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アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

ホウジ峠へ - 飯田線輪行ライド -

今年の奥三河の紅葉は遅い、という。

 

週末一日使って奥三河へライドに行こうか考えていたが、紅葉を楽しもうと思うと奥三河もかなり北に上がる必要がある。どうしようか迷っていたところ、「紅葉サイクリングに行きませんか。」と自転車仲間のケンタから誘いがきた。ケンタは根っからの自転車好きでロードもマウンテンバイク、シクロクロスにも乗り、また奥三河南信州にも詳しく、ツーリングも好きなので、時間が合えばときどき一緒にライドに行くのだ。

 

ケンタと相談した結果、今回はJR飯田線豊橋から静岡県浜松市天竜区中部天竜駅まで移動し、佐久間、水窪周辺に行くことにした。

 

タイミングのいいことに、ちょうどその日はJRのさわやかウォーキングの日で、8時発で豊橋駅から飯田方面に特別列車の快速が出ることになっていた。

この電車を使わない場合は始発かその次の7時台の電車に乗ることになる。飯田線には基本的に快速は走っていないので、遠くまでいく場合は特急を使うか普通電車でのんびり行くしかない。まあ、のんびり行くのはそれはそれで贅沢なのだが。

 

こんな機会は滅多にないので、我々は豊橋からの臨時列車を使うことにした。

 

ケンタと集合し、豊橋駅で自転車を輪行袋に入れホームに向かう。

臨時列車が豊橋駅の2番ホームで待っていた。東海道線の快速列車と同じ車両だが、3両編成だ。

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自転車を持ち込むため、臨時列車がどのくらい混むのかが気になっていたが、あまり告知がされていないのか、3両編成でもさほど混んではいなかった。さわやかウォーキングに参加する人たちだろうか、一人で乗っている年配の男性が多かった。

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我々はベンチシートに座った。

飯田線の話をあれこれしていると、向かいのシートに座った男性が話しかけてきた。様子からすると鉄ちゃんのようだった。

 

豊橋駅から中部天竜駅までは 29駅あるが、臨時快速が停車するのは、豊川、新城、本長篠とほんとうにわずかだ。湯谷温泉に停車しないので、中部天竜までだと実は特急のワイドビューより停車駅が少ない。ちょっと反則な快速である。

少し前まで通勤で飯田線を使っていたので、快速のスピードに驚いた。とはいえ、途中の駅で何度か行き違いのために停車したりして、そのあたりは飯田線であった。

もう少しで本長篠駅というところで電車が急停車した。また鹿とでも接触したか、と思っていたら、向かいの男性が窓の外を指差しているので見に行く。

散歩なのか、数人の老人が線路脇に何事もないように座っていた。やがて車内にアナウンスが流れる「線路内に人が立ち入ったため緊急停止しました。」数分止まっただけで、すぐに走り出した。

 

「さすが飯田線。このくらいのトラブルは日常茶飯事だな。」私がそう言うとケンタが笑った。

 

中部天竜駅到着。

 

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我々以外に輪行していた二人のサイクリストが降りた。どこに行くのだろう。

 

中部天竜駅飯田線にしては珍しい有人の駅だ。切符を駅員さんに渡すとき、「どちらに行きます?」と聞かれる。「水窪方面です。また戻ってきますよ。」私は答えた。「ならいいんです。南の原田橋は渡れないもので。」駅員さんが言った。

 

原田橋のことは承知している。数年前に崩落事故があり、仮設橋はあるものの、自転車は通してくれない。駅員さんがわざわざ声をかけてきたということは知らずにここまで電車でやってくるサイクリストがいるのだろう。

 

駅前の色褪せた大きな観光地図の前で自転車を組み立てる。ケンタも慣れたものだ。

 

今回は、中部天竜から水窪を越え、大嵐駅まで行くという野心的なプランも立てたが、早く戻る予定ができたので、中部天竜水窪を往復するプランに変更した。

 

二人ともロードバイクだが、ガツガツしないペースで走って、景色のいいところや気になるところでは止まって、いろいろ見る、ということにした。

 

中部天竜駅を出発。

まずは中部天竜駅からとなりの佐久間駅まで移動。ケンタが鉄橋の狭いところを進んでいく。

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よく知っているな、ほんと。鉄橋の先の小道が国道まで続いているか疑問だったが、行ってみることにした。ダメなら戻ればいい。今回のライドはそんな感じだ。

案の定、道は途中で民家とぶつかった。まあこんなもんだろう。

佐久間から我々は二本杉峠に向かってのんびり上り始めた。

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実はこの道は20年近く前、走ったことがある。学生のころ、自転車部の合宿が水窪集合でこの道を通って水窪まで行ったのだ。なぜ川沿いの国道を行かずわざわざ峠越えのルートを選んだのか謎だが。

 

だが、今走ってみても全く記憶にない。キツかったという印象以外は。

確かにアプローチからなかなかの斜度だ。ケンタと話しながら上っていく。

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どうやらこの道は昔から街道として使われていたようだ。いろんなところに言い伝えなどを書いた看板があった。

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滝や淵に降りていく道があったが、上がってきた道を考えるとわざわざ降りて戻ってくるのが億劫で看板を見るだけだった。

 

ケンタが自転車を止める。

なるほどいい景色だ。

 

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「ドライブしていい景色のところ行っても、自転車で来たらよかったのになってよく思う。」とケンタ。全く同感だ。感動が全然違う。大抵、我々がいう「景色のいいところ」は高いところが多い。つまり、苦労の先の風景なのだ。だから毎回、文句を言いながら山を上っていく。

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更に峠をめざして上っていくと、中央構造線の断層谷に出る。

 

佐久間の町が眼下に広がる。

数キロ上ってこの景色なら悪くない。


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振り返ると赤く色付いた木が見えた。このあたりの紅葉も遅いようだ。

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断層谷から二本杉峠まではあまりかからなかった。

二本杉峠のいわれが書いてある看板はあったが、二本杉はない。どういうことなのだろう。

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二本杉峠の先は割と平坦基調で、続くホウジ峠まであっさり着いた。

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峠に来て思い出した。あの遠くの景色を望む崖のところで、昔写真を撮ってもらったのだ。あのときは豊橋から水窪まで自走だったからとにかくこのホウジ峠がキツかった、ということも思い出した。

ケンタにその話をすると、「じゃあ今回も写真を撮ろう」ということになり、一枚撮ってもらう。

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ホウジ峠には移築した古民家が民俗文化資料になっており、中では地元のおばさんたちが蕎麦を出していた。

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昼には少し早いので、蕎麦は見送る。

 

資料館の中を少し見せてもらう。昔の道具や雛人形などがいろいろ展示されていたが、解説が何も書いていないので、ふーんという感じだった。ちょっともったいないな。

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資料館を出るとき、家族に土産を買う。

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甘く煮た大豆を小麦とお米とまぜて団子にした「とじくり」と餡子の入ったまんじゅう「いろりっこ」を買う。いろりっこは生地が蕎麦、ヨモギ、きびとあったが、蕎麦ときびを購入。うちの家族にはなかなか好評だった。

 

「自転車で来たの?山上がってくるの大変だったでしょ?どっちから来たの?」と店のおばちゃんに聞かれる。佐久間から、と答えると「それは大変だわ。水窪からのほうが坂が緩いのよ。」と教えてくれた。

 

資料館を出て水窪に向かう。

ケンタと私はウィンドブレーカーを羽織るとそのまま峠を降りて行った。

 

「ケンタ、昼ご飯のあてはあるのか?」私が尋ねると「よさげなところがありそうだよ。」と言う。

ローカルな食堂に行けるといいな、と勝手に期待しながら、峠の下り坂に身を委ねた。