美しい夕日を堪能した次の日、キャンプ場でマウンテンバイクとテントのメンテナンスをした。
キャンプ場の受付で古新聞をもらい、汚れたチェーンを拭く。伸びているようだったので一コマ短くした。ワイヤー類も一通りオイルをさし、ワイヤーを張り直すと変速がスムーズになった。
テントは前に購入した防水スプレーとシムシール用のワックスを塗っておいた。
それから長年使ってきた自転車用のサンダルが壊れてきて、もはや直し用もなくなって諦めて捨てた。長年の使用でソールが劣化し、ボロボロと崩れてきたのだ。
このサンダルはビンディング対応の珍しいモデルで、ツーリングの際は靴下を履かなくて済み、非常に重宝した。毎日の洗濯物で乾きにくい靴下があるとないとでは大違いなのである。これから寒くなるので出番もあまりないはずだった。
代わりに走ったあとリラックス出来るよう3.5ドルでビーチサンダルを買った。
メンテナンスが終わったら特にやることもないので、トランツアルパイン鉄道の駅を見に行きながら、ビールを飲みに行った。キャンプ場の受付でいいバーがないか聞いたが、ここのオーナーはビールを飲まないのか、あるホテルのバーを紹介されただけだった。
結局紹介されたホテルで一杯ひっかけて、駅のすぐ横にあるスーパー「fresh choice」で夕食と翌日以降の買い出しをする。
魚売り場のショーケースに大きなエビのボイルされた剥き身を見つけた。「Robster tail 2$」とある。
安い。
こんなものは見たことがない。グレイマウスはロブスターがよく獲れるのだろうか。東海岸のカイコウラは伊勢海老で有名だが。
まあいい、これはまた何かのご褒美だろう。一つ買うことにした。
ロブスターテールを手に入れて浮かれ気分でキャンプ場に戻る。
奮発して一緒に買ったトマトやブロッコリーとともにスープパスタにした。
珍しくいろいろな野菜が入り、華やかなコッフェルのど真ん中にロブスターテールを載せる。
おお、何と素晴らしいビジュアル。
期待に胸が高鳴る。
カールスバーグを開け、いざロブスターテールにかぶりつく。
…あ、そういうこと。
ロブスターテールを噛んだ瞬間、全てを理解した。
ロブスターテールはそれらしく作られた練り物であった。
ロブスターテールの味はまあまあだった。
調理するときに気がつかないのも、我ながら信じられないが、見た目はよくできていたのだ。
「まあ2$だもんね。」
自分を納得させるように呟いた。
その後、残念ながらNZでロブスターテールもロブスターも食べることはなかった。