定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

次女との休日

今回のブログは私と次女のある二日間の記録という個人的な内容なので関心のない方はスルーして欲しい。

しかも書いたら長くなってしまった。

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シルバーウィークの後半、長女と長男は妻とともに「風の自然学校」のキャンプに参加を決めていた。

 

次女も一緒かと思えば、次女は行かない、という。

次女の考えているところは分からないが、とにかく妻たちが一泊二日で出かけている間、私と次女は二人で過ごすことになった。

 

車は妻たちが乗って行ってしまい、使えないのでどうしたものかと思っていたが、ちょうど小学校で貰ってきたチラシに「東三河リアル謎解きゲーム」という公共交通機関を使ったイベントがあったので、それをやってみることになった。

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我が家で出かけるときはほとんど公共交通機関を使わない。そのため、子供たちはほとんど電車やバスに乗ったことがない。

今回は切符の買い方など電車の乗り方を教えるいい機会になるだろう。

 

次女に帽子と水筒を持たせて出かける。

豊橋駅までは市電だ。

市電の駅まで歩くが、次女と二人だけで歩くなんていつ振りだろう。次女は草むらにちょうちょを見つけてキャッキャと楽しそうだ。

 

市電で豊橋駅まで出る。市電は意外と混み合っており、何とか座れたものの、次女とは通路を挟んで向かい合わせになってしまい、話が出来なかった。次女は足をぶらぶらさせながら、吊り広告などをおとなしく眺めていた。

 

豊橋駅で市電を降りて、観光案内所に向かう。観光案内所に貼られたポスターにQRコードがついていて、それをスマホで読み取ると謎解きのヒントが出る、という仕組みになっている。

今回の謎解きは鉄道の駅を回る初級編が2コースと行き先の駅からバスに乗る上級編があり、我々はまず初級編のうち、東海道本線コースの謎解きをすることにした。

 

QRコードで得られた最初のヒントを見て、私は答えが何となく分かってしまった。次女はヒントを見てもさっぱり分からないといった様子であった。

 

切符売り場まで移動し、次女に切符の買い方を教えてお金を渡す。次女の身長は券売機の上のほうのボタンにギリギリ届くぐらいで、金額を押し間違えないか少しヒヤヒヤした。

 

改札をひとりで通るのも初めての次女は切符を持っていささか緊張していたようだが、ちゃんと切符を改札に通し、出てきた切符を取った。

子供料金だと改札から「ピヨピヨ」と音がするのがかわいい。

 

改札中の「ボンとらや」でおやつにピレーネを買い、浜松方面の電車に乗った。

 

最初の目的地、二川までは一駅なので早いものだ。電車には我々と同じくように謎解きのチラシを持った家族を見かけた。

 

二川駅に到着。

改札を抜けると次女が謎解きのポスターを見つけた。QRコードでヒントを読み込む。上級編のバスのほうも読み込むが、まずは初級編をということで、次は蒲郡に向かう。

 

ホームで次の電車を待つ。

私だけなら二川からであれば自宅に戻るのに走ってもなんとかなる距離だ。

それを次の電車が来るのをゆっくり待つ。

 

ホームを端の方へ歩いてみる。

秋晴れの青い空が眩しい。

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こんな近くなのにまるで旅をしているようだ。

昔、18切符で旅をしているとき、こうした小さな駅で次の電車が来るのをのんびり待ったものだ。

懐かしいな。

 

二川駅から再び豊橋駅に戻る。

次女は吊り革が触りたいようで、手を伸ばして何度もピョンピョン飛んでいた。その様子を近くにいた外国人のお兄さんが微笑んで見ていた。

 

豊橋駅で電車を乗り換えて蒲郡に向かう。

 

乗り換えた快速電車の車内で、知らない男性から「安売りしててたくさん買ったからどうぞ」とチョコレートを貰った。

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子供の頃、祖母と電車に乗っていて、向かいに座ったお年寄りからみかんを貰ったことを思い出した。あのときはどうして祖母と電車に乗っていたのだろう。

 

蒲郡駅に到着。

早速、謎解きのポスターを探す。

ポスターを見つけ、初級編のヒントを見る。私は予想通りの答えだと自分の回答に確信を持ったが、次女はまだ何のことか分からないようだった。

蒲郡駅構内の観光案内所で座れるスペースがあったので、そこで私は次女にさらにいくつかヒントを与えると、ようやく答えにたどりついた。

 

これで初級編はひとつクリアだが、ここからバスでいく上級編もある。まだ時間があるので、そのまま上級編を解くことにする。

蒲郡のヒントを見ると場所は遠くないが、蒲郡駅前からバスに乗ったことがないため、行き先のバス停を探すところから始める。

ここでなかなか苦戦して、乗りたいバスが行ってしまった。

困ったことに次のバスまで時間が2時間近くあった。

 

我々は結局、1時間に二本あるラグーナ蒲郡に行くシャトルバスでラグーナ蒲郡に行き、蒲郡みかんジュースを飲んだり、アウトドア用品を見たりして過ごした。

 

再び蒲郡駅に戻り、目的のバスにようやく乗る。謎解きの応募に必要な乗車券を余分に取る。

乗客は我々だけ。私は料金表を指差して、お金の払い方を説明しながら、降りるバス停のアナウンスがあったらボタンを押して運転手さんに「次で降ります」って伝えるんだよ、と次女に教えた。ゆっくりとバスは進み、目的地のバス停が近づいてくる。

次女が降車ボタンを押す。

運賃箱にお金を入れ、運転手さんにお礼を言うと我々はバスを降りた。

 

バス停から少し歩いて、目的地へ。

 

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少し波打ち際で遊んだ後、我々は蒲郡駅に戻り、この日の謎解きを終えた。

 

妻たちはキャンプのため、夜も次女と二人だけである。

 

晩ご飯はどこか外食でもと思っていたが、次女にリクエストはなんと赤飯であった。

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駅ビルの惣菜コーナーで見たら食べたくなったらしい。豊橋駅で赤飯と惣菜を買い、二人で食べた。

次女はお風呂を沸かせてくれたり、食卓の準備やいろいろお手伝いしてくれた。

 

夜は珍しく次女と二人並んで眠った。

こんな風に眠るのは長男が生まれたときにしばらく長女と三人で並んで寝て以来ではないだろうか。

あのとき次女は「おかあさん…」とシクシク泣いていたことを思い出した。

 

翌日。

次女は朝が弱い。長女は早い時間からさっと起きて朝から本を読んだりするものだが、次女は起こさないといつまでも寝ている。

この日も私が起こすまで起きなかった。

 

二日目は謎解き初級編の飯田線コース。飯田線で豊川と新城に行くことになった。

 

まずは豊川駅だ。

しばらくぶりの飯田線を私は堪能していた。次女は相変わらず吊り革に触りたいようで、ときどき吊り革に向かってジャンプしていた。

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豊川駅に着く。

謎解きのポスターのバーコードを読む。まずは初級編だ。こちらも2つ目のヒントで私はだいたい答えが分かった。

バスに乗る指示が出る上級編のバーコードを読むと、なかなか遠い行き先の指示だ。

 

バス停でダイヤを確認するが、やはり本数が少ない。次女と相談の上、上級編は全部で二箇所回ればよいので、今回は見送り、新城駅からのバスの行き先にかけることにした。

 

次の新城行きの電車まで時間があるので、歩いて豊川稲荷まで行き、あたりを少し見て回った。

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普段の観光客の人出が分からないが、そこまで多くないような気がした。少しはお金を落とさないとな、と思い、ソフトクリームと稲荷寿司を買う。

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のんびりしていたら、電車の時間が迫っている。

私は次女を急かせて豊川駅まで戻った。

 

無事に新城方面の電車に乗りこみ、新城駅に向かう。しばらく通勤で使っていたので車窓の景色が懐かしい。

 

新城駅に電車が停まる。

 

ホームに出て、駅舎側のホームに移動するため、高架の方に向かおうとするが、工事していた。そういえば新城駅前は整備が始まったといっていたな。

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高架と反対側のホームの端に作られた階段で駅舎側に移動する。こちらのほうが楽だな。

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改札を出て早速謎解きのポスターのバーコードを読みとる。初級編はこれで答えが分かれば完了だ。次女はまたしても、私からいくつかヒントをもらってようやく答えにたどり着いた。

 

問題は上級編である。

バスの行き先は思った以上に遠い場所だった。

どうしようか。

 

とりあえず昼ごはん時であるので、どうするかは食事しながら考えることにした。

ランチは「大文字」にしようと決めていたので大文字に向かうが、まさかの休業。

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そして我らがヤングキャッスルも休業日である。

 

困った。

 

次女にしては珍しくお腹が空いた、と何度も言う。新城駅周辺で子連れで入るような店を私は思いつかなかった。

私はひとまず、国道の方へ歩いて行くことにした。少なくとも途中にピアゴはあるし、国道沿いまで出れば店はある。

 

歩いていくと中華料理屋が視界に入る。

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あそこではないよな、と思いながら一応「ここのお店じゃないとこがいいでしょ?」と次女に聞くと歩くのをやめて「ここにする。お腹空いたから早く食べたよ。」と言う。

次女がそう言うなら、と我々は店に入ることにした。後から聞いた話だが、新城市民でもこの店に入るのは、ある意味、上級者だと言われた。

 

店内でメニューを見るが、少し予想していた通り薄味好みの次女が食べそうなものがほとんどない。次女はしょうゆラーメン、私は天津チャーハンを注文。

先に天津チャーハンが来た。

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次女に取り分けてあげるが一口食べると「苦手」という。油っこい感じがダメなようだ。ラーメンは大丈夫かと心配したが、ラーメンは何とか食べていた。

運動もしていないのに、危うくボリュームたっぷりの中華を2人前食べるところだった。

 

突発的なドキドキの昼食を終えると、そのまま近くのバス停から目的地に向かう。

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バスに乗り込むと我々のような親子連れがいた。こちらも謎解きをやっているようだ。

 

この謎解き、上級編はなかなか難易度が高い。

豊橋蒲郡は比較的駅から近いところがバスの目的地として指示されるが、豊川と新城はなかなか遠い。バスの本数が少ないので、バスいいタイミングで捕まえられないと待ちぼうけになるし、帰りのバスもうまく乗れる保証はない。

それに行き先がどんなところか想像がつかないと、目的地で食事などに困ることになる。子供をつれているので、あれこれ我慢させるのも難しい。

私は新城あたりは詳しいほうだと思うが、それでも食事やバスへの乗り換えには困った。もしやってみる方がいれば、時間的ゆとりをもっていただいたほうがいいだろう。

 

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いつもは自転車や車で走る道をバスで行くのはなかなか新鮮だった。

次女は相変わらず吊り革に触りたがったが、バスにいろいろ書かれている注意書きを読んで、大人しく座っていた。ときどき私のような凡人には全く予測できない行動をする次女だが、基本は真面目なのだ。

 

バスが目的地に着いた。

我々に続いて、先に乗っていた親子連れも降りた。

 

私にとっては馴染み深い場所だ。

しばらく乗ってきたバスを見送る。

 

我々は謎解きが示した場所まで歩いて行った。

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最後に我々がたどり着いたのはここだ。

 

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我が家が折に触れ、やってくる場所。

静かな時間が流れる穏やかな場所。

自分の立ち位置を確認できる場所。

 

ちょうどこの日は緑のパッサージュがやっている日だった。

 

何人かの人が思い思いにカフェの椅子に座って談笑している。

偶然だが、ダモンデの仲間であるハギヒラ親子がいた。

「ここに来ると、誰かに会えるよね。」

そんな会話をして、私はコーヒーをいただく。

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椅子に身体を沈めて、ボーッとしているとそのまま気持ちよく寝てしまいそうだった。

人見知りの次女はハギヒラさんたちに話しかけられても、懐かないネコのように逃げていく。

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失礼な娘で申し訳ないと思うのだが、そうした次女のことを知っているハギヒラ親子は「そうだよね」という感じであまり気にもとめていない様子だった。

 

私はしばらく自分の時間を楽しみたかったが、遊び相手のいない次女は、

「あー、お父さん寝ちゃだめだめ!」と私の身体を起こしてくる。

「何で?お花でも摘んできないよ。」私がそう言っても「だってつまんないんだもん。」と言うばかり。

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「コーヒー飲んでるからゆっくりさせてよ。」と私が再び身体を椅子に預けるとまた起こしにかかってくる。こんなことをしばらく繰り返した。

 

風の自然学校のキャンプの帰りの足で、そのまま妻が迎えに来てくれることになった。

 

いよいよコーヒーがなくなると次女が勢いづいて「はい、コーヒー終わったねー。行きましょう!」と言う。

 

やれやれ。

私は立ち上がると伸びをした。

 

謎解きゲームで結果ここに来ることになったが、訪れることが出来てよかった。
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よく分からないテンションの次女を連れて私はこの特別な場所を後にした。

謎解きは終わったが、次女という謎は解けないままだ。この先もきっと解けることはないだろう。

 

 

 

 

乗鞍へ - RIDE DaMONDE -

ダモンデの仲間で最近ロードバイクを購入した上野さんとダモンデメンバーでライドに行ったとき、乗鞍の話題になった。ダモンデメンバーで時々一緒に走るえーしは行ったことがないという。

 

乗鞍は日本のサイクリストにとって特別な場所、といえると思う。

日本で最も有名なヒルクライムの大会「全日本マウンテンサイクリングin乗鞍」が開かれる場所であり、自転車で標高2700mまで上がることができる場所は他にほとんどない。

 

我々ダモンデのメンバーも3年前に一度上っている。乗鞍観光センター駐車場から乗鞍岳畳平までの20.5キロ、標高2700mまでのヒルクライムは誰にもとってもチャレンジである。

 

今回のメンバーは初めて乗鞍を登る上野さん、えーしを始め、ダモンデの代表山田さん、早川さん、タツマくん、私の6名である。

早朝新城に集合した我々は途中、えーしを拾い、スタート地点となる乗鞍観光センター駐車場に向かった。

 

現地に着くと素晴らしい快晴。

この場所で既に標高1450mとあって涼しいが、日差しが下界よりきつく感じられる。

 

我々は車からバイクを降ろし、各々準備を始めた。

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タツマくんが「シューズがない」と騒ぎ始める。しばらく車の中を探すが見つからない。

「おかしいな」

 

ロードバイクに乗る場合、ペダリング効率を良くするためにビンディングペダルを使うのが一般的だ。専用のシューズの裏に取り付けられた部品でペダルに足を固定して走る。あるとなしでは足の使い方も違うし、使わないと効率が悪い。

シューズが見当たらないタツマくんは結局、履いていたトレランシューズで登ることとなった。

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準備を済ませ、スタート前の記念撮影。

 

久しぶりの乗鞍へ、ペダルを踏み始めた。

 

我々の乗鞍ライドは、自分を追い込み頂上までのタイムを計測するとかそういう類のものではない。

美しい乗鞍岳の景色を楽しみながら、無理のないペースで仲間と話しながら登って行くのだ。

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ダモンデ山田さんは前日の練習で追い込んだせいか、身体が重いという。しばらくして気がつくのだが、ブレーキがホイールに擦った状態で走っていたらしい。平地ならばブレーキの引きしろの違いで気がつくこともできたのだろうが、乗鞍への道はひたすら登りのため、ブレーキをかけることがなく気がつかなかったらしい。

 

まずはマイカーで入ることができる一番奥の駐車場、三本滝駐車場を目指す。



三本滝駐車場までは軽くサドルトークをしながら順調に上がっていく。

 

初めての上野さんも遅れる様子はない。

上野さんは最近ヒルクライムを積極的にやっているそうだが、もともとやっているトレランで鍛えた基礎もあり、全く心配がなかった。

 

三本滝駐車場に到着。

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ダモンデ山田さんは朝ごはんが足りなかったのか早速ソフトクリームを食べている。

早川さんと山田さんはなぜか自然体でソーシャルディスタンスだ。

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三本滝から先はマイカー規制エリアとなるため、車はバスとタクシーしか入れない。そのあたりも乗鞍をサイクリストの聖地たらしめている所以だろう。

 

規制ゲートのおじさんに挨拶し、我々は先に進む。

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晴天の乗鞍は素晴らしいとしか言いようがない。

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仲間のはしゃぎ振りもなかなかだが、私自身楽しくて仕方がなかった。

 

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トレランシューズのタツマくんは斜度が上がるにつれ、だんだんと遅れ始めた。普段ならスイスイ登っていくタツマくんが苦戦しているのを見て、今更ながらビンディングペダルの恩恵の大きさに気付かされる。

 

しばらくして集団はバラけてくる。

 

冷泉小屋で一度止まり休憩。

周囲には硫黄の香りが漂う。

 

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山田さんがカメラを出してみんなの写真を撮ってくれる。私も久しぶりにロードバイクと一緒に写る写真を撮ってもらった。

 

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さすがカメラマンをしていたことがある山田さんである。このときの写真はお気に入りの一枚になった。


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次のポイントは位ヶ原山荘だ。

ここまではそう遠くないが、まずまずの斜度になっている。

 

時折、上から降りてくるサイクリストと出会うが、ebikeに乗っている人が多い。

自分の足で行きたいと思うのはサイクリストの思想であって、普通の人のアクティビティと考えるとこの使い方は正解だと思う。

 

位ヶ原山荘に着く。

 

ここまでくれば畳平まであと5キロだ。

山田さんは山荘に着くとすぐ、缶コーヒーを買った。

「ここまで飲み物を上げてくれる人がいると思うとね。今はお客さん少ないだろうし」

 

相手のことをいつもよく考えている山田さんらしい一言だ。

我々はそれぞれ飲み物を買い、しばらく休憩。

 

頂上は晴れているだろうか。私は畳平のほうを見上げた。気になるのはそこである。せっかくなら晴れの中を走りたい。

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ゆっくり走ってきたとは言え、15キロ以上続けて登っていればそれなりに疲れてくる。私は集団が分かれてきたところで自分のぺースで行かせてもらうことにした。

 

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標高も2500mを越えてくると空気が薄くなって身体が軽い。もっともその分呼吸は苦しいが。

 

周囲の木々が殆どなくなっていく。

 

森林限界を越えたのだ。

 

ここに来るたびにかつて旅したアラスカの景色を思い出す。全然違うのだけど、どこか通ずるものがあるのだ。ツンドラの向こうにカリブーが走っていって…

私が乗鞍にやってくる理由はここにもある。他では見ることのできないこの景色の中を自転車で走ることができるのだ。


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路肩の広いところで止まり、風景を眺めながら仲間が来るのを待った。ここまでくればゴールの畳平までわずかだ。

 

素晴らしい景色だ。ここでも充分に来る価値がある。


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仲間たちがパラパラとやってくる。


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みんな思い思いに写真を撮っていた。

 

全員揃ったところで記念撮影。


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揃いのジャージで登るのはいいな。

 

山の上から降りてきたライダーが止まった。

先週、新城のイベントに参加していたY氏だ。

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日本も人がいうほど広くない。

 

畳平まではあとわずか。

 

眼下には登ってきた道が広がる。

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そして行手にはゴールの長野県と岐阜県の県境が見える。

 

早くゴールしたい気持ちとこの素晴らしい景色の中でもっと走っていたいという気持ちが交錯する。

 

私は自分のペースを維持しながら、県境に到着した。

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ここはいつも風が強く吹いているが今回はあまり吹いていない。早川さんが驚いていた。

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こちらでも仲間と写真を撮る。

 

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何回来ても「ここまで来たな」と思う。

やはり乗鞍は特別感があるのだ。

 

 

畳平駐車場でバイクラックにバイクをかけるとウィンドブレーカーを取り出してすぐに羽織った。身体が冷えるのが分かる。標高2700mは伊達ではない。

 

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振り返るとと登ってきたエコーラインの方は灰色の雲に覆われ、白い霧がこちらにも流れ込んできている。

我々はほどなくして畳平駐車場を後にした。

 

つい先程まで青空だったのに、カーブの向こうが見えないほどに道は霧に包まれてしまった。

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早川さんとタツマくんは写真を楽しそうに撮っていたが、他のメンバーは順次来た道を降りていく。

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すぐに霧は雨になった。激しい雨が身体に当たる。身体に打ち付ける雨が痛い。海外で雹に降られたときがこんな感じだったので、雹かとも思ったが、その場の状況ではそこまで分からなかった。そんなことより、まずは少しでも早く下に降りることが重要だ。まだウィンドブレーカーは水を弾いていたが、じきに濡れてしまうのは明らかだった。

 

濡れ始めの路面はスリップしやすい。

私は焦る気持ちを抑えながら、バイクコントロールできるスピードを見極め、いつもよりやや速い速度を保った。ウィンドブレーカーはすぐに撥水性を失うと水を吸い、雨と下りのスピードが身体からどんどん体温が奪っていった。

そして、真横で大きな雷鳴が響いた。

「さすが乗鞍」感嘆とも悪態とも分からない言葉を吐きながら、山の下は晴れていることを確認し、早くそこまで行こうと決めた。

 

位ヶ原山荘まで戻る。

 

先行していたえーしが、行こうか止まろうか躊躇していたので、行くように合図する。濡れた身体で待っていては闇雲に体力を消耗するだけだ。

 

私は後続の山田さんが来るの待って、先行する上野さんとえーしが行ったことを告げ、先を急いだ。

 

水がついたホイールはブレーキが効きにくくなってきていた。いつもの力具合でブレーキがかからない。久々の状況に対応しながら、昔の雨のロングライドを思い出したりしていた。思えばこんなことを続けてもう20年になるのだ。

 

三本滝まで無事に戻る。

雨はほとんどあがっている。

 

私は先行した二人に声をかけると、すぐに温かい飲み物を買った。冷えた身体を温める必要があった。

 

後続の山田さんたちはずいぶん遅れて到着した。

その後にいた早川さんとタツマくんに何かあったのではと、位ヶ原で待っていたらしいが、後続の二人は写真を撮って盛り上がっていただけらしい。何とも早川さんらしい。

 

我々は体制を整えるとスタート地点まで戻って行った。

 

スタート地点の乗鞍観光センター駐車場は上とは対照的に穏やかなものだった。各々感想を語り合いながら、落ち着いて撤収を始める。

 

戻ると私はつい先程までいた場所を見上げた。

今回も感動と貴重な経験を得ることができた。

 

またこうして仲間と来よう。

素晴らしい景色の中を走るという、私にとって根本的な自転車に乗る理由を確かめるために。

 

そう思った。

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Dual slalom game in やまびこの丘

イベント自粛が続き、毎年恒例の大会がいくつも中止になっているが、少しずつ再開の動きもある。

 

先日、新城市の「やまびこの丘」でデュアルスラロームの大会が開催された。

 

新城市で地域おこし協力隊として活動するハッチさんと自身マウンテンバイカーで東海エリアの大会でMCをしているYKOくんが中心となって開催された。そして計測は新城を拠点に全国のレースで計測を行なっている「ワキタソフト」今回のレースはワキタソフトの支援の大会でもある。

ワキタソフトさんは長年、地元の自転車レースの計測を担っているほか、我らがカントリーモーニング四耐やダモンデトレイルでも計測を担っているところで、私も昔からよく知っている。イベント自粛の影響をもろに受け、ご苦労されているそうだ。

 

デュアルスラロームはマウンテンバイクでスラロームでのタイムを競うもので、私の苦手な分野の大会だったので、出場するかどうか迷ったが、久しぶりのイベントであるし、エントリーリストを見ると、知り合いがたくさん参加するということが分かったので、締切直前で参加を決めた。

 

会場は新城市ということで自宅から比較的近いので、お弁当を持って家族で出かけることにした。

 

うちはレースに出るのは私だけだが、子供たちも会場で遊べるように子供たちの自転車も車に積んできた。子供車とはいえ、私の自転車と合わせて車に4台積むのはなかなか大変だったが。

会場のやまびこの丘に着くと駐車場に何人かの友人がいた。お互いSNSで近況は承知しているが、こうして会うのは久しぶりだ。

 

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駐車場から子供たちを連れて大会会場のグラウンドに移動する。

 

グラウンドに出るとBUCYO COFFEEのテントとそしてそこで働くBUCYO COFFEの面々が目に入る。

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ああ、いつものイベント会場に戻って来たんだな。

 

BUCYO COFFEEのみんなに挨拶をして、受付をする。

コースの出口に車を横付けしているワキタソフトの脇田さんにも挨拶。脇田さんも久しぶりだ。

 

コースの脇に子供の練習用に小さなコースが作ってくれてあったので、子供たちとしばし、そこで練習。

その近くの日陰にレジャーシートを敷いて子供たちに飲みものを飲ませたりした。

 

子供たちは妻とすぐそばの川に遊びに行くという。

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今回のデュアルスラロームは、100m×30mのエリアにコースが設定された。コースは二人の選手が同時スタートするため、平行して二本のコースが並んでいる。それぞれのコースは短いポールが狭い区間で立てられ、選手はその狭い隙間を右へ左へと走り抜け、タイムを計測する。

また、右のコースを走った選手は次は左のコースを走り、その合計タイムで競われる。

レースは午前に予選、午後に決勝となっており、午前の予選は時間が許す限り何本でも走っていいことになっている。

 

予選の時間となり、選手がスタートに並び始める。

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久しぶりに会う仲間と予選のスタート待ちをしながら、お互いの近況やコースの攻略法などの話をする。

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「久しぶりですね。」何人の人にこう言っただろうか。

みんな口々にこうした機会があることの大切さを話していた。今回の大会は小さなものだが、こうした大会でないと会う機会のない人もいて、各地で定期的開催されるイベントの有り難みを今更ながら思い知らされる。

 

数本予選を試走のように走り、コツが掴めないまま途中で川から戻ってきた息子が一緒に遊びたいというので、まだ時間は残っていたが、あまり走れずに私は予選を終えた。

 

お昼はサンドして食べられるように妻が用意してくれたハムや野菜をパンに挟んで食べた。足りない分はBUCYO COFFEEで買い足す。昼に子供向けに講習会があり、食事を終えると子供たちは講習会に参加した。

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長女と次女は自分で講習を受けていたようだが、長男はなぜかコースを見て怯んでしまい、人がいないときを見計らって、私が横について走った。スラロームは基本的な技術がしっかりしていないとできないので、子供には早くから楽しみながらやってもらいたいと思っているのだが。

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午後の決勝が始まった。

 

みんな午前よりも更にタイムを縮めてきている。流石だなぁ、と感心する。

 

私と言えば、一応決勝には残ったものの対戦相手はどう見ても勝てる相手ではないので、まあとりあえず走ろうとスタートすると、前に出ていた相手の選手が転倒。

「えっ!」

私はやや困惑してゴール。

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勝負は分からないものだ。

とはいえその後は勝てる訳もなく、決勝二回戦で終わった。

 

決勝を勝ち進む選手たちの走りを見ながら、長男とBUCYO COFFEの冷たいうどんを食べ、ノンアルビールを飲む。イベント会場でこうしているのも久しぶりだ。

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表彰式のあと、お楽しみのジャンケン大会。

妻がBUCYO COFFFEのコーヒー豆を取った。子供達は自分で飲むわけでもないのにコーヒー豆をもらって大喜びだ。

 

 

猛暑の一日を外で過ごして家族は大変だっただろうが、それでも子供達は「楽しかったー!」と言ってくれた。またイベントに行こう。

 

今月20日には新城市役所の駐車場で「MOUNTAIN PORT JAMBOREE」が開催される。

https://note.com/mountainport/n/nb28315bf85e3第一回MOUNTAIN PORT JAMBOREE|MOUNTAIN PORT|note

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自転車やトレイルランの体験。そしてアウトドア用品のフリーマーケットがある。我が家も仲間と何か出す予定だ。少しずつ、イベントのある日常が戻りますように。

 

 

 

 

 

 

 

夏の田原

10月3日に初めて開催される「オフロードトライアスロン in 田原」。その運営ボランティアとして参加することになった。

 

オフロードトライアスロン田原市の白谷海浜公園をメイン会場にその周辺エリアを使ってレースが行われる。

普通のトライアスロンと違うのは、スイムの後のバイクとランは未舗装路を走るもので、バイクはマウンテンバイク、ランはトレイルランとなる。

 

大会のプロデューサーは地元出身のプロサイクリストの小笠原崇裕選手。そしてサイクリスト仲間のケンタが現場の責任者の一人として運営に参加している。今回、私はバイクパートのボランティアとして運営側で協力させてもらうことになった。

 

この日、早朝から私はケンタの案内で予定コースを回った。

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以前はライドといえば、渥美半島一周が定番で毎月のように走っていたが、ここのところほとんど来ていない。ライドに一日使うことがほとんどなくなったことや時間があれば、奥三河ばかりに行っているからだろう。

 

まずはバイクパートの後半エリアを徒歩でコースを歩く。普段は自転車で入ることができないところらしい。

真夏とあって朝の山は歩くと汗が滲むものの、爽やかだった。

コースに設定されているエリアは昔、来たことがあるはずだが、ほとんど覚えていなかった。

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ケンタがスタッフの配置や選手の動きを説明してくれる。私は選手の目線でコースがどう見えるのか、考えながら歩いた。

田原の山は標高こそ低いが、海抜ゼロから一気に上がるためか思ったよりも斜度のある道もあった。

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日当たりの具合なのか水の流れ具合なのか、進んでいくと急に植生が変わったりして歩いていても飽きなかった。

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バイクパートの後半エリアを一通り歩くと、一旦車に戻り、休憩。

 

水分を補給し、ケンタから塩タブレットをもらう。日中の気温を思えば比較的歩きやすかったが、それでもかなり汗をかいた。

 

コース上で選手がミスコースをしそうな場所やスタッフの配置で気になるところの対応を確認する。これまで地元の自転車レースなどのイベント運営のボランティアを20年近くやってきたおかけで、そういう見方がだいぶできるようになったと思う。私が指摘したところはケンタが対応を考えてくれるそうだ。

 

休憩の後、前半のバイクパートの下見に行く。こちらは自転車で入ることのできるエリアなので自転車で行く。ケンタが自分の自転車を貸してくれる。

TUNERのシクロクロスだ。

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私はシクロクロスバイクも最近流行りのグラベルロードも持っていないので、この手のバイクの乗るのは久しぶりだ。

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未舗装の道をバイクの感触を確かめながら、ペダルを踏む。なるほど、マウンテンバイクよりはるかに進む。下りもロードバイクより安心感がある。未舗装路もよほど荒れてなければ問題ない。確かにこういうバイクが一台あれば、未舗装路をガンガン走りたくなるだろう。なかなか面白い。少しグラベルの魅力が分かった気がする。積極的に買いはしないが、一台あってもいいな。

 

気がつけば昔ツーリングで立ち寄った場所に出た。

山から見る三河湾が眩しい。

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バイクに乗っての下見は順調に進んだが、下見も終わる頃、私は軽い頭痛を感じた。熱中症になりかけているようだった。

水分補給は気にしていたつもりだが、今年は特に暑い時間の活動をあまりしていないので体が適応していないのかもしれない。毎年熱中症になるくせに認識が甘かったようだ。オフロードトライアスロンの本番は10月だが、当日も気をつけないと。まさかスタッフが倒れるわけにはいかない。

 

下見の最後の最後でフロントホイールをぶつけてしまい、パンクさせてしまった。ケンタには申し訳ないことをした。

 

一通り下見を終え、メイン会場となる白谷海浜公園に戻った。

 

海水客向けに設置されている屋外シャワーを浴びる。照りつける太陽の下、水を浴びるのは何より気持ちがいい。

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ここに来るのも久しぶりだが、椰子の木と青い海、正しい夏の風景が広がり、いいところだなと素直に思った。

 

白谷海浜公園のそばに新しくカキ氷屋ができたというので、クールダウンに寄ることにする。

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様々なフルーツを使ったカキ氷がメニューに並び、どれを頼むかかなり迷ったが、田原らしくメロンのカキ氷を注文。

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火照った体が内側から冷やされていく。氷はふわふわに削られ、すぐに溶けてしまいそうだ。ケンタと無言でひたすらカキ氷を食べる。

クリームやメロンの乗ったカキ氷はデザートだなと思った。カキ氷は何となくデザートに分類されるというより、「カキ氷」というそれ自体がカテゴリーであると勝手に思っていたのだが。

ともあれ美味しいカキ氷であった。

 

順番が逆になってしまったが、カキ氷の後、昼食を食べに道の駅へ。

 

こちらでも田原らしいものをオーダー。生シラス丼である。生シラスなんて久しぶりだ。

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イベントの下見のはずが、ただの田原観光になってしまったが、まあいいだろう。

 

久しぶりに行って田原がいいところを満喫できた。オフロードトライアスロン当日はぜひ選手にも田原を満喫してもらいたい。

 

 

シャワーライド

雨続きで自転車に乗れない日々が続き悶々としていた。土曜日の朝、一週間降り続いた雨が一時的にだが、止んでいた。

このチャンスを逃すと次にライドできるのはいつになるか分からない。私は自転車と自分の体が濡れるのを覚悟で午前中、ライドに行くことにした。目的地は休日営業をしている我らが拠点、ヤングキャッスルだ。

 

自宅を出て、まず静岡県境の多米峠を上り、浜名湖方面に向かう。

まとわり付く空気がいつもより重く湿っている。視界は悪くないが、まるで霧の中を走っているようだった。

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浜名湖に出るといつもの青い水面ではなく、泥の色になっていた。浜名湖にも土砂が流れ込んでいるのだろう。このあたりは大雨被害はどうなのだろうか。

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浜名湖の北岸を掠めて、三ヶ日方面へ。

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静岡県側から新城市に入るのに宇利峠を上るか瓶割峠を上るか少し迷ったが、宇利峠を選んだ。

 

宇利峠はこの辺りの峠にしては斜度も距離もきつくない峠だ。

 

途中、東名高速の上を越える。そこまでで全体の1/3といったところか。道の至る所で山から水が流れ出ていた。濡れた路面では上りでもスリップすることがある。タイヤから伝わる路面の状態を確かめながらペダルを踏んだ。

 

県境の看板が見えてきて、もうすぐ頂上、というところで雨が降り始めてきた。レインジャケットを着るか少し迷うが、降られたら着ればいいと判断し、宇利峠を降っていく。

 

雨はだんだん強くなる。だが身体が冷えるという冷たい雨ではない。

 

「この程度なら」

 

私は雨に濡れるに任せ、そのまま新城市街へ向かった。

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雨はすぐに弱くなった。これならジャージもそれなりに乾きそうだ。

 

桜淵公園そばの庭野の交差点のところに通行止めの案内看板が出ていた。

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乗本付近で崖崩れがあり、県道69号が通行止めになっているとは聞いていたが、もう少し先かと思っていた。現場は市川口の少し先らしい。

現場は新城と北設を結ぶ道の途中であり、日々、奥三河で生活する人々からすれば大打撃だろう。私にとっても、週末ショップライドで走るホームコースの一部である。

早く復旧するといいが。

 

新城市街に入るところで豊川を越える。

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このあたりでは見たことのない水量だった。

 

橋の上から一枚写真を撮り、ヤングキャッスルへ。

 

バイクスタンドに自転車をかけ、ヘルメットを取ると、ダモンデ山田さんが出迎えてくれる。「雨なのに。」

山田さんは濡れた私の姿を見て、やや呆れ顔だった。私からすれば、この気温だし、長旅でもロングライドでもない雨なので、濡れても大したことない、と思っていたが、はたから見たら、濡れた状態でわざわざ来たなぁ、という感じだったのだろう。

 

キッチン担当のりょーこさんがタオルを貸してくれる。

 

店内にはダモンデメンバーの八木さん親子が来ていた。

 

他には客はいない。

「今日はサッパリだよ。」

 

話はやはり長雨のことになる。

九州ほどではないが、長雨の被害は奥三河にも出でている。

県道69号のほか、いくつかの道路が土砂崩れなどて通行止めになり、飯田線新城駅を含めた長山駅から駒ヶ根駅までという長い区間に渡って不通となっていた。

その後、不通区間水窪駅平岡駅となったが、南北が分断されたままで、復旧には3か月かかるという。

 

ちょうど少し前にりょーこさんの家族は飯田線を使って飯田まで旅行をしてきたところで、飯田線の旅行をもっとしたい、と友達と話していたところだという。

私もそろそろ飯田線を使った輪行ツーリングをしようか、と思っていたところだったのだが、まさかこんなに被害が出るとは。

 

昨年、湯谷温泉飯田線を活用した地域活性化についての講演会があった。その中で、廃線になった鉄道の話が出て「昨日まで電車が走っていた線路に電車が走らなくなり、踏切も線路にしないように線路上に柵が置かれる。そして、廃線の日になった瞬間、ウェブの地図から線路図が消えてしまうんです。」という衝撃的な話だった。

 

その時の話とSNSで流れてきた電車の来ない飯田線の光景がその時を思い出させた。

 

飯田線は今のところ復旧するが、将来、こうした災害がきっかけに廃線の話が出てきてしまうかもしれない。そうならないように、大切に思っている人がいろんな使い方をして、その様子を発信していかないといけないと思う。

 

復旧したら、また仲間と輪行ツーリングをしよう。以前秋に訪れた長野、静岡、愛知の三県の県境地域は紅葉が素晴らしかった。

行きたいのは水窪から先の秘境駅区間だが、また水窪周辺のライドもいいかもしれない。

 

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昼時になり、一組お客さんが来たあとはまた身内しかいない状態に。こんな日にわざわざ自転車で来た私はやはりおかしな男なのだな、と思った。

 

お腹が空いたので私は辛いカルボナーラ「カルボロン」のメガサイズを注文した。

りょーこさんが「なかなかのビジュアルだら?」と熱い鉄板の上で高く盛られたパスタを持って来てくれる。

 

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なるほどナイスな見た目だ。大盛りが限界のであると言われる鉄板の上に高く盛られたメガサイズのカルボロン。

胡椒多めの熱々のカルボロンにさらに胡椒をかけ、ハフハフいいながらパスタを平らげた。気軽にパスタが食べれるヤングキャッスルは週末のプチライドにはちょうどいい。

 

パスタといっしょに頼んだコーヒーを一口飲むと、濃い味が口に広がり、最近会っていないBUCYOさんを思い出した。最近イベントもないしな。

 

コーヒーを飲み終えると、レインジャケットを羽織り、ヤングキャッスルを後にした。

 

ヤングキャッスルに来て、山田さんやりょーこさん、それに必ずいる他の仲間と話すといろんな発見がある。今回も飯田線のこともここで話さなければ、そこまで発想が飛躍しなかったと思う。

 

また寄れるときに自然体でヤングキャッスルに寄ろう。

もっとも、次は雨ライドでないときに。

古刹 - ライド新城 -

 

その日は梅雨時期にあって、朝から天気は晴れだった。車で出かける予定があったが、午前中、新城市方面にライドに行くことにした。

 

紫陽花の季節なので、せっかくなら紫陽花を見に行こうと決めた。奥三河で紫陽花というと、設楽町の平山地区、新城市の四谷千枚田それから冨賀寺が知られている。

 

設楽の平山は集落の人が大事に育てた紫陽花が一面に咲く、非常に見応えのある場所だが、今回は時間の制約もあるので、そこまでは行けない。

 

行けたら四谷千枚田、ひとまずは新城市南部にある冨賀寺に向かうことにした。

 

走り慣れた朝の道を北東方向に走っていく。

街場をすぐに離れ、周囲の景色はすぐに田畑になる。つい先日も走ったところだが、田畑の作物は前よりずいぶん大きくなったように感じる。雨の恵みを受けて、ぐんぐん成長しているのだろう。

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郊外のあるカフェの外に出された黒板のメニューがふと、目に入った。

とたんに懐かしい記憶が蘇った。

 

まだ海外を自転車で旅をしていた頃、とにかく毎日お腹が空いていた。

早朝にキャンプを撤収して走り出し、カフェの前を通ると、道のほうに向かって出されていた黒板のメニューをよく眺めていた。

まだカフェに入るには早い、と。昼まで我慢しようと、思い直しそのまま通り過ぎだカフェがいくつあったことか。いつもカフェに入るのはお昼だった。

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旅をしているときのような朝の雰囲気を、朝のライドのどこかで感じていたのだろう、カフェの黒板を見て、そんなことを思い出した。

 

豊橋の郊外から新城市へ入る。

 

冨賀寺に行く前に近くにある車神社に寄ることにした。

 

車神社の社紋は,源氏車の車輪を形象化したものだそうで、交通安全祈願にふさわしい神社として、最近では地元サイクリストにも知られた存在になっている。

私は何十回と車神社の前を通っていたが、訪れるのは今回が初めてだ。車神社の前の道は信号のない開けた直線で、自転車で走っていると気持ちよくペダルが踏めてしまうので、ついつい通り過ぎてしまうのだ。

 

 

田んぼの真ん中にある車神社は山を背にして建っており、道から見ると田んぼの真ん中に浮かんでいるようで、非常に画になる場所だ。

 

いつもは通り過ぎる神社の前で止まり、鳥居をくぐり、車神社に足を踏み入れた。

 

神社の入り口にはバイクラックも設置されており、自転車の人がよく訪れることが伺えた。

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社殿の前には社紋である車輪が左右に置かれていた。

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ひと気のない朝の神社は清々しかった。

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朝の神社はどこか張り詰めた空気があるが、ここは周囲が田んぼで開けているからだろう、とても穏やかなたたずまいだ。

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本殿で安全祈願をし、車神社を後にする。

 

車神社からは、周囲の田んぼの道を走ってみる。途中から未舗装になるが、そのまま舗装路に戻りそうだ。最近、未舗装を走るのがサイクリストの間で流行っているが、脇道にそれて、どこに行くのかちょっと冒険気分になれるのがいいかもしれない。

 

しばらく走るといつもの道に戻った。

 

車神社から冨賀寺まではすぐの距離だ。

 

冨賀寺も実は来るのは初めてだ。

入り口の看板を見ると飛鳥時代からの由緒あるお寺だそうだ。そんな歴史のあるお寺とは知らなかった。

 

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お寺の敷地に足を踏み入れる。

森に囲まれた冨賀寺は先程の開けた車神社とは対照的に奥までいくと少し薄暗く、梅雨の季節のひんやりとした静謐な空気の中に存在していた。

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紫陽花の名所と聞いていたので、紫陽花の花が咲き乱れているような様子を想像していたが、参道に行儀良く咲いていた。

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そうか、ここはこれが正しいのだ。

 

森に囲まれた静かな歴史ある寺院に咲く紫陽花。

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華やかに咲くものばかりを想像していた自分が恥ずかしくなった。

 

本堂から参道の横道を行くと「観音の道」という歩道がある。余談だが、苔むして水分をたっぷりと含んだ道なので、ビンディングシューズのサイクリストは用心して欲しい。私は数回転びそうになった。

 

冨賀寺からはよくショップのライドで行く桧峠を越え、鳳来方面に向かう。

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桧峠は北側の舗装がきれいになっていた。舗装がイマイチなのは南側なのだが。

 

そこからさらに北に向かう。

 

寒狭峡大橋まで来ると下に鮎滝が見えた。前日の雨で水量が多い。

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鮎滝は江戸時代から続く伝統の『笠網漁』と呼ばれる滝を越えようと跳ぶ鮎を、竿の付いた網で捕らえるという珍しい漁法が行われている場所で、ちょうど網を持った人が二人ほど見えた。

 

橋の上で止まったついでに時間を確認する。

 

昼に妻とランチの約束をしているので、このまま四谷千枚田まで行くと時間に間に合わない。

 

私は予定を変更し、鳳来寺山の表参道に向かった。

 

この日はちょうど旧門谷小でカフェをやっているのだ。のんびりコーヒーを飲んでから、山を降りていけばちょうどいい時間のはずだ。

 

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さして時間もかからずに鳳来寺山の参道に着く。門谷小は相変わらず雰囲気がいい。

 

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月火水とこの場所でカフェ爾今の店主トラさんがコーヒーを出している。

何気なく頼んだコーヒーが美味しくてびっくりした。


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私は同じタイミングで来た女性と先客のおじさんとしばらく会話を楽しんだ。

 

コーヒーを飲んでいるとトラさん目当てにいろんなお客さんがやってくる。

どのお客さんも一癖二癖ありそうだ。

そんなお客さんにトラさんは「70年生きてきて今が一番楽しいよ!」と言い放っていた。

全くあやかりたいものである。

 

そのまま鳳来市街へ向かい、車で来た妻と合流した。

 

ランチは新城市の大海にあるイタリアン「St.Thomas」。

以前は豊川に店があり、妻とよく通ったのだが、そちらはしばらく前に閉めてしまい、最近また新城で店を再開したのだ。

この店について書くとブログが3回は書けるので詳しくは書かないが、とにかく好きな店だ。

 

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初めて行く方にはぜひ、ポルチーニかスカンピのクリームパスタを食べて欲しい。濃厚なソースが癖になること請け合いだ。

 

この日は限定でペスカトーレがメニューに出ていたのでそれを注文。

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たっぷりと魚介の入ったパスタが美味しくないわけがない。

お気に入りのお店で久しぶりに妻と二人でゆっくり食事ができた。

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会計の時、店主の中澤さんと話したが、コロナの影響でこちらも客足が遠のいているそうだ。また来るようにしよう。応援らしい応援はそれしか出来ない。

 

「ちょっと食べ過ぎたかな?」

そんなことをいいながら、帰りは妻と車で帰った。

 

 

 

豊川河口へ

日曜日、次女と長男が「風の自然学校」の「アウトドアキッズ」に行き、一日不在となったので、午後から長女とふたりでポタリングに行くことにした。

 

風の自然学校は武田芳男さんが代表の子供向けのフリーキャンプを行っているところで、私は子供が生まれる前はときどきボランティアで手伝いをしていた。

子供が生まれてからは、もっぱら子供を遊ばせてもらうほうになっている。

アウトドアキッズは年長児から小学校3年生までの子供が参加できるデイキャンプで、池でザリガニを捕まえたり、木の実を取ったり、自然の中で子供がしたいことをさせてくれる。

 

風の自然学校ホームページ

https://blog.canpan.info/kaze-nature/

 

下の子供達がいない状態で長女と親だけという機会も貴重なので、本人に何がしたいか聞いてみたが、「自転車に乗りたい」ということだった。

 

一番上の子供はなにかと我慢させることが多く、週末に自転車に乗る時も、下の子供達に合わせたペースで走っており、自分のペースで遠くまで走ることがほとんどない。

私にしても、長女がどのくらい走れるのか、よく分からないので、そのあたりを探りながら走ることにした。

 

どこに行こうか迷ったが、「海でも見に行く?」と聞くと「海まで行けるの?行く!」とやや興奮気味な返事が返ってきたので、豊川沿いに走って海に向かうことにした。

 

豊川沿いの道はしばしば子供達と走るのだが、いつもは左岸を行くことが多い。

今回は「牛川の渡し」から渡し船で左岸から右岸に渡り、右岸の道を行くことにした。

「牛川の渡し」は豊橋市道の扱いになっており、無料で対岸に渡してくれる。

 

長い竹竿一本でおじさんが上手く船を操り、対岸まで運んでくれた。

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うちの子供達は渡し船が好きでたまに乗りに来る。

 

堤防道路に出て、走り始める。

少し走ると土手の下の畑に色鮮やかなキジのつがいがいた。「見てごらん、キジだよ。」

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前を走る長女に呼びかける。「キレイだね。」と長女。キジたちを横目にそのまま走っていく。


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「日差しは暑いけど、風があって暑いのか涼しいのか分からない」と長女が言う。

私は今の季節が自転車乗るのに一番いい季節だと教えた。もっと風が強くて前に進まないようだったらどうしようかと実は心配していたのだが、向かい風も暑さを和らげてくれるぐらいの心地良い風で、その心配は無用だった。


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国道一号線を越えると川には多くの人がいた。河口に近いこの辺りは潮の影響をよく受ける。この時ちょうど潮が引いており、砂地が多くその姿を現していた。みんなシジミを取っているのだろう。

私も子供の頃、よく取ったものだ。
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鉄道の橋をくぐり、いくつか橋を通り過ぎる。

 

10キロほど走ったあたりで休憩。

「川の近くまで行く」と長女は堤防から川のそばまで降りていくと、「カニがいるよ。」と教えてくれた。

砂地に指先ほどの小さなカニがたくさんいた。

よく見るとその小さなハサミを揃って振っていた。

「おもしろいね。」

 

休憩後、さらに進み、国道23号を越える。

もう河口だ。

 

昔、「風の自然学校」のボランティアをしていた頃、数日かけて豊川源流から河口まで子供達と自転車で走るキャンプのスタッフをしたことがあるが、その時の目的地がここだ。

「懐かしいな。」

長女はちょうど参加者ぐらいの歳になった。長女もいろんなことができる歳なんだな、と改めて思った。もっと長女の可能性、本人の「やってみたい!」を伸ばしてあげたい。


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「この辺りで道はおしまいだよ。このままぐるっと回ると、そのまま豊川放水路に続いてるんだ。」

 

私はさらに河口にかかる豊川大橋や港の方を指差して、さらにケータイの地図アプリでどこを走ってきたかを説明した。

 

帰りは豊川の左岸を走っていく。

風は緩い追い風。

長女は軽快に川沿いの道を進んでいった。

 

まだ長女が幼稚園児だった頃、住んでいたあたりを通ったので、昔遊んでいた公園に立ち寄る。

 

私はちょっと久しぶりだなと、思ったぐらいだったが、滑り台が新しくなっていた。

 

アパートから引越した後、何度か子供達にせがまれて来ていたと思ったが、長女は数年ぶりだという。

長女がひどく懐かしがっていた。大人の数年と小学生の数年がどれだけ違うのかを改めて思った。

 

街中まで来たことでもあるし、長女はたくさん走ったので甘いものでも飲んで帰ることにした。

 

今年のはじめにオープンしたというコーヒースタンド「Heart to Heart」という店に寄る。何度か店の前を通っていてちょっと気になっていたところだ。


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韓国風のかき氷「ピンス」がオススメらしい。

長女はイチゴのシェイク、私はキャラメルナッツのピンスを注文した。

ココナッツファインのように細かくなったミルクの氷がカップ一杯に入っており、下にはキャラメルソース、上にはナッツとこれまたキャラメルソースと女子が好きそうなスイーツだ。


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なかなか口当たりがおもしろく、好きなフレーバーだったので、私はペロッと食べてしまった。この日の私の運動量では罪悪感の残る甘さだったが(もっとも、最近は何を食べても大丈夫になるほどハードなライドはしていない)、たまにはこういうのもいいだろう。

長女が嬉しそうにしていたのでそれでいいということにしておいた。

 

甘いドリンクを堪能すると、そのまま走り慣れた道で家に帰った。

この日は20キロほど走ることができて、長女は疲れた様子だったが満足そうだ。

長女はいつまで私のライドに付き合ってくれるのだろうか。もっと遠くへ。いろんな景色を見に行きたい。

集落からの眺め - ライド新城 -

緊急事態宣言が解除された最初の土曜日、それまで控えていた市外へのライドへ出かけた。まだグループライドはやめて、一人で走ることにした。

 

前にも少し書いたが、一人で旅に出るのは好きだが、普段走るのは仲間と一緒の方が好きである。

 

翌日の日曜日は天気が悪そうなので、午後からは子供達と遊ぶ約束をし、私はロードを車に積んで新城に向かった。

 

新城に向かう道はロードでも車でも走り慣れた道だ。田植えが終わったばかりの水田が眩しい。自走すればよかったかな、と少し後悔した。

 

新城市桜淵公園に車を置いて、そこからロードで走り出す。

久しぶりのロード、そして久しぶりのDamondeのチームジャージ。

最近は自粛もあり、マウンテンバイクで近くの山を走るばかりでロードはしばらくぶりだ。ペダルを踏み込むとすぐに加速していく感覚が心地よい。

 

私はまず、新城の市川地区に向かった。

 

市川地区は奥三河に行く際の主要道である県道69号を一本入ったところにあり、山の中に隠れるようにある集落だ。特に用がなければ来るような場所ではない。

 

私も数年前まで行ったことがなかったが、ここ何年かはフォトロゲのチェックポイントになったりして行く機会があった。

知らなければ通り過ぎてしまう分岐を曲がり、集落に向かう坂道を上がっていく。

 

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民家の見えてくるところまではそう遠くない。

 

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集落の入り口に神社がある。大きくも小さくもない、綺麗に保たれた神社。地域の人が掃除しているのだろうか。

三河にはこうした神社がたくさんある。
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神社からの眺めはいいが、集落はまだ上に上にと続く。私は集落の一番上を目指した。

民家の間の坂道を抜け、道のてっぺんに出る。


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市川の集落を見下ろせる場所で休憩する。

集落の向こうには長篠市街が見える。標高は200m程度だと思うが、眺めがいい。

上ってきた道をそのまま進むと集落と反対側の斜面に出る。道は続いているが、ここから先は未舗装路だ。

以前、別の集落を抜けて反対側から市川に来たことがあるので、今回は市川側から抜けてみることにした。

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市川から先の道はロードバイクで行くには少し荒れた道だったが、なんとかなるレベルだ。できるだけフラットなところを選んで走る。

 

薄暗い林道に差す日の光が美しい。

 

林道にはいくつか分かれ道があるので、ときおり地図アプリで現在地を確認しながら、アップダウンの続く林道を進む。

 

林道区間が終わり、また舗装路になった。

 

大平の集落だ。

ここは秋には多くの彼岸花が咲く。隠れた彼岸花の名所だ。

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(この写真は以前来た秋の様子)

 

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こちらも山あいの静かな集落といった佇まいで、優しい景色だ。遠くに農作業をしている人の姿が見える。

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そのまま大平の集落を抜け、県道69号に戻った。

まだ少し時間があるので、もう一つ、小さな山の上を目指すことにした。

大平のすぐ近くにある鳶ヶ巣山だ。

山頂までは短い上りだが、なかなかの斜度である。

途中、長篠市街を望む場所が気持ちいい。

ここは長篠の合戦の際に武田方の砦があったところで、山頂にその様子を伝える看板がある。

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山頂は木々に覆われていて展望は開けていないので、そのまま隣の万灯山に向かう。

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草に覆われた道を進んでいくと視界が開けた。

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しばらく景色を眺めると万灯山を降り、県道69号に戻った。

 

昼食を済ませて帰ろうと、お気に入りのお店「長生うどん」に行くとDaMONDE の仲間たちと偶然会うことができた。

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思わぬところで話が出来てよかった。

 

ずっと食べたかったカレーうどんを平らげると、仲間と別れ、家路についた。

 

ほんの数時間のライドだったが、あまり行かないところに行って、いい時間を過ごすことができてよかった。

三河は素晴らしい。

 

 

 

風切山 - 奥三河低山ハイキング -

これはまだコロナの緊急事態宣言が出されるまえの頃の話だ。

 

珍しく豊橋里山に行って子供達はけっこう歩ける、ということが分かり、新城市の山に行った。

 

選んだのは、新城市にある風切山。風切山は桜の名所である桜淵公園からアクセスできる山でここも標高356mと比較的低い山だ。

 

ちなみに風切山の情報は新城市のスポーツツーリズムのページに詳しく載っており、私もこちらを参考に歩いた。

 

風切山めぐろーどコース – 新城市スポーツツーリズム

 

今回は自分の子供達と長女の友達のTちゃんを連れて行くことになった。

 

午前11時頃、桜淵公園を出発。

まずは山の入り口にある荒沢の滝に向かって県道沿いに北に向かう。

 

子供達は元気よく歩いて行く。

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暖かくなってきて、いろんなところに花が増えてきた。女の子達はタンポポや他の花を摘んだりして、道草しながら楽しそうに進んでいく。

「あ、つくし」次女はつくしを見つけると摘み始めた。長男もそれを見ていっしょに摘む。どうするのか聞くとお母さんに煮てもらうらしい。なるほど、それで一生懸命な訳だ。

長男は次女のつくし取りをいっしょにしながら、トカゲを見つけたらしく、捕まえようとしたが、逃げられたようで残念そうだ。

荒沢の滝の入り口には段々になった田圃が広がっており、彼岸花の名所として知られている。

今の季節はタンポポがたくさん咲いている。長女とTちゃんがタンポポで花束を作っている。

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ほのぼのとした様子を妻とTちゃんのお母さんに伝えようと写真を撮るとTちゃんが「送っちゃダメだよ。お母さんにあげてびっくりさせるんだから。」と言う。かわいい子である。

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桜淵公園から荒沢の滝の入り口まで子供の足でも20分あれば行くかと思っていたが、文字通り道草をして小一時間かかった。山の上でお昼を食べようかと思っていたが、もう12時であった。子供達にお腹が空いたか訊ねるとまだ大丈夫というので、お昼は歩いた調子で決めることにした。

 

田圃の横の獣害除けの柵を開けて荒沢の滝へ向かう。

 

沢沿いの斜面を上がっていく。荒沢の滝には不動明王が祀られており、赤いのぼりが道に何本も立っていた。

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田圃の入り口から荒沢の滝まではあまり時間は掛からなかった。随分前に私が来たときにはほとんど水がなかったが、今回はまずまずの水量があった。

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子供達は滝壺のそばで水に手を入れ、「冷たい!」といいながら、キャッキャっと楽しそうだ。

山から降りてきたのだろう年配の夫婦がやってくる。軽く挨拶をして、我々は山道に戻った。

 

先に行く長女たちが分かれ道で「どっちー?」と振り返って聞いてくる。

 

風切山のハイキングコースには要所要所に看板が立っており、迷う心配はない。このルートは初めて来るが、他のルートで風切山に登ったことが数回あるので道の心配はしていなかった。

 

しばらく行くと「だんご山」というところに出る。

少し視界の開けたところで古いベンチがあった。

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ここで少し休憩。おやつを食べる。子供達は自分のカバンからおやつを出して食べ始める。私はタンブラーのコーヒーを飲み、飴を一つ口にいれた。

 

ベンチとその隣には東屋があったが、そちらは破損しているのか使用禁止になっていた。さらにその先には石碑があり、「山の神」と彫られていた。

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「山の神」というのがどんな神様かよく分からないが、安全に山で過ごせるようお賽銭置くと手を合わせておいた。

 

ベンチの近くの斜面にカタクリ花が咲いていた。

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子供達はカタクリを見るのは初めてだったようだ。

「綺麗なお花だね。」

子供達はしゃがんでカタクリの花を眺めていた。

 

カタクリの群生地からしばらく行くと年配のご夫婦とすれ違う。子供達は元気に挨拶した。

 

そこからさらに行くと老人福祉センターに出る。

ここでも少し休憩。老人福祉センターが開いていたらトイレを借りようかと思ったが、週末は開いていないようだ。

 

ここから本格的に風切山の登りに入る。

 

このから先は何度か来たことがあるのでルートの心配はない。

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子供たちは相変わらずワイワイいいながら、楽しそうに登っていく。上の子たちについていけない長男と後ろからゆっくりついて行く。

 

風切山の山道には280を超える石仏が祀られており、少し進むと次の石仏に出会う。

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先を行く長女とTちゃんは石仏と出くわすたびに律儀に手を合わせていた。

 

次女のペースが遅れてきた。

「お父さん、お腹空いた」

確かにそういう時間だが、せっかくなら山の上でお昼を食べたい。次女を励まし、先に進んだ。

 

それからしばらく山道を進むと林道に出る。ここは景色がいい。新城市内が一望できる。

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ここでお昼ご飯でもよかったが、次女以外は山頂まで行く気になっていたので、次女を励ましつつ、そのまま進む。

 

長女たちが前で何か騒いでいる。

Tちゃんが何か捕まえたようだ。Tちゃんは手の中のトカゲを見せてくれた。最近、トカゲが捕まえたくて仕方がない長男はTちゃんを羨望の眼差しで見ていた。

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Tちゃんはトカゲを長男に渡してくれたが、長男はトカゲを逃してしまった。長男は残念そうだが、Tちゃんは「いいよ」と言ってくれた。

 

私はしばらくTちゃんと話しながら歩いた。Tちゃんのお父さんは仕事が忙しく、Tちゃんとなかなか遊べないが、休みの日には山に行ったり、アウトドアショップに行ったりするらしい。

 

Tちゃんは「これお父さんに買ってもらったんだ。」と首からぶら下げたバードコールを見せてくれた。

Tちゃんがバードコールを「キュッキュッ」と鳴らすと森の中から鳥の声がして、バードコールに応えていた。

私は思わず「おおっ」と声を上げた。

 

鳥が応えてくれたのがよほど嬉しかったのだろう、Tちゃんはその後もしばらくバードコールを鳴らしていた。

 

山頂まであと少し、というところで長男がまた遅れてきた。お腹が空いたと何度も言っていた次女は長女たちと先に進んでいる。

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疲れてきた長男を励ましながら、先に進む。

山頂近くの分岐で長女たちが待っていた。

「こっちだよ。もうあそこがてっぺんだから」

女子3人は元気に走っていく。

 

山頂に着いた。

新城市の山の南側が見える。子供たちに、どのあたりが何かを説明したが、あまり伝わらなかったようだ。行ったことのない場所の話をしてもそうなるよな、と思った。またいろいろ連れて行かないと。

 

時計を見るともう2時近い。腹も減るわけだ。

 

私は荷物から敷物を出して広げる。

山頂は風があり、日向にいても少し肌寒いくらいだ。

 

子供たちはカバンからお弁当を出して広げる。

みんな揃っていただきますをした。

 

Tちゃんがみんなにミニトマトを配ってくれる。口に入れると甘みと優しい酸味が口に広がった。

 

私はバーナーストーブを出すとお湯を沸かし、フリーズドライのお吸い物を作る。妻が作ってくれたおにぎりとよくあった。

 

日が陰って、吹き付ける風が冷たい。

子供達にお吸い物を回す。温かいものを用意してよかった。

 

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子供たちは持ってきたおにぎり弁当をあっという間に平らげてしまった。

たくさん歩いてたくさんエネルギーを使ったのだろう。体を動かしてたくさん食べるのはいいことだ。

 

子供たちはまだ食べ足りない様子だったので、私はチキンラーメンを作ると子供たちに分けた。


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結局、チキンラーメンは子供たちがほとんど食べてしまい、私は自分用にもう一つ作った。二つも要らないかと思っていたが、念のため持ってきてよかった。

 

 

遅めのお昼を終えると、来たルートとは別のルート、ちょうど車を置いた桜淵公園のすぐ正面にでる道で山を降りた。

 

帰り道は途中から舗装路だったが子供たちは「だるまさんが転んだ」を始めてしまい、なかなか車に戻るまで時間がかかってしまった。

 

桜淵公園に戻り、Tちゃんに「楽しかった?」と聞くと「うん。またお願いします。」とTちゃんはペコリと頭を下げた。

 

またTちゃんを連れて山にハイキングに行きたいものだ。


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家キャンプ

例年ならゴールデンウィークは家族で長野にキャンプに出かけるのだが、今年はそういう訳にもいかず、かわりに家の庭でキャンプをすることにした。

 

我が家は住宅街にあるので、いろいろ制約はあるが、庭とウッドデッキを使ってテントとタープを張り、食事は出来るものは、少し火を焚いて作ることにした。

 

まずは庭にタープを張る。

タープはあってもなくても良かったが、雰囲気を出すならあったほうがいいな、と思い、張ることにした。普段のファミリーキャンプ用にするかソロキャンプ用の小さいものにするか迷ったが、ソロ用のものを広げてみたところ、うちの狭い庭にはちょうどよかった。

 

テントはウッドデッキの上にいつも使っているファミリー用のテントを張る。しかし、ウッドデッキを一杯に使って何とか張れる、といった感じになってしまった。

 

普段キャンプ場でテントを張るときには気にならないが、相当広い場所を使っているんだな、と今更ながら気付かされた。

 

タープの下に焚き火台と椅子を並べるとそれらしい感じになった。

 

子供達が早速焚火がしたいと騒ぎ始める。

 

「夕方になったら始めるね。」

 

昼間はご近所さんが洗濯物を干しているだろうからあまり煙を出してもいけないと思ったのだ。それに家にストックしてある薪や炭の量もある。そのあたりを考えて、毎日夕方から、ということにした。

 

約束の夕方になり、以前、庭木を剪定した際に、適当な大きさに切って置いた太めの枝を薪にして焚火を始める。

 

子供達は焚火の周囲に椅子を並べると、うちわや古いテントのポールで作った火吹き棒で一生懸命、薪に風を送る。

3人の子供達が一斉に風を送るが、風が弱かったりしてなかなか火が強くならない。私はときおりうちわで強く煽いで、火を安定させた。焚火も数をこなさないとうまくならない。子供達も早く火起こしができるようになると助かるのだが。

 

剪定したユーカリを火に焼べるといい香りがした。

ユーカリはよく燃えるので薪にはちょうどいい。

 

初日の晩ご飯は芋煮。

我が家のキャンプの定番である。妻がキッチンで材料を切って鍋に入れて、外に持ってきてくれた。

 

焚火の上に鍋を置く。

 

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家の中から飲み物や箸などをお盆に載せて持ってきた。焚火を囲む横のウッドデッキの上に置く。

 

外が暗くなってきた。

玄関やウッドデッキの明かりを調整して、ある程度明かりが焚火の周りを照らすようにした。

 

こうしてみると、今まで家の使い方というのを限られた使い方しかしていなかったのだなと、改めて思った。

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芋煮の味付けをし、キャンプでいつも使っている器にそれぞれ芋煮をつける。私は長年愛用のチタンのシェラカップ

 

それ以外の食べるものと言えば、焚火で炙ったキノコやベーコンぐらいのもので、質素なものだが、外で食べると立派な食事になるから不思議なものだ。

 

子供達は食事を終えるとお風呂に行き、わいわい言いながらテントに入って行った。騒ぐと声がご近所迷惑になるから、騒いじゃダメだよ、と子供達に言っておいたが、思いの外、すんなり寝てしまった。

 

私はいつものキャンプのように焚火の前でゆっくり酒を飲んだ。読みものはアウトドア用品のカタログ。

 

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それから結局、庭でのテント泊は3泊4日になった。

 

朝は少し早く起きて、外でコーヒーを入れて飲む。

早起きしたきた子供にはココアをいれてあげた。

 

アウトドアチェアに座って庭でコーヒーを飲むことはこれまでしたことがなかったが、思いの外よかった。最近は在宅勤務の朝は天気が許せば、そういう時間を取るようにしている。

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家キャンプをしている間、昼間は人気の少ない川原に自転車で行ってちょっとピクニックみたいなことをしたり、ウッドデッキで食事をしたりした。

 

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それからゴールデンウィークの間、キャンプ気分だったせいか、テレビをほとんど見ることがなくて、煩わしい情報から解放されてとても自由な感じがした。

 

そんな穏やかな日々はあっという間に過ぎていった。

 

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ゴールデンウィーク最終日、タープとテントを片付けてしまうとさっぱりして、なんだか寂しかった。

ダモンデトレイルではないが、終わって魔法が解けたようだった。

 

とはいえ普段と違う家の使い方をして、まだ家の楽しみ方を知らなかったんだな、と我が家の可能性がまだまだあるということを実感することができた。

 

極論を言ってしまえば、結局、自分がどうするか、どこまで追求できるのか、どこまで楽しめるかなのだ。

 

旅をしていた頃、ネガティブになりそうな自分によく言い聞かせていた。

「世界のあり方を決めるのは自分なのだ。」と。