定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

風の伊豆大島 - キャンプツーリングday3 -

夜明け前に起きて、テントから半身出してコーヒーを淹れる。疲れているのに早起きしたのは熱海から9時10分発の高速船に乗り、伊豆大島に行くためだ。

自転車を高速船に乗せるには輪行状態にしなくてはならない。伊東市の東側に位置する汐吹キャンプ場から熱海のフェリー乗り場まで約一時間半。

輪行する時間を考えると8時半には熱海に着いていたい。昨日買っておいたパンを食べると暗いうちにキャンプ場を後にした。

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伊東から熱海に向かってペダルを踏む。だんだんと周囲が明るくなっていく。朝日を背中に浴びながら熱海を目指して進む。朝焼けの海が美しい。
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これまでの道のり同様、熱海までは小さな峠を越える。次の町、次の入江に行くというのは大なり小なり山を越えていくのが、伊豆のルールだ。

 

熱海のフェリー乗り場は国道に特に案内看板もなく、危うく行きすぎるところだった。

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受付を済ませ、自転車を輪行状態にする。

東海汽船の高速船はインターネット予約で4480円。自転車は手荷物料金1000円かかるが、持ち込みが可能だ。
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高速船は一時間ほどで伊豆大島へ。船内のアナウンスを聞いていると船は岡田港に着くという。ツーリングマップルの航路図でてっきり元町港に着くと思い込んでいた私は、予定が狂ったなと思った。私は翌日夕方のフェリーで帰る予定なので、まあ時間は十分にある。

ただ、フェリーターミナルの中の運航表を見たが、どこの港か書いていない。カウンターの人に聞くと「その日の朝7時に決まる」とぶっきらぼうに言われた。

これはカルチャーショックであった…翌日の予定はどうしたらよいのか。

 

後から聞いたが、伊豆大島は常に強い風が吹いており、その状況でその日の港を決めるそうだ。


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伊豆大島には初上陸となる。島に来るのは久しぶりだ。

「暑いな」到着したのは10時過ぎ。まだまだ暑くなるだろう。私は自転車を組み立て終わるとウェアを少し薄いものに着替えた。

 

昼ごはんには早い時間だったが、早朝から動いていることもあり、港の向かいにある食堂「浜のかあちゃんめし」に入る。
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地方に行くとよくいる化粧バッチリのおかあさんが出迎えてくれる。私は白身魚の漬けの乗った「べっこう丼」を注文した。島のピリッとした醤油の漬けは食欲をそそり、美味しかった。
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丼についてきた汁物のアラをひっくり返すと立派な目が。少しびっくりしたが、しっかりとした出汁は臭みもなくとても美味しかった。見た目であまり食べれるところはないかと思ったが、結構食べられるとこがあって満足した。

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会計の際、化粧バッチリおかあさんに「あら、ほっぺにお米がついてるわぁ。よほど美味しかったんだねぇ」と言われた。

恥ずかしい。

「うん。とても美味しかったよ。」私は少し困った顔で笑っていたと思う。

 

早めの昼食の後、岡田港から大島一周道路に出る。とりあえず急登。この数日で見慣れた景色だ。

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伊豆半島ほどではないが、もはやお約束となったアップダウンの道。ただこの日はキャンプ場まで30キロ。寄り道し放題である。最初に見つけた「泉津の切通し」という場所による。

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まあこういうところだ。

写真を撮っていると観光客がやってきたので自転車に戻った。
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伊豆大島は椿が有名だそうだ。ツバキ公園というところでサイクリングマップをもらい、コースや立ち寄りスポットを見ていると、ツバキ公園からなかなかの登りになるということを知って軽くダメージを受ける。

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伊豆大島では行きたい場所があった。

 

裏砂漠である。

三原山の東に広がる黒い火山岩に覆われた、伊豆大島にしかない場所だ。
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裏砂漠は車両の侵入が制限されており、レンタカーでは入れない。ただ、自転車であれば、その途中までは立ち入ることができる。
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黒い砂と風の世界。大島一周道路から一歩足を踏み入れると、その途端に、強烈な向かい風が襲ってきた。三原山から吹き下ろしてくる風だ。今回、自転車がグラベルバイクであったこともあり、しばらくは乗っていくことができた。しかし、砂利が深くなり、強風が吹いたところで、私はバイクを降りて、しばらくバイクを押した。なんという風だろう。ニュージーランドタスマニア東海岸も強烈な風だったが、以上の強烈な風だ。
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「すごいところに来たな」そう思った。f:id:independent-traveller:20240110234204j:image

世界中を旅するサイクリストたちはきっと、こうした風の中、バイクを押してでも、何日でも何日でもかけて前に進んでいくのではないだろうか、ふとそんなことを思った。
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それほど、日常とかけ離れた、いや日本とはかけ離れた場所であった。

自転車で訪れることができて本当によかった。f:id:independent-traveller:20240110234142j:image

裏砂漠からさらに南に進むと、道はほぼ下り基調。
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筆島見晴台に寄るが、ここも爆風。体が冷えてきたので、ジレを着ようとするが強風でうまく着れない。ジレを飛ばしたら終わりだ。お気に入りの上になかなかの値段のなのだ。
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伊豆大島南部の波浮港に着いた。

この日はこのエリアのキャンプ場に泊まるのだ。

食料はまだ十分にある。必要なのは、そうビールだ。坂の途中にある飯田酒店に行く。

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店の奥さんに「いつもこんなに風が強いんですか?」と聞くと「今日なんか凪いでいるほうよ」と言われる。これで凪いでいるほうなのか。

島の暮らしについて少し話を伺い、店を出た。

 

この日のキャンプ場はトウシキキャンプ場。
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ネットで予約は必要だが、利用は無料。施設は驚くほど綺麗だ。

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ただ風は猛烈に強い。木が曲がったまま育っているのを見るのは、若い頃に行ったタスマニア以来だ。

キャンプ場には二つの並んだテントとUL系のテントがそれぞれ張られている。

私もテントを張ろうとするが風が強すぎて何度もテントが飛びそうになる。タスマニアでもここまでの風の中テントを張ったことはない。

 

ULテントの若者が「何なら炊事場の中で張ったほうがいいですよ」とアドバイスしてくれる。下がコンクリートではペグが打てないので、炊事場の側に設営することにした。

しっかりペグダウンして何とか設営を終える。
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日が暮れてきた。強風を浴びながらキャンプ場の端の崖の方へ歩いていく。

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綺麗だな。

 

拾ってきた枝で火を起こし、カレーを温めて食べる。うちわがない、と思ったが風が強いので勝手に日が強くなる。

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先ほど声をかけてくれたULの若者と食事をしながら話をする。彼は神奈川から来ており、ゆっくり山歩きをしているそうだ。UL系のギアなどについての話で盛り上がった。

ULの若者がテントに戻った後、やきとりの缶詰を熾火であたため、ビールを飲む。
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もういい時間かな、と時計を見るとまだ8時。翌日は出港ガチャで予定が変わるから、早起きしないといけない。風が強くて、テントが揺らされて眠れないかと思ったが、疲れた私はすぐに寝てしまった。