キャンプツーリングの朝食はもっぱらトーストとコーヒーである。

これは昔からの習慣で、今回の旅でも初日にパースで買ったトーストを日々焼いて食べていた。キャンプ場のキッチンにはたいていポップアップトースターがあるので、トーストするのには困らない。
今朝は昨日ヴィックにもらったリンゴを食べる。この手に収まるサイズ感のリンゴは久しぶりだ。
7時15分にキャンプ場を出発。エスチュアリーハイドウェイホリデーパークにはオーナーの子供の他に小学生位の子供が何人か住んでいるらしく、制服を着た子供たちがエントランス近くのバス停でバスを待っていた。
ChatGPTに聞いたところによると、こうした施設に長期滞在したり、住むことはままあるらしい。
エスチュアリーからは時間重視でハイウェイを行くことにする。すぐそばを走る車が少々怖いがペースは上がる。平坦な道をガンガン踏んでいくのはなかなか良い。

ただ他に良い道があれば走りたいのは事実で、途中からGoogle Mapsに従って走ってみたが、案内されたのは未舗装路。未舗装自体は問題ないのだが、路面はこのあたり特有の砂の浮いた路面。一応走れないか試した試してみたものの、とても長時間走っていられる気がしなかったので行くことを断念した。

結局そのままハイウェイの道に戻り、ハイウェイの横を懸命に踏んでいく。
1時間ほどいったところだろうか。左側に「ワイナリー3キロ」の看板を見つける。

時刻は午前9時。看板には10時開店とある。
ここで1時間待つのはなかなか辛い。しかし、ここで行かなければ、ここのワイナリーに行く事は一生ないのではないだろうか。
10時と書いてあるが、人がいれば開いているかもしれない。そう思って私は行くことにした。
ハイウェイから1本道を外れた道は白い砂の浮いた道。一応舗装はされていたようだが、路面はやや荒い。

しかも完全フラットなハイウェイと違い、なかなかのアップダウンが続く。

そういえばタスマニアでも同じようなことがあった。
ハイウェイにあったファームベリーの看板に誘われて、ファームベリーに向かう横道に入ったら、ベリーファームまでの1、2キロが、なかなかのアップダウンで大変だったのだ。だが、あのベリーファームは抜群によかった。

アップダウンを何とか超え、Vineyard28に到着した。
急に視界が開ける。

丘陵地帯に広大なぶどう畑が広がる。

ハイウェイだけを走っていたら出会わなかった風景だ。ウェストオーストラリアの景色を勘違いするとこだったのではないだろうか。

ワイナリーは開店時間前でやはり閉まっていた。
しかし、ちょうどオーナーが赤いピックアップトラックで通りかかり、10時から開店だと言われる。やっぱりね。
オーナーは「今からピッキングに行くんだ。テイスティングがしたいのかボトルが欲しいのか」と聞くので、「ボトルワインが欲しいんだ。ここで待たせて欲しい」と聞くと、大丈夫という。
1時間をここで使うのはどうかと、一瞬だが、猛烈に悩んだ。だが、ここは使うべきだと判断した。
この時間を使うことが本当に正しいのか、非常に大事なことだ。
昔は、一ヶ月、二ヶ月単位で旅をしていたので、その日の成り行きで時間を消費していたが、今回は限られた日程の中で旅をしているので、この「時間を使う」というのは非常に重要なこと。
どこをどう削ってどこに当てるか、それから考えていないところに時間をとられてしまうという事はよくある。
この数日間ですら、自転車のパンクやらキャンプ場問題などでそんなことは何度もあった。
だからこそ、時間の使い方を選択できるときには効果的に使えるよう決断しないといけないときがある。今回はまさにそんなときだった。
私は、オーナーを見送ると、ワイナリーが開くのを待つ間、テーブルに腰をかけてエアメールを書き始めた。
何人かの友人にエアメールを送ると約束していたのだ。マンジュラで買ったポストカードに書き始めてみたものの、まぁたいして内容は無い。届くことが重要なのだ。

1時間ほどしてオーナーが戻ってくる。
オーナー以外にも他にもピッキングをしていたと思われるご家族だろうか、10人ほどが隣のテーブルで朝食の準備を始める。
なんか申し訳ないタイミングで来てしまったな。
テーブルを囲んで雑談を始まる。

どうやら家族と言うわけではなく、ピッキングに手伝いに来ている近所の人もいるようだ。みんななんだかとても楽しそう。
きっとワイナリーで働く人々からしたら普段の日常なんだろうけど、そんなところに居合わすことができて、とても貴重な経験ができた。
1人の年配の女性が私に興味を持ち、いろいろ話しかけてくる。
どこから来たのか?自転車で走っているのか?昨日はどこに泊まったの?それはEバイクじゃないのか?ペダルバイクなのか、などなど。
おばあさんぐらいの歳の人でも自転車の種類を「Eかペダル(電動アシストのバイクか普通にペダルを踏むアシストなしのバイクか)」と聞いてくることに、さすがオーストラリアだなと妙に感心しながら、私は一通り答えを返した。
従業員たちの食事が終わり、みんなそれぞれ去っていった。質問をしてくれたマダムは「良い旅をね」と帰り際に声をかけてくれた。嬉しいな。

オーナーが建物のドアを開け、中に私の招き入れてくれる。
私はオーナーからいくつかワインの説明を聞き、少しだけ試飲させてもらう。

オーナーが葡萄の種類や味の特徴を説明してくれる。私は飲んだ味をスパイシーとか、ドライとかフレッシュとかフルーティとか懸命に英語で伝えたが、どうも伝えきれず
「すまん。味が素晴らしいのは分かるんだが、私は英語があまり話せないから、うまく説明できないんだ。」と言うと、
オーナーは「日本人にしてはよく話してるよ。」と笑顔で慰めてくれた。
私はスパイシーなドライな赤ワインとフルーティでドライな白ワインを購入した。もっと買いたいところだが、ワイン2本でも持ったまま走るのはなかなか大変である。一応念のため聞いてみたが、日本には出荷してないとの事。いいものを手に入れた。
良い時間の使い方ができたな。
オーナーが次はどこに行くんだ?とたずねてくる。
「今日はこれからBinningupに行ってランチを食べて、Bunburyまで行くよ。」
私はVineyard28を後にした。
