定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

風切山 - 奥三河低山ハイキング -

これはまだコロナの緊急事態宣言が出されるまえの頃の話だ。

 

珍しく豊橋里山に行って子供達はけっこう歩ける、ということが分かり、新城市の山に行った。

 

選んだのは、新城市にある風切山。風切山は桜の名所である桜淵公園からアクセスできる山でここも標高356mと比較的低い山だ。

 

ちなみに風切山の情報は新城市のスポーツツーリズムのページに詳しく載っており、私もこちらを参考に歩いた。

 

風切山めぐろーどコース – 新城市スポーツツーリズム

 

今回は自分の子供達と長女の友達のTちゃんを連れて行くことになった。

 

午前11時頃、桜淵公園を出発。

まずは山の入り口にある荒沢の滝に向かって県道沿いに北に向かう。

 

子供達は元気よく歩いて行く。

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暖かくなってきて、いろんなところに花が増えてきた。女の子達はタンポポや他の花を摘んだりして、道草しながら楽しそうに進んでいく。

「あ、つくし」次女はつくしを見つけると摘み始めた。長男もそれを見ていっしょに摘む。どうするのか聞くとお母さんに煮てもらうらしい。なるほど、それで一生懸命な訳だ。

長男は次女のつくし取りをいっしょにしながら、トカゲを見つけたらしく、捕まえようとしたが、逃げられたようで残念そうだ。

荒沢の滝の入り口には段々になった田圃が広がっており、彼岸花の名所として知られている。

今の季節はタンポポがたくさん咲いている。長女とTちゃんがタンポポで花束を作っている。

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ほのぼのとした様子を妻とTちゃんのお母さんに伝えようと写真を撮るとTちゃんが「送っちゃダメだよ。お母さんにあげてびっくりさせるんだから。」と言う。かわいい子である。

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桜淵公園から荒沢の滝の入り口まで子供の足でも20分あれば行くかと思っていたが、文字通り道草をして小一時間かかった。山の上でお昼を食べようかと思っていたが、もう12時であった。子供達にお腹が空いたか訊ねるとまだ大丈夫というので、お昼は歩いた調子で決めることにした。

 

田圃の横の獣害除けの柵を開けて荒沢の滝へ向かう。

 

沢沿いの斜面を上がっていく。荒沢の滝には不動明王が祀られており、赤いのぼりが道に何本も立っていた。

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田圃の入り口から荒沢の滝まではあまり時間は掛からなかった。随分前に私が来たときにはほとんど水がなかったが、今回はまずまずの水量があった。

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子供達は滝壺のそばで水に手を入れ、「冷たい!」といいながら、キャッキャっと楽しそうだ。

山から降りてきたのだろう年配の夫婦がやってくる。軽く挨拶をして、我々は山道に戻った。

 

先に行く長女たちが分かれ道で「どっちー?」と振り返って聞いてくる。

 

風切山のハイキングコースには要所要所に看板が立っており、迷う心配はない。このルートは初めて来るが、他のルートで風切山に登ったことが数回あるので道の心配はしていなかった。

 

しばらく行くと「だんご山」というところに出る。

少し視界の開けたところで古いベンチがあった。

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ここで少し休憩。おやつを食べる。子供達は自分のカバンからおやつを出して食べ始める。私はタンブラーのコーヒーを飲み、飴を一つ口にいれた。

 

ベンチとその隣には東屋があったが、そちらは破損しているのか使用禁止になっていた。さらにその先には石碑があり、「山の神」と彫られていた。

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「山の神」というのがどんな神様かよく分からないが、安全に山で過ごせるようお賽銭置くと手を合わせておいた。

 

ベンチの近くの斜面にカタクリ花が咲いていた。

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子供達はカタクリを見るのは初めてだったようだ。

「綺麗なお花だね。」

子供達はしゃがんでカタクリの花を眺めていた。

 

カタクリの群生地からしばらく行くと年配のご夫婦とすれ違う。子供達は元気に挨拶した。

 

そこからさらに行くと老人福祉センターに出る。

ここでも少し休憩。老人福祉センターが開いていたらトイレを借りようかと思ったが、週末は開いていないようだ。

 

ここから本格的に風切山の登りに入る。

 

このから先は何度か来たことがあるのでルートの心配はない。

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子供たちは相変わらずワイワイいいながら、楽しそうに登っていく。上の子たちについていけない長男と後ろからゆっくりついて行く。

 

風切山の山道には280を超える石仏が祀られており、少し進むと次の石仏に出会う。

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先を行く長女とTちゃんは石仏と出くわすたびに律儀に手を合わせていた。

 

次女のペースが遅れてきた。

「お父さん、お腹空いた」

確かにそういう時間だが、せっかくなら山の上でお昼を食べたい。次女を励まし、先に進んだ。

 

それからしばらく山道を進むと林道に出る。ここは景色がいい。新城市内が一望できる。

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ここでお昼ご飯でもよかったが、次女以外は山頂まで行く気になっていたので、次女を励ましつつ、そのまま進む。

 

長女たちが前で何か騒いでいる。

Tちゃんが何か捕まえたようだ。Tちゃんは手の中のトカゲを見せてくれた。最近、トカゲが捕まえたくて仕方がない長男はTちゃんを羨望の眼差しで見ていた。

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Tちゃんはトカゲを長男に渡してくれたが、長男はトカゲを逃してしまった。長男は残念そうだが、Tちゃんは「いいよ」と言ってくれた。

 

私はしばらくTちゃんと話しながら歩いた。Tちゃんのお父さんは仕事が忙しく、Tちゃんとなかなか遊べないが、休みの日には山に行ったり、アウトドアショップに行ったりするらしい。

 

Tちゃんは「これお父さんに買ってもらったんだ。」と首からぶら下げたバードコールを見せてくれた。

Tちゃんがバードコールを「キュッキュッ」と鳴らすと森の中から鳥の声がして、バードコールに応えていた。

私は思わず「おおっ」と声を上げた。

 

鳥が応えてくれたのがよほど嬉しかったのだろう、Tちゃんはその後もしばらくバードコールを鳴らしていた。

 

山頂まであと少し、というところで長男がまた遅れてきた。お腹が空いたと何度も言っていた次女は長女たちと先に進んでいる。

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疲れてきた長男を励ましながら、先に進む。

山頂近くの分岐で長女たちが待っていた。

「こっちだよ。もうあそこがてっぺんだから」

女子3人は元気に走っていく。

 

山頂に着いた。

新城市の山の南側が見える。子供たちに、どのあたりが何かを説明したが、あまり伝わらなかったようだ。行ったことのない場所の話をしてもそうなるよな、と思った。またいろいろ連れて行かないと。

 

時計を見るともう2時近い。腹も減るわけだ。

 

私は荷物から敷物を出して広げる。

山頂は風があり、日向にいても少し肌寒いくらいだ。

 

子供たちはカバンからお弁当を出して広げる。

みんな揃っていただきますをした。

 

Tちゃんがみんなにミニトマトを配ってくれる。口に入れると甘みと優しい酸味が口に広がった。

 

私はバーナーストーブを出すとお湯を沸かし、フリーズドライのお吸い物を作る。妻が作ってくれたおにぎりとよくあった。

 

日が陰って、吹き付ける風が冷たい。

子供達にお吸い物を回す。温かいものを用意してよかった。

 

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子供たちは持ってきたおにぎり弁当をあっという間に平らげてしまった。

たくさん歩いてたくさんエネルギーを使ったのだろう。体を動かしてたくさん食べるのはいいことだ。

 

子供たちはまだ食べ足りない様子だったので、私はチキンラーメンを作ると子供たちに分けた。


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結局、チキンラーメンは子供たちがほとんど食べてしまい、私は自分用にもう一つ作った。二つも要らないかと思っていたが、念のため持ってきてよかった。

 

 

遅めのお昼を終えると、来たルートとは別のルート、ちょうど車を置いた桜淵公園のすぐ正面にでる道で山を降りた。

 

帰り道は途中から舗装路だったが子供たちは「だるまさんが転んだ」を始めてしまい、なかなか車に戻るまで時間がかかってしまった。

 

桜淵公園に戻り、Tちゃんに「楽しかった?」と聞くと「うん。またお願いします。」とTちゃんはペコリと頭を下げた。

 

またTちゃんを連れて山にハイキングに行きたいものだ。


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家キャンプ

例年ならゴールデンウィークは家族で長野にキャンプに出かけるのだが、今年はそういう訳にもいかず、かわりに家の庭でキャンプをすることにした。

 

我が家は住宅街にあるので、いろいろ制約はあるが、庭とウッドデッキを使ってテントとタープを張り、食事は出来るものは、少し火を焚いて作ることにした。

 

まずは庭にタープを張る。

タープはあってもなくても良かったが、雰囲気を出すならあったほうがいいな、と思い、張ることにした。普段のファミリーキャンプ用にするかソロキャンプ用の小さいものにするか迷ったが、ソロ用のものを広げてみたところ、うちの狭い庭にはちょうどよかった。

 

テントはウッドデッキの上にいつも使っているファミリー用のテントを張る。しかし、ウッドデッキを一杯に使って何とか張れる、といった感じになってしまった。

 

普段キャンプ場でテントを張るときには気にならないが、相当広い場所を使っているんだな、と今更ながら気付かされた。

 

タープの下に焚き火台と椅子を並べるとそれらしい感じになった。

 

子供達が早速焚火がしたいと騒ぎ始める。

 

「夕方になったら始めるね。」

 

昼間はご近所さんが洗濯物を干しているだろうからあまり煙を出してもいけないと思ったのだ。それに家にストックしてある薪や炭の量もある。そのあたりを考えて、毎日夕方から、ということにした。

 

約束の夕方になり、以前、庭木を剪定した際に、適当な大きさに切って置いた太めの枝を薪にして焚火を始める。

 

子供達は焚火の周囲に椅子を並べると、うちわや古いテントのポールで作った火吹き棒で一生懸命、薪に風を送る。

3人の子供達が一斉に風を送るが、風が弱かったりしてなかなか火が強くならない。私はときおりうちわで強く煽いで、火を安定させた。焚火も数をこなさないとうまくならない。子供達も早く火起こしができるようになると助かるのだが。

 

剪定したユーカリを火に焼べるといい香りがした。

ユーカリはよく燃えるので薪にはちょうどいい。

 

初日の晩ご飯は芋煮。

我が家のキャンプの定番である。妻がキッチンで材料を切って鍋に入れて、外に持ってきてくれた。

 

焚火の上に鍋を置く。

 

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家の中から飲み物や箸などをお盆に載せて持ってきた。焚火を囲む横のウッドデッキの上に置く。

 

外が暗くなってきた。

玄関やウッドデッキの明かりを調整して、ある程度明かりが焚火の周りを照らすようにした。

 

こうしてみると、今まで家の使い方というのを限られた使い方しかしていなかったのだなと、改めて思った。

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芋煮の味付けをし、キャンプでいつも使っている器にそれぞれ芋煮をつける。私は長年愛用のチタンのシェラカップ

 

それ以外の食べるものと言えば、焚火で炙ったキノコやベーコンぐらいのもので、質素なものだが、外で食べると立派な食事になるから不思議なものだ。

 

子供達は食事を終えるとお風呂に行き、わいわい言いながらテントに入って行った。騒ぐと声がご近所迷惑になるから、騒いじゃダメだよ、と子供達に言っておいたが、思いの外、すんなり寝てしまった。

 

私はいつものキャンプのように焚火の前でゆっくり酒を飲んだ。読みものはアウトドア用品のカタログ。

 

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それから結局、庭でのテント泊は3泊4日になった。

 

朝は少し早く起きて、外でコーヒーを入れて飲む。

早起きしたきた子供にはココアをいれてあげた。

 

アウトドアチェアに座って庭でコーヒーを飲むことはこれまでしたことがなかったが、思いの外よかった。最近は在宅勤務の朝は天気が許せば、そういう時間を取るようにしている。

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家キャンプをしている間、昼間は人気の少ない川原に自転車で行ってちょっとピクニックみたいなことをしたり、ウッドデッキで食事をしたりした。

 

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それからゴールデンウィークの間、キャンプ気分だったせいか、テレビをほとんど見ることがなくて、煩わしい情報から解放されてとても自由な感じがした。

 

そんな穏やかな日々はあっという間に過ぎていった。

 

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ゴールデンウィーク最終日、タープとテントを片付けてしまうとさっぱりして、なんだか寂しかった。

ダモンデトレイルではないが、終わって魔法が解けたようだった。

 

とはいえ普段と違う家の使い方をして、まだ家の楽しみ方を知らなかったんだな、と我が家の可能性がまだまだあるということを実感することができた。

 

極論を言ってしまえば、結局、自分がどうするか、どこまで追求できるのか、どこまで楽しめるかなのだ。

 

旅をしていた頃、ネガティブになりそうな自分によく言い聞かせていた。

「世界のあり方を決めるのは自分なのだ。」と。

 

 

 

 

 

在宅勤務のあとはライドへ

コロナの影響で私も週のうちの何日かは在宅勤務をするようになった。

 

今日は思うところがあり、急遽ブログを書くことにした。その前にゴールデンウィークの家キャンプの様子でも書くつもりだったが。

 

***************

 

在宅でも仕事が終わらなければ残業もするが、そうでなければ、定時に終わってあとは自由な時間だ。

 

今、職場までは片道2時間弱だ。全く無駄な時間でしかない。

 

こんな状況で不謹慎だが、在宅勤務が半ば強制的に導入された在宅勤務の日は非常にゆとりがあり、正直職場に行くのがバカらしくなる。

 

朝いつもよりゆっくり起きて、いつもはできない家族との朝食。

その後、家の小さな庭にアウトドアチェアを出して、コーヒーを飲みながら新聞を読む。これは家キャンプをしたときに発見した気持ちのいい家は朝の過ごし方。

それから仕事にとりかかる。

 

昼は家族と食事をし、子供たちとカードゲームを一、二戦。

 

また再び仕事をし、夕方仕事を終える。

 

今の季節なら外は十分に明るい。

今日は仕事を終える連絡を職場にして、そのままホームグラウンドのトレイルへマウンテンバイクで向かった。

 

最近でも定期的にライドをしているが長い時間のライドやグループライド、市外へ出るライドは控えている。

また、息苦しくてもマスクは一応している。

マスク、というものの、通気性のいいスポーツ用のTシャツを切っただけのものなので、まあエチケットマスクというやつだ。

 

夕方の住宅街をヘルメットにマスク、サングラスのオッサンがまあまあなスピードで山向かって走って行く。怪しさ満点。悪くない。

 

山のアプローチに着く。一番短いルートにしようかとも思ったが、せっかくなので、少し時間のかかるルートを選択。

 

上りはいつもよりやや早いペースで走る。

マスクをしたままはやや息苦しい。最近の山は以前より人が多く。いつ人に会うか分からないのでマスクは着けたままだ。

 

山の中腹の平坦な場所に出る。人気は皆無だ。

 

水を飲もうとマスクを外す。

その瞬間、懐かしい香りが鼻腔に広がった。

 

一人旅のキャンプの香りだ。

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少し湿っぽい森の香り、と言えばいいだろうか。

ホームグランドの山でどうして今まで気がつかなかったのだろう。

 

私は深呼吸をした。

 

そうか、旅していた頃嗅いでいたこの香りは夕方の森の香りだったのだ。

確かにこの時間に山に入ることは殆どない。

それこそ旅の途中でテントを張るときぐらいだ。

 

こんな状況にならなければ、こんな時間に山に入ってこの香りを嗅ぐこともなかっただろう。

 

私は再びマスクをし、マウンテンバイクのペダルを踏み始めた。やや下り基調の未舗装をまだ新しいバイクが路面を舐めるように捉えていく感覚が心地良い。

素晴らしいバイクだ。

 

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視界の開けた場所に出る。ここはいつ来ても気持ちがいい。

 

日が沈むのが見え、私は先を急いだ。

 

あとはシングルトラックの下りだけ、というところで休憩していると、森の中から小動物が出てきた。

 

タヌキ?いや、ハクビシンだ。

 

ハクビシンは私の姿を認めると、シマッタ、といった様子で慌てて森へ戻って行った。

 

僅かな時間だったが、楽しい出会いだった。

 

周囲はまだ暗くはないが、トレイルに降りていくとトレイルの中は薄暗い。

 

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走り慣れたトレイルをバイクの走破性に任せて降っていく。いつものトレイルが少し刺激的だ。

 

トレイルから車の通る道に出ると、道行く車はヘッドライトを付けている。

 

私もライトを取り出すとバイクにつけた。

 

もう夕食の時間だ。

家に帰らないと。

 

家路を急ぎながら、今後の働き方、もっと言えば生き方について考え直さないといけないな、と真剣に思った。

 

 

 

 

 

 

松明峠 - 東三河低山ハイキング -

これはまだコロナウィルスの影響で子供達の学校が休みになった頃のことだ。

 

買い物に連れていくのも憚られるので、たまには子供達と山に行くのもいいなと思い、週末、近くの山に行くことにした。

 

豊橋の二川にある松明峠、ここは東山とも呼ばれている。何度か行ったことがあるところなので、コースにも不安はなく、初回のハイキングにはうってつけである。

 

ある週末、昼食を食べると子供たちにお茶とリュックを持たせて、松明峠へ行くことにした。

 

豊橋の二川あたりから豊橋自然歩道があり、ずっと歩いて行くと静岡との県境の山々を歩くことができる。うまくルートを繋げば新城の山まで行けるちょっとしたロングトレイルだ。

 

この日、子供達と向かった松明峠は、豊橋自然歩道の取っ掛かりから片道約40分とお手軽な山である。

 

私たちは伊寶石神社の横の駐車場に車を置き、歩き始めた。

コースをきちんと覚えている安心感もあるが、ここは看板もしっかりしているので迷う心配はない。

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神社の正面横からトレイルが伸びており、そちらに進んでいく。トレイルの入り口には誰かが置いていった木の杖がいくつか残されていた。

子供達が使いたがったが、「それは大人のサイズだし、一度持って行ったらまたここに返さないといけないよ。だから、自分でちょうどいい長さの棒を拾って杖にしたら?」と私が言うとさっそく杖になる棒を探し始めた。特に必要とも思えないが、持って歩きたいのだろう。子供らしいなと思った。

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神社裏から一旦、車の通る道に出て、再びトレイルに戻る。ここからまずまずな登りが始まる。入り口の看板で現在地とこれから向かう松明峠の場所、それからトレイルを歩いて行くといける山のことなどを子供達に説明する。子供達に馴染みのある石巻山まで歩いていけると言うと、子供達が驚いていた。

 

「おとうさん、ハチがでるってかいてあるよ」

地図の横に描かれたスズメバチ注意の看板を見て、長男が怯えた様子で言う。

「大丈夫、今の季節はいないよ。」私は長男にそう伝えたが、長男は信用していないのか怯えたままだ。

 

「お父さんどっち?」先を行く長女と次女が分かれ道まで来ると振り向いて確認してくる。

 

「右だよ。」私が答えると二人は元気に先に進んでいく。一番下の長男は上二人のペースについていけないので私と一緒に後ろからついていく。

 

ときおり他のハイカーとすれ違う。

「山で人に会ったら必ずあいさつするんだよ。」

子供達に言い聞かせる。基本的なことだが大事なことだ。

それからはすれ違うハイカーに長男が元気よく「こんにちは!」と大きな声であいさつをしていた。

長男は小柄なので、頑張っているように見えるのか行き違う人はみんな笑顔であいさつしてくれた。

 

普段から山に来るわけではないが、出会う人々はいつもより子供連れが多い。山で会うのは年配の人が多いのだが。うちのように外に連れ出すのに山に行こうと考える人がいるということだろう。

 

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長女と次女は一緒に歩きながら、足元に花を見つけると教えてくれる。うちの子供達は花が好きだ。

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急な登りが続くエリアで長男の歩くペースがだいぶ落ちてきたので、先を行く二人に声をかけて休憩。

 

それぞれ石の上に座り、私は持ってきた飴を子供達に配った。子供は疲れるのも早いが元気になるのも早い。長男は飴を舐めてしまうと先程までの疲れた様子はどこへやら、再び元気に歩き出した。長女は飴の味を長く楽しみたいようで、まだ口の中には飴を残していた。こういうところにも子供の個性が出る。 

 

休憩のあとしばらく歩くと、峠に出る最後の階段までくる。なかなか急な階段だ。

「ここを登れば峠だよ。」

私がそういうと、上の二人は競い合って峠を目指して上がっていく。

 

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私は長男と一緒に後から追っていく。

 

松明峠に到着。

 

峠からは南側の太平洋と北の山々両方がよく見える。子供達に北の山の稜線を指しながら、あっちが石巻山で、あそこまでこのまま山道で歩いていけるんだよ、と教えた。

南はのんほいパークの観覧車の向こうに太平洋が広がっている。南側のほうが木が払われていて視界がよかった。

 

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峠には我々以外にも二組の親子連れがいた。

同じことを考える人はいるものだな。

 

子供達は峠のベンチでそれぞれのカバンの中からおやつを出して食べ始める。

私はバーナーストーブを持ってきて温かい飲み物でも入れようかと思っていたが、この日は汗ばむ陽気で冷たい飲み物が欲しいところであった。

私もタンブラーに入れて持ってきたコーヒーで一休み。子供達は思った以上によく歩いた。これからもう少し時間のかかる山でも大丈夫かもしれないな、と思った。

 

休憩後、来た道を引き返し、山を降りていく。

 

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下りはペースが早い。

長男と次女が仲良く歌を歌いながら、道を降りていく。先を行く長女は分岐のあるところで待っていてくれる。

 

スタート地点の伊寶石神社まで戻ってくるのはあっと言う間だった。子供達は元気なものだ。

車に戻ると「よく頑張ったね。」と飴を子供達に配った。

 

少し時間の余裕を見ていたが、それが必要ないくらいに子供達はしっかり歩いた。また山に連れて行こう、と思った。

 

 

 

原田橋へ - 天竜•奥三河ライド -

設楽町神田まで来るともう昼を回っていた。

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神田にはダモンデクルーが流行らせたインスタスポットがあるが、そこでの撮影もそこそこに東栄町に向かって走り出した。みんなお腹が空いてきたのだ。

 

神田から川沿いに東に進むと東栄町の月地区に出る。そこまでの道は森の間を抜ける下り基調の快走路。日陰を吹く風が冷たい。日が差しているところはかなり暑いのだが。

月地区まで出ると視界が開ける。このあたりの風景も好きなところだ。広い敷地の民家には梅や花桃などが植えられ、春の訪れを教えてくれる。

月地区も一気に走り抜け、東栄町中設楽の交差点に着く。久しぶりの信号だ。

 

この日のお昼は東栄町に少し前にオープンした囲炉裏バーのランチの予定だったが、行ってみると週末はやっていないようだった。残念。

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とにかくお腹が空いていたので、すぐに近くの山正に行くことにした。

東栄町のグルメといえば、清流巡り利き鮎会でグランプリを受賞した振草川の鮎が有名だが、それと共に特産の鶏肉もある。

東栄町ので鶏肉を食べるときは「レストランさかた」か「山正」の唐揚げと決めている。どちらもタイプが異なるので全く別物のと言っていい。

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山正で早速唐揚げ定食を注文。えーしとOKNOくんも唐揚げ、タツマくんは安定のカツ丼、S藤くんとエースくんはチキンカツ定食である。エースくんはライス大盛り。

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何度か食べたことのある私とえーしは、OKNOくんに偉そうに「口の中ヤケドするから気をつけて」と言っていたが、なんてことはない、注意していた我々もヤケドしていた。

箸で掴むのがやっとな大きさの唐揚げ。衣がカリッとしていて、噛むと中から鶏の油が出てきて旨い。そしてヤケドするのである。

この唐揚げ定食の潔いところは、サラダもなにもついていないところ。一応パセリとカットレモンは添えられているが、あとはご飯と味噌汁、それに漬物。とにかく肉を食べろという感じが男らしい。でも何故かデザートのコーヒーゼリーが付いている。まあありがたくいただくのだが。

 

久々に食べることができてよかった。素晴らしい。

お腹いっぱいになった。ごちそうさまでした。

 

山正を出ると更に東に向かう。

途中に2018年にオープンしたパン屋さんがあるので寄ることにする。パン屋さんは「ピッコロパン屋」というお店で、年配のご夫婦が経営している。金土しか営業していないので、なかなか行くことができないのでいい機会だ。

 

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店に行ってみると、感じのいいご主人と奥様がこの日はもうあまりパンが無い、と申し訳なさそうにいう。私は家族への土産に残っていた天然酵母のパンと焼きたてのライ麦パン、それにクッキーを買った。値段がビックリするほど安い。どれもひとつ100円台だ。

結局、みんな焼きたてのライ麦パンを買い、その場で食べていた。

私は帰宅して家族と食べたが、ライ麦パンといっても酸味は強くなく、焼いている方の人柄の出た優しい味のパンだ。またたくさんパンがあるときに来よう。

 

ピッコロパン屋を後にし、佐久間方面へ。大千瀬川沿いに南下していく。道は緩やかに下りになっていてよく走る。川原に巨大な白い岩がゴロゴロしており、独特の景観を作り出している。緑色の澄んだ川の水とのコントラストが美しい。

 

また山の斜面に目を移すとこちらにも早咲きの山桜が鮮やかに咲いている。

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道は浦川を過ぎると原田橋のアプローチに入る。橋のかかる谷のところまで上がっていく。

原田橋は5年ほど前に新しい橋を架け替える際、崖崩れで橋が崩落し、浦川と佐久間の間は分断された。その後、仮設橋が設けられ、自動車は渡れるようになったが、自転車は通ることができなかった。そのため、浜松の天竜区と奥三河を自転車で行き来するのにルートが非常に限られていたのだ。

 

生活道として使う地元の方にとってはもちろんのこと、我々サイクリストにとってもこの原田橋の開通は悲願であった。

 

原田橋に着くと、警備の人に止められる。この日はまだ片側交互通行での供用で、数日後に全面供用になるという。そのため、自転車は歩いて渡って欲しいとのこと。

 

我々は自転車を押して原田橋を渡り始めた。

 

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橋はかなり高いのでところに架かっており、橋の柵もあまり高くないので、歩くとスリルがある。


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遠くに沈下橋が見える。あれが仮設橋だろう。川の増水で度々流されたりして、現在の沈下橋になったらしい。むしろ自転車であちらを走りたいものだ。

 

原田橋を渡り、佐久間ダムへ。

 

ダムに向かうので、当然のようになかなかの上り。19の夏にここを通って、キャンプをしながら東北まで自転車で旅をしたのが懐かしい。

 

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佐久間ダムには思った以上に観光客がいた。

我々同様、人混みを避けて外に出ているのだろう。
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久しぶりに間近で佐久間ダムは大きかった。

まさに大型インフラと言った感じである。予想以上に迫力があった。

よく見るのは奥三河の大島ダムと宇連ダムはもっと小ぶりだ。

 

ダムの上の急斜面に張り付くように電力館があるので見に行く。

 

ダムサイトから文字通り見上げるとあるのだが、なかなかの急坂だ。私は迷わずギアを軽くし上まで上がる。その日全く変速していなかった(!)エースくんもついに変速を余儀なくされた。

「あれは無理ですね。」諦めたようにエースくんが言ったが、ここまで変速していないことのほうが驚きだ。


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電力館内は見学中止になっていたが、ダムカードは配っていた。地味にダムカードが増えてきた気がする。

S藤くんが観光地によくある日付の入った「佐久間電力館」の看板の前でタツマくんに写真を撮ってもらっていた。こういうの好きらしい。S藤くんおもろいな。

 

昼の後、休憩らしい休憩をしていなかったので、自販機で三ツ矢サイダーを買う。冷たく甘い炭酸が心地よい。

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さて、あとは帰るだけである。再び原田橋まで戻り、ややスリリングに自転車を押して渡り、浦川方面に向かう。

浦川駅にはちょうど飯田線が停止するところだった。それを横目に浦川の商店街を南に坂を上がっていく。

「ここ雰囲気いいんですけど、カフェも何もなくて立ち寄りが出来ないんですよね。」

タツマくんが言う。なるほどその通りである。

私は浦川で休憩するときはもう浦川駅に行ってしまうが、お金を落とす場所がない。

 

浦川から再び東栄町に戻るまではやや上り基調。ライド時間が長くなってきて疲労が溜まってくる。

東栄駅のあたりで一旦休憩しようと思ったが、まだ元気なエースくんとOKNOくんが飛び出していった。

東栄駅から池場の坂を越えればコンビニがある。

彼らはそこまですぐに行ってしまうだろう。

 

残ったメンバーはゆっくり池場の坂を上り、上で小休止した後、コンビニまで一気に降りた。

 

エースくんがコンビニの前で待っていてくれた。

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コンビニで甘いものを買う。少しオーバーカロリーな気がするが、疲れているときは身体の欲求を素直に聞いたほうがいい。

コンビニを出る頃には日が少しずつ傾いてきた。

国道を離れ、三河大野まで飯田線沿いの望月街道を行く。下り基調でスピードがよくでる。少し砂利の浮いている場所もあったが、それはそれで楽しめた。

 

三河大野のそばまで来ると白いダモンデTシャツの人が歩いている。誰かと思えば、だわり屋の鈴木顧問であった。奥三河の人間関係は狭い。行けば必ず一人は知り合いに会う。まあこれが奥三河に行く理由でもあるのだが。

 

それから県道69号に入り、新城市街まで戻った。みんなは桜淵公園に車を置いてきたが、私は市役所のところに車を置いたので、船着小のところでみんなと別れた。

 

こんな素晴らしい晴れの日に仲間とライド出来て最高だったな。

一人駐車場に向かいながら、改めてそう思った。

 

 

春色の奥三河 -奥三河ライド -

三河の観光ポスターに真ん中に大きく「奥三河は春色」と書かれたものがある。その周りを囲むように奥三河各地の花の名所が紹介されているものだ。

 

三河はどの季節も美しい。中でも私は春がやって来るこの時期が特に好きだ。

 

コロナウィルスのせいで、各地でイベントが自粛される中、活動の場をアウトドアに求めている人は多いのではなないだろうか。私もそうした一人である。

 

例の如く、友人のタツマくんがSNSで週末の奥三河ライドを呼びかけてくれて、タツマくん、えーし、S藤くん、エースくん、OKNOくん、私の6人で走りに行くことになった。

 

朝、週末の特別営業をしている我らダモンデの拠点、新城の「ヤングキャッスル」に集合。ダモンデ山田さん、りょーこさんに挨拶をし、全員が揃うのを待ちながら、コーヒーを飲む。私は朝食を済ませてきたので、もらわなかったが、仲間は茹で卵とトーストのモーニングを食べていた。

 

今回のメンバー、私は全員知っているが、今回初めて会うという人もいるので、コーヒーを飲みながら、お互いの自己紹介などをする。

この日は我々を皮切りに多くのサイクリストがやってきたらしい。ヤングキャッスルは奥三河ライドの拠点として認知されつつあるようだ。

 

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出発のとき、りょーこさんがみんなの写真を撮ってくれる。


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りょーこさんと山田さんに見送られながら我々は北に向かった。

 

まずは新城市街から国道257号を北上、途中から旧田口線の道を進む、いつものルートだ。

 

新城市街を出ると、向こうからライダーの集団と行き違う。Glocalbikeの土曜日走行会の一団だ。いつもは向こう側にいるのでなんだか新鮮だ。グローカルのみんなはこちらに気がついてくれ、手を振ってくれた。

 

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この日はとても暖かく、みんなウェアの選択に苦戦していた。私も冬用のアンダーが暑い。
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少し暑いくらいの陽気な上に、空には雲一つない快晴。みんな口々に「いや、最高だな」と言っていた。私も何度もそう言っていた。
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田口線跡の道を抜け、四谷千枚田へ。

 

前に来た時は正面の鞍掛山に雪が降っていたが今日はまるで違う。

少し前まで、冬のモノトーンな静かな色に支配されていた奥三河も(もっともそれはそれで趣があり、美しい)芽吹き始めた緑の葉と、民家の庭先のの梅や桜の花が何とも綺麗だ。

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千枚田の見える駐車場までみんなで上っていく。最近ピストを新たに組んだエースくんは全く変速しないまま、何事もないように上ってくる。

この様子にみんな驚いていた。エースくんとしてはいいトレーニングぐらいらしい。
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千枚田の最初の駐車場で休憩。何度来ても素晴らしいな。

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タツマくんが「いいんだけど、写真がいつも同じになっちゃうんだよね。」と言う。確かに。ガードレールなどもあり、ここからの写真は同じアングルになりがちである。
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冬ウェアで来たS藤くんが暑さでやられていたので少し休憩し、次は千枚田の中腹まで上がる。

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そこから更に上の展望スポットまで上がる。

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いつもの年なら奥三河パワートレイルのスタッフとして来るところだが、今年は残念ながら中止。ここ数年の年中行事なので開催されないのはとても寂しい。

この展望スポットには小水量発電があって、冷たい水が勢いよく出ている。ここで顔を洗うのが好きだ。

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月並みだが、冷たい水が「ちょー気持ちいい。」のだ。

 

そこから新城市設楽町の境にある仏坂峠まで進む。四谷千枚田もこうして途切れ途切れに行くと意外と苦じゃないね、などとOKNOくんとサドルトークしながら上っていく。ちなみにOKNOくんは先週、ブルベデビューを果たしたが、売木村で雪に振られ、途中で断念したらしい。私も昔、ブルベをやっていたが、そんな壮絶な経験はない。先週との落差は相当だろう。OKNOくんをツーリングに誘うのは初めてだったが、終始楽しそうで嬉しかった。

 

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仏坂峠からトンネルを抜け、設楽町神田へ。

分岐点の数キロは気持ちのいい下り坂だが、途中にミツマタの群生地と滝があるので、ややゆっくり降っていく。

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三河ではこの時期、いろんな場所でミツマタの花を見ることができる。有名なのは新城の作手と東栄町尾籠だろうか。

神田のミツマタは道から川を挟んだ対岸に広がっており、近づけないのが残念だった。
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枝の先に小さな黄色い花がいくつも咲いていて、そこだけ森が明るい。

 

ミツマタの群生地から少し降ると穴滝という滝がある。呼び名がいくつかあるらしく、看板には不動滝とかアミ滝とか書いてある。

 

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迫り出した岩の上から水が流れ落ちて、滝になっており、岩の下の空間には小さな社がある。滝の様子は海外の離島なんかにありそうな感じだ。

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エースくんが「ここはパワーを感じます」とおもむろに言った。

私はその辺のことはよく分からないが、私はなんとなく気になる滝なので、通るたびに寄るようにしている。もしかしたらパワーをもらっているかもしれないな、と思った。

 

穴滝からは神田の集落まで仲間たちが一気に降って行く。

 

私は集落に入ったところでブレーキをかけて止まった。

立派な梅の花が満開だった。

周囲に草木がなく、綺麗にされており、とても存在感があった。

神田といえば、黒梅が有名だが、こちらも見事だ。

 

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本当に奥三河の里の花は美しい。

私はペダルを踏みなおし、仲間が待つ国道の分岐へと向かった。

 

つづく

 

 

春の伊良湖岬 - 東三河ツーリング -

学生の頃、月に一度は自宅のある豊橋から伊良湖岬までの往復、100キロ弱のライドをやっていたが、最近ではほとんど行かなくなっている。

一日ライドに使える機会が少ないこと、一日乗れる時間があれば奥三河にライドに行くことが多くなっていることがその理由だ。

 

今回は人から伊良湖岬周辺で自転車に乗っている様子を撮りたいので協力して欲しいと依頼があり、午後から予定があったが、久しぶりに渥美半島に行くにはいい機会だと思い、行くことにした。

 

朝、渥美半島赤羽根の道の駅、ロコステーションに集合。

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車を降りると、びっくりするほどの強風だ。前日の雨の影響だろう。渥美半島は冬場の強風はいつものことだが、それにしても強い風だ。

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今回、3〜5人ほど集めて欲しいとのことでGlocalbikeでお世話になっているCさんと、ちょっと久しぶりのエースくん、それから仲間に紹介してもらった女性ライダーSさんの4人で走ることになった。

 

初めてお会いしたSさんはラファのグループでよく走っているそうだ。

 

エースくんは豊橋から自走でやってきた。エースくんと合流し、伊良湖岬に向かって走り出す。

 

走り始めてすぐ強い風に煽られる。ほぼ向かい風でスピードが出ない。ときおり風が横風に変わるとバイクを持っていかれそうになる。これほどの強風は渥美半島でも珍しい。

 

私は先頭を走っていたが、横風に煽られて、ハンドルを下に握り変えた。その様子を見て、エースくんが前に出てくれた。向かい風の先頭はなかなか大変だが、そこは競技をやるエースくんだ。何事もないように前を引いてくれた。

 

私は後の女性二人のペースを気にしていたが、Cさんのことはよく知っているので、Sさんがどうかと思ったが、よく走りそうな感じだ。エースくんにピッタリくっつくとどんどんペースが上がってしまいそうなので、ちょっと踏んでるな、と思う時は少し離れてペースを維持した。

 

道のいたるところに菜の花が咲いている。一足早く春を感じられるのが渥美半島のいいところだ。

暖冬の今年は奥三河でも花の開花が早いが、東三河の多様性語るとき、2月に北の豊根村は雪が降っていて、南の渥美半島は菜の花が咲いている、というのがよく例えに出される。渥美半島は暖かいのだ。

 

しばらく走ると菜の花まつりの会場に着く。時間はやや押しているが、せっかくゲストも来てくれたので立ち寄ることにする。

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本当に一面の菜の花畑だ。

菜の花のいい香りがする。会場内を少しだけ散策。

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露店で渥美名物の大アサリのフライなどが売られていた。「いかんですね、これはビールがいりますよ。」エースくんが言う。

「全くだ。」私とエースくんはビール党で、二人で遠征に行くと必ずビールを飲んでいる。我々の会話は新しい自転車機材の話と酒の肴の話が多い。

 

会場を一回りしたところで撮影クルーと待ち合わせしている日出の石門に向かう。

 

菜の花まつりの会場からすぐだ。

 

撮影クルーと合流。この強風でもドローンが飛ぶという。

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向こうのオーダーに合わせてしばらく撮影。

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予定よりも長くかかったが、無事、撮影のミッションを終え、ランチに向かう。

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月並みだが、伊良湖岬まで来たら先端の丘で一度必ず止まる。太平洋と伊勢湾の両方がよく見えるからだ。


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ここから見る神島も好きだ。

そういえば神島はもう何年も行っていないな。


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少し写真を撮ったあと、一気に下った。

サッとエースくんにが抜き去っていく。追いつこうとペダルを踏んだが、全く追いつけなかった。さすがだな。

 

お昼の混雑する時間より前にお店に入りたかったが、予定していたお店に着く頃には、もう何組も待っている客がいた。

幸い、伊良湖岬周辺には食事するところがたくさんあるので、他の店に行く。

 

こちらも混んではいたが、すぐに座れた。

みんな揃って大アサリのフライ定食を注文。

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これがなかなかのボリュームだった。

エースくんと私は女性陣からフライをお裾分けしてもらう。満腹であった。

 

ランチの後は国道259号で渥美市街へ向かう。

風は追い風基調になる。ペダルがよく回る。

 

この日のもう一つの目的地、福江へ。免々田川の菜の花・桜まつりが真っ最中だ。

河津桜が菜の花と共にちょうど見頃だった。

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会場は多くの人で賑わっていた。

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自転車を押しながら川沿いの道を歩いていくと、スタッフのおじさんが「そういえばバイクラックがなかったね。来年は用意しておくよ。」と声をかけてきた。

「是非頼みますよ。」

おじさんの口からパッと「バイクラック」という言葉が出るところがさすが、サイクリストにフレンドリーな渥美半島。来年はきっと会場にバイクラックが設置されるだろう。

 

ここで赤羽根に戻る我々と分かれて、エースくんはそのまま自走で豊橋方面に走っていった。またエースくんともライドしたいな。

 

全体的に予定が押してしまい、当初設定したコースを短縮して、スタート地点の赤羽根の道の駅ロコステーションに戻る。

 

追い風のおかげで、予想より早く道の駅に戻ることができたが、Sさんは次の予定が迫っていて、車に戻るとサッと行ってしまった。

あらかじめ時間のこととかちゃんと聞いておいてタイムコントロールすればよかった。また機会があればSさんともゆっくり走りたいものだ。

 

かく言う私もこの後、東栄町に泊まりに行くので急いで帰らないといけなかった。

わざわざ来てくれたCさんへのお礼もそこそこに、急いで自宅に戻った。

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久しぶりに走って感じたが渥美半島もいいな。

地元で走りたいとこばかりというのは贅沢な話だ。

東三河はサイクリストが暮らすのに最高だと再認識した。

 

 

癒しの奥三河 

三河東栄町にゲストハウスdanonというところがある。

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沖縄から東栄町に移住してきた金城愛氏(少し前に結婚して西田さんになった。私は前のまま「金ちゃん」と呼んでいる)が経営する宿で、全国のゲストハウスを巡って旅をしている人や田舎暮らしに興味のある人が集まるところだ。

そうした外の人だけでなく地元の若い人々も集まる拠点にもなっている。

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我が家は年数回、このdanonに泊まるのが年中行事になっている。特に何かするわけでもなく、とうえい温泉に入って、danonの他のお客さんといっしょにご飯を食べて、大人はそのまま深夜まで飲み明かすだけだ。

 

お客は口を揃えて「田舎の親戚の家みたい」という。

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古民家を改装した宿の中は、金ちゃんのセンスでお洒落な雑貨と昔の道具がいい感じに馴染んでいるのだが、とにかく落ち着く。

 

この日は夕方に着いたので、とうえい温泉の割引券を金ちゃんにもらうと、すぐに温泉に行く。一人で豊橋から泊まりに来ていたKさんをついでに乗せていく。だのんではよくあることだ。

 

とうえい温泉は湯がとてもいい。近隣にいくつかある日帰り温泉の中でもお気に入りの温泉だ。

うちの子供たちは、だのんに行く楽しみの一つがとうえい温泉に入ることである。まあ私もそうだが。

一緒に入った長男は「次はボコボコのとこー」とか順番にいろんな湯に浸かっていた。初めて来たときは怖がって私にずっとくっついていたものだが。

 

湯上りはソフトクリームを食べるのも習慣になっている。ビールはだのんに戻ってからだ。ソフトクリームのほとんどは子供たちが食べてしまう。

 

だのんに戻ると早速ビールを開ける。家から持ってきた自家製の燻製を肴に、キッチンで金ちゃんや旦那のニッシー、Kさんと話しながらゆっくり飲む。

 

夕食の支度ができるとそのまま夕食に突入し、みんなで食卓を囲んでスタンバイ。うちの長女が小学校風に「手を合わせてください。いただきます!」といい、みんなが「いただきます!」と声を揃えていう。ほんとほのぼのしている。

 

この日の夕食はチキンカツで、「チキンカツってみんなよく食べるんだよね」と金ちゃんが言ったがなるほど納得である。胸肉を使っていてアッサリしているのもあるだろうが、パクパク食べられた。

 

食事が終わり、子供たちは隣の部屋で遊んでいる。少し食卓の上を片付けたが、そのまま私は飲み続けた。毎回こんな調子である。

 

この日はKさんに、どうしてだのんに来たのかを聞いたり、金ちゃんや私の若い頃旅した話とかをしながら、Kさんの年の頃を思い出したりした。

こうして初対面の人とゆっくりお酒が飲めるのもなんだか旅をしているようで、好きな時間だ。私に絡まれるほうはどう思っているか分からないが。

 

用事で出かけたニッシーの帰りを待っていたが、睡魔に勝てず、日付が変わる頃、眠りについた。

 

朝、目を覚ますと、となりに寝ていた長女と目が合った。他の家族は眠っている。私は長女と二人で起き出した。

 

キッチンではすでに金ちゃんが朝食の支度をしている。

「おはよ、しまちゃん。二日酔い?」

毎回、夕方から深夜まで飲み続けているので、だのんの朝はいつも二日酔いだ。

私はとりあえずコーヒーを淹れる。

 

二日酔いで少しだるい朝のこの時間が好きだったりする。

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長女は気に入った本があったのか、起きてから静かにずっと本を読んでいる。

 

Kさん、わたしの家族と順番に起きてくる。起きてきた大人にはコーヒーを勧める。

 

朝食

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朝も揃っていただきますをする。

 

スパムの入ったニンジンシリシリと玉子焼きがだのんの朝の定番だ。普段はあまり朝食は食べない方だが、だのんの朝はしっかり食べる。単純においしいからだと思う。

 

食事が終わるとニッシーが、外でテントサウナをやってくれるというので、短パンに着替える。

 

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早速テントの中に入る。

おお、なかなか暑い。

中は大人4、5人が座れるようベンチが置いてあり、薪ストーブが焚かれている。薪ストーブの上には石が置かれており、そこにニッシーが柄杓で水をかけてくれる。

石に水をかけるとすぐに水蒸気になる。

ニッシーがタオルで熱風を送ってくれる。

なるほど、これはいい。

 

しばらくたって体が火照ってくる。汗がよく出る。

「川に入っておいでん」とニッシーが言う。

テントから出るとそのまま隣の川に飛び込む。

かなり冷たいが気持ちがいい。

 

この日は日差しが暖かく、外のベンチで座っていると気持ちがよかった。

素晴らしいタイミングで金ちゃんが冷えたジャスミンティーを持ってきてくれる。

 

最高だな。

 

その後、更に2セットサウナと川ダイブをしてすっかり気分爽快である。

 

ちょうど、お客さんのマッサージをしに来ていたタイ古式マッサージ師のでらちゃんが

「しまちゃん、サウナしたー!って感じのいい顔になっているよ」と言ってくれた。

これでリフレッシュしなかったら嘘だろう。

 

だのんにお泊りの際はテントサウナ、是非試してみて欲しい(要予約、別料金)。

 

サウナを満喫した後、我が家はだのんを後にした。

今回は比較的静かな滞在だったが、充実した時間を過ごすことが出来た。

 

だのんの帰り道、前から行ってみたかった東栄駅前の雑貨屋さん「maru-kai」さんに立ち寄る。

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ここは昨年オープンで、東栄町を中心に奥三河のハンドメイドクラフトが売られているお店である。道の駅では多少そうした製品が手に入るが、こうしてまとめて売られているところは殆どない。

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店内はとてもおしゃれな空間だ。いい意味で奥三河らしくない。

雑多な商品と一緒に売られてしまうと、地味に見えてしまいがちなものも、maru-kaiの店内では、一つ一つが個性的で魅力的に見えた。

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店主のなつきさんのセンスだろう。

なつきさんはそれぞれの商品について、詳しく説明してくれる。

どんな人がどんな風に作っているのか、どう使ったらいいのか。

商品の幾つかは私の知り合いのものもあった。

 

欲しいものはたくさんあったが、家で実際にどこに置くかイメージできるものだけ買うことにした。

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私はアイアンの花器と鹿の時雨煮を、妻は繭花を購入した。繭花は前から家に欲しいと思っていた。

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繭花は東栄町のおばあちゃんたちが作っていて、町内で買い求めることが出来る。なつきさんによれば、繭花を作っているおばあちゃんたちが作品に合わせて色も自分で染めて作るのだという。とても凝った作りでしかもどれも優しい雰囲気だ。

 

三河の人は手先が器用で何でも自分で作ってしまう人が多いが、いざ物を売るとなると、なかなか上手にできない人が多いように思う。

 

マルカイではそうした商品の一つ一つのストーリーを教えてくれる。

三河に必要なのはこういう店だ、

そう思った。

 

 

マルカイの後、新城の梅の名所「川売の里」へ。

 

私は何度か来ているが、妻や子供たちは初めてだ。

 

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満開の時は、車で来ると後悔するほど道が狭いが、この日はまだ6分咲きほどでそこまで車は多くなかった。

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「いいにおい」長女が言う。

私は深呼吸をして体いっぱいに梅の花の香りを取り込んだ。

今年は奥三河の春も早い。


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だのんに行くこと以外、全く決めていなかった休日だったが、奥三河はいつものように癒しをくれた。

三河の春は本当に美しい。また近いうち来ようと思った。

新城ラルプデュエズを駆け上がれ -ライド新城-

SNSを眺めていると、KINAN AACA CUPの新城ステージ開催のニュースが流れてきた。

KINAN AACA CUPはプロサイクルロードレースチームのキナンサイクリングがプロデュースするアマチュア向けロードレースで、数年前から新城市でもレースが開催されるようになった。これは新城市のスポーツツーリズム推進課と地域おこし協力隊であったダモンデの山田さん、現在協力隊として活躍しているHatch さんの活動によるものだが。

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これまで新城ステージは作手で開催されてきたが、今回の新城ステージは初めて新城総合公園での開催で、SNSの告知ではキナンサイクリングチームの加藤GMが、東側のわんぱく広場の急峻な斜面をツールドフランスの有名な山岳ラルプデュエズにちなんで「新城ラルプデュエズ」と命名し、そこを使ったコースになることを説明していた。

 

この告知を見て、私にしては珍しく、ちょっと出てみようか、という気になった。

 

AACA CUPはエントリー費も3000円と安く、大会一週間前までエントリー可能。しかも、レイトフィーを払えば当時エントリーも可能という、非常に参加しやすいレースだ。

 

ちょうどエントリー締め切りの日、Glocalbikeで一緒にロードに乗っているOKNOくんがエントリーしたという話を聞いて、私は出場を決めた。

 

カテゴリーは速いほうから1-1から1-4まであり、トップカテゴリーはキナンサイクリングチームも出るカテゴリーだ。過去の大会でポイントを取っている選手は決まったカテゴリーへの出場が義務付けられているが、それ以外の選手は参加カテゴリーは自己申告となる。

私は1-3を選んだ。1-4はキッズと同じコースな上、新城ラルプデュエズを上らないようなので、こちらにした。

 

ダモンデバイクチームのタツマくんにAACAに出ると話をすると、「けっこう速いですよ。」と忠告を受ける。軽い気持ちでエントリーしたが、だんだん心配になってきたが、やるしかない。

 

 

大会当日。

 

 

私のカテゴリーは朝一番の8時15分のスタート。スタート前に受付を済ませ、試走もしなくてはならない。

自宅を朝6時半に出発。

今回、久しぶりにレースに出るということで、家族が応援に来てくれることになり、早朝から眠たい家族を起こしてついてきてもらった。

普段、私は家族を置いて自転車で出かけているが、私がどんな風に自転車に乗っているのか、子供たちは知らない。普段の私のライドスタイルとは違う、レースではあるけれど、その一端を見てもらえるのが嬉しかった。

 

レース会場に到着。

 

今年は暖冬だが、この日はちゃんとした冬の寒さであった。会場となる新城総合公園のグランドを冷たい風が吹き抜けていく。

 

私は試走の準備をすると見慣れた黄色とクロのBUCYO COFFEEテントに向かった。

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「おっ、きた来た。」ダモンデ山田さんがさっそく声をかけてくれる。

「らしくないじゃん。ロードレースなんて。」

全くである。

ロードレースは過去にチーム対抗のエンデューロ(制限時間内で周回を競うレース)ぐらいしか出たことがない私である。

 

「何周させてもらえるか分かりませんけど、やるだけやりますよ。」私はそう答えた。

今回のレースはクリテリウムと呼ばれるレースで、周回コースをカテゴリーごとに規定の週回数で競うレースだ。ただし、レース中にラップ、つまり周回遅れになると足切りになり、そこで終了となる。果たして何周回できるだろうか。

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Glocalbikeの仲間のOKNOくんと合流し、二人で試走に行く。

一周回約3キロのコースはホームストレート以外ほとんど平坦がない。

新城総合公園の北側に位置するスタート地点から、南〜東へ一気に下り、公園の東側の端から問題の新城ラルプデュエズに向かって上って行く。

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新城ラルプデュエズの勾配は普通にロードバイクで走る分にはそこまでキツいものではない。奥三河にはこれくらいの峠は割とよくある。

しかし、道は公園の遊歩道で狭く、しかもレースペースで上がっていかなくてはならない。試走の際もアップを兼ねてちゃんと踏んで上がったが、とても7周回持つ気がしなかった。


新城ラルプデュエズを上り切るとまた下りが続き、そのままホームストレートに戻ってくる。

 

OKNOくんと二周回試走する。作戦らしい作戦は思いつかない。

試走後、間もなく招集がかかる。忙しい。

 

車に戻り、家族にもう出番だからと告げ、スタート前のアミノバイタルを流し込む。

 

招集エリアにはキナンサイクリングチームの加藤GMがいた。レースの運営で忙しいはずだが、私の顔を見つけるとわざわざ声をかけてくれた。

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朝早い時間だったが、ダモンデのメンバーのりょーこさん、ユミコさん、上野さん、タツマくんと沢山の仲間が応援に来てくれていた。

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全く有難い限りだ。

 

ダモンデクルーに加え、さらにGlocalbikeの仲間もわざわざ応援に来てくれていた。

 

わざわざ来てくれたみんなのためにも何とか完走したい。そう思った。

 

スタート位置に着く。出場選手は40人ほどだろうか。

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私の場所は後のほうで不利だが、下のカテゴリーは力量がバラバラで落車の危険が高いのでこのくらいの位置どりでいいということにしておいた。

 

レーススタート。

 

思った通り、先頭集団はすごい勢いでスタートしていく。必要以上に出遅れないよう慌てて集団を追う。一度集団から離れると集団に戻るのは不可能に近い。

 

試走を思い出し、自分が走りたいライン狙いつつ、途中のグレーチングやカーブミラーといった障害物を意識してやり過ごしながら、少しでも前に出るチャンスを伺う。

公園東側の折り返しのヘアピンコーナーで減速することを見越して、スピードコントロールをしながら、コーナーの立ち上がりで踏み込む。

 

小さい段差を軽くいなしながら、新城ラルプデュエズに突入していく。前を走る選手がコーナーの入り口を間違えてコースアウトしていくのが見える。

 

一つ一つを着実に。何とかここで前に出なくては。

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上っていくと仲間たちが応援してくれる声が聞こえる。

 

ラルプデュエズのコーナーごとに仲間が立っていて、私のことを応援してくれていた。

 

何とか応援に応えたい。

しかし、練習不足の体は正直だ。

懸命に斜面に食らいつくが、思ったように前の選手たちを捉えられない。耐えるしかない。

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山の上のほうにGlocalbikeのバスマンさんがいた。

「シマダ‼︎一番上の先まで踏み続けろ‼︎」

レース会場中に聞こえそうな大きな声が飛ぶ。さすが世界戦を転戦し、日本代表を支えるメカニックである。海外のレース会場でもそうしているのだろう。

 

新城ラルプデュエズは遊歩道部分が終わるとアスファルトになるのだが、そこからまだしばらくジワっと上っている。

多くの選手が遊歩道の終わりでペースを落とすので、バスマンさんはそこを耐えて踏め、と言っているとこがわかった。

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私は遊歩道の出口からダンシングをし、踏めないなりに最後にペースを上げる。毎回、ここで何人か捕まえることができた。

 

ホームストレートまで一気に戻る。

 

ホームストレートを抜けるとまたすぐに下りが始まる。このコーナーは右、次は踏みながら左、などと考えているとあっという間に東側の下りストレート。ラルプデュエズに戻ってくる。

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「シマダくん、前まで5秒!いけるよ!」エプロン姿の山田さんがタイム差を教えてくれる。捉えられるか。

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三周回目を終え、ホームストレートに戻るとMCのユキオくんが「あと〇〇で足切り発生か?」という声が聞こえる。

まずい。トップはどこまで来ているんだ?

 

下りをこなし、東側のストレート。前の選手がボトルを取るのが見える。私もボトルが取りたいが、それよりコーナーの立ちがりで逃げたい。ダウンチューブからボトルを取ることを諦め、ハンドルを握りコーナーに突入していく。立ちがりでダンシングし、何とか離す。

 

ラルプデュエズの上り口で数人の選手が横を抜けていく。ラップされた。

 

いや、ここで食らいつかないと。

この周回で私のレースは終わりかもしれないが、あとはどこまで前を行く選手を一人でも抜けるかだ。

あの人なら、私のヒーローならそうした筈だ。

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みんなの声援を受け、呼吸のリズムとペダリングが合わないまま、とにかく上を目指した。

アスファルトまで上り切り、下りに入る。

 

下り区間で子供たちが見えた。

 

やれるだけやる。

 

ホームストレートに戻って、必死に踏むが、正面で赤いフラッグが振られた。

 

わずか12キロ、30分足らずの私のレースは終わった。

 

喉の奥から血の味がする。肩で息をしているがなかなか収まらない。

OKNOくんを見つけて声をかける。彼はペースを抑えすぎた、と反省していた。

「やってみないと分からないね。」私は彼にそう言ったが、自分に言っていたのかもしれない。

 

ゴール付近にいるといろんな人が声をかけてくれた。

ラルプデュエズで応援していた仲間たちが戻ってくる。AACAの人はいいと言っていたが、公園のおじさんがダメと言って追い出されたそうだ。

「追い出されちゃったよ。」とバスマンさんは笑っていた。

そんなところで真剣に応援してくれるところが我らダモンデクルーとGlocalbikeの仲間たちらしい。

 

Hatchさんや加藤GMも声をかけてくれた。

 

子供たちが駆け寄ってくる。

「お父さん完走できなかったよ。」

それでも子供たちは何だか嬉しそうだ。

結果は不甲斐ない限りだが、周りの仲間や家族がこんなに応援してくれて私は幸せものだ。

 

BCYO COFFEEでパスタを食べて、子供たちを自転車体験コースで遊ばせる。

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その向こうを1-1の選手たちが猛スピードで駆け抜けていく。

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子供たちとトップカテゴリーの選手。

対照的な光景だが、これこそが自転車の世界なのだ。

レースという非日常を大いに楽しんだ一日になった。

 

 

 

週末のマウンテンバイキング 

私の住む愛知県の東三河エリアはロードバイクを乗るのにもマウンテンバイクを乗るのにも非常に恵まれた地域だ。

普段の週末は天気が良ければロードバイクかマウンテンバイクに乗るようにしている。

 

ロードバイクに関して言えば、南の渥美半島、北の奥三河、東には浜名湖があり、どこも郊外に出てしまえばかなり快適に走ることができる。気分次第で海も山も楽しめる素晴らしいエリアだ。

 

マウンテンバイクについては新城市の阿寺のダウンヒルコースの他、東三河には林道やトレイルが無数にある。

 

今回、仲間に誘われて、そうしたトレイルの一つを走った。

 

その日は北風の強い日で、集合した駐車場で仲間と話していると風で体が冷えてとても寒かった。私は持っていたウィンドブレーカーを羽織った。

 

予定のメンバーが集まり、早速山に入る。

 

山に入ってしまえば風が遮られ、寒さは気にならなくなる。

よく仲間と言うのだが、風の強い冬場はロードに乗るより、マウンテンに乗る方が暖かくていい。

すぐに下で羽織ったウィンドブレーカーが暑くなる。最初の休憩で脱ぐと畳んでバッグにしまった。

 

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里山におけるマウンテンバイクの基本は「とりあえず上る」だ。

特に私の周りのマウンテンバイカーは下り系の人が多いので、まずゆっくり上って、下りを楽しむということが多い。

 

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乗っていけないような場所はバイクを押して上がることになるが、今回のトレイルは比較的乗車率のいい、つまり押さなくても乗っていけるところが多いルートだった。

 

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山の上で休憩。

いつもはロードで走っている道が眼下に見える。

マウンテンバイクはマウンテンバイクでしか見えない景色がある。

 

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仲間と機材の話やレースの話をして盛り上がる。こうした時間もライドの楽しみの一つだ。私の周りは毎週ライドをしているベテランも多いので、機材の話などはウェブの情報よりかなり信頼性の高い情報が聞ける。

 

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しばらく山の上で休憩したあと、上ってきたところと別のルートを下っていく。

私は下りは苦手なので、トレイルに行っても「何とか乗って下りられるかな」というレベル。いつも下りの速い仲間に先に行ってもらい、いつも後ろからついていく。

 

そんな私でもやはり下りは楽しい。

ときおり現れるタイトなコーナーや大きな溝をなんとかクリアし、トレイルを抜けていく。

 

トレイルの途中で林道にぶつかり、視界が広がった。

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山の中を走っているので、ずっと木しか見えない、ということもしばしばだが、時折、こうした素晴らしい景色に出会うことができる。

 

この日は二つの山を予定していたが、一つ目の山を走り終えると、二つ目の山に行くにはタイムアウトになりそうだったので、一つ目の山の別ルートを探索に行く。マウンテンバイクはこうしたルート探索も楽しい。もっとも、探索しに行ったものの、全く乗れないということも少なくないが。

 

この日の探索はちゃんと乗れるところだったので悪くなかった。

 

二つ目の山をキャンセルしたので予定より早く終わったが充分にマウンテンバイクを楽しむことができた。

 

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その次の日も仲間からライドの誘いがあったが、家族で出かける用事もあり、この日はやめておいた。

しかし、出かけるまで少し時間があったので、近所の山を上って、景色のいいところで遅めの朝食を食べることにした。

 

使える時間は2時間。

 

家からマウンテンバイクでトレイルの入り口に向かい、トレイルを上って山の中腹へ。

マウンテンバイクは下りはもちろん楽しいが、シングルトラックを上るのも楽しい。走るラインを選ばないと木の根っこや岩に引っかかって足をついてしまう。一見走れなさそうなところもラインをちゃんと選べば走れたりするものだ。

 

一、二度足をついたが、なかなかスムーズに上ることができ、山の中腹に出た。 

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来てよかった。

久しぶりに冬らしい青空だ。

 

 

景色のいいところでバックパックからバーナーストーブを出し、インスタントの塩ラーメンを作る。

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ラーメンのトッピングの胡麻と海苔を忘れずに持ってきた。

ちなみにコッフェルもストーブも学生時代から20年くらい使っている年代物だ。今時の製品も欲しいが、まだ使えるし、壊れない。当分使うだろうな。

思いつきで普段やらないような朝ごはんライドだったが、やってみると楽しい。

 

わずかな時間でも楽しみ方はいろいろある。

もう少しで、「今日は時間が中途半端だから、ライドはやめるか。」となってしまうところだった。

 

次はコーヒーとパンでも持って、朝ごはんを食べに来よう。

私はささっとコッフェルを片付けると、そのまま上ってきたトレイルを降りて行った。