定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

Damonde クルーの夏休み - 乗鞍へ -

夏の恒例行事としてダモンデのサイクリストメンバーで毎年、乗鞍へヒルクライムに行っている。

 

ヒルクライム、と言っても別にタイムアタックする訳でもなく、仲間とサドルトークと休憩を繰り返して乗鞍エコーラインを登っていくのだ。

 

遠征予定日の数日前から天気予報は雨。

 

今回はダモンデ代表の山田さんと百名山を踏破中の横田さん、ロードバイクがないタツマくんは登山。それ以外の私を含めた4人がバイクチーム。

ただ、雨が濃厚な天気予報に私も登山に切り替えようかと悩んでいた。

そんなときバイクチームの他のメンバーに相談するとそのうちの一人、エーシが「せっかく行くなら自転車がいい」と言う。

あまりそういうことを言わないエーシの一言で、私の気持ちは自転車で行く方向に大きく傾いた。時を同じくして、上野さんから参加意向の連絡が来て、私は今回は自転車で行こう、と腹を決めた。

 

遠征当日。深夜と言うべきか早朝と言うべきか午前3時に集合し、現地に向けて出発。雨の中のバイクの積み込みで現地は大丈夫か心配になる。

 

ひたすら北に車を走らせ、日が昇り始める頃、雨が止んできた。

「これいけるんじゃない?」車内はそんな雰囲気になってきた。

八時過ぎに乗鞍観光センターの駐車場に到着。

 

天気は快晴。

 

バイクを車から下ろし、走る準備をする。

乗鞍のヒルクライム直前ということもあり、サイクリストが多い。

 

今回はダモンデバイクメンバーの最年少タイキくんが初参加。

私がテスト用で買ったサドルを使うか聞くと早速使ってみたいという。

タイキくんがサドルを取り付けている間にタイヤに空気を入れていると、私のタイヤから勢いよく空気が抜けた。パンクらしい。

 

いやはや。

 

チューブレスレディの私のタイヤ。シーラントまみれにならないようにサッとチューブを入れて応急処置。乗り出す前でよかった。

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気を取り直して出発。

 

期待以上の素晴らしい快晴で、ただ上っているだけなのに嬉しくて仕方がない。私はいつものように軽めのギアで踏んでいく。

上野さんがなかなかいいペースで前に出る。

「上野さんけっこう踏みますね。」

そんなことを話しながら調子よく進む。f:id:independent-traveller:20230809221217j:image

沢を見つけると沢登りをやるダモンデメンバーの話をしたり、タイキくんのサドルの調子を聞いてみたり、どうでもいい話をしながら、ペダルを踏んでいく。

 

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三本滝レストハウスに到着。

今回はいつもよりいいペースじゃないだろうか。

私は甘い缶コーヒーを買い、補給にする。

三本滝からはこの後上る道が高いところに見える。

休憩もそこそこに出発。

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乗鞍エコーラインのヘアピンコーナーのイン側は斜度が急だが、そうしたところに来るとタイキくんが猛烈に踏んで上がっていく。

「若いなぁ。」

私は何度も呟いた。


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そこからずっとタイキくんが先頭、それを私が追い、その後をエーシと上野さんがやってくるという形になった。
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ただただゆっくり上っていくだけなのだが、景色が良くて楽しくて仕方がない。


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景色のいいところで度々止まる。
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このくらいの緩い感じが我々にはちょうどいい。
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乗鞍に来るとお互いの写真を撮るので写真が多い。

途中、冷泉小屋で休憩。上からマウンテンバイカーが降りてきたと思ったら、友達のマルちゃんだった。

「あ!マルちゃん!」

声をかけるとマルちゃんは戻ってきてくれた。

マルちゃんは前日から来ているらしい。

またレース会場で会おうと約束し、マルちゃんは下っていった。

 

冷泉小屋の前でタイキくんがまあまあ踏んだおかげでエーシたちを置いてきてしまった。

 

二人を待っていると、見覚えのあるトレックに乗ったライダーが勢いよく下っていった。

「今のゴローさんじゃない?」とタイキくんに聞くと「あの特徴的な髪型はゴローさんですね。」とタイキくんも筧五郎氏と認識したらしい。

すると隣りにいたサイクリストが「朝、下にゴローさんいましたよ。」と教えてくれた。

さすが乗鞍。有名人も普通に練習に来ているのだ。


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冷泉小屋の後は位ヶ原山荘で休憩。ここまで来ればあとはボーナスステージだ。

周囲の植物が低木になり一気に雰囲気が変わる。

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そんな景色を楽しんでいると、eバイクに乗ったおじさんが話しかけてくる。

この斜度でeバイクとサドルトークはなかなか辛かったが「いやー、素晴らしいバイクですね!」なんて自分のバイクを褒められてしまったものだから、しばらく走りながら話してしまった。

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残り少しのヘアピンコーナーでタイキくんが待っていた。私は後続の二人を待った。

ほどなくエーシが上ってきたが、そのまま上がっていく。

私はその後を追った。

途中、さっきのeバイクの人に抜き去られた。

悔しかったが、私の実力はこんなものだ。

 

エコーラインの終点、畳平に到着。

 

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上は霧の世界だった。

 

仲間を待っていると、途中追い抜いてきたサイクリストが上がってくる。「お疲れ様」と自然に声が出る。20キロの山は誰にだってチャレンジだ。そしてそれを終えれば、みんな仲間と思えるのだ。

 

しばらくしてダモンデのメンバーが全員そろった。

畳平駐車場の方へ移動する。まだ登山組は戻っていないようだ。

 

ここで思わぬ有名人に遭遇した。

NHK BSチャリダーに出演している戸丸大地さんだ。ヒルクライマーの聖地乗鞍は伊達ではない。

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戸丸さんが乗るTOYOFRAMEのママチャリ。
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一度実物を見てみたいと思っていた。
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フェンダーとタイヤの隙間が殆どない。

どなたが組んだのか知らないが素晴らしい仕事だ。よくわかってらっしゃる。

「いや、素晴らしいバイクですね!」と戸丸さんとしばらくお話させていただく。

「カゴで隠れてますけど、カッコイイのはここなんですよ!」と嬉しそうにヘッドバッチを見せてくれた。

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戸丸さんは大きなカバンの中から自身のステッカーと反射素材でできた小さな動物のキーホルダーを出すと我々に配ってくれた。

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聞けば戸丸さんはふだんは納棺師の仕事をされていて、事故で亡くなるサイクリストを送り出すこともあるという。

「同じ自転車をやっている仲間が事故で亡くなるのは辛い。だから少しでも事故が減るようにこういうグッズを配ってるんです。ゴローさんに『自転車で稼いだお金は自転車で使え!』って教わりましたし」と戸丸さん。

 

テレビで見るペース配分無視の走り方をする戸丸さんとは別の一面を知ることができてよかった。


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そして戸丸さんはファンサービス旺盛な方であった。戸丸さんと偶然遭遇された場合はお話することをおススメする。

 

戸丸さんと別れ、しばらくすると登山組が山を降りてきた。タツマくんがけっこう飛ばしたようだ。

ダモンデメンバーが揃ったところで記念撮影。


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バスターミナルの上でみんなで食事をし、バスの時間がある登山組を先に送り出すと、ゆっくりカツカレーを食べるタイキくんが食べ終わるのを待ってバイク組も出発する。

 

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上ってきたときには見えなかった鶴ヶ池が見えた。

 

仲間たちと上ってきた道を下ってゆく。

 

結局、心配した雨には全く降られなかった。

いろいろな出会いもあり、幸せな乗鞍遠征であった。