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定着から放浪へ 放浪から定着へ

自転車の旅、そのほかの旅について書いています。

NZトラフィックジャム - cycling NewZealand -

NewZealand cycling

気持ちよく下り坂を下っていると先を行くダニエルが、ブレーキをかけて止まった。何かと思えば、前方には牛の群れ。

「すごいな、ダニエル。日本でトラフィックジャムといえば車だが、NZは牛なんだな」と私が言うとダニエルが「ハハッ」と声をあげて笑った。

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カールが抜けて、チェン、ダニエル、ルティアの 4人になった我々は、思い思いのペースで走っていた。チェンはロードで平地は楽そうだが、上りはギアが重くとてもつらそうだった。道は朝から上りが多い。

みんなそれぞれのペースなんで、私は景色のいいところで休憩しながら写真を何枚も撮った。

 

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[海沿いの道はアップダウンが続く]

Tolaga Bayという街の素敵なカフェでみんなで休憩。ホテルの一角がカフェになっているらしい。

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[洒落た店内に地元の人だろうか、タンクトップの男性がいるのが笑えた]

カフェと言えば、カフェに入るとたいてい、カプチーノかブラックコーヒーを頼むようになっていたが、このころぐらいまでどちらを頼むときも困っていた。

カプチーノを頼むと「Cinnamon or chocolate on top ?」と聞かれることが多いのだが、ずっと「シナモン」が聞き取れずにいつも「チョコレート」と答える日々が続いていた。或る日、シナモンが聞き取れて、「ああ、シナモンね!」と激しく納得したのを覚えている。

それからNZのカフェでコーヒーとオーダーすると、ミルクと砂糖の入ったコーヒーが出てきて、ブラックコーヒーは出てこない。NZの人はブラックコーヒーを飲まないのかとも思ったが、ほかの客を観察しているとそうでもないようだった。こちらも或る日、「Longblack」がいわゆるブラックコーヒーであることに気が付いた。

こんなことに気が付くまでに1週間以上かかっているということから、私の英語力がどの程度かは容易に察しがつくと思う。

ちなみに「Shortblack」と言うとエスプレッソが出てくるそうだ。

 

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[ルティアはテラス席が好き]

 

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[私は旅の間、カフェでチーズケーキとマフィンばかり食べていた]

 

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強烈な日差しが照りつける中、アップダウンの続く道を走り続けるのはなかなか大変だった。この頃、左ひざの調子がだんだん悪くなってきていて、上りが本当につらかった。

 

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[昔、よく読んだウォラーの『ボーダーミュージック』に出てきそうな家]

 

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しばらくいいペースで走り続け、海岸に出られる場所があったので、道を外れ、海岸に出た。

 

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[右からチェン、ルティア、ダニエル、私]

 

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[ダニエルのバイク。スイスのハンドメイドバイクらしい]

 

比較的早い時間に、目的の街Gisborneに到着。街についてもそこから、スーパーで夕食の買い物をし、キャンプ場まで行って、テントを張り、ビールを飲み、夕食を作ってビールを飲まないといけないから、少し早いぐらいの時間でつくのがいい。

120キロぐらい走った気分だったが、実際は90キロほどしか走っていなかったようだ。

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[ルティアのテント。私の好きなJackwolfskinのテント]

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[チェンのテント]

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[私のテント。使いすぎて床の防水が相当弱くなっていた]

 

チェンがここで別れることになったので、夜でみんなで飲みに行こうということになった。

 

まずは各自、腹ごしらえ。

私はスーパーでアボカドが安かったので、それとサーモンを購入し、アボカドサーモン丼を作った。米を炊いている間に、750mlのビールを空けたらけっこうアルコールが回ってしまった。チェンは私の食事を怪訝な表情で見ていたが、あとでなぜか米をくれた。

 

飲みに出かける前、チェンが「僕、長そでの服とかフォーマルな服持ってないんだ。大丈夫かな」と真面目な心配をしていたので、「そんな店行かないよ。おれだってこの恰好さ」と私はTシャツ、ハーフパンツ姿で答えた。

 

暗くなる少し前、街に出て小さな店に入った。みんなで乾杯。ダニエルがビールの王冠を素手で開けたのでビックリしていると、なんてことはない、頭は王冠でもスクリュートップになっているのだ。海外のビールではよくあることのようだ。

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それぞれのことをあれやこれや話す。チェンはマレーシアの大手通信会社に勤めており、休暇できているらしい。そのうち北海道にも行ってみたい、とも言っていた。店を出る前、みんなでメールアドレスや住所を交換し、暗くなった街をキャンプ場へと戻った。

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TOUR of EAST CAPE - cycling NewZealand -

cycling NewZealand

陸地の先っぽに立って世界を眺めると、空と海はどこまでも青く、水平線で淡く溶け合っていた。

遠くではやさしい色をしている空だが、私の真上では見るもの全ての印象を一色にしてしまうほどの濃厚な青の世界が広がっている。

その中で唯一、存在感を際立たせているのは、地上のものを容赦なく照りつける白い太陽だけだった。

文字通り肌を焼く日差しに私は目を細めた。

 

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「今日も暑いわね。シマ、あなたちゃんとクリーム塗ったの?また耳だけ日焼けするわよ。私が塗ってあげまちょうか?」
ルティアがおどけながら、注意してくれた。ニュージーランドは紫外線が非常に強く、マメにUVクリームを塗るのかわ欠かせない。私がその辺いい加減なので、ルティアは心配してくれたようだ。ルティアはなにかにつけて私の心配をしてくれる。私はそんなに頼りないように見えるのだろうか。

ニュージーランド北島、イーストケープ。
ニュージーランドの最東端に位置し、世界で最初に朝日が昇るといわれる半島をルティア、ダニエル、私の三人ですでに半分回った。

朝、Te Kahaのバックパッカーで見かけたアジア人がいたので話をした。彼はマレーシア人で名をチャンという。彼はロードバイクで旅をしていた。

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キャンプ場には他にもサイクリストがいて、そのドイツ人サイクリスト、カールを加えてこの旅最大の五人で出発した。



計画性も無く、国も違う五人が一緒にツーリングをすれば面倒なことになりそうだが、みんな旅慣れたサイクリストだった。

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[朝立ち寄ったpohutukawaの古木。pohutukawaはニュージーランドクリスマスツリーと言われる木で、これが最も古いそうだ]


それぞれでペースの合う人間と走り、時に勝手に止っては写真を撮ったり休憩したりしていた。すぐ先に行ってしまうダニエルも適当なカフェで待っていたりした。
みんな勝手で気を遣わなが、なんとなくみんな一緒。この集団は心地よかった。

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[Tikitikiにあるセント・メアリー教会。建築は洋風だが、内装はマオリ風。]

 

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[イーストランドはマオリの文化が濃い]

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昼食はTikitikiにあったポストオフィス、集会所、カフェが集まっているところで食べた。

昔のアメリカ映画に出てきそうな、なんだか時間に取り残されたようなところだ。ダニエルは「なんてビックシティだ」と言っていた。

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[カフェのおばさんは見事なほどに無愛想]

チェンはベジタリアンで、フルーツバーガーう注文したが、普通のハンバーガー中にパインが挟んであるだけだったので、肉はダニエルに食べてもらっていた。

 

昼食を食べているとテレビでは大昔の映画をやっていた。途中、バレンタインのCMが流れた。ああそうか、明日はバレンタインだ。チェンが「君は彼女がいるのか。」と聞いてきたので「ああ、でもバレンタインなんて忘れてたよ。」 と私が答えて、2人で苦笑した。

さらにチェンが「彼女に『アイシテルー』って言うの?」と日本語で言うもんだからびっくりした。「そんなのシリアスな時にしか言わないよ」と答えると「何だ、君と彼女はシリアスなのか」と言われ、英語は難しいなと思った。

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昼食後、おのおの出発の準備をしていると、ポストオフィスのカウンターに誰かのパスポートが置いてあった。

ダニエルが中身を検める。

 

カールのものだった。

 

しばらくして、カールが建物から出てきた。

そしてパスポートがないことに気が付き、慌てはじめると、ダニエルが意地の悪い笑顔を浮かべながら、ドイツ語で何か言った。不思議なものでこの手のやり取りは身振りだけで十分わかる。

カールは少しダニエルにからかわれて、パスポートを取り戻した。

 

出発前、カフェの外で作業人の男性がルティアに声をかけた。
「何人いるんだ。リーダーは?」

ルティアは振り向いて 「五人よ。リーダー?いないわ」と笑った。


午後も相変わらず日差しが強い。道が上りになるとダニエルとカールがあっという間にいなくなってしまう。私はチェンとそこそこで上っていった。タフなルティアもこの日ばかりは遅れをとっていた。

 

途中の店で、みんなを待たせたから、と言ってルティアがアイスをおごってくれた。NZはアイスが安い。2スクープ、つまりサーティーワンで言うところのダブルで1.6ドル。当時1ドル70円程度なので相当安いんじゃないだろうか。

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夕方、Tokomaru Bayの街に到着。ここでカールとは別れた。

残りの4人でキャンプ場へ。

 

キャンプ場でスーパーの場所を確認し、近所のスーパーにいつものように買い出しに行く。FourSqureというNZの田舎によくあるスーパーにはビールがなかったので仕方なくワインを買った。

 

キャンプ場の外のテーブルに座り日記を書きながら、ワインを飲んでいると、ダニエルが「シマ、ワインをくれ」とカップを出してきた。そうかダニエルはビールだけでなくワインを飲むのか。そりゃそうだよな、スイス人だもんな。私は彼のカップにワインを注いでやった。

 

少し離れたところでマオリの一家が楽しそうにしてるなと思ったら、ゴルフボールがテーブルの上に飛んできた。

びっくりしてボールの飛んできた方を見ると、感じの良いマオリのお母さんが、ゴルフクラブを振りながら、「ごめんなさいねー。」と遠くから声をかけてきた。

日本でなら怒っているところだが、なんともNZらしくて、怒る気も起きなかった。

ダニエルと私は、ワインの入ったカップを持ち上げて、軽く会釈した。

 

ささいなことは何事もないように許せてしまう。これもニュージーランドの雰囲気なのだろう。ニュージーランドの一日はいろんなことがあっても、静かに緩やかに終わっていく。

私は空になったダニエルのカップにワインを注いでやった。

 

海岸へ - cycling NewZealand -

NewZealand cycling

快晴。実に2日ぶりだ。朝からベーコン焼いていると、ルティアが「シマ、ランチ作ってるの?」と聞いてきた。ルティアはあまり朝から肉は食べないらしい。
「日本人は朝何を食べるの」と聞かれたので、「ライスと味噌スープ、それからフィッシュだ」と、答えておいた。通じただろうか?

 

バックパッカーを出るとき、アジア人にすれ違った。日本人かな。と思ったがよく分からなかった。

貸切別荘のような素敵なバックパッカーを後にして、スイス人2人と共にひたすら走る。この日は私が前を引いた。

快晴というだけで非常に気分がいい。海岸沿いの道を東へ進む。

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どこを切り取っても美しい景色が続く。ペダルを踏むたび、汗が噴き出す。前日の雨の寒さが嘘のようだ。

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[休憩中のルティア]

 

途中の街で昼食。「いい天気だから、外の席で食べましょう」とルティアが言った。日本人はテラス席があっても、あまり使わないことが多いが、外で食べるのは、なるほど気持ちがいい。ダニエルはまたビールを飲んでいた。彼がビールを飲んでいるとビールが本当にソフトドリンクではないかと思えてくる。

 

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[駐車場では犬が休憩していた。海外の犬の行儀がいいのはなぜだろう]

 

午後からもいいペースで走り、この日の目的地Te Araroaに到着。予定よりも早い時間にホリデーパーク(キャンプ場)に着くことができた。アップダウンが比較的少ないとはいえ、90キロ走ったので悪くない。天気がいいと、こうも違うものか。

ホリデーパーク内には、移動販売車がいて、バーガーやフィッシュ&チップス、それにビールを売っていた。

 

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 [田舎なので高くつくかと思ったが、良心的な値段だった]

 

せっかくなので、三人で夕食はそこで食べることにした。

英国系のニュージーランドは食文化にもその影響があり、フィッシュ&チップスはメジャーな食事だ。しかし、私はNZに来てからこれまで食べたことがなかった。いい機会なのでフィッシュ&チップスを初体験した。

 

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 [NZのビールと言えばこのSteinlager。味は…]

 

他にバーガーか何か注文しないと足りないかと思ったが、魚は30cm近くあるし、ポテトも山盛りで、一日走った空腹のお腹にも十分な量だった。そして安くて美味しかった。これ以降、しばしばフィッシュ&チップスにはお世話になった。

 

食事後、まだ明るかったので、近くのビーチに行こうということになった。ホリデーパークからビーチに続く小道があった。

 

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[この看板がお気に入り。ここから海岸線へ]

 

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[ビーチに向かって歩いていくダニエルとルティア]

 

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 途中、きれいな小川を越えて行くと、急に視界が開けた。

 

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なんて素敵な海なんだろう。

波打ち際でしばらく、海を見つめていた。

写真を撮っているとルティアが話しかけきた。

「シマ、カメラ貸して。」ぼーっと海を見ていた私は言われるがまま、ルティアにカメラを渡すと、私の写真を撮ってくれた。

「いいのが撮れたわよ、シマ」ルティアが微笑を浮かべて、カメラを返してよこした。

 

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 これほどリラックスして、何をしてもいい時間を楽しんだのはNZに来て以来、初めてだったかもしれない、と思う。

 

少し暗くなり始めるころ、私たちはキャンプ場へ戻った。

 

 

旅するサイクリストたち - cycling NewZealand -

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この日は初めて終日、雨の中を走った。

 

キャンプ場で朝食をダニエルと食べていると、雨が降り出して来た。慌てて屋根のあるところにテントを移動させ、撤収。

撤収は少し大変だったが、走り出せば何とかなった。

 

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雨のPapamoreBeachを後にし、途中雨が止み、ウェアを脱ぐ。

しかし、しばらくするとまた雨が降りまたウェアを着込む。

「It's New Zealand!」

 

私がうんざりしながらウェアを着たり、脱いだりしていると、

ダニエルがそう繰り返す。

 

なるほど。

 

これがニュージーランドの天気のなのだ。

この天気とうまく付き合方を覚えていかなければいけない。

 

ルートは幸い平坦だった。

もし風が強く雨で上り坂ばかりで、しかも1人で走っていたら、

きっと惨めな思いをしていただろう。

しかし実際はダニエルがいてくれて

私が遅れれば、「no problem!no problem!」とか、

雨が瞬間、激しくなったりすれば「too much rain!」とか、いろいろ声をかけてくれたのでなんだか落ち着いた。

 

ただ、休憩を取ろうにも、途中何もないところが続き辛かった。

 

Matataという街で昼食。

ニュージーランドにはよくある小さな小さな町で

これまた小さなカフェで何とか食事ができた。

 

テーブルが数席しかなく、われわれは扉のそばの席についた。

雨の中も濡れて走った私からすれば、屋内で食事ができるだけでもありがたかった。

だがダニエルはもっと良い店で食事がしたいらしくずっと不平を口にしていた。

やはり、ダニエルはお金にゆとりがあるようだ。

 

小さなカフェでは繁盛しているようで、

途中たくさんの人が車でやってきてはバーガーを買って帰ったり、

車で食べていたりした。

 

午後からはとてもよく走り、目的の街、Whakataneまで

比較的早い時間に着くことができた。

もっとも、このペースがダニエルにとって早いペースかどうかは不明だが…

 

不要な荷物を送ろうと思ってポストオフィスに行こうとしたが、

ダニエルにうまく伝えることができなかった。

彼はスイス人で、英語もそこそこといったところで、

一方、私の英語力も褒められたものではないので、仕方がなかったのだが。

 

ワカタネの町では、バックパッカーズに泊まった。

ダニエルはテントにしたいと言い張ったが、

私はずぶ濡れの中、街まで来たのだから、暖かい布団で寝たかった。

ダニエルは知らない奴と一緒に寝るのがどうにも気に入らないらしく、

随分抵抗したが、幸い部屋はダニエルと私の2人で使うことが出来た。

 

チェックインの手続きをしながら宿の女性と話すと、

彼女は日本に行ったことがあるらしく少しそんな話題で盛り上がった。

また、子供の頃、父親と一緒に自転車で旅をしていたことがある、

とも言っていた。

ニュージーランドではこうした人にほんとによく出会う。

 

日本では特別に思えることを彼らは普通のことのように話す。

こういうことを経験してきた人が普通にいる。そしてみんないい顔している。

今、自分がしている旅は決して特別なことではない、と思えた。

 

宿では意外な再会があった。

 

タイルアのキャンプ場で出会ったスイス人の女性サイクリストだ。

走るルートが同じようだったので、いつか会うこともあるかなと思っていたが、思いのほか早く再会を果たした。

食事を済ませた後、彼女が話をした。名前をルティアと言った。

 

ルティアの英語は非常にわかりやすく、私の英語力でもそこそこ会話ができた。

彼女と話すのはとても楽しかった。

 

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 [ブリコのサングラスが似合うルティア]


朝、出発の準備をしていると、ダニエルとルティアが私を待っていた。

どういうことか、と訝しく思ったが、

どうやら昨夜のうちにダニエルとルティアの間で、一緒に行こう、

と言うことで話がまとまったらしい。

そういえば彼らは2人ともジャーマンスイスだった。

 

ルティアは本当によく走るので驚いた。

私はなかなかついていけずに、ヒーヒー言っていた。

私の様子を見たルティアが「あなた、サドルがちょっと低いんじゃないの?」と指摘してくれた。


なるほど。そういえば。

今もポジションは比較的無頓着だが、この頃は相当だった。

 

サドルを上げポジションを調整すると膝の負担がかなり減り、

ルティアにもついていけるようになった。


Opotikiという街まで45キロほど飛ばす。

この2人と一緒ならずっといいペースで走れそうだ。

朝は、ろくについていけずに「もうほっといてくれよ」などと思ったが、

2人の助けのおかげでポジティブな気持ちになれた。

 

本当に2人には感謝の気持ちでいっぱいだった。


この日の昼食は、Te Kahaの前のどこかの街でで食べたようだ。

当時の日記では「テカハで食べた」となっているが、

当日はテカハで泊まっているため、おそらくその手前のTorereかOmaioだろう。

 

店でダニエルとルティアはtoday's specialを注文していたが、

私はどうしてもバーガーが食べたい気分だったので、

バーガーをオーダーしたが、出てきたのは、

2人のtoday's specialが食べ終わる頃だった。

運んできた店の女性に、遅いよと言ったら、そんなの注文する方が悪いのよ、と言われた。


2人を待たせては申し訳ないと思い、私は慌ててバーガーにかじりついていると、

ダニエルはその様子をハンディカムで撮影していた。

かなりあわてて食べていたのだろう、ダニエルはその後、旅の途中、

ビールを飲みながら、何度も見返しは大笑いしていた。

 

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今日も途中雨が降ったりやんだりの繰り返しだったが、

ウェアを来たり脱いだりを繰り返してうまく走ることができた。

私は雨が降ったりしてネガティブな要素が出てくるとすぐ弱気なってしまう。
2人はいつもポジティブだ。

「100キロ?大丈夫でしょ。」と、言った感じだ。


日本ではキャンプ道具を積んで自転車で旅をするのは、学生がほとんどだ。

日本では、そんなのは学生のやることだ、というある種の固定観念があると思う。

ダニエルもルティアも当時40代だったが、決して彼らは特別な存在ではない。

その後、旅をした国で、国籍も年齢も性別も違う多くの旅するサイクリストに出会った。皆、ダニエルやルティアのように心から自転車の旅を楽しんでいた。

 

彼らのような40代になろう、と心に誓った。

 


この日は110キロほど走り、テカハのバックパッカーへ。

ここのはとても良いところで、15ドルでキッチン、ダイニング、テレビ付き。

しかも、受付のところはジェネラルストアになっており、野菜やビールも手に入った。

言うことなしだ。

しかも3人で1部屋が使えたので、一気にリラックスできた。

 

そして例のごとくダニエルがビールを半ダース買ってきた。

 

部屋のキッチンで3人で、それぞれ持っていた食材を出し合って、一緒にパスタを作った。

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ダニエルの買ってきたビールを飲みながら、3人で大いに盛り上がった。

 

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その男 -Cycling NewZealand-

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ダニエル・クーマーに出会ったのは、Waihiの街だった。

彼に会わなければ、私の人生は大きく変わっていたと思う。
旅と日常とどう付き合って生きていくのか、
そうした人生の可能性を私に教えてくれた男であり、
数年後、私がタスマニアに行くきっかけを作った男でもある。


*******

Tairuaを出た後、あまりペースが上がらず、
ダラダラ走っていたが、午後になり雨模様になった。

雨は容赦なく身体を打ち付ける。

濡れて冷えた身体から、体温がじわじわ奪われていく。
 だんだん気持ちが重くなるのも当然だろう。


Waihiの街に着く頃には、雨はだいぶ弱くなっていた。
泊まるところを探すため、インフォメーションセンターを探したが、見つからなかった。
Tiptopのアイスクリーム屋に入り、店のじいさんに道を聞いた。
じいさん耳は遠いが、ちゃんと教えてくれた。

余談だが、インフォメーションセンターの看板を見つけて入った建物は別の施設だった。
のちにWaihiに行った友人にその話をしたら、
彼女も同じように間違えた、と言っていた。どうもあそこは分かりにくい。


インフォメーションセンターには、いかにも世話好きな感じの年配の女性がおり、
こちらが何か言う前に向うからあれこれ聞いてくれた。
紹介してくれたキャンプ場はバックパッカーズもキャビンもあり、
今日ならバックパッカーズもキャビンも空きがある、とのことだった。

インフォメーションセンターの女性はとてもゆっくり話してくれて、
私でも十分に英語が理解できた。
これは私の思い込みかもしれないが、クレバーな人ほど、
相手の語学力を配慮して、ゆっくり話してくれることが多い気がする。


泊まる所へ行く前に、スーパーで買出しをしなければ、と街をさまよっていると、
ひとりの長身のサイクリストが声をかけてきた。


それがダニエルだった。


私が何か聞いたわけでもなく、私の姿を認めると
「スーパーか?スーパーなら、こっちだ。キャンプ場ならあっちだ。」と教えてくれた。
「スーパー、そのあとキャンプ場だ」というと、
いっしょにスーパーに行ってくれ、さらにキャンプ場まで連れて行ってくれた。


この男は何者だろう?


キャンプ場では、結局バックパッカーズを取った。
このずぶ濡れの状態で、テントを張る気にはなれなかった。
幸い、この日はあまり宿泊客がいなかったようで、部屋は私ひとりだった。
荷物を広げ、濡れたものを乾かす。


疲れたな。


窓の外を見ると、個人用のキャビンの前に先ほどのサイクリストのバイクが見えた。



彼はキャビンか。いい身分だな。

キャビンは戸建ての個室なので、どうしても高くつく。
相部屋の2,3倍はかかるのではないだろうか。
結局、私はこの旅の間、使うことはなかった。


夕食の支度でもするか、と思っていると誰かが、部屋をノックした。

出てみると、先ほどのサイクリストだ。



「ハイ、ビール飲もう!」そう言って、笑顔ででかいビール瓶を差し出してきた。

私は少し面食らったが、悪いやつではなさそうなので、
部屋の中に招き入れ、座ってとりあえず乾杯した。


彼は自分のことをいろいろ話し始めた。


彼は名をダニエル・クーマーといい、ドイツ系スイスで歳は44歳。
国ではペインターをしており、けっこういい稼ぎがあるらしい。
冬の間、だいたい2か月ぐらい海外を自転車で回るのが毎年の通例だという。

なんて羨ましい生活をしているんだ。
海外の人は休みが長く取れるとは聞いていたが、これほどとは。

ダニエルはニュージーランドに来るのは7回目で、
これから北島を回り、南島のクライストチャーチを目指すという。

彼は他にも、自分の自転車のことや、当時活躍していた自転車選手のことなど、
ほんとうにいろいろ話した。

特に自転車選手の話は盛り上がった。
彼はパンターニチッポリーニが特に好きだという。
彼は仕事用の車をチッポリーニ風にゼブラに塗ったといって、写真を見せてくれた。


ダニエルが自分のキャビンに戻っていった後、夕食を作りにキッチンへ行った。


スーパーで買った牛肉で牛丼を作ったが、肉が厚くてあまりうまくできなかった。
このころは食事で苦戦していたことが多かった。



そんな夕食をひとりで取っていると、またダニエルがビールを持って現れた。
「君の分だ。」持っていたビールを一本、私によこした。

それからまた、ビールを飲みながら長々と話をした。

朝食。トーストはバッグの中でひしゃげてしまう。



翌朝、雨も上がり、外で荷物をパッキングしていると、ダニエルが話しかけてきた。

「どこへ行くんだ?」

私は地図を広げて、
「タウポ、ロトルアに行きたいけど、その前にイーストケープを回りたいな。」
そう言うとダニエルが「おれもイーストケープに行くんだ。一緒に行こう!」と言い出した。


私はペースが遅いぞ、と言ったが、
「No problem, No problem!」と笑顔で繰り返すだけだった。


かくして、ダニエルとの旅が始まった。


私が前を走り、ダニエルが後ろからついてきた。


天気は幸い快晴。


彼は過去に同じルートを走ったことがあるようで、
道の分岐では、「あっちだ」とすぐ教えてくれた。

私は決していいペースではなかったが、ダニエルは私のペースに合わせてくれた。

途中、休憩を入れてTaurungaまで走る。




ウランガは明るい街だ。


しばらくぶりの都会。


昼食にしようということになり、
一軒のカレー屋に入った。

ダニエルは迷うことなく、ビールを注文した。
「ツーリング中もアルコール飲むのか?」私が尋ねると、
「何言ってるんだ。ビールはソフトドリンクだぞ。」とうまそうにビールを飲んだ。



運ばれてきたカレーは真っ赤だったが、見た目ほど辛くなかった。

昼食後は前後をダニエルと交代する。

始めは頑張ってついて行っていたが、すぐに大きく遅れてしまった。
ダニエルは折をみて、止まって待ってくれていた。
「遅れてしまっても君は困らないか。」と聞くと「いや、No problemだ」と言ってくれる。
ほんとうにやさしい男だ。


その後も、ペースが上がらず、
ウランガからそう遠くないPapamora Beachで一泊することになった。
ダニエルによれば、いいキャンプ場があるらしい。


街のスーパーで食事の材料を買う。
レジの女性が「バケーション?いいわね。」と声をかけてくれた。
私は笑顔で「Yes!」と答えた。

本当に何気ないやりとりだが、こういう些細なことは
10年たっても忘れないから不思議なものだ。


ダニエルはスーパーで売っていたビールの種類が気に入らなかったらしく、
別のリカーストアに行くといった。
私は1リットルの大きなビールをスーパーで買っていたので、外で待っていると、
ダニエルは6本パックのビールを買って出て来た。


「一人で全部飲むのか?」

「そりゃそうさ、こんなの4.9%か?ソフトドリンクだ、こんなの。
おれの彼女なんかもっと飲むんだぜ」と笑った。


まったく、どうなってるんだジャーマンスイス。


ダニエルが案内してくれたキャンプ場は「Top10 Holidayparks」というところが
経営するキャンプ場で、とても施設が清潔だった。

ダニエルはここの会員証を持っていて、会員料金だ。

会員証はユースの会員証などと同じで、20ドル(確か)。


作ろうかどうしようか悩んでいると受付の女性が
「何か月、ニュージーランドにいるの?2か月?
ならかえって高くついちゃうかも。
使う見込みがあればいいけど、予定がないなら無理に作らなくてもいいんじゃないかしら」
と言ってくれた。

こんなにちゃんとしたキャンプ場を運営しているのに、
商売第一じゃないとこにとても好感が持てた。

その後も似たようなことがあったが、
ニュージーランドの人はほんとうに相手のことを考えてアドバイスをくれる。
ニュージーランドの印象がずっといいのは、あの美しい景色のせいだけではないと思う。

左が私のMTB、右がダニエルのもの




受付を済ませ、目の前にビーチの広がるところでテントを張っていると、
早速、ダニエルはビールを出した。また一本くれる。

「乾杯はドイツ語で何ていうんだっけ?」
「プロッシュトだ」

「プロッシュト、ダニエル」

私がビールを軽く掲げると
「プロッシュト!ええっとお前名前なんだっけ?」とダニエルが聞いてきた。

おい、今頃かよ。

「シマだ。シマ。コンポーネントシマノのシマだ」。そう説明すると、

シマノ、シマ!プロッシュト!」ダニエルはようやく私の名前を覚えたようだ。


少し雲は出ていたが、せっかくのビーチなので少し泳いだ。


ダニエルに泳がないのか、と聞くと泳がないという。
海がない国の人間なので、てっきり海にあこがれがあるのかと思ったら、そうでもないようだ。

ダニエルはかなりのアナログ人間らしく、
デジカメも持っていなければ、メールアドレスすら持っていなかった。


旅の記録は主にビデオカメラでするらしく、ビデオを回していた。


泳ぎ終わって、テントに戻ると、ダニエルがランドリーを洗ってくれるという。
走るペース合わせてもらったり、いろいろ助けてもらって申し訳なく思ったが、
ダニエルの方はさして気にしているわけでもなさそうだった。


ようやく、ニュージーランドに来て、1週間が経過しようとしていた。