今日はいよいよ旅の目的地、Margaret Riverに到着する予定だ。距離はそんなに長くない。今日は寄り道をいろいろするのだ。
朝食は昨日カペルの街で買ったアップルマフィンを食べることにした。ハンバーガーかというくらい大きいサイズ(これが普通)なので朝食に1個は多いかと思い、半分にカットしたが、結局まるっと一個食べ切ってしまった。

キャンプ場には、パースの「55 over cycling club」というその名の通り55歳以上のサイクリストの集まりが滞在していた。

昨夜はその中の一人、マイケルとしばらく話し込んだ。彼はバッセルトンとマーガレットリバーの間にあるCowaramupに住んでいるそうだ。
朝食の片付けをしているとマイケルがキッチンに入ってきた。マイケルにマーガレットリバーまで行く、と私が伝えるとルートの相談に乗ってくれた。 昨日キャンプ場の受付で貰った近郊の地図を見ながら、ハイウェイ迂回するルートを教えてくれる。
これは本当にありがたかった。
西オーストラリアに来てからというもの毎日Google Mapsを使ってばかりだったが、迷った時に位置が不安な時ぐらいにしか使わないで済んだ。ここに来てようやく自分がやりたかったスタイルに戻ってきたという感じである。
やはり旅に慣れるまでには1週間ぐらいかかってしまう。

55 over cycling clubの面々を見送って私もキャンプ場を後にした。
バッセルトンからバスバイパスの裏を通る道を進んでいく。途中、工事で迂回させられたものの、それまで走っていたハイウェイに比べて車はかなり少ない。

牛を飼っている牧場やワイン用のブドウを栽培している畑が左右に見える。
こういう場所を走りたかった。

農業用に整備された道なのだろう。それらしい車しか通らなかった。

ルート上にあるワイナリーを見つけて立ち寄ってみるが、建物内に人がいない。時間は朝9時。営業時間前のようだ。外に出ると車が来たので「オーナー?」と聞くと「いや従業員だ。店は10時からだ。その辺を走ってくると良いよ」と言われる。
ここでワインを買いたいと言う気持ちはあったが、 時間のこともあるので諦めて次に行くことにする。ワインの名産地マーガレットリバー周辺にはワイナリーがたくさんある。

今日も昨日と同じように寒い風が吹き出すと雨がしばらく降ると言うことが続いた。
一度だけまとまった雨が降ったが、道沿いの木の下でやり過ごした。雨やどりをしているときは「早く雨上がらないかな」と待っているが、旅から帰るとそんな時間も愛おしい。
道沿いに木が立ち並んでいるが、どれもどれも巨木だ。その向こうはどこまでも続く地平線。このスケール感を子供たちや妻にどう伝えたら良いのだろうか。

マイケルに教えてもらったルートで1カ所不可解場所があった。ショートカットできるよう道を迂回している場所があることだった。
そこまで行ってみて行けそうなら行こうか思ったが、地元のサイクリストがわざわざそう教えてくれているのだ。何か理由があるのだろう。
行ってみて納得した。
ショートカットの道は未舗装のアップダウンの道だった。なるほど。行けない感じではないが、ローカルライダーのアドバイス通りにすることにした。

バッセルトンからそれまでずっと南下していたが、トゥリートンロードを西へ向かう。
マイケルの住まいがあるというコーラマップに繋がる道である。

このあたりから丘陵地帯のアップダウンの道になる。パースからずっと平坦な道ばかり走っていたのでとても新鮮に感じる。ただ西から吹く風もあり、なかなか辛い。

コーラマップの手前に1カ所ワイナリーがあるのでルートを外で立ち寄ってみる。
ワイナリーはLSMerchantsといい、後で調べて知ったのだが、2015年創業の若いワイナリーだった。

店内は暗かったが、オーナーだろうヒゲのナイスガイが対応してくれた。
はじめオーナーの話す英語が早くて全く聞き取れなかったが、話してるうちに会話が何とか理解できるようになった。
少しだけテイスティングをすることになり、ぶどう畑の見えるテラス席を勧められる。

オーナーがグラスと水、残ったワインを入れるペールを出してくれ、最初はスパークリングを持ってきてくれた。
オーナーが言う「これはクリスマス、つまりオーストラリアの夏の暑い日に飲むのにピッタリなスパーリングだ。」

私は一口飲んでみると爽やかなでみずみずしいフレッシュなブドウの味が口いっぱいに広がる。
「ああ、暑い夏の日に合うっていうのがよくわかるよ。とてもフレッシュでこう、ブライトな感じだ。」と答えると、
「そうなんだ!今日みたいな夏の日のブライトサニーデイにピッタリなんだ!」と嬉しそうに話してくれた。

昼に近づくにつれ、お客さんが増えてきた。LSMerchantsはコワラマップからそんなに離れていないが、お客さんはみんな車でやってくる。西オーストラリアは一定量のアルコールを飲んでも運転はしていいことになっているとのことだった。
最初はマンツーマンで対応してくれていたオーナーだったが、お客さんが増えてきて、少し待つ時間ができてしばらくブドウ畑を眺めていた。

ちょうどお友達のソムリエ、PamaValleyのタカコさんとメッセージのやり取りをしていて、ブドウ畑に興味があるそうで、写真をいくつか送った。
戻ってきたオーナーに「今、私の国日本は冬なんだ。ホームタウンは雪が降っているって。冬に合うワインを妻の土産に買いたいんだけど、いいのあるかな?」ときくと
「もちろん。待ってて。」と赤ワインを持ってきてくれた。
LSMerchantsのワインはトラディショナルというよりは個性的なフレーバーやテイストで、先鋭的だがカジュアルな印象を受けた。ここまで来て本当に良かった。
熱っぽく自分のワインの魅力を語るオーナーの勧められるがままテイスティングして、感想を伝えていると下手な私の英語でも私が感動しているのがわかるようだった。
私はテイスティングした中から2本のワインを選んで購入することにした。
オーナーがワインを包みながら言う。
「きみはいい旦那だな。また戻ってきて買いに来てくれ。」
次は無いかもしれないと思って来たこの西オーストラリアの旅だが、LSMerchantsにはまた来たいなそう思いながら素敵なワイナリーを後にした。
外は眩しいほどの青い空。
a bright suuny day
私が旅している大地で育つワインはそれに相応しい明るいテイストのワインだった。
