定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

体感するということ - More you run, More you know -

ダモンデトレイルから新しいイベントが立ち上がった。

「More you run, More you know」

それが新しいイベントの名前。

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イベントのページにはこうある

 

【Event concept】
「走るほどに知る」をコンセプトに速さでも順位でもない、自分のためのランニングチャレンジ。進めば進むほど、自分を知り、相手を理解し、私たち自身、そして私たちの暮らすこの場所を、環境を、より深く、学び、知ることにつながっていく、そんな挑戦のステージ。第1回大会は私たちが暮らす東三河を海から山へと水を辿り繋ぎます。

 

具体的には愛知県東三河の先端、渥美半島伊良湖岬から東三河を代表する山、本宮山の麓までを仲間ともしくはソロで走るチャレンジで制限時間は12時間。ルートは各自で設定する。距離はルートにもよるが大体65キロ程度。

 

ダモンデ代表の山田さんからこの話を聞いたとき、出るかどうか迷った。

ランニングを始めたのは11月半ば。ランはほとんどやってきていないので、やれる気がしなかった。ただ、完走できなくても自分がどこまでやれるものなのか確認できればいい、そう思いエントリーをした。

 

私以外に、ダモンデバイクチームのタツマくんとエーシがエントリーしており、山田さんの取り計らいで3人でチームに設定してくれた。

 

大会当日。

 

夜明け前の伊良湖岬はいつもの強風だった。

西から海を渡ってきた風が冷たく吹きつける。容赦なく体から体温を奪っていく。

 

ダモンデ山田さんから簡単な説明の後、今回の企画を持ち込んだSさんからあいさつ。

参加者への感謝の言葉。

感謝するのはチャレンジする機会を与えられたのはこちらのほうである。メンバーは気心知れた三人だし、やれるだけやる、それだけだ。

 

暗闇の中、イベントスタート。

伊良湖灯台の前から各自走っていく。恋路ヶ浜に出たところで多くのチームが太平洋側の国道42号方面に消えていく。

 

我々は渥美半島の中央部を突き進むルートを選択した。

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タツマくんを先頭にジョグのペースで走り始める。

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初立ダムに着く頃、太陽が昇ってくる。f:id:independent-traveller:20240212174448j:image

「キロ6分くらいですよ。速いな。」

腕につけたGPSウォッチを確認しながらタツマくんが言う。たいていイベントで戦略を立てるのはタツマくんだ。

序盤はときおり歩きも織り交ぜながら順調に進んでいく。
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途中、畑仕事をしているおじさんに話しかけられる「何かのイベントかい?」

我々がイベントの内容を説明すると「楽しそうだね!」と笑顔で送り出してくれた。我々も手を挙げて笑顔で答える。

後から思えば、この頃は余裕があった。
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半島中央から三河湾側の一旦、国道259号に出て、再び半島の真ん中を進む。

強い風と単調な道でペースが上がらない。

 

芦ヶ池のあたりでダモンデメンバーの近藤さんとタツマくんの奥さんのMさんが待っていて、応援と補給を出してくれる。単調な区間であったので本当にありがたかった。ふたりはこの後も要所要所でサポートしてくれた。

 

ここからしばらく走ったり歩いたりを繰り返すが、思うように距離が伸びない。

 

「休憩だ。」

スタートから約25キロ。コンビニに入り、インスタントのうどんを食べる。

私は自転車のロングライドのイベントの経験上、食べれるうちは素直に食べたいと思うものを食べるようにしている。

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タツマくんとエーシはと言えば、同じものを食べていた。仲良しだな。

塩分も取りたいので汁まで飲んだ。

 

休憩したコンビニから道の駅田原めっくんハウスまでほぼ下り。できるだけ走る。

 

思いの外、直線が長い。

自転車だとあっという間なのに。

 

まだかまだかと思うとようやく道の駅が見える。

疲れた私は「メロンソフト美味しいよねー。」と大きな声で私が言うと

「ソフトクリーム食べましょう!」

タツマくんが答える。

 

「しょうがないなぁ。」と言いながら笑顔で道の駅に吸い込まれていった。

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疲れたときのソフトクリームはとてつもなく美味しい。リセットして再スタート。

予定のコースは道の駅からやや南に折れて国道を回避する道だが、時間に余裕がないので最短となる国道259号を行くことにする。

 

上りを頑張ってランでこなす。時間を何とか稼ぎたい。しかし、だんだんとランを維持できる時間が短くなっていく。

我々の中でトレラン歴が一番長いタツマくんはさすがで、少し歩くと再び走り出す。エーシと私がそれを追うというのを繰り返した。

 

これがエーシと私だけだったら、リタイアしないまでも早々に走るのをやめていたかもしれない。

 

国道沿いを離れ、豊橋鉄道渥美線の沿線を進んでいく。30キロを過ぎたあたりで3人の足が揃わなくなる。

タツマくんはまだ走れる。私はあまり走れないが、早歩きなら問題ない。エーシは歩くより走る方が辛くないという。

私は歩かせてもらいながら、騙し騙しランを挟んでいく。

豊橋市に入ったあたりチーム「KuroDa monde」の女子ペアに遭遇。ランナーとトライアスリートの二人は笑顔でキャッキャと楽しそうだ。子犬のように飛び跳ねながら、我々を置いて先に行ってしまった。

 

「すげーな。あの余裕。」

私は自分がこの分野で雑魚でしかないことを痛感した。

 

大清水のファミリーマートでKuro Damoneの二人と「on」のギアに身を包んだペアに遭遇。Mさんが私設エイドを開いてくれていた。

ありがたくコーラをもらう。

 

この後も断続的に走ってみるものの、梅田川を越えたあたりから、ついにタツマくんも走れなくなり、何とか歩みを止めないのが使命になった。

 

私は腰につけたrushのヒップバッグから時折、補給食を出しては食べ続けていたが、少し胃が重い気がして胃薬を飲んだ。自転車のロングライドでもそういうときがある。

 

スタートして7時間となる頃、高師緑地で近藤さんの施設エイド。
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あさり煎餅とブラックサンダーを食べ、少しお菓子をその先の補給用にいただいた。


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我々以外の先行していた2チームも休憩していた。近藤さんに別れを告げ、豊橋市街へと入っていく。時間的余裕はないが、豊橋らしい補給をしたいとコンドーパンを目指すが、定休日。
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小池の跨線橋を避け、再び渥美線沿線を行く。学生時代よく通った道だ。

 

水上ビルまで来たところで「あ、TOYS BREWEY近いよ」とタツマくんに水を向ける。

 

「一杯だけいっときますか!」と予想通りのリアクション。

 

「仕方ないなぁ」仕方なくない私が答えた。

エーシはようやく少し休めることに安堵したようだ。

 

今回、我々は運転手もいないし、レギュレーション的にも問題ない。

店に入るとなんてことはない、客でいたのは「on」の二人だった。

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一番小さいサイズを一杯だけ注文し、5人で乾杯。美味いに決まっている。


その後近くのコンビニでしっかりと食事をし、チェックポイントに設定されている吉田城へ。

私のホームグラウンドなので私が積極的に誘導する。

 

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吉田城にはスタッフのユミコさんがいた。聞けば我々と同じようなペースのペアが多いようだ。


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吉田城から先は豊川沿いに次のチェックポイントである砥鹿神社に向かう。

もうすでに身体中が痛い。いつもなら古傷の右膝の痛みが酷いところだが、普段は痛まない足の裏が猛烈に痛い。タツマくんもエーシも似たようなものらしい。

「いずれはフルマラソンなんて思ってましたけど、走れる気がしないですね。」エーシが言う。「ああ、フルマラソンとか走る人、尊敬しかないわ。」私は心からそう思った。

自転車を長年やってきて心配機能にはそこそこ自信があったがそれだけでは何ともならないのを実感させられた。

 

道は東三河環状線に入る。歩道は広いが強い向かい風がずっと吹き続ける。

 

私は早く終わらせたい一心でペースを上げてしまう。「島田さん、エーシが来てない」タツマくんに言われて振り返る。エーシはかなり辛そうだ。

エーシに声をかけただひたすら耐える。正直、自分に余裕はない。タツマくんも似たようなものだ。

だが、砥鹿神社まであと少しだ。
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制限時間一時間あまり、というところで砥鹿神社に到着。ここまで来れば何とかなる。

Mさんと近藤さんが迎えてくれる。

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Mさんはコーラとピレーネを出してくれた。こういうのは本当に嬉しい。

休憩していると他の選手たちが続々と集まってくる。我々はみんなでゴールである本宮山の麓、ウォーキングセンターへ向かう。


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制限時間である午後6時が迫る頃、我々は無事にゴールした。

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先にゴールした選手と健闘を讃えあう。みんなどんな体力をしているのだろうか。

先週のトレイルランで初めて20キロオーバーを走ったのが最長記録だった自分には無謀なチャレンジだったが、タツマくんとエーシのお陰で途中で投げ出さずに済んだ。

そしてランナーという人たちに心から尊敬の念を抱いた。この世界での自分の立ち位置がよく分かった。

 

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こんなチャレンジの機会を与えてくれた運営スタッフの方々、サポートしてくれた仲間たち、参加者、一緒に走破したタツマくんとエーシ、みんなに感謝。

そして来週のイベントはまた運営側に回るが、前とは違う気持ちで選手をサポートできるだろう。誰かのチャレンジを支えたい、心からそう思うのだ。

 

 

 

 

三原山の風景 - キャンプツーリングday4 -

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夜明け前に目が覚める。テントの外はまだ暗い。外でガサガサ音がするが、ULの若者が朝のバスに乗って三原山に行く、と言っていたので、早めの食事をしているのだろう。

私はテントの中で今回の旅で初めて日記を書いていた。今回は毎晩疲れて寝てしまっていた。昔は疲れても毎晩何かしら書いていたのだが。


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日が昇る頃、テントを出て朝食の支度をする。

七時を過ぎたので東海汽船のWEBサイトを確認。

船は岡田港から出るそうだ。あー、元町港がよかったなあ。

朝食に米を炊くかチキンラーメンを食べるか少し悩んでチキンラーメンにした。

足りなければ米を炊けばいいか、そう思ったがチキンラーメンの袋に書かれたカロリーを見て米を炊くのはやめた。この日の運動量に見合わない気がしたのだ。
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片付けているとULの若者が出発して行った。

私もそろそろ行かないと。
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トウシキキャンプ場は私がこれまで使ったキャンプ場でも指折りの素晴らしいキャンプ場だった。

風さえなければ言うことはないが、これはこれでいいのだ、そんな気がした。f:id:independent-traveller:20240113180906j:image

キャンプ場から西に向かう。海岸に伸びる道だろうか、綺麗なトレイルが見える。キャンプ場で一緒になった若者のように、この島はライトなスタイルで歩くのが正解な気がした。

 

トウシキキャンプ場から集落を二つほど過ぎると大きな断層が現れる。

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地層大切断面だ。
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伊豆大島が何度も噴火を繰り返してきて形成されてきた証であり、一つの積層が150から200年ごとの噴火によりつくられているそうだ。

伊豆大島は島の大きさ以上のスケールを感じることができる島だと思う。
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島の東海岸を走っていく。ときおり富士山が見える。

道は下り基調のほうが多かったと思う。この四日間で一番穏やかなライドだ。

元町地区についた。このエリアは大島の中心部。近くに温泉もあるので、元町港からフェリーが出るなら、バスで三原山山頂口まで行って、ハイキング、その後、温泉、お昼、輪行して離島、という流れを考えていたのだが、そうは行かなくなった。

作戦を変更し、温泉は諦め、元町でお昼とお土産を買って、岡田港に移動、そこからバスで三原山山頂口まで行くことにした。
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いかにも地元感あるスーパーべにやでお昼ご飯の買い出し。卵とじの天丼があったのでそれを買う。正月明けの荷物が入ってきたところなのか店員さんが段ボールから商品を棚に並べていた。
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元町から岡田に向かう。途中何件もスーパーがあり、立ち寄ってみる。前日に走った島の東側は商店はほとんどなく、車もまばらだったが、西側は車も人も多い。

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岡田港に戻ってきた。

三原山に行くバスは11時発。ハイキング用に輪行用に使用しているオルトリーブのパッカブルバッグにレインギアとお弁当などを入れ、バスを待った。三原山までのバスは一日2便しかない。お客さんはほぼ満員だった。

 

30分ほどで三原山山頂口にバスが着いた。帰りのバスは13時40分発。活動できる時間は2時間ほど。今思えば、早起きして朝のバスに乗ればよかった。
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バスを降りるとほとんどのお客さんが山頂遊歩道に向かって歩いていく。私は一人、表砂漠コースを歩きはじめた。表砂漠コースは火口の周回路、いわゆる「お鉢巡り」のルートとぶつかるのでそこから山頂遊歩道に戻るコースで行くことにした。

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早速、周囲が黒い火山砂に覆われた景色になってくる。
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岩、というより噴石という感じの荒々しい岩。
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しばらく歩いていくとキャンプ場で一緒だったULの若者が向こうから歩いてきた。

「あ、こんにちは。こちらに来たんですね。絶対このルートのほうがいいですよ。この先、風がめちゃめちゃ強いんで気をつけてください。」と教えてくれた。


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砂漠の丘に立つ。海が見える。
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私は景色に誘われるがまま、トレイルを進んでいく。
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彼の忠告どおり、途中から猛烈に強くなる。

だがなぜが、もっと先に行きたい。そう思った。


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冷静になって立ち止まる。三原山が遥か左に見える。時間的にはもう登っていないとおかしい。

GPSウォッチで現在位置を確認する。

ここもトレイルはついているが、メインルートから外れている。バスの時間もあるので私は慌ててルートを戻り、周回路まで上がった。

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周回路に上がる途中、焦ってバランスを崩して膝の横を岩に当ててしまったのだが、岩が驚くほど硬く尖っていた。あとで見たらズボンの下で血が出ていた。

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無事に周回路から山頂遊歩道に乗り、少し走ったこともあって、バスの時間に間に合った。

 

バス停で例のULの若者に再び会えた。

一緒にバスで岡田港に戻り、港で彼と別れた。彼は東京行きのフェリーに乗るのだ。

 

私は高速船の時間まで、食事をすることにした。スーパーで買った弁当は帰りの新幹線で食べてもいいなと思い、前日食事をした「浜のかあちゃんめし」に再び入った。

 

前日気になっていたウツボ丼は残念ながら完売。代わりにウツボフライをいただく。
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肉厚で淡白な白身が美味しい。皮のゼラチン質のところも悪くない。
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汁物のほうは今回は頭ではなかったがこちらも美味しかった。

 

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遅い昼ごはんの後、フェリーターミナルで輪行を始めた。高速船に乗る人が続々と集まってくる。

 

やがて高速船が港に着き、乗ってきた乗客を吐き出すと、続いて島を離れる人々を乗せていく。私は自転車を抱え、一番最後に乗った。

 

乗船後、すぐに船は岸を離れた。

 

大島に夕陽が沈んでいく。

 

しばらくすると伊豆半島が見えて来る。

2日前にはあそこを走ったんだ。地形で何となくどの辺りかわかる様な気がした。

 

4日ではあったが、またひとつ私の旅が終わる。

 

今回は計画も曖昧なままスタートして結局、走るとこで解決することになってしまった。若い時の感覚ではだめだなと再認識させられた。

ただ、こうして自転車に乗って遠くに行くという単純な行為を続けて出来たことは本当にありがたいことだ。

 

もっと遠くへ。もっと長く。

 

その気持ちはある。ただ、それを為すためにはただ家から飛び出してしまえばいい、というほどの時間はない。

自分が理想とする旅と今の自分ができる旅のカタチが見えた気がする。

 

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結局、旅の終わりは次の旅を考えるのだな、と苦笑した。

 

風の伊豆大島 - キャンプツーリングday3 -

夜明け前に起きて、テントから半身出してコーヒーを淹れる。疲れているのに早起きしたのは熱海から9時10分発の高速船に乗り、伊豆大島に行くためだ。

自転車を高速船に乗せるには輪行状態にしなくてはならない。伊東市の東側に位置する汐吹キャンプ場から熱海のフェリー乗り場まで約一時間半。

輪行する時間を考えると8時半には熱海に着いていたい。昨日買っておいたパンを食べると暗いうちにキャンプ場を後にした。

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伊東から熱海に向かってペダルを踏む。だんだんと周囲が明るくなっていく。朝日を背中に浴びながら熱海を目指して進む。朝焼けの海が美しい。
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これまでの道のり同様、熱海までは小さな峠を越える。次の町、次の入江に行くというのは大なり小なり山を越えていくのが、伊豆のルールだ。

 

熱海のフェリー乗り場は国道に特に案内看板もなく、危うく行きすぎるところだった。

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受付を済ませ、自転車を輪行状態にする。

東海汽船の高速船はインターネット予約で4480円。自転車は手荷物料金1000円かかるが、持ち込みが可能だ。
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高速船は一時間ほどで伊豆大島へ。船内のアナウンスを聞いていると船は岡田港に着くという。ツーリングマップルの航路図でてっきり元町港に着くと思い込んでいた私は、予定が狂ったなと思った。私は翌日夕方のフェリーで帰る予定なので、まあ時間は十分にある。

ただ、フェリーターミナルの中の運航表を見たが、どこの港か書いていない。カウンターの人に聞くと「その日の朝7時に決まる」とぶっきらぼうに言われた。

これはカルチャーショックであった…翌日の予定はどうしたらよいのか。

 

後から聞いたが、伊豆大島は常に強い風が吹いており、その状況でその日の港を決めるそうだ。


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伊豆大島には初上陸となる。島に来るのは久しぶりだ。

「暑いな」到着したのは10時過ぎ。まだまだ暑くなるだろう。私は自転車を組み立て終わるとウェアを少し薄いものに着替えた。

 

昼ごはんには早い時間だったが、早朝から動いていることもあり、港の向かいにある食堂「浜のかあちゃんめし」に入る。
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地方に行くとよくいる化粧バッチリのおかあさんが出迎えてくれる。私は白身魚の漬けの乗った「べっこう丼」を注文した。島のピリッとした醤油の漬けは食欲をそそり、美味しかった。
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丼についてきた汁物のアラをひっくり返すと立派な目が。少しびっくりしたが、しっかりとした出汁は臭みもなくとても美味しかった。見た目であまり食べれるところはないかと思ったが、結構食べられるとこがあって満足した。

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会計の際、化粧バッチリおかあさんに「あら、ほっぺにお米がついてるわぁ。よほど美味しかったんだねぇ」と言われた。

恥ずかしい。

「うん。とても美味しかったよ。」私は少し困った顔で笑っていたと思う。

 

早めの昼食の後、岡田港から大島一周道路に出る。とりあえず急登。この数日で見慣れた景色だ。

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伊豆半島ほどではないが、もはやお約束となったアップダウンの道。ただこの日はキャンプ場まで30キロ。寄り道し放題である。最初に見つけた「泉津の切通し」という場所による。

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まあこういうところだ。

写真を撮っていると観光客がやってきたので自転車に戻った。
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伊豆大島は椿が有名だそうだ。ツバキ公園というところでサイクリングマップをもらい、コースや立ち寄りスポットを見ていると、ツバキ公園からなかなかの登りになるということを知って軽くダメージを受ける。

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伊豆大島では行きたい場所があった。

 

裏砂漠である。

三原山の東に広がる黒い火山岩に覆われた、伊豆大島にしかない場所だ。
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裏砂漠は車両の侵入が制限されており、レンタカーでは入れない。ただ、自転車であれば、その途中までは立ち入ることができる。
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黒い砂と風の世界。大島一周道路から一歩足を踏み入れると、その途端に、強烈な向かい風が襲ってきた。三原山から吹き下ろしてくる風だ。今回、自転車がグラベルバイクであったこともあり、しばらくは乗っていくことができた。しかし、砂利が深くなり、強風が吹いたところで、私はバイクを降りて、しばらくバイクを押した。なんという風だろう。ニュージーランドタスマニア東海岸も強烈な風だったが、以上の強烈な風だ。
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「すごいところに来たな」そう思った。f:id:independent-traveller:20240110234204j:image

世界中を旅するサイクリストたちはきっと、こうした風の中、バイクを押してでも、何日でも何日でもかけて前に進んでいくのではないだろうか、ふとそんなことを思った。
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それほど、日常とかけ離れた、いや日本とはかけ離れた場所であった。

自転車で訪れることができて本当によかった。f:id:independent-traveller:20240110234142j:image

裏砂漠からさらに南に進むと、道はほぼ下り基調。
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筆島見晴台に寄るが、ここも爆風。体が冷えてきたので、ジレを着ようとするが強風でうまく着れない。ジレを飛ばしたら終わりだ。お気に入りの上になかなかの値段のなのだ。
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伊豆大島南部の波浮港に着いた。

この日はこのエリアのキャンプ場に泊まるのだ。

食料はまだ十分にある。必要なのは、そうビールだ。坂の途中にある飯田酒店に行く。

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店の奥さんに「いつもこんなに風が強いんですか?」と聞くと「今日なんか凪いでいるほうよ」と言われる。これで凪いでいるほうなのか。

島の暮らしについて少し話を伺い、店を出た。

 

この日のキャンプ場はトウシキキャンプ場。
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ネットで予約は必要だが、利用は無料。施設は驚くほど綺麗だ。

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ただ風は猛烈に強い。木が曲がったまま育っているのを見るのは、若い頃に行ったタスマニア以来だ。

キャンプ場には二つの並んだテントとUL系のテントがそれぞれ張られている。

私もテントを張ろうとするが風が強すぎて何度もテントが飛びそうになる。タスマニアでもここまでの風の中テントを張ったことはない。

 

ULテントの若者が「何なら炊事場の中で張ったほうがいいですよ」とアドバイスしてくれる。下がコンクリートではペグが打てないので、炊事場の側に設営することにした。

しっかりペグダウンして何とか設営を終える。
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日が暮れてきた。強風を浴びながらキャンプ場の端の崖の方へ歩いていく。

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綺麗だな。

 

拾ってきた枝で火を起こし、カレーを温めて食べる。うちわがない、と思ったが風が強いので勝手に日が強くなる。

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先ほど声をかけてくれたULの若者と食事をしながら話をする。彼は神奈川から来ており、ゆっくり山歩きをしているそうだ。UL系のギアなどについての話で盛り上がった。

ULの若者がテントに戻った後、やきとりの缶詰を熾火であたため、ビールを飲む。
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もういい時間かな、と時計を見るとまだ8時。翌日は出港ガチャで予定が変わるから、早起きしないといけない。風が強くて、テントが揺らされて眠れないかと思ったが、疲れた私はすぐに寝てしまった。

伊豆半島を北へ - キャンプツーリングday2 -

朝になると雨は止んでいた。

風が吹き続けていたのかテントはよく乾いている。濡れたテントを朝から撤収しないといけないと覚悟していたので、これはありがたかった。意外と面倒なのだ。

ただこの後、この風が一日のライドにどのぐらい影響があるのか、向かい風でないといいなと思った。

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正月に実家で貰った自家製の餡子入りの餅を二つ焼いて朝ごはんにする。今回は甘いものをあまり持っていないな、と気がついた。休憩しながらコンビニで買い足すとしよう。

 

この日の目的地は伊東市の東の外れにある汐吹キャンプ場。距離にして約80キロ。前日と同様、明るいうちにキャンプ場に着きたいと思っていたので、早めに入間キャンプ村を後にした。

 

入間キャンプ村には、夕方に到着していたので、入間の海をゆっくり見ていない。少し入間の海岸に立ち寄ってから出発することにした。

海岸に降りていく道を進んでいくと、地元のおばあちゃんが笑顔で手を振ってくれた。良いところだ。

周囲を崖に囲まれた小さなところだが、美しい海岸だった。出発前に記念撮影でもするかと三脚を出し、カメラをセットすると思わぬ強風が吹いた。

三脚が倒れ、「あっ」と三脚に駆け寄ると、今度は地図のコピーを入れたハンドルバーバックの上のマップケースのマジックテープが開いてしまい、地図が数枚飛んでいた。

 

「あぁっ」私は情けない声を出した。


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そんなこんなで笑顔は引きつっているが、一応記念撮影は終了した。

 

最初に目指すのは伊豆半島最南端、石廊崎

入間からなら目と鼻の先だ。

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それでもお約束のアップダウンがある。伊豆半島には小さな入江がいくつも存在しているが、どこも綺麗だ。時間があるなら一つずつゆっくり巡りたいのだが。

 

石廊崎の入り口に着くが時間が早くてまだゲートが開いていない。たまたま行き会った管理人さんが「9時からだけど、もう少し早く開けられると思いますよ。」と教えてくれる。

 

時間が来るのを待つ間、私は荷物からバーナーストーブを出すと湯を沸かし、ココアを飲んだ。こういうときキャンプ道具一式持っているのは強い。


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従業員さんが来て、9時少し前にゲートを開けてくれた。

石廊崎への遊歩道に続く。駐車場は自動車とバイクは有料だが、自転車は無料である。きちんと管理者がいるんだから、自転車もお金も取ればいいような気もする。

 

朝の石廊崎にはほとんど人がいない。
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これまでの旅でいくつもの岬、そして灯台に行っているが、石廊崎も他に引き取らない雄大さだ。

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風に吹かれながしばらく周囲の景色を眺めていた。向こうに見える岬からはこちらはどんな風に見えるのだろう。風景の先にあるものを想像していると、そこに行きたくなり、ああ旅をしているなと実感する。

 

石廊崎を後にして、次は龍宮窟に向かう。

Googleマップでルート検索すると普通は行かないようなルートを案内される。

直感的にいいな、と思った私はそのルートに乗った。
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しばらく山中を走り、田牛海水浴場に出た。

上っていく太陽が眩しい。


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砂浜に釣り人がいた。何か釣れるのだろう。

伊豆はどこの浜も絵になるな。

 

浜の近くに龍宮窟の入り口に駐車場があり、地元の人だろうか駐車場代を取っていた。遊歩道の管理などしているのだろうか。

龍宮窟は海に繋がった洞窟の天井が抜けている珍しい場所で、上から見ると天井に開いた穴の形がハート形に見えるらしい。
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天井に開いた穴も見応えがあったが、海に続く洞窟の感じがちょっとニュージーランドのカテドラルコーブみたいだな、と懐かしくなった。

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下から洞窟を見た後、上を歩く歩道を進む。こちらからだとパンケーキロックスみたいだな。
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遊歩道から見える海も美しい。そういえばカテドラルコーブに行く遊歩道も気持ちの良い道だったな。
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何だかニュージーランドの海にしか見えなくなってきた。ああ、またニュージーランドに行きたいな、そんな気分になってしまった。

 

午前中から随分寄り道してしまった。

昼からはガンガン走って行かないと明るいうちにキャンプ場に着けなさそうだ。

 

下田の道の駅近くの金目亭で昼食。下田バーガーもいいかな、と思ったが見つけた店が混雑してたのでこちらにした。

金目鯛の刺身丼をいただく。

金目鯛と言っても種類がいろいろあるそうで、地金目、平金目、島金目の三種類の丼ということだった。
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名物を堪能し、ここから頑張りどころだ。寄りたい場所はないわけではないが、Googleマップによるとキャンプ場までは4時間半。
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やや変なルートを案内しているので、普通に国道135号を行けばもう少し早く行けるだろう。

 

今回、伊豆半島を反時計回りに回っていたが、日本の自転車で海岸線を走る時の原則は時計回りである。自転車は左側通行なので、海の真横を走るには時計回りに走るのがいいのだ。

国道135号は車が多く、景色がいいところで海側に渡るのに苦労した。
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尾ヶ崎から、伊豆大島が見える。明日は伊豆半島に渡るのだ。

 

本当に平坦なところがない。斜度自体は10%未満がほとんどでギアも余裕を残していけるが、うんざりしてくる。

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一時間半ほど走り続け、コンビニで休憩。家族からLINEが届いていたのでしばらくやり取りする。一人の時間を貰えて本当にありがたい。

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何度も続くアップダウンにやられながらも、無事にこの日も夕方にキャンプ場に着いた。
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汐吹キャンプ場はある意味興味深いキャンプ場である。伊東市景勝地の片隅にあり、キャンプ場自体には何もないが、すぐそばに水場とトイレがある。

あらかじめ予約をしておき、キャンプ場に着いたら電話して、オーナーにお金を渡す、というシステムだ。ちなみに一泊1000円。

私の他に2つのテントがあったが、いずれもソロキャンパーのようだった。
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伊東まで来たら行くところは一つ。

温泉である。
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キャンプ場のオーナーに教えてもらった共同湯は休みだったので松原温泉に行く。

番台のあるところなんて久しぶりだ。料金も安い。地元の人たちだろう、お年寄りが新年の挨拶をしながら楽しそうに話している。いいな。

 

二日間とはいえ、久しぶりにキャンプ道具を満載した自転車で走るのは疲れた。熱い温泉が軋む体には嬉しかった。

 

温泉の後、買い出しをキャンプ場に戻った。

 

コンビニで買ったクラシックラガーを飲み干すと早々にテントに入り、寝袋に潜るとすぐに睡魔に襲われた。

若い頃はこんなことを1ヶ月とか続けていたな、と一瞬考えたが、やっているとそれが日常になっていくんだよな、と思い出した。


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伊豆半島へ - キャンプツーリングday1 -

7時9分の豊橋駅発熱海行き普通電車は私が乗り込んだときにはほとんど満席だった。

輪行バッグを出入口近くの壁に立てかけ、ストラップで固定すると空いた席に滑り込む。

みんなどこまで行くのだろう。若者のグループからお年寄りまでたくさんいる。

そんな乗客たちの様子をぼーっと見ながら、物思いに耽った。

 

今回、旅に出ようと思ったのは年末年始にまとまった休みが取れることになったという、まあ分かりやすい理由だが、行き先については海外も含めいろいろ考えた。ただ、旅のスタイルは普段できない自転車でのキャンプツーリングにこだわりたかった。

 

海外に行くには時期的にエアチケットが高すぎることと、そもそもの準備不足、また飛行機輪行での遠征も考えたが、結局輪行することには変わりなく迷った挙句に、伊豆半島伊豆大島に行くことにしたのだった。

 

清水駅で電車を降りると重たい輪行バッグを抱えて駅を出る。自転車とキャンプ道具の入った輪行バッグは恐ろしく重い。

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駅前の広場で輪行バッグからバイクと荷物を出して組み立てを始める。

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私が使っている輪行バックは、ホイールを入れるポケットが付いているタイプでかさばるものの、一緒に荷物がたくさん入り、キャンプツーリングには使い勝手が良い。

10分ほどで組み立て、清水港に向かって走り出した。駿河湾フェリーで清水から伊豆半島西岸の土肥に向かうのだ。

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清水港からはうっすらと富士山が見えた。さすが静岡県である。お隣の県ではあるが、富士山が大きく見えると遠くに来た気がする。

フェリーはあらかじめ、ネット予約してあり、桟橋に着くと「予約の人?」とフェリー会社の人が声をかけてくれる。一旦建物の中で受付を済ませ、誘導に従って自転車を止めた。

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フェリーへの乗船を待つ間、岸壁に立っていた海上保安庁の職員の方が話しかけてきた。「自転車で行ってキャンプされるんですか?いいですね。」

聞けば、この方の自転車をされるそうだ。勤務中なので、あまり話せないようだったが、興味ある人に話しかけてもらえるのは嬉しかった。


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時間になり、自転車とともにフェリーに乗り込んだ。ちなみに駿河湾フェリーは500円の追加料金でそのまま自転車を乗せることができる。
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フェリーは1時間ほどで、土肥港に着いた。

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昼少し前だ。港の周りは特に何もない。私はすぐに走り出した。

伊豆半島には、何年も前にマウンテンバイクのライドに来ている。その時は天城から下田方面へ走ったはずだが、半島の真ん中も、海岸線も、とにかくアップダウンだったと記憶している。

私は土肥からから南に向かった。予想通り、道はアップダウンの連続で思うようにペースが上がらない。

この日のキャンプ場は、伊豆半島最南端の石廊崎にほど近いと入間という地域にあるところを予約してある。土肥から距離にして55キロというところで、午後いっぱい走れるので、普段ならどうという距離ではないが、荷物満載した自転車でアップダウンがある道を思うと、日没までに現地に着くかどうか微妙なところだなと思った。

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恋人岬に少し立ち寄り、そのまま西伊豆町宇久津へ。

昼食に「八起鮨」という店に入る。

私は自転車をする時、バイクツーリングの地図であるツーリングマップルを使用しているが、そこで紹介されているお店で、小アジの寿司のお店だそうだ。

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年配のご夫婦がやっている小さなお店。
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小アジのお寿司もさることながら、一緒についてきたカサゴのお吸い物が大変おいしい。臭みがなくカサゴの旨味がたっぷりの出汁が素晴らしい。またカサゴが丸々1匹入っているので、とても食べ応えがあった。

会計を済ませ、店を出ると、年配の奥さんが外で見送ってくれた。ああ、旅に戻ってきたんだなと思う。

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この日は夜から雨の予報だったが、走っている間は、幸い何度か晴れ間がのぞいていた。昔、和歌山県を走った時にも感じたのだが、太平洋岸は海が明るい。ダウンの続く道には、正直うんざりしたが、透き通った美しい海の走るのはとても気持ちが良かった。
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松崎町に入る。この街は、伊豆トレイルジャーニーの起点として、有名な街で、私の仲間のトレールランナー達にはよく知られた場所だ。キャンプ場周辺の入間には商店がないようなので、ここで食品やビールなどを買うことにした。

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最近私は旅先で地元のローカルスーパーに楽しみにしている。特に沿岸地域では売られている魚の種類などに特色があり、地域性を感じることができ、とても楽しいのだ。

今回寄ったのは、スーパーサンフレッシュ。店の看板の上にはないものはない、と書かれている。私はてっきり何でもあるという意味だと思っていたが、肝心のビールがなく、「あれ?」と思っていたが、何でも取り扱っているという意味ではなく、諦めてね、の意味だったようだ。いさぎよい。
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店内には激安の魚が並んでいた。お店の方に写真の撮影許可をもらいつつ、何故こんなに安いか聞くと、新年早々で新しい魚が入っていないので在庫の魚を安く出しているのだという。
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店には伊豆名産の塩鰹が置いてあった。一匹はさすがに持て余すので買えなかった。

私は夕食用にアジのフライと地元産の秋刀魚の干物を買った。

ちなみにビールはとなりのコンビニで無事に調達できた。

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日暮れまであと2時間余り。地図を見ると石部の棚田そばの道が見事に2回へアピンを描いている。

やれやれ。

諦めて登っていく。キツいところで13%ほど。

荷物は重いがバイクはよく走っているのを感じる。ギアもリアの一枚を残して踏んでいける。足は何とかなる。ただ辛い。

これから先もこんなことの繰り返しだろうな、と心の中で理解した。

 

何気なくGoogleマップでキャンプ場までの時間を調べると予定と違うルートを案内してきた。変なルートだと思ったが、予定したルートより距離は若干増えるものの、起伏は少ない。

私はGoogleが進めるルートで海岸の国道から内陸に入り、小さな県道をまずまずのペースで走り抜けた。

 

周囲が暗くなり始める頃、入間キャンプ村をを経営する入間荘に着いた。予約してあったので、入間荘の方は私の姿を認めると「あ、キャンプ場の予約の方ね。暗くなる前に着いて良かったよ。」と声をかけてくれた。

簡単に手続きと支払いをし、キャンプ場に行く。オーナーさんはわざわざキャンプ場まで案内してくれた。

キャンプ場は私以外に2組。大きなテントのソロキャンプのおじさんとハスキーボイスのおばさんの声が聞こえる、こちらも大きなテント。こちらは何人かいるようだ。

オーナーさんは「ここ使うといいよ」と入り口近くのサイトを勧めてくれ、場内を簡単に案内すると去って行った。

 

「ふぅ。」

私はバイクから荷物を下ろし、テントを張り始める。予想はしていたが、初日から中々きつかった。

夕食は松崎町サンフレッシュで買った干物焼き、アジのフライを炙った。

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雨が降り始めてきた。

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お約束のビールを飲みながら夕食を食べ終わるとすぐに睡魔が襲ってきた。

翌日は伊豆半島東側をほぼ走破しないといけない。まあ頑張るしかないな、テントに当たる雨の音を聞きながらすぐに眠りに落ちた。

林道の可能性 - ぽたび林道テストライド -

東栄町観光まちづくり協会が「ぽたび」の名前で町内のサイクルガイドツアーを行っている。

 

私は「ぽたび」立ち上げの頃に何度かモニターツアーに参加させていただいているのだが、今回、新たな試みとして、林道をE-マウンテンバイクでツアーするモニターツアーを実施するということで、ツアーに呼んでいただいた。

 

今回のツアーは東栄町の中心にある拠点施設「まちの縁側ぽたび」から町の周囲を囲うようにそびえ立つ山々を縫うように林道を走るルート。

普段は小径車のE-bikeでツアーを行っている「ぽたび」だが、今回はE-MTBを用意して林道を行くのだ。

私もE-MTBを用意してもらえたのだが、東栄町の林道がどんな感じか自分の足で確かめてみたい、ということもあり、自分のMTBで参加した。

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参加者は、地元でE-MTBを乗っている方や「ぽたび」のガイドの方、浜松の自転車屋のオーナーさんなど、東栄町にゆかりのある方を中心に10名ほど。

 

簡単に自己紹介をして、早速ツアー開始。

まちづくり協会の伊藤くんが、先頭で走っていく。

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何度か走ってことのある道をしばらく行き、新本郷トンネルの脇から最初の林道、林道東山線に入っていく。

道は綺麗な舗装路。林道と聞いていたので、グラベルかと思っていたので少し拍子抜けした。

アプローチはやや急な坂道だったが、マウンテンバイクのギア比なら全く問題なかった。少し汗をかきながら他の参加者とサドルトークを楽しみながら上がっていく。斜度は10%前後といったところで、ペースさえ無理しなければ自走でも問題ない斜度だ。

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林道の途中で、バイクを止め伊藤くんが地形の説明をしてくれる。柱状節理という火山活動でできた地層についてのもので、東栄町には各所で見られる。伊藤くんの説明も慣れたものだ。

 

そこからしばらく行くと町内を一望できるスポットに出る。
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すごいな。

 

東栄町に来るようになってずいぶん経つが、こんな風に町を見下ろしたことはない。

しかも林道からである。

私はMTBもグラベルバイクも乗るので、様々な林道に行くが、そのほとんどが眺望がよくない。ほとんど間伐も行われず、森林に覆われているところがほとんどだからだ。

 

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この林道からの眺望の素晴らしさよ。

上った先にある景色の美しさ、というサイクリストなら誰もが求めるものがそこにあったことがシンプルにうれしかった。

また林道から見下ろす東栄町の景色が新鮮であった。

地元の参加者の方が、見える集落がどの集落かとか、どの山なのかとか解説してくれて、「ああ、あの山なのか」と認識を新たにした。こうした地元の方の解説も今回のツアーで楽しめた点である。


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少し移動して、もう一つのビューポイントへ。

そんなに移動していないのだが、同じ東栄町が角度を変えるとまた違って見えて非常に興味深い。奥三河のナイアガラとして知られる「蔦の淵」が正面に見えた。


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ここでコーヒーブレイク。地元のスイーツ店の焼き菓子を出してもらった。


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コーヒーを飲むだけで画になってしまうような素敵なビュースポット。
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私は自分のMTBの写真を撮った。

 

コーヒーブレイクの後は、林道小田沢登線を下っていく。

ここは未舗装となっており、ほかの参加者には申し訳なかったが、オフロードの下りを楽しみたかったので前に出させてもらった。

オフロードといっても、そこまで荒れておらず、勢いに任せて下って行って特に不安はなかった。あの感じならグラベルロードでも問題ないだろう。

 

ここまで走って約半分。

お楽しみのランチタイムだ。

ランチ会場は川角の集会所だったが、壁紙が不思議で、他の参加者の方と「?」となっていた。
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三河ではときどきこういう「?」なとことに出会す。

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ランチは東栄町の料理旅館、大崎屋さんのお弁当。そろそろ大崎屋さんのお弁当が食べたいなと思っていたので、私としてはとても嬉しかった。個人的には、美しく焼かれた玉子焼きが最高だと思っている。

もっとも、東栄町の飲食店はどこも非常にレベルが高いので、ほぼはずれはないと思って大丈夫なのだが。


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午後からは小田線を進んでいく。一旦お昼で集落に降りたため再び上りだ。この林道は舗装路である。

 

走りながら周囲の木々を見ながら、森林組合の方と製材所を営む参加者の方がいろいろ教えてくれる。

今回モニターツアーなので偶然の参加者なのかもしれないが、ガイド側にいていただいてもいいくらいの興味深いお話だった。


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急な上り坂の途中に埋もれた鳥居があった。小田の集落跡である。

こんな山の上に集落があったのか、と思うが昔はそれだけ人がいたということなのだろう。


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小田の集落跡を越えるとまた開けた場所に出た。

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東栄町の林道は眺めがいいところが多くて、本当にいいな。次は仲間とロードで来たい。
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小田線から名倉地区へ。ここにも集落跡があったが、こちらは30年ほど前まで人が暮らしていたそうだ。
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なんとか形を保っている建物や苔むした石垣がそこに確かに存在した暮らしを思い起こさせた。


名倉からは林道を下り、川角地区へ。

東栄町のパン屋さん「ピッコロパン屋」さんに立ち寄る。夕方で物がないかなと心配していたが、この日は幸か不幸か商品がまだ残っており、我々はお土産を買うことができた。
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その後、スタート地点の「まちの縁側ぽたび」に戻って一日の振り返り。

東栄町役場の方によれば、東栄町には林道が52路線あり、そのうちの約半分が舗装路だそうだ。

 

私はこれだけ景色のいい林道なら、もっとPRすれば、ロード乗りは勝手にやってると思います、と意見を述べた。

今回、未舗装路はわずかであったが、未舗装路中心に走れるなら、グラベルロード乗りもやってくると思う。

 

ツアーとしての可能性はもちろん、東栄町の林道の持つポテンシャルを強く感じたモニターツアーだった。

個人的に未舗装の林道を教えてもらおうと心に誓った。東栄町を起点にグラベルキャンプツーリングなんて最高じゃないか。

 

そんな妄想をしながら、家路に向かい車を運転していたが、役場の山下さんから「ヘルメット忘れてませんか⁇」と電話が。

痛恨の忘れ物であった。。


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そうそう、東栄町観光まちづくり協会では「まちの縁側ぽたび」拠点施設整備のため、クラウドファンディングを実施中である。


https://camp-fire.jp/projects/view/710811?utm_campaign=cp_po_share_c_msg_mypage_projects_show

 

「ぽたび」をはじめ、身の丈にあったチャレンジを着実に頑張っている東栄町観光まちづくり協会さんをぜひ応援していただきたい。

 

 

秘境駅を巡る② - 飯田線輪行 -

昼食の後、県道へ出ると道は下り基調。

勢いよく県道を下っていくが、私はブレーキをかけた。ガードレールの遥か向こうに対岸の谷と山々が雄大に広がる景色が広がる。美しい伊那谷の風景。

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ああ、ここは前に来たところだ。

あのとき、反対側から上ってきて、ここで同じように私はバイクを止めた。「美しいな」と素直に思ったのだ。この景色を違うアプローチで再び見ることができた。今回も来てよかったと心から思った。

 

 

次の目的地の田本駅には何年も前に友人のケンタに連れられてランドナーズクラブ名古屋の金井代表と共に行ったことがある。そのときは天竜川の右岸の南側からアプローチし、田本駅から県道1号へと抜けた。

今回、その逆を行く。

 

その時の記憶でよく覚えていることが2つある。田本駅までの道はなかなか荒れたシングルトラックであることと県道に出たところに焼肉屋があったこと、である。

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目印の焼肉屋は建物自体はあったが店はもうやめてしまったようだ。

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細い道を少し進むと田本駅への道を示す看板があった。前に来た時にはなかったはずだ。田本駅を目的地に訪れる人がそれなりにいるのだろう。お陰で、田本駅に降りて行く道を見落とさずに済んだ。

田本駅への道を降りていく。山間地の急傾斜地にある畑に降りていくような狭い坂道。人一人が通れるぐらいの道幅しかない。とても駅への道とは思えない。ここは記憶の通りだ。

慎重にバイクをコントロールし、道を下っていくが、オンロード用にタイヤの空気圧を高くしたため、バイクがよく跳ねる。しかも中々の斜度で、ドロッパーが欲しいと思うレベルだった。九十九折で足をついてしまう。結局、乗車できたのは7〜8割といったところだろう。なかなかハードな道だ。
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田本駅にたどり着いた。まさに「たどり着いた」という感じだ。
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何とか一人でも来られるものだな。

いや、駅に対して「なんとか来られる」というその言い方もおかしいか。納得の秘境駅だ。

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当たり前だが、平日の昼間の秘境駅には誰もいない。

ホームを挟んだ向こうも山しか見えない。天竜川は遠くないはずだが。
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しばしホームでぼーっとする。

これはちょっとした贅沢かもしれないなと思った。

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待合室には旅人ノートが置いてあり、思いの外、遠方から人がやってきていることに驚く。私も少し書いておいた。

 

田本駅を後にする。
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田本駅から天竜川に出る道は始めに上った後は、フラットで走りやすいグラベルになる。竹林の向こうに天竜川が見える。
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天竜川に架かる吊り橋、竜田橋を渡る。記憶にあるより立派な橋だ。
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橋を渡り、天竜川の右岸に出ると次は温田駅に向かう。
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天竜川に架かる南宮大橋のワイヤーのアーチが美しい。天竜川には多くの吊り橋が架かっているが、どれも絵になる。私は残念ながら知識が無いが、誰か橋の違いを解説してくれるなら橋を巡るツーリング、なんていうのもいいな、と思った。
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温田駅に着いた。高校生のころ、この辺りの地形図を眺めながら、旅をしたらどんな感じだろうかと空想していた頃が懐かしい。
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温田駅は特急ワイドビュー伊那路の停車駅だが、やや大きい田舎の駅といった感じである。飯田線の駅はどこも雰囲気があり、油断すると長居してしまいそうだ。

 

私は帰りの電車が気になっていたので、少し写真を撮ると温田駅を離れた。

 

次の為栗駅天竜川沿いに南に5、6キロのところにある。こちらも駅に行くためには一旦メインルートを外れることになる。時間的ゆとりはなかったが、次に来るのがいつになるかわからないので立ち寄った。昔は駅の周囲に民家があったようだが、周囲が無人になって久しいようだ。

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為栗駅からは天竜川がよく見える。こちらの吊り橋も雰囲気がある。名残惜しいが電車の時間がある。為栗駅を後にし、県道へ戻った。

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為栗からはやや下り基調の平坦になる。少しでも時間が稼ぎたかったので重たいギアを踏んだ。

トンネルを抜け、山々が迫る川沿いの道をスピードに乗って進んでいく。私の知る世界の果ての辺境とは違うが、これはこれで辺境、いや秘境と言えるかもしれない、と思った。

しばらくペダルを踏み続けると平岡の町が見えた。
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山々と天竜川の間にある町。

電車の時間を気にしているにもかかわらず、独特の雰囲気のある風景を前に足を止め、写真を撮った。

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平岡駅に到着。

私はすぐに輪行袋を出すと自転車をバラし始めた。朝、輪行した経験が生きて帰りの輪行はスムーズに出来た。電車まで20分ある。

時間は短いが平岡駅の温泉に入ることにした。

平岡駅は駅としては無人で切符を買うことはできないが、「ふれあいステーション龍泉閣」という温泉宿泊施設が入っており、日帰り温泉もある。

一日走って汗だくになったので、汗を流せるだけでもと、温泉に寄った。

湯船に浸かると熱めの湯が体に染みる。長居は出来なかったが、温泉に入れてサッパリした。

 

温泉を出て、そのままホームに向かう。電車はすぐにやってきた。結構ギリギリだったな。

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電車は予想通り空いていた。

輪行した自転車を車両の端に固定すると私はシートに身を埋めた。

 

最後は少し慌ただしかったが、思いつきで出かけた輪行ツーリングにしては悪くなかった。

次はどの路線で輪行しよう。

早くも私は次の輪行ツーリングを考え始めていた。

 

 

秘境駅を巡る① - 飯田線輪行 -

まだ暗い夜明け前の豊橋駅でバラした自転車を広げた輪行袋に納めていく。

輪行袋はホイールを収めるポケットが付いているタイプで嵩張るが自転車を入れるのは容易だ。私は10分ほどで作業を終えた。

その場を離れる前に周囲を確認する。工具や外したペダルを置き忘れた、なんて話はよくあるだが、致命的なトラブルだ。

大丈夫、忘れ物はない。

私は輪行袋を肩に担ぐと2階のコンコースに向かう。構内のコンビニで朝食とコーヒーを買い、そのままJRの窓口に行く。

天竜峡まで。」私はそれだけ言うと女性の駅員さんは慣れた様子で切符を発券してくれた。

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私はJR飯田線豊橋天竜峡行きの始発電車に乗り込んだ。
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始発の飯田線はほとんど乗客はいない。

私は車窓の風景をぼーっと眺める。以前は新城に通勤で使っていた飯田線。見慣れた景色が流れていく。

 

飯田線輪行して飯田線無人駅、特に秘境駅と言われる駅を巡ろうと前から考えていた。もう何年も前になるが、紅葉の季節に友人にそんなサイクリングに連れてきてもらったのだが、非常に印象的で、また行きたいと思っていた。

そんな折、急に休みが取れることになり、私はほんの思いつきで日帰り小旅行に出ることにしたのだ。

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自転車旅のスタートに決めた天竜峡駅までは50駅あり、所要時間は約3時間。

見慣れた新城を抜け、静岡県に入ると周囲の山々が険しくなり、集落が減ってくる。

浦川で地元の高校生が車両に乗り込んでくる。ああ、飯田線は生活の足なんだな。学生たちは佐久間で降りて行った。

 

私は朝食に買ったサンドイッチを齧り、スマホで行き先の情報を調べ始めた。

しかしトンネルの多い飯田線は電波状態がよくない。「そうだったな。」私はスマホで調べるのを諦めた。

 

目を閉じて、しばらく眠ることにした。

 

平岡を過ぎた頃、目を覚ました。駅で電車を降りた老人が電車に乗る男性に話しかける。顔見知りらしい。飯田線はこうして田舎の人を繋いでいるのだ。なんだか飯田線らしい光景だな。

 

電車が天竜峡駅に着いた。乗客が一斉に降りていく。ホームで母親に連れられた女の子に「おはようございます!」と元気よく声をかけられた。少し私は驚いたが私も「おはようございます!」とはっきりした声で答えた。清々しい朝だ。
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天気は快晴。電車の中は少し寒かったが、快晴の天竜峡は暖かかった。

飯田線にしては珍しい有人の改札で駅員さんに切符を渡すと駅舎の外で自転車を組み立て始める。

 

駅を掃除していたおばさんに「前にも自転車の人が来たよ」と話しかけてくれる。なんとなく遠くに来た感覚になってきた。

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今回選択した自転車はリッチーのグラベルバイク。旅するバイクとして組んだ自転車である。荷物積載の拡張性が高く、ギアのレンジも幅広く設定してあり、厳しい地形にも対応できる。

私はバイクを組むと天竜川に架かる橋に向かって走り出した。

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まずは三遠南信自動車道の橋に設けられた遊歩道「そらんぽ天竜峡」を目指す。

 

南信州はしばしば走りに来ていたが、天竜峡付近はあまり走った覚えがない。駅の周辺を離れていくといくつもリンゴ農園があった。
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リンゴというともっと北のイメージがあるが南信州でもたくさん作られているようだ。


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そらんぽ天竜峡に到着。自転車は降りて押して行くのであれば渡ることができる。

 

はるか下には天竜川。

 

ビューポイントで写真を撮ろうとしているとタイミングよく、ちょうど飯田線の列車が通過して行くのが見えた。

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地図を確認し、最寄りの飯田線の駅を確認する。そらんぽ天竜峡の近くに「千代駅」があるようだ。

今回のメインルートに選んだ県道1号富山佐久間線。天竜川の東側、伊那谷の高いところを南北に走る道である。

 

千代駅へは富山佐久間線から天竜川に向かって沢沿いの細い道を下っていく。

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こんな人気のないところに駅があるんだな。さすが飯田線。細い道の行き止まりに千代駅はあった。

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ホームと小さな待合だけの小さな駅。ただこうした駅は飯田線では珍しくない。
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千代駅には来訪者用のノートがあったが、あいにく私はペンを持っておらず、何も書けなかった。f:id:independent-traveller:20231012214207j:image

県道へ戻る途中、城のような立派な石垣の民家が目に入る。このあたりの歴史が少し気になった。歳を重ねて、ちょっとした史跡に目が向くようになってきたと思う。

県道1号はなかなかのアップダウンを繰り返す。私は躊躇なく、フロントギアをインナーに入れ、上り坂を淡々と踏んでいく。結局これが速いのだ。

次の駅である「金野駅」は県道から3キロほど離れている。少し遠いがまだ午前中である。次にいつ行けるか分からない、そう考えて県道1号から脇道に降りていく。
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途中美しい棚田に出会う。今でも地域の人により守られているのだろう。きちんと手が入っているようだ。

道は車一台がやっと通れる程度の道幅で、タイトで急な下りが続く。これ以上降ると戻るのが大変だな、と警戒するが道は容赦なく川の見える谷底近くまで降りていく。結局、小さい峠一つ分くらい降りてしまった。

今回も道の行き止まりが駅であった。
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金野駅秘境駅ランキングの6位と全国でもトップランク秘境駅である。
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最寄りの集落は県道1号の近くにしかない。なぜこんなところに駅が、と思うが、鉄道が開通した当時は集落から多少離れた場所でも都市と繋がる駅があることが重要だったのだろう。きっとこの距離でも駅があることが有り難かったに違いない。
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そんなことを考える一方、自身としてはあの下りを戻ると思うとぐったりした。時刻表を確認し、ちょうど電車が来たら一駅輪行しようかと思うが、そこは飯田線。まだ30分は来ない。

私は諦めて来た道を戻っていった。県道に戻る頃には正午を告げる田舎の音楽が流れていた。

 

県道1号富山佐久間線は相変わらずのアップダウンだ。昔、南側から来たことがあるが、こんなにアップダウンだっただろうか。

 

少しお腹が空いてきた。

金野の集落は泰阜村になるが、村のホームページによると「村内に信号、国道、コンビニ、スーパーはない」らしい。Googleマップで調べると役場の近くに商店と食堂はあるようだ。

 

役場の辺りまで出て、地元の商店「東商店」に入る。
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懐かしい感じの田舎の雑貨屋という感じで食料品を中心に生活用品が売られていた。

私は土産にゆずようかんと日本酒「喜久水」を購入。
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続いてお昼ご飯である。


少しでも進みながら、と思い、東商店の南にある「あいパークやすおか」の中にある「おより亭」に向かう。またしても上り。これが南信州の旅なのだ。

 

丘の上に建つ「おより亭」は若い男性が一人で切り盛りしていたが、タイミング悪く、7人ほどの家族が注文したところで私はしばらく待たせてもらうことにした。

昼食はタッカルビチャーハンをチョイス。
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昼食を食べながら、この先のルートを考える。

次の門島駅はパスし、以前反対側からアプローチした田本駅を目指そうと決めた。

帰りはどこかの駅から輪行すればよい。だが、駅に隣接して温泉のある平岡駅から帰るプランが理想的と考え、本数の少ない飯田線に合わせると門島駅はパスするしかない、と思ったのだ。

 

私は食堂を出ると丘を下りていった。

 

…続く

 

朝やどり vol.2 設楽町- 緩く過ごす昼さがり -

「いつメンですねぇ〜」

 

タイキくんが言うように最近のいつものライドメンバーが集まった。ダモンデのサイクリストメンバーのタイキくん、エーシ、上野さん、私の4人である。

 

夏に同じメンバーで乗鞍にヒルクライムという名のサドルトークに行ったとき、一度設楽町の駒ヶ原にある「遊べる花屋」に行きたいという話が出ていたのだが、今回ちょうど「遊べる花屋」でちょっとしたイベントがあるというのを聞き、ライドを企画したのだ。

 

仲間を誘ったところ集まったのが、いつメンだったということである。

 

設楽町駒ヶ原は設楽町の北東部に位置し、南部からはアクセスが難しいところだった。昨年、新しい広域農道が開通し、南部からのアクセスもよくなった。

しかし、駒ヶ原は標高約1000m。設楽町の中心部の田口が450mほどだから、そこからでも標高差が500m以上ある。どこからスタートとしてどう回るかはかなり悩んだ。

今回は標高を考慮し、道の駅したら付近をスタート、広域農道奥三河線で駒ヶ原、そこから段戸湖、田峯を回る60キロほどのルートを引いた。

 

道の駅したらのある設楽町清崎から田口までとりあえず上り。安沢の坂を上がって行く。

 

朝の一本目の上りなのでみんなテンポよく踏んでいく。序盤なので無理はしない。いつものように若手タイキくんがサクサク上っていく。若い頃あんな風に上れていただろうか。羨ましい。

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安沢の坂を上ると一旦、トイレ横の休憩所ですこし休む。上り区間ごとにこまめに休むのが今回の作戦である。

 

ちょうど一カ月前に豊根村茶臼山に行った際にもこの休憩所に寄ったが、そのときに比べればかなり涼しい。

次は名倉地区までの上りだ。

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設楽大橋までの道にカラーテープの巻かれた木がいくつか目に入る。建設中の設楽ダムの湖面の高さを示しているらしい。オレンジが水面より下、青が水面より上となる。ダムができたらどうなるのだろう。湖面がこの辺り、と言われてもいまいちピンと来ない。

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名倉地区までの上りは日当たりがよく、ペダルを踏むたびに汗が流れていく。しかし、日陰に入るととても涼しい。上りの頂上で後続を待つ。

近くに設置された温度計をみると21℃となっていた。この気温なら悪くない。

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名倉地区は奥三河での数少ない平場で雄大な田園が広がる。

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名倉は走っていて、本当に気持ちがいい。

南から来ようとするといくつか大きな上りをこなさいといけないので、そう頻繁に来れないが。

 

駒ヶ原に続く広域農道を一度通過し、道の駅アグリステーションなぐらへ。

こちらで再び小休止。

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みんなで名物のエゴマソフトを食べる。

エゴマの風味が香ばしいソフトクリーム。久々に食べたが美味しかった。
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上りは何度もあるが、こうして休みを取り、のんびり走るのはいいなと思った。

そして何より走るのが気持ちよくなる気温になってきた。このあたりの標高もあると思うが。f:id:independent-traveller:20230926192333j:image

道の駅から少し戻り、この日のメインとなる広域農道奥三河線にとりつく。
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新しく出来た道路だけあって道は綺麗だ。そして道を覆い隠すものがない。つまり日向をずっと走ることになった。

気温こそ高くはないが、ずっと日向は辛い。しかも中々の斜度だ。8〜10%の斜度が続く。斜度を示す黄色い看板を見つける度に「おおっ」と無駄に声が出てしまう。
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あまり眺望はないが時折、遠くまで見通せる場所が何ヶ所かあった。確実に標高を上げていることを実感する。
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遠くに茶臼山高原道路の稜線が見える。白く小さく見えるのは井山の風力発電のプロペラだろう。
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広域農道のサミットには「広域農道最高地点」の看板が。995mだそうだ。

一気に降っていく。

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降りから平坦になり、民家が見えると、遊べる花屋に到着した。

 

なんて気持ちのいいところなんだろう。

開けた場所にキッチンカーと白いテント。

これが「朝やどり」か。

この景色だけでも何だか癒される気がする。

 

我々はバイクをハンガーにかけると順番に出店者を覗いてまわる。

 

「あっ、しまちゃん!」

 

声をかけてくれたのは東栄町のお友達。

「ちょうどさっき、しまちゃんの話してたとこだよ」と話してくれた。

どんな話してたんだ?と少し気になったが、そんなことよりこうした場所で偶然、友達に会えたことがシンプルに嬉しかった。


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出店者も友達がいるので声をかける。

東栄町のゲストハウスdanonの金ちゃんは先月家族で遊びに行ったところなので「よっ!」と軽く声をかける。

金ちゃんはこの日はタコスを売っていた。金ちゃんのご飯は何を食べても美味い。danonのとなりはガチャカレーさん。こちらも先月、danonでご一緒させていただいた。

それからyamanokiのみやび。こちらはかなり久しぶりだった。元気そうで何よりだ。

 

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ざっと一周したところで遊べる花屋さんに入る。こちらは花屋さんとカフェ。ウッドデッキと黒い建物のオシャレなお店。昔は奥三河にはオシャレな立ち寄りスポットがない、と嘆いていたが、奥三河も変わったものだ。

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カフェのカウンターで店の方と軽く話す。いざ注文、と思って悩んだ結果、ノンアルビールにしてしまった。正直、ハートランドを頼みたかったが、今はこれでいい、そんな気分だった。f:id:independent-traveller:20230927224756j:image

私がノンアルビールを頼むと仲間もそれに続いた。私は野菜を売っていた出店者さんのところでポテトチップスを買って、ノンアルビールを飲みながらみんなでつまむ。


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青い空の下で、仲間とゆっくり座って他愛もない話をする。

周囲のお客さんや家族連れ、出店者さんたちが楽しそうに話している様子を眺めているとなんだかとても幸せな気持ちになった。

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ノンアルビールを飲んで落ち着いたところでランチにする。

ガチャカレーさんでカレーを食べたいがdanonのタコスも食べたい。とは言え、両方食べたいがそんなに食べれる気もしない。

そんなことを金ちゃんに言うと「あ、しまちゃん大丈夫。全然両方いけるって」とアドバンスをくれる。

ホント?と思いながら、まずはガチャカレーさんで東栄町の錦爽鳥のカレーとナスとレモングラスの合いがけカレーを注文。
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彩とりどりの野菜が美しい。素材の味を活かしたカレーは見た目を裏切らない美味しさ。そして優しかった。

上野さんと「オッサンにはこういう優しいカレーは嬉しいですね。」と話す。普通のルーのカレーがやや重たいオッサン達にも優しい素晴らしいカレーであった。

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金ちゃんの助言どおり、これならタコスも入りそうだ。

ガチャさんにご馳走様を言い、お皿を返した流れでそのままタコスを注文する。

それから、みやびのところで森の茶ソーダを頼む。

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森の茶は前から一度飲んでみたい、と思っていたがようやく念願が叶った。

これはクロモジとほうじ茶をブレンドしたものでクロモジのフレーバーが口の中に広がり、僅かな酸味が爽やかで、なるほど森の茶、なんだなと納得した。そしてこうした外でいただくのが正しいような気がした。

そんな風に過ごしているとあっという間に時間が過ぎた。いつまでもここにいられるような気がするほど居心地のいい場所だった。

ぜひまた来ようと誓った。

 

朝やどりの会場を後にし、我々は再びサドルの上の人に戻る。

遊べる花屋からは広域農道を北上し、一旦国道153号に出る。途端に交通量が多くなる。153号の区間をこなし、段戸湖方面に向かう細い道に入る。見逃しそうなところであったが、地元民のエーシが案内してくれる。


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ここからしばらく緩い上り。
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大多賀という集落を抜ける。雰囲気がいい。

そこからもまだしばらく上る。一応覚悟はしていた上りなので、タイキくんとサドルトークをしながら段戸湖まで進む。
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段戸湖到着。

ここに来るのは何年振りだろう。おそらく5,6年は来てなかったのではないか。若い頃に仲間と冬にキャンプに来たことを思い出した。最も、当時すでにキャンプ場は閉鎖されており、キャンプはダメだったと後から教えられたのだが。
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段戸湖からは田峰観音方面に向かう。

その道、県道365号はなかなかタイトな下りだった。エーシはバンバン飛ばして行くが私は慎重に降る。道は旧栗嶋村に入る。この看板はいつからあるのだろう。
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看板横の道を行くと田峰観音までのショートカットだ。ただ道は短いもののガツンとした上り。予想通りとは言え、ここまでなかなかハードなライドで正直しんどい。タイキくんを先に行かせ、後を追う。

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まあ何とかなるものだ。


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田峰観音までは下り。田峰観音の直売所で最後の休憩。休憩ばかりの一日だが、これでいいのだ。

この日は田峯地区が一望できる「だみねテラス」でカフェ営業があり、我々はそれぞれドリンクを頼んだ。地元民のエーシはこれまた地元のおじいさんおばあさんに「おい、久しぶりだな」などと話しかけてられており、さすがだなと感心した。

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私が頼んだドリンクはシソソーダ。爽やかな酸味が疲れた体に沁みる。

全体的にコースはきつかったと思うが、休憩多めにしたので、楽しく走ることが出来たと思う。

 

田峰観音を後にするとスタートの道の駅したらに戻った。ライドのほとんどを設楽町で過ごしたが充実のライドであった。設楽の懐の深さを実感した一日だった。

息子と二人キャンプ - リバーベース塩瀬 -

ロードバイクで作手を回って、6月にオープンしたばかりのキャンプ場「リバーサイド塩瀬」に寄ったのは8月のこと。

 

その時にキャンプ場内を案内してもらい、管理釣り場で子供でも簡単に釣りをやらせてもらえるのがいいなぁ、と思っていた。帰宅後、そのことを息子に話すと「釣りとキャンプしたい!」と乗り気であったので、息子と初めての二人キャンプに出かけることになった。

 

自宅のある豊橋市から車で約1時間。

 

我々は二時ごろキャンプ場についたが、すでに多くのお客さんで賑わっていた。

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受付はスノーピークのコンテナハウス。カッコいいな。コンテナの中はしっかり空調が効いている。予約時にオンライン決済になっているので、チェックイン時に特に支払いはない。

若いスタッフの方が施設の説明をしてくれる。シャワーは予約になっており、我々が行ったときにはほとんど予約で埋まっていた。まあ、となりに川もあるし、男二人なので何とでもなる。

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リバーサイド塩瀬には車の乗り入れができるオートサイトと車の乗り入れ不可のフリーサイトがあるが、今回、我々はフリーサイトを予約した。

二人一泊分の荷物は大した量ではない。駐車場から遠いと少し大変かなと思ったが、駐車場のスロープを降りるとすぐフリーサイトだったので荷下ろしには苦労しなかった。

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グラウンドシートを敷き、息子にペグを打たせる。まだ力が足りず、しっかりと地面に打てないが初めはこんなもんだろう。

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今回、二人キャンプにあたり、友達から二人用のテントをお借りした。私が持っているのはファミリー用の大きいのが1つと、ソロ用のテントが2つである。MSRのエリクサーなんて高いテントはこんな時でないと使う機会はない。

テントの隣にはかれこれ20年以上使っているイスカのソロ用のタープを立てた。当時イスカはテントも出していた。懐かしい。
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息子はテントの設営が終わると、すぐに釣りがしたいと騒ぎ出すが、テントにマットを広げてシュラフを出し、衣類などをテントに入れるところまでやらせる。私は旅していた頃の習慣で先にここまでやらないと落ち着かないのだ。もっとも、ビールは既に一本空いていることもしばしばだったが。

 

ビールを我慢して、息子と受付に行く。受付で釣りの申し込みをする。初心者でも出来るエサ釣り体験をお願いした。エサ釣りの体験料と別に釣った魚の持ち帰りが一匹400円。釣った魚はその場で自分で捌き、焼いてもらうこともできる。焼いてもらう場合は別料金。

我々は2匹分の持ち帰りにして、焼くのは自分たちの焚き火台で焼くことにした。

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釣り堀エリアでスタッフのお兄さんの指導の元、釣り開始。エサはコーン。コーンで釣れるの?と思っていたが、一匹目はすぐに釣れた。

魚はホウライマス。このあたりの種類らしい。釣り掘には他にニジマスを放しているそうで、最近の暑さで釣り堀の水温が上がり、なかなか魚を放せていなかったそうだ。

二匹目はしばらく釣れずに苦戦していたが、スタッフのお兄さんがハリスの長さを調整してくれたり、エサを落とすポイントなどを教えてくれたりして何とか2匹目を釣り上げた。20センチ以上あるのではないか。いいサイズだ。

 

スタッフ方は若いお兄さんが二人だけなので、釣り体験もお客さんが増えてくると大変そうだった。

私たちはお礼をいい、ホウライマスを捌くことにした。流し場には写真でわかりやすく捌き方が説明してある。まあキッチンバサミでお腹を切って中を出すだけだ。息子はハゼなら自分でお腹を出すくらいは出来る。ヌメリのある魚の体を押さえるのに苦労したようだが、あとは上手くやっていた。細かい血合いは私が最後に綺麗にして作業完了。

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自分たちのサイトに戻り、火を起こす。

消し炭を持ってきているので火をつけるのには苦労しなかった。今回は携帯性重視でメッシュタイプの焚き火台を持ってきていたので、その上に焼き網を置き、ホウライマスを焼く。
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魚の焼けるいい匂いが鼻腔をくすぐる。

息子は大きいほうのホウライマスを食べる、と言うので、私は小さいほうを貰い、軽く焼いて燻製器に入れた。

息子は大きいホウライマスを順調に一匹食べてしまった。普段は魚はそこまで食べないのだが。

自分の釣った魚はうまいもんな。よしよし。

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私の方のホウライマスもいい感じに燻し上がった。

 

いやはや、素晴らしい出来栄えだ。

川魚の燻製なんていつぶりだろう?

 

ビールが美味い。


そのまま夕食になだれ込んでいく。

息子がジャガイモと里芋を焼いて食べたいと言っていたので、ホイルに包んで焚き火に放り込んで焼くが、魚でお腹が膨れたのか芋の方はあまり食べなかった。
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私は自分のつまみ用に豊根村林商店の塩麹フランクを燻製する。林商店のフランクはノンスモークで、肉の旨みが前面に出ているフランクだが、スモークすることでより味に深みが出る。

スモーカーを持ってくるか迷ったが持ってきて正解だった。
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結局息子はその後の焼肉も二切れ食べただけで夕食は終了。

私は焼肉のあと、やきとり缶詰でゆっくり飲もうと思っていたが、予想より息子が食べなかったので私でいろいろ食べたら私も満腹でやきとりまで辿り着けなかった。

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また次の楽しみにしよう。


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何本目かのビールを空けると眠くなってきた。

手が掛からなくなったとは言え、息子と二人きりで疲れたんだな、と思った。

時間を見るとまだ9時前である。だが時間は関係ない。私は火の処理をするとテントに入った。

 

テントを叩く激しい雨音に目が覚めた。

何時間寝ただろう。

 

雨が止むのを待ってテントを出る。

外は満天の星空だった。

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さすが星空の聖地奥三河である。

 

星空を眺めがら、スキットボトルのウィスキーを飲み、次の旅はどこに行こうか、と取り留めもなく空想した。

 

未知の世界への旅か、昔旅したところへの再訪か、誰かに会いに行く旅か。

 

どれも魅力的に思えた。

 

テントに戻り、旅への思索をしているうちに再び眠りに落ちた。何とも幸せな寝入りだろう。

 

朝方まで断続的に雨が降ったようだ。f:id:independent-traveller:20230919210443j:image

テントを出ると長年の習慣に従い、とりあえずコーヒーを淹れる。

息子にはココア。子供たちはキャンプの朝はココアが飲めると期待しているのだ。

朝食は前日食べきれなかったジャガイモをマッシュし、同じ残っていたフランクを小さく切ってジャーマンポテト風にする。
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息子は朝からよく食べた。
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朝食後、テントを乾かす間に川へ遊びに行く。
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キャンプ場の横を流れる島田川でしばし水遊びを楽しんだ。リバーサイド塩瀬ではライフジャケットの貸し出しがあるので、川遊びの際には借りるといい。

 

テントが乾いたところでキャンプサイトを撤収。

二人のキャンプは大したものはないので撤収も早い。

 

車に乗り込む時「また来たいな」と息子が言う。

 

私の大好きな奥三河に息子が好きな場所が増えたことがとても嬉しかった。


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