定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほかの旅について書いています。

ジンジャースライスと墓地とチャーハンと -cycling NewZealand -

その街は小さな街だったが、旅をしている私には必要なものがちゃんと揃う町でちょっと意外だった。南島の田舎街なんて全く期待していなかったので、失礼な話だが、もっとシケた街かと思っていた。あれぐらいの街は住むのに心地良さそうだ。

 

その街、Murchsonはその日の朝いたセントアーノルドから70キロ足らず。南島の北部の山岳エリアを走り、西海岸へ抜ける途中にある街だ。

 

この日はセントアーノルドの湖畔が目の前に広がる素晴らしいロケーションのキャンプサイトを後にして、アップダウンの道を走った。

 

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南島は北島より街が少ないというが納得だ。北島だと50キロぐらい行くと次の街に着く印象だが、南島だともう少し街から街まで離れている、というか街がない。

この日も地図を見て、ルート上に昼ごはんが食べられる街はなさそうだったので、前日に昼ごはんを用意しておいた。

 

この頃から前日の夜に次の昼食を用意しておくことが多くなった。昼にカフェでカプチーノとバーガーを食べるより、もちろんこの方が経済的である。

 

昼ごはんにはサンドイッチのようなものをよく作った。スーパーで安く売っている味付けしてあるチキンをソテーして、トーストブレッドで挟んだサンドみたいなものか、ひき肉を多めに買って、夜のパスタに使って、残りはハンバーガー風のサンドを作っておいて、翌日持って走ることが多かった。

野菜は基本スライスオニオンぐらいしか入らない。野菜はオニオンくらいしか買わないからだ。オニオンは、夕食のパスタに入れてもいいし、葉物野菜より日持ちする上、携帯しやすい。NZのスーパーでは野菜は量り売りなので少量買えるとこもよかった。

ちなみにいつも朝食はあちらの薄いトースト3枚くらいにジャムを塗り、コーヒーと食べる、というのが定番で、夜はといえば、パスタだが、スパゲティはバッグの中で折れてしまうので、ネジネジのフジッリをいつも持っており、大抵パスタにすることが多かった。

 

日によってはスーパーでパスタ用のシーズニング(NZではマギーのシーズニングがよく売っていた)を買い、ひき肉かツナ(他の具はなかなか高くて買えない。)でパスタを作るのだが、シーズニングが予想と違う味がすることがあって、なかなか面白かった。今だにあのときの不思議なカレー風味のパスタが食べたいな、と思うことがある。

 

 

昼を過ぎて、割と早い時間にマチソンに着いた。

 

キャンプ場に向かいチェックインの手続き。

川沿いの切り立った崖のそばのなかなかのロケーションの上、キッチンとリビングがしっかりしていて、全体的に清潔なキャンプ場だ。これで10ドルなら安い。もっとも、墓地の隣ではあったが…とはいえ、眩しいNZの青い空の下に並ぶ墓は草が綺麗にかられており、明るい雰囲気で全く気にならなかった。

 

テントを張って荷物を下ろすと洗濯物に取り掛かった。ランドリールームの大きな流しで、ゴシゴシ洗う。有料の洗濯機も大抵置いてあるが、私は殆ど手洗いでランドリー代を節約していた。

 

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洗濯物を干すと、買い物に出かけた。

マチソンは小さい街だが、カフェは数件あり、スーパーも一応あった。

 

そろそろ米が食べたいな、と思い、米を買う。キャンプだと米は炊いた後、鍋を洗うのが面倒だが、この日のキャンプ場はキッチンも使えるし、鍋も食器も充実していた。こういうとき、思いっきり米を炊くのだ。

 

米と卵、それと忘れてはいけないビールを買い、スーパーを後にする。ビールを買って一日の出費が30ドル未満だと気分がいい。当時のレートで日本円にして2500円といったところか。

 

スーパーからキャンプ場に戻る途中、カフェの前を通るとストリートに面したカウンターの上に瓶に入ったビスケットなどが目に入った。

なんとなく見ていると”Ginger slice $1”と茶色くて薄いチョコレートのようなお菓子があった。見かけたことないお菓子だし、1ドルくらいなら、と買うことにした。

ジンジャースライスは薄いパリッとした砂糖菓子で、どうやら生姜と砂糖を煮て、薄く伸ばして固めただけのような感じだった。

久しぶりに食べる生姜の味としっかり甘い砂糖が軽めとはいえ、一日走った体にはくどくもなく美味しく感じられた。後にも先にもジンジャースライスを見かけたのはあれきりである。凄く美味しかった、という訳ではないはずだが、どこかにないかなぁ、とふと思い出すことがあるのだ。

 

キャンプ場に戻ってくる。

客はあまりいないようだ。こういう方が気楽でいい。NZはいいところだが、元気の良すぎる若者が、その有り余るエネルギーを持ったまま、ユースやバックパッカーに来ることも多く、直接何か話す訳でもないのだが、そんな様子を見ているだけで疲れる、ということがたびたびあった。

 

楽しみにしていた米を炊き、炊いた米をそのままチャーハンにする。

どうみても作り過ぎな量が出来上がったが、食べれない気がしなかった。旅するサイクリストはいつも腹っ減りなのだ。

 

キッチンでご機嫌でチャーハンを作っていると、若い女性の二人組が入ってきた。二人で盛り上げていたが、私のチャーハンの量を見て、そのうちの一人が「あなたそれ一人で食べるの!」ときいてきた。

「食べるよ。腹が減ってるんだ。」と答えると信じられない、という顔をして、友達のところに戻っていった。

 

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大盛りチャーハンの夕食を終え、ビールをチビチビ飲みながら、地図とガイドブック「ロンリープラネット」を眺める。

翌日には西海岸に出る。一旦、北のWestPortかそこより南のPunakaikiに出るか、その先はどうするか。

 

北島で一緒に走ったスイスのルティアとクライストチャーチあたりで合流する話も考えないといけなかった。

 

彼女とはネイピアで別れたあと、度々メールで連絡を取っていて、「クライストチャーチあたりで会おう」ということになっていた。

 

「どうしようかな」さして考えている訳でもないのだが、

そう呟きながらビールを飲んでいると

 「あなた、車で旅行しているの?」と、

いつのまに来たのか、さっきの女性がきいてきた。

「いや、自転車だ。北島を一か月走って明日は西海岸だ。ウェストポートかな。」私が答えると

「自転車なの!?信じられない。」聞けば彼女とそのお友達は車で旅行しているらしい。

向こうから話しかけてきたので、もっと仲良くなれるかな、と淡い期待を抱いたが、彼女はそのままリビングを出ていった。

 

 

「なんだ。ネコみたいな女だな。」