「あれっ」
バリーミナの宿でベッドから立ちあがろうとすると、嫌な感じがした。ふわふわするような感覚。熱が出たときのあれだ。まずいな。
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Ulster Museum
ベルファストのバーを楽しんだ後、ユースホステルの部屋で眠りに落ちたが、夜中に向かいのベッドにいたくさいオッサンのせいで起こされた。まったく不快なオッサンだったな。

キッチンに移動し、朝食の支度をする。とはいってもトーストを焼き、コーヒーを淹れるだけだが。
コースを変更したことで日程的にゆとりができた。今日は50キロいけばいい。食事を挟んでも3時間みておけばいいだろう。外を見れば快晴。きのうの天気予報では午前中は雨だったのにな。こういうパターンのアイリッシュウェザーは歓迎である。軽くベルファスト観光をしていけそうだ。

キッチンには誰もいなかった。朝食の準備をしているとアジア人の女性が入ってきた。日本人かな、と一瞬思ったが中国の人だった。アイルランド、本当に日本人いないな。

出発準備を整えると宿を後にし、まずはタイタニック・ベルファスト、タイタニック博物館に向かう。

ベルファストはタイタニックが建造された街であり、造船所の跡地にタイタニック博物館が建っている。タイタニックにはさして興味はないが、建物が特徴的であるらしいので、その外観だけでも見に行こうと思ったのだ。

街を走っていくと偶然、インフォメーションセンターを見つけた。せっかくなので立ち寄る。土産はいろいろあったが、まだこの先いろいろ買うだろうと思い、ポストカードと切手だけ買った。

タイタニック・ベルファストは港の端に立っていた。想像したよりもはるかに大きかった。ちなみに入館料はオンライン予約で24.95ユーロ。
タイタニック・ベルファストの外観を見て満足すると、その足でアルスター博物館に向かった。北アイルランド最大都市ベルファストには見どころが多いが、その中で私が行きたいと思っていたのがアルスター博物館である。
アルスター博物館は国立の博物館で北アイルランド最大の博物館だそうだ。 美術、考古学、郷土史、植物学や動物学、地質学などの幅広い分野のその収蔵物が5階建ての建物の中に展示されている。入り口で寄付を求めているものの、基本的には無料である。





世界各地の古代~近代にかけての歴史的な収蔵品から始まり、世界大戦、北アイルランド紛争といった歴史を振り返る展示が続く。




そのほかに、アイルランドの自然史、鉱物、いかにも英国風の中世の絵画から、現代アートや写真と本当に多岐にわたる展示だった。アイルランドの自然史、動物などの展示は私のように英語があやしくても十分理解ができた。逆に歴史分野の話は解説がないと難しいと感じた。スマホの電波が悪く、英語翻訳がうまく機能しなかったこともあり、そういう意味では少し残念だったが、全体としては、どの展示もとても興味を引くものだった。一時間半ほど滞在したと思うが、じっくる見ようと思うともっと時間が必要だと思う。
売店でポストカードを買い、博物館を後にした。
丘の道

アルスター博物館からはバリーミナに向かう。バリーミナはいったいどんな街なのだろう。きっと私が住む豊橋も海外のツーリストからしたら同じように何があるかよくわからないだろうし、普通なら行く理由がない街なのかもしれない。ぼんやりそんなことを考えた。
今日もGoogle任せのルート設定。自転車ルート検索にするとうまくハイウェイを外して設定してくれる。小さい道でもきちんと舗装されている。グラベルバイクで来ているのでむしろ未舗装路でもいいのだが、意外と未舗装路に当たらなかった。グラベルが走りたいなら事前にきちんとリサーチしたほうがよさそうである。

今日も緑の牧場の間を進んでいく。北アイルランドの郊外の田舎道も緑が美しい。グレーの空でも緑のおかげで明るく見える。
どこかで昼食を取ろうかと思ったが、昨日バーでフィッシュアンドチップスを食べているおじいさんを見て、今夜私もフィッシュアンドチップスにしようかと思い、普通に食べたのでは完食できないだろうと思い、昼飯を抜いて走った。


バリーミナに近づくと、道は下り坂になった。レインギアを着ていないせいで、下りになると途端に体が冷えてくる。
バリーミナまであと数キロ、というところで雨が降り始めてくる。そのまま宿までやり過ごせるかと思ったが、このまま雨は強くなりそうだ。私はあきらめてレインギアを着込んだ。体がかなり冷えてしまった。

レインギアを着た後は、すぐに強い雨になった。雨を振り切るようにバリーミナの街にたどり着いた。
窓からの景色

Bookinng.comで予約した宿は、街の中心部にあり、紹介文にはB&Bと書いてあった。実際に行ってみると、大通りから1本入った住宅街で、宿というより家を間貸ししてるような民泊のようだ。感じの良いおばさんでも出てくるかと思ってドアノッカーをたたくと、出てきたのは普通のおっさんだった。自転車を持っていると話をすると家の中に置けないと言われたが、奥のガレージなら置いていいと言ってくれて助かった。
今回のところはキッチンとリビングが使えた。キッチンは正直清潔とは言えず、コンロには前に使ったときのままなのだろう油が周囲に飛び散ったままだった。どうやらオーナーもここを使っているようだった。

当てがわれた部屋は3階。部屋に荷物を運びこむ。海外でシングルルームなんていつぶりだろう。アラスカのコールドフットか?とにかく久しぶりである。

「寒いな」。廊下に置いてあったポットでコーヒーを淹れ、普段は使わない砂糖とミルクをたっぷり入れる。
疲れを感じベッドで横になった。
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しばらくゴロゴロして、立ち上がると何か変だ。
風邪を引いたのか。熱はあまりなさそうだが、体に明らかな違和感がある。
落ち着け、きっと大丈夫だ。何でもない。
私はベッドの端に再び腰かけると大きく首を振り、自分に言い聞かせた。
だが、首を振ったその感覚にも違和感を覚え、いよいよマズいなと思った。
今回の旅の最終目的地のBushmillsまではあと一日。どうしたらいいだろう?明日にでもダブリンに電車で戻って帰国まで大人しくしているか。このまま悪化したらどうする?
昼を抜いて体を冷やしたのが良くなかったのか。
いろんなことを考えてしまう。
毎日家族には無事にキャンプ場や宿に着いたなど連絡していたが、体調が悪いなんて連絡しても心配をかけるだけなので、伝えるのはやめた。
とりあえず手持ちの補給食を食べ、いくつか薬を飲んでもうしばらく休むことにした。明日のことは明日考えよう。
しばらく休んで体調が少し戻ってきたので、レインギアを着込んでスーパーへ歩いて行く。雨は降ったり止んだりだが、大雨ではない。どこか体がフワフワしたまま、結果的にスーパーまでは結構歩いてしまった。バリーミナの市街地はハイウェイ沿いの大型店舗が立ち並ぶところやいろんな商店の並ぶメインストリートは賑やかだが、一本裏通りに入ると人気も少なく、崩れかかった家があったりとなんだか寂しく感じた。自分の体調のせいもあったと思う。
晩御飯は持っていたパスタを茹で、スーパーで買った惣菜を食べた。

部屋に戻り、ベッドの上の天窓を開けて外を見る。冷たい風が吹き込んでくる。錆びたトタン屋根や風雨に晒されて色褪せたスレートの屋根。長屋だろうか、規則正しく並んだ煙突がこの街の冬の寒さを想像させた。
ぼうっとした感覚の中で見たこの窓からの景色がなぜか心に残った。

