ダモンデのチームメイトのタツマくんから金曜日に誘いがあって新城発着でライドに行くことになった。週末の天気予報が晴れになり、連絡してくれたのだ。こうして誘ってくれるのは大変ありがたい。若い時は自分から積極的に声をかけていたが、最近はあまりそういうことをしなくなってしまった。
暑くなってきたこともあり、七時に新城市街を出発した。
事前に特にルートを考えると言うわけでもなく、まあ久しぶりだからと、旧田口線から、四谷千枚田を抜け、東栄町を走り新城へと戻る、ダモンデバイクチームでは定番のルートをチョイスした。
朝の新城は薄く霧が出ていた。日が上るにつれ、霧が霧が晴れてきた。このまま行けば昼にはかなり暑くなりそうだ。
昨今の状況もあり、タツマくんと走るのも久しぶりだ。
タツマくんとお互いの近況やタツマくんの次の自転車のこと、開催中のツールドフランスなど、思い付きでいろいろ話した。
仲間とサドルトークも久しぶりだ。やはりこうして仲間と走るのがいい。
サドルトークをしながらもいいペースで四谷千枚田の入り口まで来た。
いつの間にまた日が雲に隠れてしまったせいか、湿度が高く感じられる。
下から千枚田を見下ろすポイントで休憩。
ガードレールにカエルが張り付いていた。冷たくて気持ちいいのかもしれない。
2人で話しながら順調に登っていく。
「一人で登ると、長く感じるんですよね。」とタツマくん。確かにそうだ。仏坂峠はなかなかのものである。
設楽町に抜ける峠のトンネルは全体的に濡れていた。入り口の横に滝もあるせいか、いつも濡れている印象だが。
リアタイヤから巻き上げられた水が背中に当たって冷たい。
トンネルを抜けると設楽町側は霧に包まれていた。
「今日は穴滝、水があるんじゃないですか?寄りましょう。」タツマくんが提案してくれた。
穴滝は仏坂峠の下りの途中にある滝で、滝の下に空洞があり、独特の雰囲気がある滝である。個人的にはかなりオススメの滝なのだが、ほとんど知られていない滝である。
自転車で行くと下りの一番スピードが出るところにあるので、意識していないと通過してしまうことが多い。
「ゆっくり下りますか」
この時、ゆっくり下る、と決めなければ、その後のトラブルはもっと大変なことになっていたかも知れない。
仏坂峠の下りはここ数日の大雨のせいか、枝の破片や小石がたくさん落ちていた。
しばらく下るとホイールに石が当たったのか、なかなか大きな音がした。気をつけないとな、と思って程なく、後ろから
「パン‼︎」と派手な音がした。
「パンクー!」
タツマくんが止まった。
路肩の広いところまで自転車を移動させ、タツマくんは自転車からパンクしたフロントホイールを外すとチューブを交換し始めた。
タツマくんと一緒に走るようになって随分経つが、彼がパンクするのは珍しい。
私は軽く茶化しながら、ときおり作業を手伝った。
やけにいい音を出してパンクしたが、手で全体をさらってみても、特に傷らしい傷はなく、何かが刺さったままということもなかった。
予備のチューブをタイヤに噛ませないように丁寧に入れる。空気を入れてしばらくすると「パン!」という音を立てて、入れたチューブがパンクしてしまった。
「??」
キチンと作業をしたはずだが、なぜ?
タツマくんと私は顔を見合わせた。
入れたチューブは小さく破裂したようになっており、我々は益々訳が分からなくなった。どうしたらこんな風になるのだろうか。
「あ!」
タツマくんが声をあげた。
タイヤのサイドに見事な裂け目が出来ていたのだ。
チューブを入れ直す前にタイヤは二人で確認したので、その時から切れていたということはない。最初のパンクの時にほとんどタイヤが切れていた、ということだろうか。
切れたタイヤをどうするか。
私は工具セットの中にタイヤが切れた時に使うタイヤブートが入っているはず、とサドルバッグを見たが、入っていない。
幸いタツマくんのパンク修理キットの中にタイヤブートが入っていて事なきを得た。
峠の上で、ゆっくり下ると決めていなかったら、パンクした上に、スピードが出過ぎて派手に怪我をしたかもしれない。今回はこの程度で済んで本当によかったと思った。
その後の予定のルートはキャンセルし、最短でスタートに戻るルートを取り、来た道を戻ることにした。
下りはさらに慎重に下ってきた。
新城市の玖老勢まで戻ると
「シマダさん、ソフトクリーム食べましょう」とタツマくん。
最近オープンしたカフェ「アンディの家」のソフトクリームが美味しいらしい。
「ご迷惑かけたんで、奢りますよ。」
お言葉に甘えて、ハチミツレモンソフトをご馳走になる。
こちらのお店は川沿いのデッキがあって、川風が吹くととても気持ちいい。
ソフトクリームはヨーグルトのような爽やかさがあって、しっかりしたハチミツの味とよくあっていた。こうして気軽に立ち寄って食べるポイントが奥三河には少ないと嘆いていたが、確実に増えてきて嬉しい限りだ。
アンディの家を後にすると、無事にスタート地点に戻った。
バイクを撤収し、我らが拠点、ヤングキャッスルでランチタイム。
パンクの顛末をダモンデ山田さんに話すとタイヤはやはり国産IRCだ、という話になった。確かにIRCにしてから、金属片をモロに踏むという以外にはほぼパンクトラブルはない。
食事をしながらタツマくんと今回のトラブルについて話し合った。
パンクから復帰まで30分程度だったが、その間通った車はスバル車のグループの他は自家用車とバイクが一台ずつだけ。
奥三河は車が少なく走り易いが、その分、何かがあった場合は他の人に助けを求めることができない、ということになる。
今回はタツマくんがたまたまタイヤブートを持っていて助かったが、私は恥ずかしながら予備チューブとパッチ程度しか持っていなかった(チェーントラブル用の予備のコマとチェーンピンは持っていたが…)。
日常的に走る場所でも、場所とトラブル内容によっては致命的になる。ただ装備さえあれば、トラブルに対処できる。
どこまで備えるか、それは人次第だと思うが、サイクリストの皆様には、今一度、ご自身の携行品を見直していただきたい。