「cafe & bar みらいび」を後にし、次の上りへ向かう。次なる上りは津具の街中から茶臼山高原道路の折元インターまでの区間。
普通にいけば、ダラダラ上る県道10号を九十九折に進んで行くところだが、地元民はこちらよりショートカットになる町道405号折元線を使う。こちらは九十九折のルートをまっすぐ突っ切る形で伸びており、距離は短いが当然斜度はキツく、また冬季は閉鎖になる道だ。
予想通りエーシは「いや、そこは県道行きましょうよ。」と言う。
だが、タイキくんは当然のようにショートカットのつもりで、何なら斜度が何%なのか楽しみな感じだ。
私は上りは比較的得意な方なので、斜度がどうであれ、早く終わる方がいいという考えだ。
となれば、少数派のエーシの意見は却下、ショートカットのルートになる。
前半はここまでと遜色のない上り。まだ3人でサドルトークする余裕がある。こちらのルートは周囲に木々が多く、涼しい。
しかし、水道施設がある辺りから急に上りがキツくなる。
タイキくんは例のごとく、ヘアピンコーナーで突然踏み出す。実際どうだか分からないが楽しくて仕方がないといった様子だ。私はロングライドの習慣から全開の8割ぐらいのペースまでに抑え上がっていく。
途中、斜度のキツいところでハンドルのサイクルコンピューターを確認するが10数%と思ったほどではなかった。とはいえキツいはキツい。
やや苦戦しながら上っていると、「みらいび」で会ったエーシの知り合いの方が車で追い抜き様に「頑張ってー!」と応援してくれた。
応援はいつでも歓迎、嬉しいものだ。私は手を振った。
最後の区間がまあショートカットと県道の合流地点に到着。
「思ったほどの斜度じゃなかったですね。」とタイキくん。確かに警戒したほどではなかった。なんだかんだ言いながらエーシはちゃんと上ってきた。えらい。
ここから茶臼山高原道路に入る。
津具と茶臼山高原道路の合流地点である折元から茶臼山高原までは約8キロ。
標高を300mほど上げながらの上り基調の道はなかなか骨が折れる。
ここはさすがに各自のペースで進んでいく。
稜線道の茶臼山高原道路は日陰が少ない。風が吹けば涼しいが、とにかく日差しが辛い。
道の脇に高原道路の起点までの距離を示す小さい標識があるのだが、なかなか数字が減らない。
こういう場所は 一定ペースで淡々と踏むしかない。遅くないペースで足を回して行くのが一番いいと経験上知っている。そして、長い距離であれば、先行する選手に追いつける可能性があることも。
もしかしたら先行するタイキくんに追いつくのではと期待したが、サッパリ追いつかない。速いな若者。
標高1200mを超えればあと少しのはず、と思っているとタイキくんが折り返してくる。もうすぐ高原道路と終点と教えてくれる。
来たよ。茶臼山高原。
ロードバイクで来るのは一体何年振りだろうか。
エーシと合流し、そのまま長野県方面に向かい、茶臼山高原のゲレンデ上の駐車場に出る。
駐車場は県内外のナンバーの車でほぼ満車。
バイクを置き、木陰を見つけると三人で腰をおろす。
「いやー、キツかったなー。」みんな顔が赤い。
「cafe & bar みらいび」さんでもらった補給の袋を開ける。シロップ漬けの梅をまずは一つずつ口に入れる。爽やかな梅の酸味とシロップの甘さが疲れた体に沁みる。
「いやー、最高のご褒美だね。」
梅と一緒に持たせていただいたブドウも頂く。
氷といっしょに袋にいれていただいたおかげで冷たくて美味しかった。
エーシはその氷水を頭からかぶっていた。
「あー、気持ちいい!」
よく頑張ったよ、エーシ。
茶臼山高原のリフト乗り場付近まで降りていくとカンモーの仲間たちが、マウンテンバイクのレンタルやランバイクレースの準備で動き回っていた。
カンモーメンバーは本当によく働く。
タイキくんが露店でたこ焼きを食べたいと言うので再び休憩。
豊根村のゆるキャラ「ポンタ」が歩き回っていたが、普通にベンチに座っていて笑えた。
今回、茶臼山高原に来て驚いたのは、観光客の多さだ。駐車場は第三駐車場まで満車、路駐できるところも車でいっぱいで、ゲレンデ下のイベントエリアは人。人。人。
昔、私も夏に手伝いに来たことがあったと思うのだが、こんなに観光客がいただろうか。茶臼山高原は県内有数の夏の避暑地なのだな、と今更ながら実感した。
茶臼山高原からは国道151号方面へ。
コーナーが連続する道をまずまずのスピードで降りていく。カーボンホイールとリムブレーキの組み合わせは若干の不安があるが、私のボーラWTOはブルベを含むこれまでの運用で問題ない。
「道の駅豊根グリーンポート宮嶋」まで一気に走る。
昼には少し遅い時間になってしまったが、私がどうしてもここで昼ごはんを食べたかったので、二人に無理を言って連れてきた。
ここのレストランは地元のお母さんたちが作っていて、とても美味しい。食べたかった豊根村名物のチョウザメの甘酢団子の定食は残念ながら売り切れ。代わりに唐揚げ定食をいただいた。
生姜の効いたジューシーな唐揚げはとても美味しかった。また来よう。
豊根村からはそのまま国道151号を南下。東栄町との境である太和金(たわがね)トンネルを越え、下り基調の道をペダルを踏み続ける。東栄町唯一のコンビニのある中設楽まで一気に降りてきた。
中設楽のコンビニは見たことのないほどの車で溢れていた。我々は混雑するコンビニを横目にさらに南下した。
途中、お友達のお家の無人販売を覗くがお目当てのブルーベリーは売り切れだった。残念。
151号に出てから曇り空だったこともあり、思ったより順調に進む。
今回のライドの最後の目的地「マルカイ」さんに寄るためだ。
マルカイさんは東栄駅前にあるお店で、東栄町を始めとした奥三河のお土産のセレクトショップだ。店主のナツキさんが選んだセンスのいい商品が並び、奥三河になかなかこうした品揃えの店はない。
コロナ以降、しばらくお店は閉めていたそうだが、今回、お盆に合わせて久しぶりに店を開ける、というのをSNSで見て、今回寄ろうと決めていた。
店主のナツキさんは我々を見てすぐに私に気がついてくれた。
「どちらを回ってきたんですか?茶臼山?疲れたでしょう、梅シロップあるので、ソーダ割りにしますね。」と梅ソーダを出してくれる。
奥三河の人々は本当に優しい。
私は素直に「いただきます!」と答えた。
「あ、こちらも良かったら。『SAPON』さんのチーズテリーヌ。」
SAPONさんはまだ行ったことのない東栄町のスイーツのお店だ。私はチーズケーキの類が大好きなので有り難くいただく。
おもてなしを受けながら、ナツキさんと久しぶりにお話する。この日我々が寄ってきた「cafe & bar みらいび」のことを話し、最近の東栄町のことやナツキさんの活動などなどを伺う。フィーリングの合う人となら地域というボーダーを考えずに仲間として活動するのがいいと思うという話は非常に共感できた。最近、私も強くそう思っているのだ。
マルカイさんには、お店をお手伝いされている方が2人いた。
知多から東栄に通ってきている方と今年、東栄町に移住してきたという、やまださん。やまださんは移住暮らしの様子をSNSやブログで発信している方で、お会いしたいと思っていた方だ。
【やまださんブログ】
やまださんの山里移住日記https://yamadasan-0106-izyu.blog.jp/
↑都会から移住してきた方の素直な感想が書いてあって面白いので是非読んでいただきたい。
実際にやまださんにお会いできてよかった。
私にはもうひとつ目的が。
マルカイの看板猫、チムチムである。
私は実家で暮らしていた頃、猫を飼っていた。猫好きなのだが、身近に遊んでくれる猫がいないのである。
チムチムの様子がSNSで流れてきて、前から遊びたいと思っていたのだ。
しかし、チムチム、暑いせいなのか、オッサンには興味ないのか全く構ってくれない。
まあ、猫ってこうだよね。
梅ソーダのおかわりまでいただき、すっかりおもてなしを受けて、いつまでも店先で話していたかったが、我々は新城までまだ戻らないといけない。
さらに言えば、この先、地味にツラい池場の坂が残っている。
やまださんデザインのチムチムキーホルダーなどを土産に購入し、我々はマルカイのみなさんに見送られながら新城への帰路についた。
池場の坂を上りながらタイキくんが「移住もいいですね。」と言った。
ふふっ。またタイキくんを奥三河ライドに誘ってやろう、と決めた。