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アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

水窪から無人駅を巡る - 飯田線輪行ライド -

下りの風が冷たい。全く急に寒くなったものだ。

ホウジ峠を降りていくと城西地区の国道152号にぶつかる。そのまま国道で北に上がっていく。水窪までは数キロだった。

水窪橋の交差点で止まり、ケンタが昼ご飯の店を調べてくれた。水窪橋の横に立派なもみじとイチョウがあり、目を引いた。

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「ここにしよう」ケンタは「磯平」という店を選んだ。

水窪の商店街をゆっくり抜ける。

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昔、このあたりの宿で泊まったはずだか、当時は夕方に着いて暗かったから覚えていないだけなのか全く記憶に残っていない。静かな商店街だった。

 

少し迷ったが、磯平に到着。

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入り口に掲げられたメニューを見て驚く。

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コーヒー200円はまあいいが、定食やラーメンが300円とはどういうことなのだろう?

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ともかくお腹も空いたことだし、入ってみる。

店内は10数席の席数で、2組ほど先客がいた。お店はご夫婦でやられているようだ。外の看板に「還暦食堂」とあるので趣味でやっているのかもしれない。

我々は麻婆定食300円を注文した。店内にはウグイの泳いでいる水槽が隅に置かれていた。ウグイなんて久しぶりに見た。

またテーブルにはやや古そうな水窪の観光の本があった。巨木や城跡などが中心に紹介されていてなかなか玄人好みの本だった。

店の奥さんが麻婆定食を運んでくる。量は少なめだがちゃんとした定食だった。

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二人ともペロッと平らげると、店の奥さんに300円払い、店を出た。本当に300円でよかったのか、つい思ってしまう。

 

磯平の後、水窪橋まで戻り、橋のとなりにある「みさくぼ路の里」に立ち寄る。

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何か土産になるものをと思って覗いてみたのだが、外に並べられた野菜を見ていると、店のおばちゃんに突然、「寒いでしょ?温かい素麺の試食あるから食べていきなよ!」と言われ、そのまま店の奥のテーブルに通された。間髪入れず、紙コップに入った素麺と箸が出される。

素麺を出すと、店のおばちゃんはそのまま、店の入り口のほうに戻っていった。

あっという間の展開で、出された素麺をケンタと食べながら笑ってしまった。

素麺には戻した椎茸が入っており、椎茸出汁の素麺だった。

店のおばちゃんに素麺のお礼をいい、ゆっくり店内を見渡す。地域の特産品がいろいろ並んでいる。私は手作りのこんにゃくと安かった柚子を購入。土産でデイバッグがやや膨らんできた。

 

土産を買った後は、高根城跡に向かう。駐車場までの登り坂はなかなかの斜度だ。マウンテンバイクのクロスカントリーの選手であるケンタはサクサク上っていく。流石。

 

道の突き当たりから城跡に向かう階段にとりつくが、城跡まで20分と看板にある。往復40分で上で景色見ていたりすると小一時間というところだろう。電車の時間が気になる。夜は用事があるので、予定の飯田線を外すわけにはいかないのだ。

「やめるか。」少し階段を上ったところで我々は引き返した。

 

ここから国道152号で中部天竜に戻る。しかし、ただ戻るだけでは芸がないので、飯田線の駅を順番に回りながら帰ることにした。飯田線に乗って飯田線の駅巡りをしようとすると電車の本数が少ないので、一度駅に降りようものなら1時間以上次の電車を待つ、ということになりかねない。

しかし、自転車なら沿線沿いに走ると次から次に駅に行くことができる。実は数年前にも愛知県と長野県の県境でそんなことをしたことがあった。

 

まずは向市場駅

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駅の前は水窪中学校だ。こういうことは車窓から見ているだけでは分からないこともある。

 

次は城西へ。ちょうど昼前にホウジ峠から降りてきた場所だ。

 

しかし、先を行くケンタが途中で道を逸れた。

橋の上で止まる。

「ここ知ってる?」ケンタが言う。

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何かで見た覚えがある、しかし、なんだったか。

ケンタが教えてくれる。元々橋を渡して、その先にトンネルを掘ろうとして断念したらしく、橋はまた川を渡るという珍しいところで、飯田線好きの人には有名な場所だ。そういえば私もその手の本で読んだな。

 

その橋、第六水窪川橋梁を後にし、城西駅

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このあたりの飯田線の時刻表はビックリするほどスカスカだ。それでも電車が走っているので、我々としては大変ありがたいことだ。
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城西からはトンネルを一つ超えて相月駅へ。

相月駅は道路から少し高いところにあった。いつも車窓からは斜面に張り付いた民家が僅かに見えるだけでどうなっているかと思ったが、そういう訳か。

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相月駅は立派な待合室がある。

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無人駅にしては待合室が立派なのは、駅舎がないからだろうか。

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しばらくすると下り列車がやってきた。

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下り列車を見送ると我々も相月駅を後にした。

相月駅からしばらく行くと国道152号は飯田線から離れる。次の駅はもう佐久間だ。佐久間を目指して水窪川沿いに南下していく。川沿いの道は走りやすい。国道とはいえ交通量は多くない。気持ちよさそうに走っていくケンタの後ろを追った。

 

水窪川が天竜川と合流するところで、国道473号に入る。天竜川を渡ったところの分岐で、先で祭りをやっているようで、道路の入り口で交通整理をしているおじさんがいた。

 

飯田線駅巡りはサッと回れたので時間にゆとりがある。ケンタと相談して、祭りを見に行くことにした。

 

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祭りは国道から少し上がった集落の中心部で行われていた。地元の農協や団体がテントを出して地元野菜や蕎麦などを売っている。

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ステージでは地元の有名人なのか法被を着た爺さんが「今を去ること40年前!秋になると○△商店にサンマが出できて、そのサンマのしょっぱいことと言ったら」などとの昔の集落のことをなかなかいい調子で語っていた。

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また奥のテントでは聞いたことのない女性演歌歌手がCDを売っている。CDが売れないのか、となりの地元議員っぽいオッサンにワンカップをお酌していた。

 

サイクルウェアを着ていた我々は完全に浮いていた。

 

地元の人のための地元の祭りだな。

そう思った。

 

我々は何か買うでもなく、この圧倒的なローカル感を堪能すると、そのまま祭り会場を横切り、集落を後にした。

 

再び佐久間に戻ってきた。まだ時間は余裕だ。

ケンタが大学亭という店に行きたいというので、行ってみることにする。

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大学亭は鯛焼きや焼きそばなどを売る店で、一見、店の中で食事が出来そうな佇まいだが、入り口は普通に民家の玄関らしい。民家の窓がそのまま売店というなかなか斬新な店だ。

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ケンタが鯛焼きとたこ焼きを買う。佐久間駅まで移動して食べることにした。

 

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日陰は寒いので日なたに出てたこ焼きを食べる。私はホウジ峠で買った「とじくり」を出す。素朴な甘さのお菓子だ。甘く煮られた大豆が入っていておいしい。ある意味エナジーボールだな。

大学亭のたこ焼きはおいしかった。今回は食べ物はなかなか当たりではないだろうか。

 

まだ時間が微妙にあったので、佐久間駅に併設された図書館に寄る。

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郷土の本で、巡った場所のことを調べる。

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午前中上った二本杉峠の二本杉は明治時代に切られてしまったらしい。たいそう立派な杉だったそうだが、地元の郷士が切って東京に売ろうとしたらしい。しかし、二本杉を運んでいた船は沈んでしまったそうだ。いかにも、という話である。また二本杉峠に行くことがあれば、在りし日の二本杉を想像してみよう、と思った。

 

そろそろいい時間だ。我々はスタート地点の中部天竜に戻った。

 

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サッと自転車を輪行バッグに納める。

 

ホームで電車を待つ。ほどなく電車がホームに入ってくる。乗客は我々と男性が一人だけだ。中部天竜発の電車なので、車掌さんもホームにいる。

 

豊橋駅で降りた後のことを考えて前の車両に行こうとしたが、車掌さんが「トイレの前が広いですから、そこに自転車置くといいですよ。」というので、それに従うことにした。

 

車内は貸し切り状態だ。

 

飯田線輪行ライドのいいところは、その移動時間も楽しめるということだ。

 

ケンタと私は順番に現れる駅についてあれこれ言いながら、車窓の景色を飽きずに眺めた。

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自転車に乗った時間はわずか4時間程度だったが、非常に内容の充実したライドだった。

 

やはり、飯田線輪行ライドは最高だ。

次の飯田線輪行ライドはどこの駅から始めようか。そんなことを考えているうちに私は眠りに落ちた。