定着から放浪へ 放浪から定着へ

アイルランド、アラスカ、ニュージーランド、西オーストラリア、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

「今日はどこまで行こうか」 旅の終わり - Cycling Western Australia -

最終日、いよいよ帰国である。

帰国のフライトは夕方なので半日は余裕がある。

 

朝、いつもより早く早朝5時頃、目が覚めた。今回は4人の相部屋で2段ベッドの上を使っていたが、下の男は何度も朝早くからスマホのアラームを鳴らしてうるさかった。勘弁してくれよ。

ただ、向かいのベッドの客は長い金髪の美しい女性で、特に何か話した訳ではないが、何か得した気分だ。

 

朝のバックパッカーズは静かだ。

 

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ほんと夜のあの馬鹿騒ぎは一体何なんだろう?

次にもし、こういうところに来る機会があれば、初日からキャンプ場を取ることにしよう。

年寄りばかりの方がよほど良い。もっとも今回選んだところがたまたま悪かったのかもしれないが。

 

キッチンで朝食の準備をする。

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いつものようにコーヒーを淹れ、パンを焼こうとするが、一週間以上ともに旅をしたトーストブレッドは残り2枚を残して見事にカビていた。夏の西オーストラリアのキャンプ暮らしの中、これまでよく頑張ったものだと思う。

もっと早く食べてあげればよかったな。旅が長ければ、いろんな外食の誘惑を振り切って、もう少し積極的にパンを食べたのだが。なんだか申し訳なかった。

 

軽量化のため、 荷物を選別し、ほとんど使わなかったガスカードリッジと100円ショップで買ったペグハンマー、それからコーヒー豆の残りをフリーラックに置いていくことにした。

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荷物をまとめてチェックアウト。先週宿に来た時にバイクボックスを預かってもらおうと交渉したイタリア系の宿の兄ちゃんは、私のことを覚えていないようだった。荷物のトラブルなどは日常茶飯事なのだろう。

 

宿を出るとまずは予定通り、街の中心部にあるウールワースで、自宅や職場へのお土産を購入。いろいろ買いたくなるが、フライト時のパッキングのことを考え、必要最低限にした。

 

スーパーの後、フライトまでの時間はパースのSubiaco地区を見て回ることにした。

 

スビアコは、先週フリマントルに行くときに通ったエリアで、 土曜日の午前中はファーマーズマーケットが開催されている。ちょうど開催日であった。

Google mapのナビに任せて走っていたらミスコースしてしまい、キングスパークに迷い込んでしまったが、おかげでキングスパークの展望台に行くことができた。

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昨日一生懸命走ってきたスワンリバーのスワンリバー沿いの道が見える。
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広々とした公園は、日本ならちょっとした動物園ぐらいある広さだ。こんなところが市街にあるなんてパースは本当にいい都市だと思う。

それから街中にサイクリングロードが張り巡らされているパースの週末は本当にサイクリストが多い。街にショップが何軒もあるのもうなずける。バイクはまちまちだが、キャニオン、ジャイアント、スペシャライズドが多い印象。そしてバリバリ走ってそうな感じの人はやはり最新の機材を使っている。

 

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スビアコのファーマーズマーケットは先週、横を通り過ぎたところだった。

先週通ったときに「何かやってるな」と思ってはいたのだが、寄っておけばよかったな。
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野菜、ウィンナー、魚などの食品からパンやバーガー、クレープ、エッグタルトに雑貨と、様々な店が並ぶ。
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クレープとハンバーガーにかなり引かれたが、まだ昼には早いので、5ドルのエッグタルトをつまむことにした。

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店のマダムがシナモンを振るか聞いてくれたので、お願いした。エッグタルトは甘すぎることもなくとてもおいしかった。シナモンが合うとは意外だった。 こういうところは現金払いのみかと思ったが、カードで支払いできた。ただファーマーズマーケットのあるコーヒー屋さんには「CASH LOVE」と書いてあった。やはり現金のほうがいいという人もいるようだ。

 

その後、スビアコの市街に行き、街をぶらぶらする。キッチンウェアの店を覗いてみたりして、本屋を見つけて入る。「Travel」のコーナーにはこれでもかと、いっぱいロンリープラネットが並んでいた。この光景はやばい。

日本にもこれぐらいロンリープラネットが店頭で買えるといいのにそう思った。

 

南半球が上になっている地図が息子の土産にいいなと思い、探したが見当たらず、店員さんに聞くと「探してくる」と言ってバックヤードから持ってきてくれたが、パッキングされたままのポスターサイズの包み。明らかに大きいので大きすぎると断ってしまった。わざわざ出してもらったのに申し訳ない。

 

スビアコで行きたい場所が一箇所あった。パースに本拠地を置くオーストラリアのサイクルアパレルブランドのPedal mafiaである。

スビアコの街から少しだけ離れたところにあった。

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おしゃれな店だ。

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イメージ通りラファとかMAAPとかの感じの店内。
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広々とした店内はたくさんのコルナゴがディスプレイされていた。

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私はスティールバイクが大好きなので夢中になって見ていた。
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土産にソックスをいくつかと、それから旅の途中でサイクルキャップをなくしてしまったので1つ購入することにした。サイクルキャップは店内に見当たらなかったが、店員さんに言うと中から出してくれた。いい土産になった。

 

ペダルマフィアの後、パースの中心部に戻る。

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街の真ん中で、馬に乗ったポリスと遭遇。ポリスのお姉さんも馬もかわいい。とても感じが良かった。

 

初日にバイクボックスをお願いしておいた店に行くと、定休日だったが、オーナーがすぐに出てきてくれた。箱はメリダクロスバイクのもので少し大きなものをくれた。いくらだと聞くと金はいいと言う。また人に助けられた。このオーナーがいなければ自転車が梱包出来ず、途方に暮れていたことだろう。

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バイクボックスを畳み、それを抱えながら一方で荷物を持った自転車を持って歩いていく。バイクボックスだけで1キロ近くあったのではないだろうか。バランスをとりながら歩くのはなかなか骨が折れた。パース駅まで15分くらいの距離だったがそれだけでも充分疲れた。

 

パース駅にいた案内の人に空港行きの電車のプラットフォームを聞く。

8番プラットフォームらしい。私は「plane」がうまく聞き取れず、聞き返すと両手を広げて飛行機の真似をしてくれて、飛行機のマークのところに行ってねと言われた。英語力はまだまだである。

 

プラットフォームで電車を待っているとここでも係員のおじさんが乗る電車を教えてくれる。次の電車はもう少しホームの中央のほうに行ったほうがいいと教えてくれた。

みんなとても親切だな。

 

エアポート駅に着くと空港までは結構歩かされた。連絡通路から地上に降りるエレベーターでバイクを倒してしまった時、一緒にいたおじさんが「Hey,boy!」と言われてしまった。おじさんのほうは小柄なアジア人を見て、咄嗟に出たんだろうが、40過ぎてボーイと言われてしまうとは。いやはや。

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パース空港では来た時と同じ場所で梱包を始めた。箱は大きいので収納は全く問題ない。

今回のフライトの制限重量は25キロ。何をどこでまでバイクボックスに入れるかが問題だが、液体以外の重量物は機内持ち込みの荷物に逃した。バイクボックスをもう少しガムテープで補強しようかというところで、ガムテープが尽きた。少し箱が破れているところがあるが、まあ大丈夫ということにしておこう。

 

チェックインはオンラインを利用したため、端末でパスポートを読み込ませ、荷物の数を入力し、出てきたタグをバイクボックスに貼って、大型の荷物のところにいるオッサンに渡した。

荷物を測ってもらうと26.5キロだったが、オッサンは「Heavy」のステッカーを貼って、25キロと書きそれでおしまいだった。何とも簡単だった。

日本から出てくるときには、あれもこれもやれサイズをはかられ、荷物の中身を何度も確認され、ずいぶん手間取ったものだが。

私の後ろにサーフボードを持った兄ちゃんたちがいたので、パースの空港ではこういう事はよくあることなんだろう。

 

チェックインを済ませて、この旅で最後になるであろうキャラメルスライスを買う。

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全部食べられないことはなかったが、半分かじって、カバンに放り込んだ。

 

フライトまでまだ時間がある。

 

あとは、そうビールだな。

バーカウンターを見つけると、フライトを待つ間、一杯17.25ドルの無駄に値段の高いビールを飲みながら、私は日記を書き始めた。 

 

 

********

 

 

まだ周囲が薄暗いロットネストで目覚めた朝、ブラスト灯台を見に行こうと思い立ち、コーヒーとを持ってPinky Beachに向かった。

黎明のPinky Beachは静かだった。

誰もいない。

吹き付ける風が少し寒くてレインジャケットを羽織る。

西の空に目をやると満月に近いまんまるの月が明るく光っている。

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何という神々しい時間であろう。Goodess in the

 morning、そんな題名の曲を思い出した。

 

わたしはPinky Beachの砂浜を日が昇ろうとする灯台の方へ向かって歩き出した。

柔らかい砂を踏み締める心地よい感触を足の裏で楽しみながら私は無意識に呟いた。

 

「今日はどこまで行こうか」

 

何も考えずに口から漏れた言葉だ。

もう明日には帰国なのに、 いったい私は何を言っているんだろう。 

でもこの些細な言葉に自分の旅の本質が含まれているような気がした。

朝、コーヒーを淹れて、地図を眺め、どこへ寄り道して、どのあたりでご飯を食べようか、どの辺りで泊まろうかと考える。大体予定通りにはならないのだけれど。

 

そんな日々が私の旅の日常であり、この一週間でそれが感覚として当たり前になってきたのだろう。だから「今日はどこまで行こう」という言葉が漏れたのだ。

 

今回の旅は、新しいチャレンジをしているというより、旅を日常としていた頃の続きがまた始まって、15年前のタスマニア最後に一度中断していた旅の続きをやっているそんな思いだった。

そんな感じだから、もっとこのまま旅を続けずに、普段の生活に戻らなければいけないのはなぜなんだろう?そんなふうに思ってしまう。

普段の暮らしは日常としてとても大切だ。そこは昔とは違う。昔は旅に出るために日常を生きていたと思う。

一方、再び出る前は、家族ができて、家族がありながらも心はどこか旅のことを考えていた。

日常が充実してくるにつれ、旅に出なくても、平気な自分と「旅に出ないといけない」という、ある種の強迫観念、このまま「昔は旅をしていた人」という人になることへの恐れが、言ってしまえば、自分が大切にしてきた部分が日常の中に埋もれてしまい、旅への思いが過去のものになってしまうんじゃないか、そうした恐れがあったと思う。

今回、こうして旅へ出たことで、自分の核をなす旅という行為、そこへの思いがそのまま失われていなかったことが確認できたことにとても感謝している。

たとえトラブルがあっても、自転車の旅と言う自分のやり方でしか出来ないこと、出会えないものもたくさんある。

そんな旅が好きだから、また自転車に乗って、またどこかへ行くんだと思う。

 

そんなことを考えていたらなんだか涙が出てきた。

 

再び一人で海外へ自転車旅に出て、本当に良かった。

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また無意識に「今日はどこまで行こうか」そんな風に呟くような旅に出よう。

 

2025年 Western Australia 編 おわり