定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

体感するということ - More you run, More you know -

ダモンデトレイルから新しいイベントが立ち上がった。

「More you run, More you know」

それが新しいイベントの名前。

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イベントのページにはこうある

 

【Event concept】
「走るほどに知る」をコンセプトに速さでも順位でもない、自分のためのランニングチャレンジ。進めば進むほど、自分を知り、相手を理解し、私たち自身、そして私たちの暮らすこの場所を、環境を、より深く、学び、知ることにつながっていく、そんな挑戦のステージ。第1回大会は私たちが暮らす東三河を海から山へと水を辿り繋ぎます。

 

具体的には愛知県東三河の先端、渥美半島伊良湖岬から東三河を代表する山、本宮山の麓までを仲間ともしくはソロで走るチャレンジで制限時間は12時間。ルートは各自で設定する。距離はルートにもよるが大体65キロ程度。

 

ダモンデ代表の山田さんからこの話を聞いたとき、出るかどうか迷った。

ランニングを始めたのは11月半ば。ランはほとんどやってきていないので、やれる気がしなかった。ただ、完走できなくても自分がどこまでやれるものなのか確認できればいい、そう思いエントリーをした。

 

私以外に、ダモンデバイクチームのタツマくんとエーシがエントリーしており、山田さんの取り計らいで3人でチームに設定してくれた。

 

大会当日。

 

夜明け前の伊良湖岬はいつもの強風だった。

西から海を渡ってきた風が冷たく吹きつける。容赦なく体から体温を奪っていく。

 

ダモンデ山田さんから簡単な説明の後、今回の企画を持ち込んだSさんからあいさつ。

参加者への感謝の言葉。

感謝するのはチャレンジする機会を与えられたのはこちらのほうである。メンバーは気心知れた三人だし、やれるだけやる、それだけだ。

 

暗闇の中、イベントスタート。

伊良湖灯台の前から各自走っていく。恋路ヶ浜に出たところで多くのチームが太平洋側の国道42号方面に消えていく。

 

我々は渥美半島の中央部を突き進むルートを選択した。

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タツマくんを先頭にジョグのペースで走り始める。

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初立ダムに着く頃、太陽が昇ってくる。f:id:independent-traveller:20240212174448j:image

「キロ6分くらいですよ。速いな。」

腕につけたGPSウォッチを確認しながらタツマくんが言う。たいていイベントで戦略を立てるのはタツマくんだ。

序盤はときおり歩きも織り交ぜながら順調に進んでいく。
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途中、畑仕事をしているおじさんに話しかけられる「何かのイベントかい?」

我々がイベントの内容を説明すると「楽しそうだね!」と笑顔で送り出してくれた。我々も手を挙げて笑顔で答える。

後から思えば、この頃は余裕があった。
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半島中央から三河湾側の一旦、国道259号に出て、再び半島の真ん中を進む。

強い風と単調な道でペースが上がらない。

 

芦ヶ池のあたりでダモンデメンバーの近藤さんとタツマくんの奥さんのMさんが待っていて、応援と補給を出してくれる。単調な区間であったので本当にありがたかった。ふたりはこの後も要所要所でサポートしてくれた。

 

ここからしばらく走ったり歩いたりを繰り返すが、思うように距離が伸びない。

 

「休憩だ。」

スタートから約25キロ。コンビニに入り、インスタントのうどんを食べる。

私は自転車のロングライドのイベントの経験上、食べれるうちは素直に食べたいと思うものを食べるようにしている。

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タツマくんとエーシはと言えば、同じものを食べていた。仲良しだな。

塩分も取りたいので汁まで飲んだ。

 

休憩したコンビニから道の駅田原めっくんハウスまでほぼ下り。できるだけ走る。

 

思いの外、直線が長い。

自転車だとあっという間なのに。

 

まだかまだかと思うとようやく道の駅が見える。

疲れた私は「メロンソフト美味しいよねー。」と大きな声で私が言うと

「ソフトクリーム食べましょう!」

タツマくんが答える。

 

「しょうがないなぁ。」と言いながら笑顔で道の駅に吸い込まれていった。

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疲れたときのソフトクリームはとてつもなく美味しい。リセットして再スタート。

予定のコースは道の駅からやや南に折れて国道を回避する道だが、時間に余裕がないので最短となる国道259号を行くことにする。

 

上りを頑張ってランでこなす。時間を何とか稼ぎたい。しかし、だんだんとランを維持できる時間が短くなっていく。

我々の中でトレラン歴が一番長いタツマくんはさすがで、少し歩くと再び走り出す。エーシと私がそれを追うというのを繰り返した。

 

これがエーシと私だけだったら、リタイアしないまでも早々に走るのをやめていたかもしれない。

 

国道沿いを離れ、豊橋鉄道渥美線の沿線を進んでいく。30キロを過ぎたあたりで3人の足が揃わなくなる。

タツマくんはまだ走れる。私はあまり走れないが、早歩きなら問題ない。エーシは歩くより走る方が辛くないという。

私は歩かせてもらいながら、騙し騙しランを挟んでいく。

豊橋市に入ったあたりチーム「KuroDa monde」の女子ペアに遭遇。ランナーとトライアスリートの二人は笑顔でキャッキャと楽しそうだ。子犬のように飛び跳ねながら、我々を置いて先に行ってしまった。

 

「すげーな。あの余裕。」

私は自分がこの分野で雑魚でしかないことを痛感した。

 

大清水のファミリーマートでKuro Damoneの二人と「on」のギアに身を包んだペアに遭遇。Mさんが私設エイドを開いてくれていた。

ありがたくコーラをもらう。

 

この後も断続的に走ってみるものの、梅田川を越えたあたりから、ついにタツマくんも走れなくなり、何とか歩みを止めないのが使命になった。

 

私は腰につけたrushのヒップバッグから時折、補給食を出しては食べ続けていたが、少し胃が重い気がして胃薬を飲んだ。自転車のロングライドでもそういうときがある。

 

スタートして7時間となる頃、高師緑地で近藤さんの施設エイド。
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あさり煎餅とブラックサンダーを食べ、少しお菓子をその先の補給用にいただいた。


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我々以外の先行していた2チームも休憩していた。近藤さんに別れを告げ、豊橋市街へと入っていく。時間的余裕はないが、豊橋らしい補給をしたいとコンドーパンを目指すが、定休日。
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小池の跨線橋を避け、再び渥美線沿線を行く。学生時代よく通った道だ。

 

水上ビルまで来たところで「あ、TOYS BREWEY近いよ」とタツマくんに水を向ける。

 

「一杯だけいっときますか!」と予想通りのリアクション。

 

「仕方ないなぁ」仕方なくない私が答えた。

エーシはようやく少し休めることに安堵したようだ。

 

今回、我々は運転手もいないし、レギュレーション的にも問題ない。

店に入るとなんてことはない、客でいたのは「on」の二人だった。

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一番小さいサイズを一杯だけ注文し、5人で乾杯。美味いに決まっている。


その後近くのコンビニでしっかりと食事をし、チェックポイントに設定されている吉田城へ。

私のホームグラウンドなので私が積極的に誘導する。

 

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吉田城にはスタッフのユミコさんがいた。聞けば我々と同じようなペースのペアが多いようだ。


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吉田城から先は豊川沿いに次のチェックポイントである砥鹿神社に向かう。

もうすでに身体中が痛い。いつもなら古傷の右膝の痛みが酷いところだが、普段は痛まない足の裏が猛烈に痛い。タツマくんもエーシも似たようなものらしい。

「いずれはフルマラソンなんて思ってましたけど、走れる気がしないですね。」エーシが言う。「ああ、フルマラソンとか走る人、尊敬しかないわ。」私は心からそう思った。

自転車を長年やってきて心配機能にはそこそこ自信があったがそれだけでは何ともならないのを実感させられた。

 

道は東三河環状線に入る。歩道は広いが強い向かい風がずっと吹き続ける。

 

私は早く終わらせたい一心でペースを上げてしまう。「島田さん、エーシが来てない」タツマくんに言われて振り返る。エーシはかなり辛そうだ。

エーシに声をかけただひたすら耐える。正直、自分に余裕はない。タツマくんも似たようなものだ。

だが、砥鹿神社まであと少しだ。
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制限時間一時間あまり、というところで砥鹿神社に到着。ここまで来れば何とかなる。

Mさんと近藤さんが迎えてくれる。

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Mさんはコーラとピレーネを出してくれた。こういうのは本当に嬉しい。

休憩していると他の選手たちが続々と集まってくる。我々はみんなでゴールである本宮山の麓、ウォーキングセンターへ向かう。


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制限時間である午後6時が迫る頃、我々は無事にゴールした。

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先にゴールした選手と健闘を讃えあう。みんなどんな体力をしているのだろうか。

先週のトレイルランで初めて20キロオーバーを走ったのが最長記録だった自分には無謀なチャレンジだったが、タツマくんとエーシのお陰で途中で投げ出さずに済んだ。

そしてランナーという人たちに心から尊敬の念を抱いた。この世界での自分の立ち位置がよく分かった。

 

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こんなチャレンジの機会を与えてくれた運営スタッフの方々、サポートしてくれた仲間たち、参加者、一緒に走破したタツマくんとエーシ、みんなに感謝。

そして来週のイベントはまた運営側に回るが、前とは違う気持ちで選手をサポートできるだろう。誰かのチャレンジを支えたい、心からそう思うのだ。