定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

原田橋へ - 天竜•奥三河ライド -

設楽町神田まで来るともう昼を回っていた。

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神田にはダモンデクルーが流行らせたインスタスポットがあるが、そこでの撮影もそこそこに東栄町に向かって走り出した。みんなお腹が空いてきたのだ。

 

神田から川沿いに東に進むと東栄町の月地区に出る。そこまでの道は森の間を抜ける下り基調の快走路。日陰を吹く風が冷たい。日が差しているところはかなり暑いのだが。

月地区まで出ると視界が開ける。このあたりの風景も好きなところだ。広い敷地の民家には梅や花桃などが植えられ、春の訪れを教えてくれる。

月地区も一気に走り抜け、東栄町中設楽の交差点に着く。久しぶりの信号だ。

 

この日のお昼は東栄町に少し前にオープンした囲炉裏バーのランチの予定だったが、行ってみると週末はやっていないようだった。残念。

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とにかくお腹が空いていたので、すぐに近くの山正に行くことにした。

東栄町のグルメといえば、清流巡り利き鮎会でグランプリを受賞した振草川の鮎が有名だが、それと共に特産の鶏肉もある。

東栄町ので鶏肉を食べるときは「レストランさかた」か「山正」の唐揚げと決めている。どちらもタイプが異なるので全く別物のと言っていい。

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山正で早速唐揚げ定食を注文。えーしとOKNOくんも唐揚げ、タツマくんは安定のカツ丼、S藤くんとエースくんはチキンカツ定食である。エースくんはライス大盛り。

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何度か食べたことのある私とえーしは、OKNOくんに偉そうに「口の中ヤケドするから気をつけて」と言っていたが、なんてことはない、注意していた我々もヤケドしていた。

箸で掴むのがやっとな大きさの唐揚げ。衣がカリッとしていて、噛むと中から鶏の油が出てきて旨い。そしてヤケドするのである。

この唐揚げ定食の潔いところは、サラダもなにもついていないところ。一応パセリとカットレモンは添えられているが、あとはご飯と味噌汁、それに漬物。とにかく肉を食べろという感じが男らしい。でも何故かデザートのコーヒーゼリーが付いている。まあありがたくいただくのだが。

 

久々に食べることができてよかった。素晴らしい。

お腹いっぱいになった。ごちそうさまでした。

 

山正を出ると更に東に向かう。

途中に2018年にオープンしたパン屋さんがあるので寄ることにする。パン屋さんは「ピッコロパン屋」というお店で、年配のご夫婦が経営している。金土しか営業していないので、なかなか行くことができないのでいい機会だ。

 

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店に行ってみると、感じのいいご主人と奥様がこの日はもうあまりパンが無い、と申し訳なさそうにいう。私は家族への土産に残っていた天然酵母のパンと焼きたてのライ麦パン、それにクッキーを買った。値段がビックリするほど安い。どれもひとつ100円台だ。

結局、みんな焼きたてのライ麦パンを買い、その場で食べていた。

私は帰宅して家族と食べたが、ライ麦パンといっても酸味は強くなく、焼いている方の人柄の出た優しい味のパンだ。またたくさんパンがあるときに来よう。

 

ピッコロパン屋を後にし、佐久間方面へ。大千瀬川沿いに南下していく。道は緩やかに下りになっていてよく走る。川原に巨大な白い岩がゴロゴロしており、独特の景観を作り出している。緑色の澄んだ川の水とのコントラストが美しい。

 

また山の斜面に目を移すとこちらにも早咲きの山桜が鮮やかに咲いている。

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道は浦川を過ぎると原田橋のアプローチに入る。橋のかかる谷のところまで上がっていく。

原田橋は5年ほど前に新しい橋を架け替える際、崖崩れで橋が崩落し、浦川と佐久間の間は分断された。その後、仮設橋が設けられ、自動車は渡れるようになったが、自転車は通ることができなかった。そのため、浜松の天竜区と奥三河を自転車で行き来するのにルートが非常に限られていたのだ。

 

生活道として使う地元の方にとってはもちろんのこと、我々サイクリストにとってもこの原田橋の開通は悲願であった。

 

原田橋に着くと、警備の人に止められる。この日はまだ片側交互通行での供用で、数日後に全面供用になるという。そのため、自転車は歩いて渡って欲しいとのこと。

 

我々は自転車を押して原田橋を渡り始めた。

 

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橋はかなり高いのでところに架かっており、橋の柵もあまり高くないので、歩くとスリルがある。


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遠くに沈下橋が見える。あれが仮設橋だろう。川の増水で度々流されたりして、現在の沈下橋になったらしい。むしろ自転車であちらを走りたいものだ。

 

原田橋を渡り、佐久間ダムへ。

 

ダムに向かうので、当然のようになかなかの上り。19の夏にここを通って、キャンプをしながら東北まで自転車で旅をしたのが懐かしい。

 

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佐久間ダムには思った以上に観光客がいた。

我々同様、人混みを避けて外に出ているのだろう。
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久しぶりに間近で佐久間ダムは大きかった。

まさに大型インフラと言った感じである。予想以上に迫力があった。

よく見るのは奥三河の大島ダムと宇連ダムはもっと小ぶりだ。

 

ダムの上の急斜面に張り付くように電力館があるので見に行く。

 

ダムサイトから文字通り見上げるとあるのだが、なかなかの急坂だ。私は迷わずギアを軽くし上まで上がる。その日全く変速していなかった(!)エースくんもついに変速を余儀なくされた。

「あれは無理ですね。」諦めたようにエースくんが言ったが、ここまで変速していないことのほうが驚きだ。


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電力館内は見学中止になっていたが、ダムカードは配っていた。地味にダムカードが増えてきた気がする。

S藤くんが観光地によくある日付の入った「佐久間電力館」の看板の前でタツマくんに写真を撮ってもらっていた。こういうの好きらしい。S藤くんおもろいな。

 

昼の後、休憩らしい休憩をしていなかったので、自販機で三ツ矢サイダーを買う。冷たく甘い炭酸が心地よい。

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さて、あとは帰るだけである。再び原田橋まで戻り、ややスリリングに自転車を押して渡り、浦川方面に向かう。

浦川駅にはちょうど飯田線が停止するところだった。それを横目に浦川の商店街を南に坂を上がっていく。

「ここ雰囲気いいんですけど、カフェも何もなくて立ち寄りが出来ないんですよね。」

タツマくんが言う。なるほどその通りである。

私は浦川で休憩するときはもう浦川駅に行ってしまうが、お金を落とす場所がない。

 

浦川から再び東栄町に戻るまではやや上り基調。ライド時間が長くなってきて疲労が溜まってくる。

東栄駅のあたりで一旦休憩しようと思ったが、まだ元気なエースくんとOKNOくんが飛び出していった。

東栄駅から池場の坂を越えればコンビニがある。

彼らはそこまですぐに行ってしまうだろう。

 

残ったメンバーはゆっくり池場の坂を上り、上で小休止した後、コンビニまで一気に降りた。

 

エースくんがコンビニの前で待っていてくれた。

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コンビニで甘いものを買う。少しオーバーカロリーな気がするが、疲れているときは身体の欲求を素直に聞いたほうがいい。

コンビニを出る頃には日が少しずつ傾いてきた。

国道を離れ、三河大野まで飯田線沿いの望月街道を行く。下り基調でスピードがよくでる。少し砂利の浮いている場所もあったが、それはそれで楽しめた。

 

三河大野のそばまで来ると白いダモンデTシャツの人が歩いている。誰かと思えば、だわり屋の鈴木顧問であった。奥三河の人間関係は狭い。行けば必ず一人は知り合いに会う。まあこれが奥三河に行く理由でもあるのだが。

 

それから県道69号に入り、新城市街まで戻った。みんなは桜淵公園に車を置いてきたが、私は市役所のところに車を置いたので、船着小のところでみんなと別れた。

 

こんな素晴らしい晴れの日に仲間とライド出来て最高だったな。

一人駐車場に向かいながら、改めてそう思った。

 

 

春色の奥三河 -奥三河ライド -

三河の観光ポスターに真ん中に大きく「奥三河は春色」と書かれたものがある。その周りを囲むように奥三河各地の花の名所が紹介されているものだ。

 

三河はどの季節も美しい。中でも私は春がやって来るこの時期が特に好きだ。

 

コロナウィルスのせいで、各地でイベントが自粛される中、活動の場をアウトドアに求めている人は多いのではなないだろうか。私もそうした一人である。

 

例の如く、友人のタツマくんがSNSで週末の奥三河ライドを呼びかけてくれて、タツマくん、えーし、S藤くん、エースくん、OKNOくん、私の6人で走りに行くことになった。

 

朝、週末の特別営業をしている我らダモンデの拠点、新城の「ヤングキャッスル」に集合。ダモンデ山田さん、りょーこさんに挨拶をし、全員が揃うのを待ちながら、コーヒーを飲む。私は朝食を済ませてきたので、もらわなかったが、仲間は茹で卵とトーストのモーニングを食べていた。

 

今回のメンバー、私は全員知っているが、今回初めて会うという人もいるので、コーヒーを飲みながら、お互いの自己紹介などをする。

この日は我々を皮切りに多くのサイクリストがやってきたらしい。ヤングキャッスルは奥三河ライドの拠点として認知されつつあるようだ。

 

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出発のとき、りょーこさんがみんなの写真を撮ってくれる。


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りょーこさんと山田さんに見送られながら我々は北に向かった。

 

まずは新城市街から国道257号を北上、途中から旧田口線の道を進む、いつものルートだ。

 

新城市街を出ると、向こうからライダーの集団と行き違う。Glocalbikeの土曜日走行会の一団だ。いつもは向こう側にいるのでなんだか新鮮だ。グローカルのみんなはこちらに気がついてくれ、手を振ってくれた。

 

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この日はとても暖かく、みんなウェアの選択に苦戦していた。私も冬用のアンダーが暑い。
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少し暑いくらいの陽気な上に、空には雲一つない快晴。みんな口々に「いや、最高だな」と言っていた。私も何度もそう言っていた。
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田口線跡の道を抜け、四谷千枚田へ。

 

前に来た時は正面の鞍掛山に雪が降っていたが今日はまるで違う。

少し前まで、冬のモノトーンな静かな色に支配されていた奥三河も(もっともそれはそれで趣があり、美しい)芽吹き始めた緑の葉と、民家の庭先のの梅や桜の花が何とも綺麗だ。

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千枚田の見える駐車場までみんなで上っていく。最近ピストを新たに組んだエースくんは全く変速しないまま、何事もないように上ってくる。

この様子にみんな驚いていた。エースくんとしてはいいトレーニングぐらいらしい。
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千枚田の最初の駐車場で休憩。何度来ても素晴らしいな。

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タツマくんが「いいんだけど、写真がいつも同じになっちゃうんだよね。」と言う。確かに。ガードレールなどもあり、ここからの写真は同じアングルになりがちである。
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冬ウェアで来たS藤くんが暑さでやられていたので少し休憩し、次は千枚田の中腹まで上がる。

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そこから更に上の展望スポットまで上がる。

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いつもの年なら奥三河パワートレイルのスタッフとして来るところだが、今年は残念ながら中止。ここ数年の年中行事なので開催されないのはとても寂しい。

この展望スポットには小水量発電があって、冷たい水が勢いよく出ている。ここで顔を洗うのが好きだ。

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月並みだが、冷たい水が「ちょー気持ちいい。」のだ。

 

そこから新城市設楽町の境にある仏坂峠まで進む。四谷千枚田もこうして途切れ途切れに行くと意外と苦じゃないね、などとOKNOくんとサドルトークしながら上っていく。ちなみにOKNOくんは先週、ブルベデビューを果たしたが、売木村で雪に振られ、途中で断念したらしい。私も昔、ブルベをやっていたが、そんな壮絶な経験はない。先週との落差は相当だろう。OKNOくんをツーリングに誘うのは初めてだったが、終始楽しそうで嬉しかった。

 

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仏坂峠からトンネルを抜け、設楽町神田へ。

分岐点の数キロは気持ちのいい下り坂だが、途中にミツマタの群生地と滝があるので、ややゆっくり降っていく。

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三河ではこの時期、いろんな場所でミツマタの花を見ることができる。有名なのは新城の作手と東栄町尾籠だろうか。

神田のミツマタは道から川を挟んだ対岸に広がっており、近づけないのが残念だった。
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枝の先に小さな黄色い花がいくつも咲いていて、そこだけ森が明るい。

 

ミツマタの群生地から少し降ると穴滝という滝がある。呼び名がいくつかあるらしく、看板には不動滝とかアミ滝とか書いてある。

 

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迫り出した岩の上から水が流れ落ちて、滝になっており、岩の下の空間には小さな社がある。滝の様子は海外の離島なんかにありそうな感じだ。

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エースくんが「ここはパワーを感じます」とおもむろに言った。

私はその辺のことはよく分からないが、私はなんとなく気になる滝なので、通るたびに寄るようにしている。もしかしたらパワーをもらっているかもしれないな、と思った。

 

穴滝からは神田の集落まで仲間たちが一気に降って行く。

 

私は集落に入ったところでブレーキをかけて止まった。

立派な梅の花が満開だった。

周囲に草木がなく、綺麗にされており、とても存在感があった。

神田といえば、黒梅が有名だが、こちらも見事だ。

 

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本当に奥三河の里の花は美しい。

私はペダルを踏みなおし、仲間が待つ国道の分岐へと向かった。

 

つづく

 

 

春の伊良湖岬 - 東三河ツーリング -

学生の頃、月に一度は自宅のある豊橋から伊良湖岬までの往復、100キロ弱のライドをやっていたが、最近ではほとんど行かなくなっている。

一日ライドに使える機会が少ないこと、一日乗れる時間があれば奥三河にライドに行くことが多くなっていることがその理由だ。

 

今回は人から伊良湖岬周辺で自転車に乗っている様子を撮りたいので協力して欲しいと依頼があり、午後から予定があったが、久しぶりに渥美半島に行くにはいい機会だと思い、行くことにした。

 

朝、渥美半島赤羽根の道の駅、ロコステーションに集合。

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車を降りると、びっくりするほどの強風だ。前日の雨の影響だろう。渥美半島は冬場の強風はいつものことだが、それにしても強い風だ。

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今回、3〜5人ほど集めて欲しいとのことでGlocalbikeでお世話になっているCさんと、ちょっと久しぶりのエースくん、それから仲間に紹介してもらった女性ライダーSさんの4人で走ることになった。

 

初めてお会いしたSさんはラファのグループでよく走っているそうだ。

 

エースくんは豊橋から自走でやってきた。エースくんと合流し、伊良湖岬に向かって走り出す。

 

走り始めてすぐ強い風に煽られる。ほぼ向かい風でスピードが出ない。ときおり風が横風に変わるとバイクを持っていかれそうになる。これほどの強風は渥美半島でも珍しい。

 

私は先頭を走っていたが、横風に煽られて、ハンドルを下に握り変えた。その様子を見て、エースくんが前に出てくれた。向かい風の先頭はなかなか大変だが、そこは競技をやるエースくんだ。何事もないように前を引いてくれた。

 

私は後の女性二人のペースを気にしていたが、Cさんのことはよく知っているので、Sさんがどうかと思ったが、よく走りそうな感じだ。エースくんにピッタリくっつくとどんどんペースが上がってしまいそうなので、ちょっと踏んでるな、と思う時は少し離れてペースを維持した。

 

道のいたるところに菜の花が咲いている。一足早く春を感じられるのが渥美半島のいいところだ。

暖冬の今年は奥三河でも花の開花が早いが、東三河の多様性語るとき、2月に北の豊根村は雪が降っていて、南の渥美半島は菜の花が咲いている、というのがよく例えに出される。渥美半島は暖かいのだ。

 

しばらく走ると菜の花まつりの会場に着く。時間はやや押しているが、せっかくゲストも来てくれたので立ち寄ることにする。

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本当に一面の菜の花畑だ。

菜の花のいい香りがする。会場内を少しだけ散策。

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露店で渥美名物の大アサリのフライなどが売られていた。「いかんですね、これはビールがいりますよ。」エースくんが言う。

「全くだ。」私とエースくんはビール党で、二人で遠征に行くと必ずビールを飲んでいる。我々の会話は新しい自転車機材の話と酒の肴の話が多い。

 

会場を一回りしたところで撮影クルーと待ち合わせしている日出の石門に向かう。

 

菜の花まつりの会場からすぐだ。

 

撮影クルーと合流。この強風でもドローンが飛ぶという。

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向こうのオーダーに合わせてしばらく撮影。

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予定よりも長くかかったが、無事、撮影のミッションを終え、ランチに向かう。

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月並みだが、伊良湖岬まで来たら先端の丘で一度必ず止まる。太平洋と伊勢湾の両方がよく見えるからだ。


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ここから見る神島も好きだ。

そういえば神島はもう何年も行っていないな。


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少し写真を撮ったあと、一気に下った。

サッとエースくんにが抜き去っていく。追いつこうとペダルを踏んだが、全く追いつけなかった。さすがだな。

 

お昼の混雑する時間より前にお店に入りたかったが、予定していたお店に着く頃には、もう何組も待っている客がいた。

幸い、伊良湖岬周辺には食事するところがたくさんあるので、他の店に行く。

 

こちらも混んではいたが、すぐに座れた。

みんな揃って大アサリのフライ定食を注文。

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これがなかなかのボリュームだった。

エースくんと私は女性陣からフライをお裾分けしてもらう。満腹であった。

 

ランチの後は国道259号で渥美市街へ向かう。

風は追い風基調になる。ペダルがよく回る。

 

この日のもう一つの目的地、福江へ。免々田川の菜の花・桜まつりが真っ最中だ。

河津桜が菜の花と共にちょうど見頃だった。

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会場は多くの人で賑わっていた。

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自転車を押しながら川沿いの道を歩いていくと、スタッフのおじさんが「そういえばバイクラックがなかったね。来年は用意しておくよ。」と声をかけてきた。

「是非頼みますよ。」

おじさんの口からパッと「バイクラック」という言葉が出るところがさすが、サイクリストにフレンドリーな渥美半島。来年はきっと会場にバイクラックが設置されるだろう。

 

ここで赤羽根に戻る我々と分かれて、エースくんはそのまま自走で豊橋方面に走っていった。またエースくんともライドしたいな。

 

全体的に予定が押してしまい、当初設定したコースを短縮して、スタート地点の赤羽根の道の駅ロコステーションに戻る。

 

追い風のおかげで、予想より早く道の駅に戻ることができたが、Sさんは次の予定が迫っていて、車に戻るとサッと行ってしまった。

あらかじめ時間のこととかちゃんと聞いておいてタイムコントロールすればよかった。また機会があればSさんともゆっくり走りたいものだ。

 

かく言う私もこの後、東栄町に泊まりに行くので急いで帰らないといけなかった。

わざわざ来てくれたCさんへのお礼もそこそこに、急いで自宅に戻った。

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久しぶりに走って感じたが渥美半島もいいな。

地元で走りたいとこばかりというのは贅沢な話だ。

東三河はサイクリストが暮らすのに最高だと再認識した。

 

 

癒しの奥三河 

三河東栄町にゲストハウスdanonというところがある。

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沖縄から東栄町に移住してきた金城愛氏(少し前に結婚して西田さんになった。私は前のまま「金ちゃん」と呼んでいる)が経営する宿で、全国のゲストハウスを巡って旅をしている人や田舎暮らしに興味のある人が集まるところだ。

そうした外の人だけでなく地元の若い人々も集まる拠点にもなっている。

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我が家は年数回、このdanonに泊まるのが年中行事になっている。特に何かするわけでもなく、とうえい温泉に入って、danonの他のお客さんといっしょにご飯を食べて、大人はそのまま深夜まで飲み明かすだけだ。

 

お客は口を揃えて「田舎の親戚の家みたい」という。

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古民家を改装した宿の中は、金ちゃんのセンスでお洒落な雑貨と昔の道具がいい感じに馴染んでいるのだが、とにかく落ち着く。

 

この日は夕方に着いたので、とうえい温泉の割引券を金ちゃんにもらうと、すぐに温泉に行く。一人で豊橋から泊まりに来ていたKさんをついでに乗せていく。だのんではよくあることだ。

 

とうえい温泉は湯がとてもいい。近隣にいくつかある日帰り温泉の中でもお気に入りの温泉だ。

うちの子供たちは、だのんに行く楽しみの一つがとうえい温泉に入ることである。まあ私もそうだが。

一緒に入った長男は「次はボコボコのとこー」とか順番にいろんな湯に浸かっていた。初めて来たときは怖がって私にずっとくっついていたものだが。

 

湯上りはソフトクリームを食べるのも習慣になっている。ビールはだのんに戻ってからだ。ソフトクリームのほとんどは子供たちが食べてしまう。

 

だのんに戻ると早速ビールを開ける。家から持ってきた自家製の燻製を肴に、キッチンで金ちゃんや旦那のニッシー、Kさんと話しながらゆっくり飲む。

 

夕食の支度ができるとそのまま夕食に突入し、みんなで食卓を囲んでスタンバイ。うちの長女が小学校風に「手を合わせてください。いただきます!」といい、みんなが「いただきます!」と声を揃えていう。ほんとほのぼのしている。

 

この日の夕食はチキンカツで、「チキンカツってみんなよく食べるんだよね」と金ちゃんが言ったがなるほど納得である。胸肉を使っていてアッサリしているのもあるだろうが、パクパク食べられた。

 

食事が終わり、子供たちは隣の部屋で遊んでいる。少し食卓の上を片付けたが、そのまま私は飲み続けた。毎回こんな調子である。

 

この日はKさんに、どうしてだのんに来たのかを聞いたり、金ちゃんや私の若い頃旅した話とかをしながら、Kさんの年の頃を思い出したりした。

こうして初対面の人とゆっくりお酒が飲めるのもなんだか旅をしているようで、好きな時間だ。私に絡まれるほうはどう思っているか分からないが。

 

用事で出かけたニッシーの帰りを待っていたが、睡魔に勝てず、日付が変わる頃、眠りについた。

 

朝、目を覚ますと、となりに寝ていた長女と目が合った。他の家族は眠っている。私は長女と二人で起き出した。

 

キッチンではすでに金ちゃんが朝食の支度をしている。

「おはよ、しまちゃん。二日酔い?」

毎回、夕方から深夜まで飲み続けているので、だのんの朝はいつも二日酔いだ。

私はとりあえずコーヒーを淹れる。

 

二日酔いで少しだるい朝のこの時間が好きだったりする。

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長女は気に入った本があったのか、起きてから静かにずっと本を読んでいる。

 

Kさん、わたしの家族と順番に起きてくる。起きてきた大人にはコーヒーを勧める。

 

朝食

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朝も揃っていただきますをする。

 

スパムの入ったニンジンシリシリと玉子焼きがだのんの朝の定番だ。普段はあまり朝食は食べない方だが、だのんの朝はしっかり食べる。単純においしいからだと思う。

 

食事が終わるとニッシーが、外でテントサウナをやってくれるというので、短パンに着替える。

 

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早速テントの中に入る。

おお、なかなか暑い。

中は大人4、5人が座れるようベンチが置いてあり、薪ストーブが焚かれている。薪ストーブの上には石が置かれており、そこにニッシーが柄杓で水をかけてくれる。

石に水をかけるとすぐに水蒸気になる。

ニッシーがタオルで熱風を送ってくれる。

なるほど、これはいい。

 

しばらくたって体が火照ってくる。汗がよく出る。

「川に入っておいでん」とニッシーが言う。

テントから出るとそのまま隣の川に飛び込む。

かなり冷たいが気持ちがいい。

 

この日は日差しが暖かく、外のベンチで座っていると気持ちがよかった。

素晴らしいタイミングで金ちゃんが冷えたジャスミンティーを持ってきてくれる。

 

最高だな。

 

その後、更に2セットサウナと川ダイブをしてすっかり気分爽快である。

 

ちょうど、お客さんのマッサージをしに来ていたタイ古式マッサージ師のでらちゃんが

「しまちゃん、サウナしたー!って感じのいい顔になっているよ」と言ってくれた。

これでリフレッシュしなかったら嘘だろう。

 

だのんにお泊りの際はテントサウナ、是非試してみて欲しい(要予約、別料金)。

 

サウナを満喫した後、我が家はだのんを後にした。

今回は比較的静かな滞在だったが、充実した時間を過ごすことが出来た。

 

だのんの帰り道、前から行ってみたかった東栄駅前の雑貨屋さん「maru-kai」さんに立ち寄る。

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ここは昨年オープンで、東栄町を中心に奥三河のハンドメイドクラフトが売られているお店である。道の駅では多少そうした製品が手に入るが、こうしてまとめて売られているところは殆どない。

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店内はとてもおしゃれな空間だ。いい意味で奥三河らしくない。

雑多な商品と一緒に売られてしまうと、地味に見えてしまいがちなものも、maru-kaiの店内では、一つ一つが個性的で魅力的に見えた。

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店主のなつきさんのセンスだろう。

なつきさんはそれぞれの商品について、詳しく説明してくれる。

どんな人がどんな風に作っているのか、どう使ったらいいのか。

商品の幾つかは私の知り合いのものもあった。

 

欲しいものはたくさんあったが、家で実際にどこに置くかイメージできるものだけ買うことにした。

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私はアイアンの花器と鹿の時雨煮を、妻は繭花を購入した。繭花は前から家に欲しいと思っていた。

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繭花は東栄町のおばあちゃんたちが作っていて、町内で買い求めることが出来る。なつきさんによれば、繭花を作っているおばあちゃんたちが作品に合わせて色も自分で染めて作るのだという。とても凝った作りでしかもどれも優しい雰囲気だ。

 

三河の人は手先が器用で何でも自分で作ってしまう人が多いが、いざ物を売るとなると、なかなか上手にできない人が多いように思う。

 

マルカイではそうした商品の一つ一つのストーリーを教えてくれる。

三河に必要なのはこういう店だ、

そう思った。

 

 

マルカイの後、新城の梅の名所「川売の里」へ。

 

私は何度か来ているが、妻や子供たちは初めてだ。

 

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満開の時は、車で来ると後悔するほど道が狭いが、この日はまだ6分咲きほどでそこまで車は多くなかった。

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「いいにおい」長女が言う。

私は深呼吸をして体いっぱいに梅の花の香りを取り込んだ。

今年は奥三河の春も早い。


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だのんに行くこと以外、全く決めていなかった休日だったが、奥三河はいつものように癒しをくれた。

三河の春は本当に美しい。また近いうち来ようと思った。

新城ラルプデュエズを駆け上がれ -ライド新城-

SNSを眺めていると、KINAN AACA CUPの新城ステージ開催のニュースが流れてきた。

KINAN AACA CUPはプロサイクルロードレースチームのキナンサイクリングがプロデュースするアマチュア向けロードレースで、数年前から新城市でもレースが開催されるようになった。これは新城市のスポーツツーリズム推進課と地域おこし協力隊であったダモンデの山田さん、現在協力隊として活躍しているHatch さんの活動によるものだが。

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これまで新城ステージは作手で開催されてきたが、今回の新城ステージは初めて新城総合公園での開催で、SNSの告知ではキナンサイクリングチームの加藤GMが、東側のわんぱく広場の急峻な斜面をツールドフランスの有名な山岳ラルプデュエズにちなんで「新城ラルプデュエズ」と命名し、そこを使ったコースになることを説明していた。

 

この告知を見て、私にしては珍しく、ちょっと出てみようか、という気になった。

 

AACA CUPはエントリー費も3000円と安く、大会一週間前までエントリー可能。しかも、レイトフィーを払えば当時エントリーも可能という、非常に参加しやすいレースだ。

 

ちょうどエントリー締め切りの日、Glocalbikeで一緒にロードに乗っているOKNOくんがエントリーしたという話を聞いて、私は出場を決めた。

 

カテゴリーは速いほうから1-1から1-4まであり、トップカテゴリーはキナンサイクリングチームも出るカテゴリーだ。過去の大会でポイントを取っている選手は決まったカテゴリーへの出場が義務付けられているが、それ以外の選手は参加カテゴリーは自己申告となる。

私は1-3を選んだ。1-4はキッズと同じコースな上、新城ラルプデュエズを上らないようなので、こちらにした。

 

ダモンデバイクチームのタツマくんにAACAに出ると話をすると、「けっこう速いですよ。」と忠告を受ける。軽い気持ちでエントリーしたが、だんだん心配になってきたが、やるしかない。

 

 

大会当日。

 

 

私のカテゴリーは朝一番の8時15分のスタート。スタート前に受付を済ませ、試走もしなくてはならない。

自宅を朝6時半に出発。

今回、久しぶりにレースに出るということで、家族が応援に来てくれることになり、早朝から眠たい家族を起こしてついてきてもらった。

普段、私は家族を置いて自転車で出かけているが、私がどんな風に自転車に乗っているのか、子供たちは知らない。普段の私のライドスタイルとは違う、レースではあるけれど、その一端を見てもらえるのが嬉しかった。

 

レース会場に到着。

 

今年は暖冬だが、この日はちゃんとした冬の寒さであった。会場となる新城総合公園のグランドを冷たい風が吹き抜けていく。

 

私は試走の準備をすると見慣れた黄色とクロのBUCYO COFFEEテントに向かった。

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「おっ、きた来た。」ダモンデ山田さんがさっそく声をかけてくれる。

「らしくないじゃん。ロードレースなんて。」

全くである。

ロードレースは過去にチーム対抗のエンデューロ(制限時間内で周回を競うレース)ぐらいしか出たことがない私である。

 

「何周させてもらえるか分かりませんけど、やるだけやりますよ。」私はそう答えた。

今回のレースはクリテリウムと呼ばれるレースで、周回コースをカテゴリーごとに規定の週回数で競うレースだ。ただし、レース中にラップ、つまり周回遅れになると足切りになり、そこで終了となる。果たして何周回できるだろうか。

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Glocalbikeの仲間のOKNOくんと合流し、二人で試走に行く。

一周回約3キロのコースはホームストレート以外ほとんど平坦がない。

新城総合公園の北側に位置するスタート地点から、南〜東へ一気に下り、公園の東側の端から問題の新城ラルプデュエズに向かって上って行く。

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新城ラルプデュエズの勾配は普通にロードバイクで走る分にはそこまでキツいものではない。奥三河にはこれくらいの峠は割とよくある。

しかし、道は公園の遊歩道で狭く、しかもレースペースで上がっていかなくてはならない。試走の際もアップを兼ねてちゃんと踏んで上がったが、とても7周回持つ気がしなかった。


新城ラルプデュエズを上り切るとまた下りが続き、そのままホームストレートに戻ってくる。

 

OKNOくんと二周回試走する。作戦らしい作戦は思いつかない。

試走後、間もなく招集がかかる。忙しい。

 

車に戻り、家族にもう出番だからと告げ、スタート前のアミノバイタルを流し込む。

 

招集エリアにはキナンサイクリングチームの加藤GMがいた。レースの運営で忙しいはずだが、私の顔を見つけるとわざわざ声をかけてくれた。

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朝早い時間だったが、ダモンデのメンバーのりょーこさん、ユミコさん、上野さん、タツマくんと沢山の仲間が応援に来てくれていた。

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全く有難い限りだ。

 

ダモンデクルーに加え、さらにGlocalbikeの仲間もわざわざ応援に来てくれていた。

 

わざわざ来てくれたみんなのためにも何とか完走したい。そう思った。

 

スタート位置に着く。出場選手は40人ほどだろうか。

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私の場所は後のほうで不利だが、下のカテゴリーは力量がバラバラで落車の危険が高いのでこのくらいの位置どりでいいということにしておいた。

 

レーススタート。

 

思った通り、先頭集団はすごい勢いでスタートしていく。必要以上に出遅れないよう慌てて集団を追う。一度集団から離れると集団に戻るのは不可能に近い。

 

試走を思い出し、自分が走りたいライン狙いつつ、途中のグレーチングやカーブミラーといった障害物を意識してやり過ごしながら、少しでも前に出るチャンスを伺う。

公園東側の折り返しのヘアピンコーナーで減速することを見越して、スピードコントロールをしながら、コーナーの立ち上がりで踏み込む。

 

小さい段差を軽くいなしながら、新城ラルプデュエズに突入していく。前を走る選手がコーナーの入り口を間違えてコースアウトしていくのが見える。

 

一つ一つを着実に。何とかここで前に出なくては。

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上っていくと仲間たちが応援してくれる声が聞こえる。

 

ラルプデュエズのコーナーごとに仲間が立っていて、私のことを応援してくれていた。

 

何とか応援に応えたい。

しかし、練習不足の体は正直だ。

懸命に斜面に食らいつくが、思ったように前の選手たちを捉えられない。耐えるしかない。

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山の上のほうにGlocalbikeのバスマンさんがいた。

「シマダ‼︎一番上の先まで踏み続けろ‼︎」

レース会場中に聞こえそうな大きな声が飛ぶ。さすが世界戦を転戦し、日本代表を支えるメカニックである。海外のレース会場でもそうしているのだろう。

 

新城ラルプデュエズは遊歩道部分が終わるとアスファルトになるのだが、そこからまだしばらくジワっと上っている。

多くの選手が遊歩道の終わりでペースを落とすので、バスマンさんはそこを耐えて踏め、と言っているとこがわかった。

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私は遊歩道の出口からダンシングをし、踏めないなりに最後にペースを上げる。毎回、ここで何人か捕まえることができた。

 

ホームストレートまで一気に戻る。

 

ホームストレートを抜けるとまたすぐに下りが始まる。このコーナーは右、次は踏みながら左、などと考えているとあっという間に東側の下りストレート。ラルプデュエズに戻ってくる。

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「シマダくん、前まで5秒!いけるよ!」エプロン姿の山田さんがタイム差を教えてくれる。捉えられるか。

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三周回目を終え、ホームストレートに戻るとMCのユキオくんが「あと〇〇で足切り発生か?」という声が聞こえる。

まずい。トップはどこまで来ているんだ?

 

下りをこなし、東側のストレート。前の選手がボトルを取るのが見える。私もボトルが取りたいが、それよりコーナーの立ちがりで逃げたい。ダウンチューブからボトルを取ることを諦め、ハンドルを握りコーナーに突入していく。立ちがりでダンシングし、何とか離す。

 

ラルプデュエズの上り口で数人の選手が横を抜けていく。ラップされた。

 

いや、ここで食らいつかないと。

この周回で私のレースは終わりかもしれないが、あとはどこまで前を行く選手を一人でも抜けるかだ。

あの人なら、私のヒーローならそうした筈だ。

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みんなの声援を受け、呼吸のリズムとペダリングが合わないまま、とにかく上を目指した。

アスファルトまで上り切り、下りに入る。

 

下り区間で子供たちが見えた。

 

やれるだけやる。

 

ホームストレートに戻って、必死に踏むが、正面で赤いフラッグが振られた。

 

わずか12キロ、30分足らずの私のレースは終わった。

 

喉の奥から血の味がする。肩で息をしているがなかなか収まらない。

OKNOくんを見つけて声をかける。彼はペースを抑えすぎた、と反省していた。

「やってみないと分からないね。」私は彼にそう言ったが、自分に言っていたのかもしれない。

 

ゴール付近にいるといろんな人が声をかけてくれた。

ラルプデュエズで応援していた仲間たちが戻ってくる。AACAの人はいいと言っていたが、公園のおじさんがダメと言って追い出されたそうだ。

「追い出されちゃったよ。」とバスマンさんは笑っていた。

そんなところで真剣に応援してくれるところが我らダモンデクルーとGlocalbikeの仲間たちらしい。

 

Hatchさんや加藤GMも声をかけてくれた。

 

子供たちが駆け寄ってくる。

「お父さん完走できなかったよ。」

それでも子供たちは何だか嬉しそうだ。

結果は不甲斐ない限りだが、周りの仲間や家族がこんなに応援してくれて私は幸せものだ。

 

BCYO COFFEEでパスタを食べて、子供たちを自転車体験コースで遊ばせる。

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その向こうを1-1の選手たちが猛スピードで駆け抜けていく。

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子供たちとトップカテゴリーの選手。

対照的な光景だが、これこそが自転車の世界なのだ。

レースという非日常を大いに楽しんだ一日になった。

 

 

 

週末のマウンテンバイキング 

私の住む愛知県の東三河エリアはロードバイクを乗るのにもマウンテンバイクを乗るのにも非常に恵まれた地域だ。

普段の週末は天気が良ければロードバイクかマウンテンバイクに乗るようにしている。

 

ロードバイクに関して言えば、南の渥美半島、北の奥三河、東には浜名湖があり、どこも郊外に出てしまえばかなり快適に走ることができる。気分次第で海も山も楽しめる素晴らしいエリアだ。

 

マウンテンバイクについては新城市の阿寺のダウンヒルコースの他、東三河には林道やトレイルが無数にある。

 

今回、仲間に誘われて、そうしたトレイルの一つを走った。

 

その日は北風の強い日で、集合した駐車場で仲間と話していると風で体が冷えてとても寒かった。私は持っていたウィンドブレーカーを羽織った。

 

予定のメンバーが集まり、早速山に入る。

 

山に入ってしまえば風が遮られ、寒さは気にならなくなる。

よく仲間と言うのだが、風の強い冬場はロードに乗るより、マウンテンに乗る方が暖かくていい。

すぐに下で羽織ったウィンドブレーカーが暑くなる。最初の休憩で脱ぐと畳んでバッグにしまった。

 

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里山におけるマウンテンバイクの基本は「とりあえず上る」だ。

特に私の周りのマウンテンバイカーは下り系の人が多いので、まずゆっくり上って、下りを楽しむということが多い。

 

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乗っていけないような場所はバイクを押して上がることになるが、今回のトレイルは比較的乗車率のいい、つまり押さなくても乗っていけるところが多いルートだった。

 

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山の上で休憩。

いつもはロードで走っている道が眼下に見える。

マウンテンバイクはマウンテンバイクでしか見えない景色がある。

 

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仲間と機材の話やレースの話をして盛り上がる。こうした時間もライドの楽しみの一つだ。私の周りは毎週ライドをしているベテランも多いので、機材の話などはウェブの情報よりかなり信頼性の高い情報が聞ける。

 

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しばらく山の上で休憩したあと、上ってきたところと別のルートを下っていく。

私は下りは苦手なので、トレイルに行っても「何とか乗って下りられるかな」というレベル。いつも下りの速い仲間に先に行ってもらい、いつも後ろからついていく。

 

そんな私でもやはり下りは楽しい。

ときおり現れるタイトなコーナーや大きな溝をなんとかクリアし、トレイルを抜けていく。

 

トレイルの途中で林道にぶつかり、視界が広がった。

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山の中を走っているので、ずっと木しか見えない、ということもしばしばだが、時折、こうした素晴らしい景色に出会うことができる。

 

この日は二つの山を予定していたが、一つ目の山を走り終えると、二つ目の山に行くにはタイムアウトになりそうだったので、一つ目の山の別ルートを探索に行く。マウンテンバイクはこうしたルート探索も楽しい。もっとも、探索しに行ったものの、全く乗れないということも少なくないが。

 

この日の探索はちゃんと乗れるところだったので悪くなかった。

 

二つ目の山をキャンセルしたので予定より早く終わったが充分にマウンテンバイクを楽しむことができた。

 

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その次の日も仲間からライドの誘いがあったが、家族で出かける用事もあり、この日はやめておいた。

しかし、出かけるまで少し時間があったので、近所の山を上って、景色のいいところで遅めの朝食を食べることにした。

 

使える時間は2時間。

 

家からマウンテンバイクでトレイルの入り口に向かい、トレイルを上って山の中腹へ。

マウンテンバイクは下りはもちろん楽しいが、シングルトラックを上るのも楽しい。走るラインを選ばないと木の根っこや岩に引っかかって足をついてしまう。一見走れなさそうなところもラインをちゃんと選べば走れたりするものだ。

 

一、二度足をついたが、なかなかスムーズに上ることができ、山の中腹に出た。 

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来てよかった。

久しぶりに冬らしい青空だ。

 

 

景色のいいところでバックパックからバーナーストーブを出し、インスタントの塩ラーメンを作る。

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ラーメンのトッピングの胡麻と海苔を忘れずに持ってきた。

ちなみにコッフェルもストーブも学生時代から20年くらい使っている年代物だ。今時の製品も欲しいが、まだ使えるし、壊れない。当分使うだろうな。

思いつきで普段やらないような朝ごはんライドだったが、やってみると楽しい。

 

わずかな時間でも楽しみ方はいろいろある。

もう少しで、「今日は時間が中途半端だから、ライドはやめるか。」となってしまうところだった。

 

次はコーヒーとパンでも持って、朝ごはんを食べに来よう。

私はささっとコッフェルを片付けると、そのまま上ってきたトレイルを降りて行った。

 

 

鞍掛山の雪 - 奥三河ライド -

最近自転車を始めたが、どこへ走りにいけばいいか分からないので、一緒に走って欲しい人がいる、と友人のタツマくんから話しがあった。

 

もともと尾張の人で仕事で東三河に住むようになったが、この辺りのことはまだ知らない、ということらしい。

 

タツマくんが「せっかくなんで奥三河に連れて行って奥三河のファンになってもらいましょう」というので、我々のスタンダードコースを案内することにした。

 

 

朝。

 

集合場所にした桜淵公園に行くが、朝方には止むはずだった天気予報を裏切り、まだ雨が残っていた。

今回一緒に走るSさんとタツマくんが車でやってくる。雨はしばらくで止みそうだが、外で待つのも寒いので、雨が止むまで、この日休日営業をしていたヤングキャッスルでモーニングにすることにした。

 

我らがダモンデの拠点、純喫茶ヤングキャッスルは平日営業が基本だが、イベントなどがない週末は営業している日がある。今回はぜひSさんにヤングキャッスルを紹介したかったのでタツマくんが営業日を選んでライドの日程を組んでくれた。

 

店に行くとダモンデ山田さんとキッチンのりょーこさんが出迎えてくれる。これから出かけるダモンデクルーの早川さんもいた。

 

早川さんを交えて話をする。

 

Sさんは12月に納車で、一度渥美半島を一周したらしい。それだけ走れれば体力は問題なさそうだ。

 

ただ今回は初めて3人で走ること、それから濡れた路面の走行になることから、一旦新城総合公園で、ハンドサインとか止まり方、曲がり方など、ライドの基本的な講習をすることにした。

 

休日営業のヤングキャッスルには、早川さんの他、ダモンデクルーや一般のお客さんもいてなかなか賑わっていた。

 

我々はモーニングを平らげると、ヤングキャッスルを後にした。

 

新城総合公園まで車で移動。まだ雨が上がりきっていないが、まあ走っているうちに止むだろう。

 

Sさんに軽く手ほどきをして、我々はさっそく走り出した。

 

今回のコースはタツマくんが引いてくれた。最近、タツマくんとライドに行く機会が多いがコースはタツマくん任せばかりだ。申し訳ない。

タツマくんの引いたコースは新城総合公園から国道257号で豊川沿いに北に向かい、設楽町に入ったところで、南に戻る奥三河でもアップダウンが少なく、見どころのあるエリアだ。

 

昔のサイクリングターミナルの後を越えて布里の手前あたりの景色が私はお気に入りだが、あいにくの天気でちょっと残念だったが、急に視界が開けて気持ちがいいのはいつも通りだ。

 

 

タツマくんがまずまずのペースで引き、Sさんもちゃんとついてきている。景色も楽しんでくれるといいのだが。

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三河は雨上がりの山に雲がかかった景色も美しい。雨上がりは自転車が汚れるのが困りものだが、奥三河の幽玄な景色を見ることが出来るので悪くない。遠くの山を望みながら私はペダルを踏んだ。

 

愛郷のお店があるところで休憩。

 

ペースが早かったのか、Sさんは少し疲れた様子だった。Sさんの自転車の足回りからチャラチャラ音がしていたので、シフトワイヤーを少し張る。初期伸びが出ていたようだ。Sさんのロードは今時のディスクブレーキのロードバイクで、少しローターに当たるようでこちらも少し音がしていたが、走れないレベルではないので、こちらはそのままにしておいた。

買ったばかりのバイクで、自分と違うお店で買ったバイクを触るのは気を遣う。

 

愛郷からは私が前を行く。

トンネルを抜け、設楽に入る。

 

そのまま稲目トンネルを南に行くところだが、「おしどりの里」に寄る。

三河にしばしばやってくるタツマくんも私も実は行ったことがなかったのだ。

 

おしどりの里は設楽町新城市の境にある稲目トンネルのすぐ近くにある。 

 

おしどりの里の駐車場の入り口に自転車を置き、中へと進んでいくと、管理人だろうか年配の男性に話しかけられる。ときどき、なにも知らないサイクリストが迷い込んでくるらしい。

我々は「おしどりを見に来た」と伝え、おしどりが見える川へと続く道を歩いていった。

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川までいくと河岸がブルーシートに覆われていた。おしどりは警戒心が強く、カメラのレンズに気付くと逃げてしまうらしい。

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いろいろ注意書きがあった。

ブルーシートに開けられた穴から川を見るのだが何とも言えない気分だった。

どうもここは本当におしどりが見たい人、写真を撮りたい人が来るとこらしい。

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我々は少し川面に浮かぶおしどりを眺めた後、おしどりの里を後にした。

 

おしどりの里からは稲目トンネルを南に進み、そこから東へ。

 

Sさんは四谷の千枚田を知らないそうなので、千枚田の入り口まで行くことにする。

 

上り坂になり、Sさんが「前のギア、変えたほうがいいですか?」とやや慌てた様子で尋ねてきた。タツマくんとフロントの変速方法を教える。

 

そういえばここ最近、初心者の人とライドをするということが殆どなく、そうした人に対する手ほどきや気遣いを忘れているなと気付かされた。私はときどき奥三河のライドでガイド役を頼まれることがあるが、慣れてきていることもあり、当たり前に思ってつい説明を忘れてしまうことがある。もっと注意を払わないとな、と反省した。

 

千枚田の駐車場に近づくと視界が開ける。

「おお」Sさんが声を漏らす。

 

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来るときに早川さんが、「鞍掛山は初雪らしいよ」と教えてくれたが、四谷の千枚田の先にそびえる鞍掛山は確かに雪を被っている。この時、ダモンデクルーが奥三河パワートレイルの練習でまさに鞍掛山あたりにいたそうだが、相当に寒かったらしい。

 

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タツマくんが「5月の田植えの季節がいいよ」とSさんに教えてあげていた。私は「春は梅も咲くし、初夏にはアジサイ、刈り入れ前もいいよ」と付けくわえる。雪を被った鞍掛山の景色もこれはこれで趣き深いと思う。

 

道はまだ濡れており、千枚田から来た道を戻るとき注意して降っていく。

 

千枚田からは旧田口線のルートに乗る。

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北から行くとやや下り基調で軽快に進む。

 

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道沿いの「やまびこの丘」でお昼にする。

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やまびこの丘はキャンプ場や体育施設があるところだが、食事もできる。特に蕎麦が美味い。

Sさんに定食屋が蕎麦か聞くと蕎麦がいいとのことであった。私も久しぶりに行くので楽しみにしていた。

 

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今年の冬はあまり寒くないが、雨のせいで体がずいぶん冷えていたので、出された温かいお茶が嬉しかった。

 

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やがて蕎麦の定食が運ばれてくる。天ぷらと炊き込みご飯もついてお得な感じだ。

味付けは全体的に甘め。東三河らしい味付けである。温かい蕎麦が体に染みる。

 

やまびこの丘の後、少しマイナーな道を使いながらスタート地点の新城総合公園に戻る。

 

Sさんは楽しんでもらえただろうか。もっと行く先々でいろいろ解説したりすればよかったと後悔したが、また一緒に乗ってくれるときにはそうしようと決めた。

 

 

 

水軍の入江 - 2020冬キャンプ -

大学時代の友人であるツネオから「年末年始でたまには子供抜きでキャンプして、山でも歩かないか」と誘いがあった。

 

春の異動から心のゆとりがなく、誘われた当初は準備などを考えると面倒だな、という思いが先に浮かび、あまり乗り気ではなかった。

 

しかし、年末年始の休みがいつもより長かったこともあり、妻に相談すると「行けばいいんじゃない」と言ってくれた。

 

ツネオのプランでは一泊二日でどこかでキャンプをし、山を歩くというものだった。私の他に同じく大学時代の後輩ひろしとフクチが一緒に行くことになった。いろいろ相談した結果、以前、ひろしが家族で使ったことのある三重のキャンプ場に宿泊し、熊野古道を歩くことになった。

まだ若い頃、このメンバーや他の仲間たちと「奥三河野営組合」と称して、無料のキャンプ場やテントが張れて人が来ないようなところでよくキャンプをした。その頃、冬キャンプもしており、今回は久しぶりの冬キャンプになる。

 

年末休みに入った頃、ツネオから「子供がインフルエンザにかかってしまい、行けなくなった」と連絡が入った。

 

どうしたものか。

 

ツネオが中心で企画した今回のキャンプ、正直私は彼の企画に乗っかるだけのつもりでいたので、あまり主体的に考えていなかった。

「やめるか」

一瞬そう思ったが、フクチとは久しぶりであるし、キャンプ場はひろしのオススメだ。それに久しぶりに冬キャンプがしたかった。

結局、ひろし、フクチ、私の3人でキャンプだけ行くことにした。

 

行きはフクチと私の二人でドライブである。ひろしは電車で現地集合だ。

今回はフクチが車を出してくれ、結局ずっと運転をしてくれた。一応、私が先輩だから気を遣ってくれたのかもしれない。独身の頃はよく自転車関係でフクチとも遠出をしたものだが、最近はほとんどそういうこともなくなった。彼も自転車をやっているが、最近は職場の人と山登りをすることが多く、自転車はあまり乗っていないようだ。

山登りをやるおかげで彼は私より最近のアウトドア事情に詳しく、今時のアイテムもいろいろ持っているようだった。

私の方は、昔からの道具がまだほとんど使えることもあり、最近は少し勉強しているが物も知識もまだまだアップデートされていない。

 

久しぶりの冬キャンプで、装備をどこまで持って行くか迷ったが、とりあえず寝袋は長年愛用のイスカの- 15度対応のものを選び、ベースレイヤーも一番厚手のものを用意した。

今回、新たにワークマンでシューズを購入。ビーンブーツ風のシューズである。アウトドア用の靴はトレランシューズしかなく、前に東栄町の明神山に登ったときに濡らして寒い思いをしたので、防水も期待できるワークマンを試すことにした。

 

途中、フクチがたまに行くというアウトドアショップに寄る。

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あまり実物にお目にかかることがない商品がいろいろ置いてあり、私は特に買わなかったが、とても参考になった。

 

寄り道をして、キャンプ地に着く頃にはもう夕方だった。キャンプ場のそばでひろしが歩いているのが見えた。ちょうど彼も着いたところのようだ。

 

キャンプ場は基本は海水浴場で、キャンプもできるというところだった。冬の間はやっていないが、ひろしが管理する観光協会に聞くと、泊まって構わないが、トイレは使えるのものの、炊事場は水が出ないかもしれないとのことだった。トイレが使えればそれで充分である。まあ正直なくても何とかなるのだが。

 

キャンプ場はきれいな浜辺だった。

白い砂が美しい。

浜辺を中心に左右に陸地が伸びており、ちょうど浜の正面が入江の入り口になっていた。

小さな丸い入江に沿うように集落があり、向こうに小さな港が見える。

 

水軍で有名な九鬼が近いですよ、とひろしが教えてくれる。

 

私は好きな時代小説作家、隆慶一郎の水軍を描いた小説を思いだした。こうした小さな入江から家族に見送られて海へ出て行く様子が描かれていた。ここもそうした水軍の拠点だったかもしれない、弓形に伸びる陸地が船を隠すのにちょうどよかったのではないか、などと勝手な妄想をした。

 

車から荷物を下ろし、各自テントを設営する。すぐに暗くなるので、エアマットと寝袋も出しておく。

 

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それにしても素晴らしい場所だ。

テントを張り終え、柔らかく赤に染まる入江の先を見ていると、この景色を見ているだけで、来る価値があったと思えた。

 

景色をもっと堪能していたいところだが、手元が見えるうちに晩ご飯の支度にかかる。

 

三河野営組合を名乗っている頃から、私は炊事班長である。椎名誠の「あやしい探検隊」に出てくる料理人の林さんのファンなのだ。林さんの作るチャーハンがとてもうまそうなのである。林さんに憧れてキャンプに中華鍋を持っていった時期がある。懐かしい。

 

今回は簡単晩ご飯、鍋だ。

ふとスーパーで赤から鍋の素を見つけたら、赤から鍋が食べたくなった。子供が辛いものが苦手なので、家ではなかなか食べる機会がないのである。

 

サッと野菜を切り、鍋に赤から鍋の素と野菜と肉と豆腐を入れて煮たらおしまい。野菜はフクチが実家で収穫してきてくれた。

 

少し鍋の素が少ないかと思ったが、白菜と白ネギから水が出てちょうどよかった。

 

鍋が煮えるのを待つ間、焚火に火をつけ、ビールをあける。お歳暮で貰ったロースハムを厚く切り、串に刺して焼く。

やはりキャンプは焚火とビールだ。

 

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薪はひろしがホームセンターで買ってきてくれたが、量が心許ないので、浜で流木を拾う。

 

今回は焚火台としてユニフレームのファイアスタンドを持ってきたが、薪の下がメッシュになっており、風が通るせいか薪がよく燃えた。

浜に着いたときは風もなく暖かだたったが、暗くなるにつれ風が出てきて寒くなってきた。

 

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鍋が煮えた。

 

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各自コッフェルやシェラカップを出して鍋をよそう。冬キャンプは鍋が簡単でいい。

男三人は食べだすと早い。すぐに鍋の具が終わってしまう。野菜は切ればまだあったが、焚火で炙って食べるものもあるので、シメの玉子とじうどんをそのまま作って食べた。

 

夜は長い。焚火を続けながら、ビールを飲む。

 

今回新たに持ってきた道具がもう一つあった。

ファイヤーサイドのトング、ファイアーバードである。

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ファイアーサイドは長野県駒ヶ根市にある薪ストーブの代理店だが、となりにアウトドア用品と雑貨の店があり、長野にキャンプに行くと寄ることにしているところだ。

 

普通のトングより長くて使いにくいかと思ったが、細身なのにしっかりしていて重たい薪をつかんでもよれることがなかった。

また、挟むところの内側に爪がついており、薪を掴んだ感覚もとてもよかった。

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実際に使ってみると長さもそれほど長く感じなかった。これはいい道具だと思う。

 

流木がなかなかの量確保できたので、どんどん薪を追加していく。ひろしが買ってきた薪より流木のほうがよく燃えた。よく乾いていたのだろう。

 

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酒を飲みながら、いろいろ話をする。

フクチの最近の山登りの話やひろしの家族のことなど。フクチは山で過ごす時間が多いようだ。ひろしは息子の話を聞かせてくれた。彼の学校での話があまりに面白いので爆笑してしまったが、先生と親は大変だろう。だが、そんな彼が自分らしく生きていけるような社会にならないと嘘だよな、と真面目なことを考えた。

 

長い時間、焚火を囲み、スローなペースで酒を飲む。そしてスローなペースで話をする。

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焚火はいいなぁ。

 

風が吹き続けている。

フクチは風下になるのか、煙を避けて何度も椅子を動かしていた。私は煙が目に染みても多少の煙はかかるに任せた。

 

焚火のお供はビールもいいが、夜がふけたらウィスキーだろう。

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スキットボトルからそのままウィスキーを飲む。中身は何か知らないまま持ってきたが、ブッシュミルズシングルモルトのようだ。

 

だいぶいい時間になったので火の始末をする。

 

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振り向くと月が明るい。そのまま空を仰ぐと星もたくさん見えた。

 

私はテントに潜り込むとすぐに寝てしまった。

長年愛用の寝袋は安心して眠れた。

 

朝方、外でフクチがガサガサやっていたようで音が聞こえたが、私はそのままま寝続けた。

 

テントが明るくなり、夜明けが近いのが分かった。

ゆっくり体を起こし、ジャケットを着てテントから出た。

 

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雲ひとつない青い空の端が赤く染まっている。

静かな入江の海は空の色をそのまま写していた。

素晴らしい朝焼けだ。

 

朝焼けを見ながら私はコーヒーをいれた。

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フクチとひろしも起きてきた。

フクチにポットにコーヒーがあることを告げ、コーヒーを飲まないひろしにはココアの袋を渡した。

風は夜に比べ弱くなっていたが、とはいえ寒い。

再び薪に火をつけた。

 

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焚火を再び囲みながら朝ごはんの用意をしていると朝日が上ってきた。

日が上るのをこうして見るのはひどく久しぶりの気がした。

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朝ごはんは正月らしく餅である。

ひろしの奥さん、私の大学時代の同級生なのだが、彼女が餅を持たせてくれた。

 

焚火が落ち着いたところで、網の上に餅を並べて焼く。よく考えたら焚火で餅を焼くのは初めてかもしれない。

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餅は多少焦げたが中までちゃんと焼けていた。

醤油をつけ、海苔を巻いて食べる。

うまい。外で食べれば何でもおいしいが、こんな素晴らしい朝ならなおのことだ。


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食事が済むと帰りの車で飲むコーヒーをタンブラーにいれ、撤収を開始した。

撤収もみんな手慣れたものだ。

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私は一足先に撤収が終わったので昨日行けなかった波打ち際にいく。穏やかな湾である。

 

フクチの車に全員の荷物を積み込むと、我々は小さな入江を後にした。私はこの場所を勝手に水軍の入江と呼ぶことにした。

少し遠いがいい場所だった。

今度は子供たちも連れて来よう。

今年も素晴らしい景色の中、過ごす時間ががたくさんありますように。

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お正月、初詣 

 

明けましておめでとうございます。数少ない当ブログの読者の皆さま今年もよろしくお願いいたします。今年は奥三河、自転車、キャンプなどあと過去の国内の旅の話など書けたらと考えております。

 

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2020年になった。

我が家ではお節として黒豆、田作り、なます、きんとん、柚大根、たたきごぼう、伊達巻を作る。田作りと伊達巻は私の担当だ。

 

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今年は田作りが上手くできた。子供にもなかなか好評だ。まあ焦がさない限り、その年に仕入れる乾物の田作りの状態に味は左右されるのだが…

 

元日の朝はおせちと妻の実家風の雑煮だ。

すまし汁に餅と菜葉、蒲鉾というシンプルなそしておそらく一般的なものだ。

 

変わって夜は東三河風の白菜の雑煮になる。

この白菜の雑煮だが、一体どこまで勢力を持っているか謎である。少なくとも妻の出身である西三河は違うようだ。

 

東三河の雑煮は出汁にメイン食材となる白菜を入れ、我が家では蒲鉾、あげを入れる。ここで餅も入れて煮るのが本来の東三河風だが(少なくともカントリーモーニングの新春レースで振舞われる雑煮と実家はそうなっている)、白菜に溶けた餅が張り付くのが私は嫌なので、別で餅を焼いておく。

具材は白菜だけや、鶏肉をいれたりするようだが、ここは家庭によるというところだろう。

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最後に仕上げとして花鰹をこれでもかとかける。

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七味はお好みで。

 

妻は初めてこの雑煮を見たときかなりの衝撃を受けたという。生まれてこの方、この雑煮しか知らない私は「?」という感じだったが、妻のリアクションを見ていかにローカルな食べ物であるかを思い知らされた。

 

雑煮の話が長くなった。

 

元日は妻の実家に新年の挨拶に行き終了。

 

今日、初詣に行ってきた。

 

行き先は奥三河設楽町の谷高山高勝寺、田峰観音だ。

三河で初詣と言えばなんと言っても鳳来寺であるが、近年、田峰観音も人気になっているようだ。道の駅「もっくる新城」の観光案内所でも積極的に紹介しているそうで、昼頃行くと駐車場待ちという混雑具合で驚いた。

 

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少し離れた駐車場に車を置き、本堂まで歩く。

急な階段を上ると本堂が見える。

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入り口で線香をあげる。

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混雑はしているものの、そこは奥三河、ストレスになるほどではない。賽銭を投げ入れお参りをする。そのまま人の流れに任せて進むとおみくじの列に並ぶことになる。おみくじは一人50円のセルフ方式。番号の書かれた棒をおみくじ箱から振り出し、番号の棚からおみくじの紙を自分で取り出すというもの。我が家は全員引いて、私だけ大吉だった。

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大吉だが、「何事にも控目にして油断あるべからず」「旅立吉」とある。旅立吉は言うことなし。油断あるべからずは、思い当たる節がありすぎるので、今年は特に気をつけようと心に誓った。

 

おみくじの後は甘酒の振る舞いをいただく。

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家で甘酒を作る習慣がないので、こういう機会しか甘酒は飲まない。スポーツの際には補給ドリンクとして非常に良いのだが。

温かい甘酒が体に染みる。
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甘酒を堪能した後、境内の鐘を突いた。

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鐘も突き放題というのもなかなか斬新なスタイルだ。我が家もそれぞれ鐘を突いた。

これは外国人は大いに喜ぶと思うのだが、まだ奥三河にはインバウンドの波は来ていない。

 

参拝の後は、農産物販売所で食事。

五平餅が30分待ちと言われて諦めたが、替わりに山菜うどんと田舎そばをいただく。

田舎そばは元日限定と聞いていたので、食べることが出来て嬉しかった。

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田舎そばは奥三河の祭りの間に食べられていた太斬りのそばで最近ではほとんど食べられることかなくなったというものだ。

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田峯でもお正月に特別に提供されている品だ。

味の濃い甘めの汁に味をよく吸った細切りの大根と人参、それから大きく切られた油揚げが乗っている。

家族で美味しく頂いた。

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田峰観音からは田峯城が見える。山の間にある田峯は本当に景色がいい。奥三河の好きな景色の一つだ。

 

初詣の後、道の駅「もっくる新城」に寄る。観光案内所で働く友人に新年の挨拶をするためだ。今日は勤務のあと、豊根村の花祭に行くという。毎年のこととはいえ、流石奥三河の観光案内人である。

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もっくる新城を後にし、奥三河を代表するお酒屋さん「だわり屋」さんに寄り、新年の挨拶と社長ご夫妻の今後について少し話をさせていただいた。お二人からはいつも刺激をいただく。年始からいい話を聞くことができた。鈴木夫妻の話はまた機会があれば書くことがあるかもしれない。

福箱ワインを購入して帰宅の途についた。

 

 

今年はどんな一年になるだろうか。

今年私は40になる。今後の人生をどうするか考えながら、仲間とともに楽しむことを忘れずに過ごしていきたいと思う。

 

2019を振り返る

 

ブログでわざわざこういうこと書くことをしたことはないが、家族と大晦日の食卓を囲み、妻、子供たちから今年の振り返りを聞くうちに自分でも思うことがあったので少しだけ書くことにする。

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我が家の大晦日は毎年、鴨鍋からの鴨蕎麦で年越し蕎麦にする。あとは酒を飲みながらダラダラ。今年の鴨蕎麦も美味しかった。柚子皮を添えるのがよろしい。

 

今年は次女の小学校入学があり、どうなることかと心配したが、とても楽しくやっているようで親としては一安心であった。

 

妻は夏からダモンデが経営する純喫茶「ヤングキャッスル」で始め、私の妻、という立ち位置から個人としてダモンデクルーに認識されたのが大きな変化だと言う。とても楽しく働いているようでなによりだ。

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おかげで妻は私より最近のダモンデ界隈の事情に詳しい。

 

長女はというと、自転車で遠くに行けるようになったのが嬉しいという。これは私も父親としてとても嬉しいことだ。長女と二人でサイクルフォトロゲイニング「ペダルマーク」に出たり、モーニングを食べに行ったりした。いつの間にかたくさん走れるようになって、同じ時間、感動を共有できるようになった。長女が産まれたときには喜びと戸惑いしかなかったのにこんな風に育ってくれて本当に感謝だ。

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私は、と言えば公私ともに長い時間を過ごした奥三河の勤務から離れて、私とは最も縁遠いと思われる仕事になり、仕事で悩み、人生について今後のあり方を自問し続ける日々だった。まだ答えは出ていない。

  • ただ、私を取り囲む大切な人々、私をこれまで、形作ってきたものを再確認することができた一年だったと思う。

 

私が活動の中心にしている奥三河というフィールドの空気感、時間の流れ方、そこで迎えてくれる人々、そうしたことが、私の一部になっているということが、少し距離を置くことでとてもよく理解が出来た。休みの日にサイクリングで訪れる奥三河がどれだけ癒しになったことか。

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それから家族がまとまった時間をくれたので、数年ぶりに一人旅に出ることが出来た。そして、かつての旅で旅の時間を共有した人と再び時間を共にすることが出来た。

 

この旅で自分は人生を旅とサドルの上にみつけてしまったということを改めて認識した。自分の足でペダルを踏み、心震える景色に出会う。一期一会の出会いの人に優しさをお裾分けしてもらう。ただそれだけかもしれない。しかし、その経験が私という人間の基礎を形成しているのだ。

 

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今年は辛い別れがあった。

人生の目標であり、私のヒーローであった石原さんとの別れだ。

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あんな風に優しく強くなりたい。石原さんがいつも笑顔だったのはそれだけ強かったからだと思う。

月並みだが、石原さんの分も自転車に乗ろう、そして石原さんのように私の後に続く若いサイクリストに手を差し伸べ、背中を押せるように強くなろうと誓った。

 

今年ももう間も無く終わる。

 

毎週のように一緒に走ってくれる地元のマウンテンバイカー、Glocalbikeのライダー、カントリーモーニングの仲間たち、イベントに行ったり運営したりするダモンデクルーのみんな、本当にいつもありがとう。おかげで私は私らしくあることができます。

 

来年も皆さまよろしくお願いします。

 

それでは皆さま良いお年を!