「いいね、ブランコに乗ってるおっさん二人、とても画になるよ」
私は無邪気にブランコに乗る友人たちを茶化しながら、青空の向こうにそびえる明神山を見つめた。眼下には東栄町の集落が見える。
東栄町は自転車でも家族の小旅行でもしばしば訪れるが、こんな素敵な風景があるなんて知らなかった。
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今、奥三河の東栄町はサイクリングを観光に活用しようと動き出している。
以前から地元の有志が町内を巡るサイクリングイベントを企画するなどしていたが、今回、役場と観光協会が中心になって、自転車の観光ガイドツアーの実施に向けて試験的にモニターツアーを行った。
私は二度、テストライドに参加した。
一度目は長女と二人で。
二度目はダモンデの仲間とである。
自転車のガイドツアーといっても、本格的に自転車をやっている人向けではなく、電動アシスト自転車で東栄町内を巡り、魅力的な場所を紹介しようというものだ。そのため、一度に走る距離も20キロ程度、速度もせいぜい時速15キロというところで、普段運動していない大人でも参加できる。
ただ、比較的平坦なルートが引かれているとはいえ、そこは急峻な山に囲まれた東栄町。アシストなしのマウンテンバイクに乗った小学生の長女にはキツかったようだ。
テストツアーでは、自然、文化、インフラなど様々な名所を巡った。いずれもガイドの方が解説してくれる。だいたい知っているかなと思っていたが、ほとんど初めて聞く話で非常に興味深いものばかりであった。
東栄町といえば花祭りだが、それ以外にも幅広い分野で魅力的なスポットが数多くあり、改めて東栄町の懐の深さを感じた。
各所の案内も良かったが、走るルートもとても良かった。
集落の中を抜けて国道の下をくぐる。
あ、ここ!
普段、ロードバイクで国道をハイスピードで駆け抜けるときに横目に見ていた田畑の間の道。
今まで何気なく通り過ぎていた道。
その道のなんと気持ちのいいことか。少しだけペダルを踏んで風を感じる。
素晴らしい時間だ。
私からすれば普段はあまり走らないゆっくりとした速度。このスピードでしか見えない、感じられない風景がそこにはあった。
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一度目に参加したテストライドの後、長女に帰りの車でどこかよかったか聞くと、煮渕のポットホールが凄かったと言い、また、あるお地蔵さんの前で拾った木の枝がいい香りがした、とも話していた。
観光スポットじゃなくてもいい。ツアーの中で心動かされたことに出会えたことが、大事な思い出になるのだから。
次のツアーがいつ開催されるかまだ分からないが、機会が訪れたらぜひ参加してみて欲しい。参加すれば、その人にとっての東栄町のとっておきと出会えるだろう。