降りていく。子供たちは口々に「楽しかったね。」と話してくれる。

 

また私たちは春、再びここに戻ってくるだろう。

この素晴らしい時間をみんなで共有するために。

 

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