定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

ハドソンベイスタート 〜Pamavalley 〜

年明けに少し休みを取って久しぶりに長めのツーリングに行けることになった。

それなりに日数を取ったツーリングで、基本的にはキャンプ暮らし。しっかり準備をしていきたい。

そこで今回、私は予行演習と装備の確認をするため、テスト的に一泊二日のキャンプツーリングに出ることにした。野田知佑の言うところの「ハドソンベイスタート」である。

ハドソンベイスタートとは、北米の開拓民たちが北極圏を探検する際、まずは集落から近いハドソン湾周辺で何日かキャンプした後、装備など問題がないか実際にキャンプして確認した上で、奥地への探検に臨むこといういうそうだ(確か野田知佑の本にそんなふうに書いてあったと思う)。

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私は今回のハドソンベイスタートの場所として新城市の「Pamavalley」を選んだ。

「Pamavalley」は友人の鈴木ノリさん、タカコさん夫妻が運営するコミュニティスペースで、山間の開けたところにある、約300年続く農地や蔵のあるご自宅の敷地で、カフェやワインショップ、それから地域の防災拠点として機能するアクティビティスペースなどがある。crewと呼ばれる様々な特技を持った人がやってきて、いろんな使い方を試しているのだ。

 

今回のハドソンベイスタートの条件として、私の自宅からそれなりに距離があること、テントを張れる場所があることがあったが、何より 私は鈴木夫妻であれば、私の趣旨を理解してくれるだろうと思った。お願いしてみると、特に営業はしていないが、それでもよければと快くOKしてくれた。

 

私は久しぶりに何日間かの旅行に耐えられるようテントや寝袋といったキャンプ用品や、洗濯用のロープやファーストエイドといった細々したもの、それから自転車の予備パーツやメンテナンスツールなど本番とほぼ同じ装備をまとめた。

デジタル機材も昔より増えたので、太陽光で充電できるバッテリーも今回用意した。どの程度使えるかは疑問が残るが。

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ここ何年でもキャンプツーリングには出ているが、今回はいくつかギアを更新した。特に最近はアウトドア用品では、ウルトラライト系の装備の進歩が目覚ましく、おかげでマットやテントは従来よりもかなりコンパクトでかなり軽くなっている。ちょうど地元のアウトドアショップも田舎の年末セールがやっている時で思った以上にテントが安く購入できた。

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自宅からPamavalleyまでは約30キロ。ロードバイクなら1時間ちょっとの距離。しかし、実際のツーリングの状態に近づけたかったため、午前中は年末最後のGlocalbikeのショップライドに参加し、50キロほどの練習をこなした。

その後、昼を挟んでキャンプ道具を満載したグラベルバイクに乗り換え、Pamavalleyに向かった。

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Pamavalleyまでの道はゆるいのぼりが少しあるだけで、たいしたアップダウンは無い。

しかし、久しぶりに乗る荷物も満載したツーリングバイクは思った以上に進まない。分かっていたことだが、スピードは出ても15キロから20キロといったところ。なかなか時間がかかる。

荷物が重いという原因だけではなく、私自身の体力が落ちていることも大きく影響していると思う。

本番までにもう少しトレーニングを積もうと思った。

本気で遊びたいならそれに見合うだけの体力がないといけないと言うのは重々承知していたが、今回本番想定で走ってみて、改めて思い知らされた。

途中、新城市庭野のローソンで休憩。晩御飯の買い出しである。前からネット記事を見て気になっていた冷凍ホルモンの鍋を購入。それからそれに入れるカット野菜とトッピングの温泉卵を買う。

私は買った食材の入ったビニール袋を昔のツーリングでやっていたように外付けした荷物の上に紐で引っ掛けるようにしてそれをぶら下げた。

まぁこれで大丈夫だろうという浅はかな考えだ。要はキチンとパッキングするのが面倒だったのだ。

ローソンを出て15分ほど走った頃だろうか。ガサッ、と大きな音がして、何か荷物が落ちた音がする。これは間違いなくローソンのやつだ。私はすぐ気づいた。

ローソンの袋は道の真ん中に転がっていたが、幸い車にひかれる事はなかった。残念ながらビニール袋は破れてしまった。私は昨日の取り直し、リアのパニアバックに夕食を入れると走り出した。

 

午前中のライドで消耗したせいか、思った以上に前に進まない。これでは本番が思い知らされるというものだ。

遅くてもいいから走り続ける。この鉄則に従い、私はペダルをこぎ続けた。

やがて飯田線三河大野駅が見えてきた。ここまで来ればPamavalleyは目と鼻の先。私は無事にパンバレーに着いた。

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Pamavalleyの入り口には、朝ご夫妻が作った門松が飾られており、新年を迎える準備がしっかりとされていた。

鈴木夫妻の姿を探し、キッチンスペースに行くとお二人が手を振って迎えてくれる。他にもお客さんが数人いて、聞けばご近所の方だという。ノリさんが相変わらず私のことを大げさにして紹介してくれて、お客さんたちは驚いてくれたが、そんなに驚くような事ではないので申し訳なかった。

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若い頃、自転車で旅をしていた頃の習慣に従い、タカコさんにお願いして、早速ビールを出してもらう。

昔はキャンプ場に着いたらまずビールを飲み、そのままなテントを立てるなんてことをよくやっていたものだ。

 

私はビールを少し飲むと明るいうちにと、テント立て始める。

鈴木夫妻はどこでもテントを張っていたと言ってくれたが、私は地面が平らで眺めの良いウッドデッキの前の場所を選んだ。

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そんな時1人のお客さんが。

私の職場の後輩のK君だ。彼は狩猟免許を持っており、前日に作手の山で獲ったという鹿肉を持ってわざわざやってきてくれた。

私は彼の獲ってくれた鹿のヒレ肉をPamavellyキッチンを借りて、調理を始めた。K君にも食べていって欲しかったが、残念ながら料理ができる間に彼は帰ってしまった。

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もらった鹿肉はスライスし、持っていたホリニシで味付けをし、フライパンで軽く焼いた後、Pamavalleyのお客さんが置いていったという燻製器を借りて桜のチップでしばらくスモークした。

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鹿肉は臭みが全くなくとても柔らかく、燻製の香りをまとった肉は最高においしかった。

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ノリさんがいいウイスキーを出してくれる。

 

私は来るにあたって、特にもてなしは不要。トイレと水さえ使わせてもらえればと何度でもなるのでとお願いをしていたんだが、タカコさんはおにぎりやお菓子やら差し入れてくれて、ありがたいやら申し訳ないやらで恐縮であった。とはいえとりあえず夕食の支度もせずに済むのは助かった。

 

しばらくノリさんとタカコさん、私の3人で酒を飲みながら、いろいろ話す。

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仕事のスタンスとかメタバースやリアルな世界のこと、私の次の旅のことについて、その他のことなど話は尽きない。まるで海外のキャンプ場のパブリックスペースで他の旅行者と話しているようだ。フェアバンクスにあったGO NORTHホステルを思い出した。

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来たときにはまだ夕方だったが、気がつけば、時間は11時を回っている。

私はテントに戻ることにした。

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少しお腹がすいたので持っていた。チキンラーメンを食べる。

タカコさんからビールを2本買ったが、結局それは飲まずに済みそう、というか寒くてビールという気分ではない。私は持っていたスキットボトルに入れたウイスキーを少し飲んだ。

空を見上げる。

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吐く息が白い。気温はどうだろう。2、3℃といったところだろうか。

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空を見上げると驚くほど星空が美しい。

こんなにたくさんの星を見たのはいつぶりだろうか。奥三河星空の聖地というのを、今更ながら確認する。美しいな。

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アルコールであったまったせいもあり、また寝袋はマイナス15度対応の厚いものを持ってきたので、テント内はそんなに寒いとは感じなかった。私はなんとなく寝る準備をして、その後眠りについた。

 

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朝、集落に響き当たる有線放送で6時になったことを知らされる。こういうところは奥三河である。

昨夜は何度か近くに獣が来ていたようで、ガサガサやっていたが、そのうち音はしなくなった。後から気がついたのだが、朝食用に持ってきたパンがなくなっていたので、持っていかたのではないだろうか。穴熊か何かだろう。

 

昔からの習慣に従って朝起きたらまずはコーヒーを入れる。

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外に出ると全てが白く凍っている。

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自転車も見たことないほど真っ白だ。

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結構寒かったんだなと今更中に思う。寒いと思うが、それなりに装備をきちんと持っていたので、何とかなるレベルの寒さだった。

 

朝ごはんを作ろうと昨日ローソンで買ったもつ鍋セットを見ると、なんてことだろう、落とした衝撃なのかパニアパックの中に汁が漏れている。

後で、水道を借りてきれいにパニアバックを洗うこととしよう。

 

私は取り直し、持ってきた大きなコッフェルにもつ鍋の具と買ったカット野菜を入れる。野菜が外に置いたせいか、カリカリに凍っている。

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野菜に火が通るまで少し時間かかりそうだ。

 

朝ごはんができるのを待っていると、「おはようございます」とタカコさんがやってきた。

「ちゃんと寝れた?」とその手にはお盆とその上にはもくもくと湯気を立てるどんぶりが。なんと朝から温かいものを用意してくれていた。粕汁である。

昨日は昨日でそれなりに食べたはずだが、寒さのせいで体力を使ったんだろう、私は出された粕汁を私はあっという間に平らげてしまった。

タカコさんによれば、昨夜は氷点下になったらしい。どうりで冷える訳だ。

タカコさんにお礼をいい、私は自分で作った朝食を食べる。粕汁が美味しかったので、ホルモン鍋はイマイチに感じてしまった。

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Pamavalleyに朝日が昇る。
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凍っていた全てが柔らかく溶けていく。

 

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ノリさんがやってくる。コーヒーを淹れてくれるというので、お言葉に甘える。

深煎り豆のガツンとしたコーヒーで目が覚める感覚がする。

特に急ぐ理由もないし、鈴木夫妻も大掃除などしているので、適当にしてくれていいと言う。私はお言葉に甘えて、汚れたパニアバッグを洗ったり、テントを干したりしてゆるゆると過ごした。f:id:independent-traveller:20241230220005j:image

Pamavalleyは自由でいいな。

ニュージーランドとかオーストラリアにある、いいキャンプ場のようだ。また息子を連れてキャンプに来ようと思った。

 

ラジオを聴きながらパッキングを終える。さてお暇しますか。

 

掃除をしていたタカコさんにお礼を言う。

ノリさんは窓掃除をしていた2階から手を振ってくれた。


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鈴木夫妻のおかげで無事に私のハドソンベイスタートは終わった。

 

旅から帰ったら、お土産を持って旅の話をしに来よう。

 

※Pamavalley は会員制コミュニティスペースで一般に解放されたキャンプ場ではありません。今回はコミュニティスペースの新たな活用方法というとこでキャンプさせていただきました。