昼食後は巨人のモニュメントを目指す。1つ目はマンジュラの中心街からそんなに離れていない。
大きな橋を1つ超えるが、自転車と歩行者用の道が大きくついており、非常に渡りやすかった。こういうところはさすがだなと思う。

橋からの景色が抜群にいい。綺麗な街だ。私の下調べが足りないのもあるが、マンジュラがこんなに美しくて魅力的な街だとは思いもしなかった。
1つ目の巨人のモニュメントはGoogleマップの示した駐車場からしばらく遊歩道を行った先にあった。
たくさんの人が歩いていたので、私も自転車を押して歩いていたが、後から来た人は自転車で追い抜いていった。あ、自転車乗っていいのか。
私も自転車に乗ることにした。その様子を見た前を歩いていた人が、どうして自転車に乗らなかったのかと私に聞いた。いやみんな乗ってなかったから私も歩いたほうがいいかなと思って、と伝えると納得したように笑っていた。
木で作られた巨人のモニュメントは、丘の上にあり、海を向いてあぐらをかいて座り大きく手を開いていた。なかなか雰囲気のあるモニュメントだ。

風が強く吹きつける。ここからの景色も素晴らしい。

写真を撮ったりしている観光客を眺めた後、私は次の巨人のモニュメントに向かうことにした。
昨日の教訓を生かし、街にいる間にビールを調達しておくことにした。本日のビールは3本。
うち1本は海外に来るとよく飲むアイリッシュビールのキルケニーだ。日本であまりお目にかからないのである。
教えてもらった2つ目の巨人は少しわかりにくいところにあった。
小さな遊歩道のようなサイクリングロードをGoogle マップのガイドに従って走っていく。

湿地帯のような場所に出た。こういうところも綺麗だな。昔旅したニュージーランドのハブロックを思い出した。
途中、道を1度ロストしてしまったが、そのとき民家の庭先のおかげでカンガルーが2匹揃っているのが見えた。

本当にその辺にいるんだな。
カンガルーたちは私が近寄ろうとすると上半身を起こし、何だか迷惑そうだったので、そのままにしておいた。
2つ目の巨人のモニュメントは海に突き出た堤防に立っていた。

ここにも多くの観光客が集まっている。それと同時に地元の人だろう釣りをしている人も何人かいた。

観光客は一生懸命に巨人と共に写真を撮ろうとしているが、釣りをしている地元の少年は、そんな事は全く意に介さず。巨人の足の上に立って竿を海に垂らしていた。
ちょっと少年がふてぶてしいなと思ったが、これはこれでなんだか正しいような気がした。
私は巨人のモニュメントを離れるとキャンプ場に向かった。

午後過ぎて日差しが強くなった。
キャンプ場まではまだ距離がある。少し頑張るとしよう。
Collins Poolという海水の流れ込む湖(浜名湖をイメージしてもらうとよい)沿いを走る。車もハイウェイほどではなく、まずまず走れる。途中からハイウェイに合流するが、その勢いのまま走り続けた。私のツーリングバイク、リッチーアウトバックV2はよく走るバイクだ。
勢い余って3キロほどキャンプ場を通り過ぎる。
分岐まで来てようやく気がついた。
少し戻って本日のキャンプ場「Estuary Hideway」に到着。

今日も疲れた。疲労感満点で受付に行く。受付の女性は「テントサイト?予約してないのよね?今日はバスルームがいっぱいで…」と困った様子だ。ここの周辺には他にキャンプ場はない。昨日に続いて今日もダメなのか…
私がよほど絶望的な顔をしたのだろう、受付の女性は「待って。何とかするわ。テントサイトよね?テントサイト自体は空いてるんだけど、バスルームが混んでて…いいわ。ID出して」と、なかなかの勢いでパソコンを叩き始めた。
泊めてもらえそうと分かり安堵した私は、女性にパスポートを渡した。
明日以降のキャンプ場は予約したほうがいいのだろうか。面倒だなぁ。
キャンプ代の支払いを済ませると、女性がキャンプ場内を案内してくれる。こういうのは珍しい。大抵は地図を渡されておしまいだ。
「キッキンはあそこ、飲み水はあの水道を使ってね。テントサイトはここから向こう。どこにテントを張ってもらってもいいけど、キッチンとバスルームから近い、この辺りにテント張るといいわ。」と丁寧に教えてくれた。
私はアドバイスに従ってテントを張った。
女性が付け加える。
「となりはすぐ海でたくさんのワイルドライフが存在しているわ。そこにはカニがいて、うちに泊まっている人はよく獲ってるの。みんなすくってるわ。道具が必要なら貸すから言ってね。」
私は受付横に不自然に吊り下げされたテニスラケットを思い出した。あれか?
「日本人はシーフードイーターなんだ。カニは大好きだよ。簡単に捕まえられるなかな?」私は興奮気味に訊ねる。
「イージーかどうかは分からないわ。」彼女は笑いながらそう言うと、手をひらひらさせながら受付に戻っていった。
「カニねぇ。」私はニヤニヤしながら呟いた。
どんな種類のカニか。素人が捕まえられるなら大きなカニではないだろう。モズクガニの類か。パスタとフリーズドライのトマトスープなら持っている。
これはもしや今夜はカニパスタか。

キッチンをチェックすると冷蔵庫に「カニ、魚、釣り餌を入れるな」とある。なるほど、確かにカニは獲れるようだ。
本当はいきたいシャワーと洗濯を後回しにし、海へ出る。ここはCollinsPoolの海で、インド洋の外海とは違った美しさがある。Western Australia に来て以来、どこもこんな調子だ。贅沢な話である。
しかし、今は景色よりカニである。まずは捕まえる前に、どんなカニなのか、そしてどのくらいいるのかを確認する必要がある。道具がなんであれ、借りるのはそれからだ。
流木の影や藻場をガサガサやり、入念に探すが、カニの姿はない。受付のおばさんの話ぶりではたくさんいるような感じだったが。
私は捜索範囲を広げることにした。CollinsPoolに面するキャンプ場の敷地はなかなか広いが、その外と思われるところまで探すことにした。
捜索開始から一時間。
私はカニ漁を断念した。
一時間の捜索で見つかったのはこのカニの手だけ。
クッソー、これでパスタ作ったら間違いなかったのに。
余計に増した疲労感を感じながらテントサイトに戻った。
食事の前にシャワーを浴びる。洗濯は、もう面倒なのでやめた。一日着たレーサージャージだがもう一日くらい着ても平気だろう。
「ちゃんとする」からまた一つ解放されて、さらに一つ自由になった、というか旅人らしくなった気がした。
夕食は結局、パスタにツナ缶とビーフストロガノフのシーズニングを混ぜたものになった。味は好きだが、いかんせん何度もカニが頭をよぎる。
まあ、こんなこともある。

日が沈み始めてきた。
私は再び海岸に戻った。Collins Poolは幻想的な色に染まっていた。水鳥が目の前を横切っていく。
一応カニの姿がないか確認するが、当然いない。
CollinsPoolの淡く幻想的な風景を前にしても、私のカニへの未練は断ち切れなかった。
空の端から月が昇ってきて、水面に反射していた。贅沢な時間だった。
キッチンに戻り、2本目のビールを飲みながら、電源タップでスマホの充電をしつつ、日記を書く。

日付を書き込むとき重大なことに気がついた。
旅行前に組んだ予定と一日ずれている。
あれ?
スマホと腕時計で日付を確認するが間違えてはいない。予定では今日はBinningupにいるはずになっている。
原因はすぐに分かった。
予定のほうが間違っていた。オーストラリアに到着した日はそのまま宿で一泊なのに、そこからツーリング開始で計算していた…
「あーっっっ!」
カニといい予定といいなんてことだ。
ある程度の距離は足で稼ぐことができるが、全てが予定通り行くとも限らない。とにかく南からパースに戻るバスの予約の変更が重要だ。戻りの長距離バスはマーガレットリバーの先のオーガスタから乗る予定だったが、マーガレットリバーからの乗車に変更しよう。
私はバス会社からの予約確認メールに返信する形で、バス会社に予約変更のメールを送った。自分の英語では不安だったので、DeepLの翻訳アプリを使った。
「はぁ。」
ライド二日目からいろんなことがあるな。
明日はどうなることやら。とりあえず早起き。それで距離を稼ぐしかない。
私は3本目となるビールを飲み始めた。
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走行距離 81.5キロ
支出 スーパー 2780円
パンク修理キット&チューブ 1,489円
ビール3本 1,688円
ビジターセンター(土産) 1,291円
キャンプ場 3,576円(安い)
合計 10,824円

