定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

ハマイチチャレンジ -2023年走り初め -

前々から長女と一度、浜名湖一周いわゆる「ハマイチ」しようと話していたが、なかなか予定が組めず、ずっと先延ばしになり、気がつけば新しい年を迎えていた。

 

我が家の年始の予定は妻の実家に挨拶となんとなくの初詣くらいなもので、あとはその年によって、という感じである。

いいタイミングではないかと、長女に「浜名湖を自転車で回ってみない?」と誘ってみると「行く!」と言ってくれたので、1月3日に長女とハマイチをすることになった。

 

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長女は普段から自転車に乗る訳ではないが、昨年渥美半島を1日ゆっくり走ったことがあり、体力的には何とかなるだろうと思っていた。

 

私は浜名湖北部まで車で移動し、反時計回りで浜名湖を走るようにルートを引いた。

 

久しぶりのサイクリングの長女。サドルを少し高くする。シートパストがシートチューブからだいぶ出るようになった。そろそろ次のバイクを考えないといけないか。

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ルートの大半は自転車道で、スピードを出すサイクリストは走らないところ。何より湖畔が近くていい。

時折、我々のすぐ真上をトンビが鳴きながら飛んでいく。

そんな様子を長女は楽しそうに眺めながらペダルを踏んでいた。

 

ペースは速くはないが、長女はコンスタントに距離を稼いでいく。風は冷たいが、耐えられないほどではない。暑がりの長女は熱中症の心配のある季節よりこのくらいの時期の方がいいようだ。

 


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浜名湖南部、新居町まで来ると、長女がじっと浜名湖の向こうを見つめていた。


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富士山である。

この季節、浜名湖南部からでもよく見える。

お正月でもあるし、富士山が見えたらいいな、と思っていたので、綺麗に見えてよかった。

長女は思いの外大きく見えた富士山に興奮気味だった。


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渚園でトイレ休憩。ゆるキャンのポスターがたくさん貼られていた。

長女にスマホで現在地とこれまで来たルート、それからこの先行くルートを説明した。その後も休憩の度に説明をするようにした。自分がどこに向かっているのかぐらい理解してくれれば、というぐらいの気持ちであったが、分岐で正しい方を指していたからそれなりに分かってもらえていたと思う。


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渚園から北へ。中之島大橋から村櫛までは予想通りの強い向かい風。

村櫛で少し補給をし、舘山寺温泉に向かい、北に進む。風は相変わらず強いが日差しが温かい。

昼のサイレンが鳴る頃、舘山寺に到着。
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お正月で開いている飲食店が混んでいないか心配だったが、幸いすぐに入れる店を見つけてランチ。
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長女のペースだとほとんど心拍が上がらず、ずっと寒かったので屋内で食事ができるのは有り難かった。

舘山寺からは気賀方面に向かいさらに北に向かう。

気賀から湖岸に沿って西にコースを取ると強烈な向かい風。

長女は淡々とペダルを踏む。

こういうとき我慢強いなと感心する。私はキツいとすぐに軽いギアに入れ、サボってしまう。

長女を見習わないと。

 

そんな長女も疲れが見えたので天竜浜名湖鉄道の西気賀駅で休憩を取る。
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天浜線の駅はなかなか風情がある。
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休憩にココアを飲んで元気になった長女と西気賀駅を後にする。

ここまで来ればあと少しだ。
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長女は寸座と浜名湖サービスエリア付近の上りで少し苦戦していたが、そのあとは順調に走っていく。

 

やがてスタートの公園近くまで戻ってくる。

長女が気がつくかと思い、何も声をかけずにいたが、気づかずに2周目に行きそうだったので、声をかけて「もう1周したよ。」と伝えた。

長女は「えっ!」という顔を一瞬したが、すぐに「やったね」と嬉しそうな顔になって私も嬉しくなった。距離は55キロ。長女にとって一番長いライドになった。

 

 

帰りの車でこういう感じで自転車にまた乗りたいか、と長女にきくと「たまにはやりたいかな」という答え。月一ほどではないそうだ。

 

別に長女をサイクリストにしようとは思わないが、自転車に乗ることで達成感を得て欲しいし、いろんな景色を自転車に乗ることで見て欲しいとは思う。

 

私は自転車に乗ることで、少し自分に自身が持てるようになったし、長女にとって人生を豊かにするものであるといいなと思う。

 

いつまでいっしょに走ってくれるか分からないが、また長女を誘ってライドに行こう。

 

焚き火とキャンプと - 鯖街道ツーリング -

カフェを出て再び小入峠からの道、針畑川沿のルートを南下していく。

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時間は午後4時を過ぎている。日暮れ前にキャンプ場に着いておきたいところだ。暗いところでテントを張るのは骨が折れる。焦る気持ちを抑えながら川沿いの下り基調の道を流していく。

 

針畑川が安曇川に合流するところで、道は国道367号に入る。泊まる予定の梅の木キャンプ場は目と鼻の先だ。

キャンプ場らしき敷地が見えるが、人影がない。

これはもしや。嫌な予感がした。

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入り口に貼り紙がしてある。

今季の営業は終了らしい。

 

疲れがどっと出た。

前にも北信にキャンプツーリングに行ったときにそんな事態があったが、そのときは管理人さんの家がすぐ隣で頼んだら何とか使わせてもらえたが、こちらは無人だ。

 

正直、キャンプ場でなくてもテント張れそうなところでテント張って寝るのもできたが、余計なトラブルを避けるためにもどこかのキャンプ場に行きたい。

来る前に調べた予約不可、当日現地受付のみのキャンプ場が近くにあるはずだ、ということを思い出した。

便利な時代になったものだ。Googleマップですぐに出た。桑野橋河川公園、朽木キャンプ場が約10キロ北にある。

 

暗くなる前にここへ行こうと決めた。

 

幸い367号は車は多いが起伏が少なく、スピードもよく出た。すれ違うの車がライトをつけ始めている。周囲はだんだん暗くなり始めていた。

 

30分ほどでキャンプ場に到着。

河川敷の広々としたキャンプ場だ。

 

思ったより人はいない。

利用料は一日1000円。宿泊の場合は二日利用になり、2000円。格安だ。

受付のおばちゃんにお金を払い、テントを張る場所を探す。

椅子代わりにするのに良さそうな石をみつけ、この近くにテントを張ることにした。

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いつもならテントを張る前にビールを開けてしまうところだが、今回はテントを張るのを優先させた。

 

一日走って疲れた体でテントを張る。

テントを張りながら「腹減ったな」と呟く。

 

この感覚も久しぶりだ。

悪くない。

 

 

テントを張ると受付のとなりにある食堂に行く。受付のおばちゃんによれば、こちらで薪が売っているらしい。食堂の営業はしていなかったが、薪は売ってくれた。一人なので少ないのはないかと聞いたが無視されてムッとした。しかし、せっかくなので焚き火はしたい。薪一束700円で購入するとテントに戻った。

 

 

周囲はもうほとんど暗い。

早速焚き火をしようと試みたが、焚き付けになるものを持っていないことに気がついた。

手入れが行き届いたキャンプ場であることが災いし、燃えそうな落ち葉もない。

一応トライするがなんともならない。

 

やれやれ。

 

一旦、焚き火は諦め、晩ご飯の支度をする。

晩ご飯はカレー。いなばの缶詰カレーとごはん代わりのクスクスである。

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クスクスはお湯とオリーブオイルと塩をかけてしばらく置いておけば出来るので、米を炊くより簡単だと数年前に気がつき、ときどき使っている。

 

晩ご飯を食べていたら、日記用のノートを持っていることを思い出した。

 

ノートを数ページ破り、私にしては珍しく焚き火台の上に丁寧に組んだ薪の間に入れて火をつけ、しばらく燃やしていると無事に薪に火がついた。

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ようやくビールを開ける。


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小浜から先、ルート上でビールを買える場所がないと踏み、わざわざ2本買って小入峠を登って来た甲斐があったというものだ。


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ビールと共に小浜のスーパーで買ったハタハタの醤油漬けを焚き火で焼く。太平洋側ではあまり見かけない立派なサイズで4匹は多いかと思ったが、ペロッと食べてしまった。


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よほどエネルギーを使っていたらしく、ビールの二本目を開けながら、こちらも小浜で買ったパックのおでんを食べた。

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ビールが空いてしまうと、ウィスキーを飲み始める。

 

ウィスキーを飲みながらぼんやり考えた。

 

正真正銘ひとりで旅をしているからこそ見える景色があり、感動がある。今回もわずか数分話しただけなのに刺激をもらった人もいる。


旅の感動と言うものは様々ある。今までの経験からそれがどういうものかわかったつもりでいた。

しかし、再び経験してみて、実際それがどういうものだったのか、頭で理解していることと実際に感じた様々な感動に大きな乖離がある、というのがよく分かった。

 

いざ、こうして実際に来るにはいつくか面倒なこともある。しかし、それをなんとか越えて、実際にやらないと「分かった気になったオッサン」に成り下がってしまうな、と思った。

 

 


その後、薪が尽きるまでしばらくウィスキーを飲むと早々にテントに入り眠りに落ちた。

 

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朝、テントに当たる雨の音で目を覚ます。

外はまだ暗い。

私はとりあえずコーヒーを淹れはじめた。

キャンプツーリングの朝はいつもコーヒーから始めている。

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スマホの電波が入るので、雨雲レーダーを見ると、八時過ぎまでしばらく降ったあとはあまり降らないようだ。テクノロジーの進歩で私のようなアナログな旅も楽になってきている。

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小雨のうちに朝食を食べ、テントの中を片付ける。長く旅をしていると、どこに何をどの順番でいれるか自ずと決まってくるが、単発の旅ではその辺が曖昧でパニアバッグの左右で重さのバランスを取りつつ、同じくらいの量を積めるのに少し時間がかかった。

 

雨が止んだところで、バイクに荷物を取り付けていく。

すると数10メートル離れたところに設営されていたテントから女性がビールとアルミホイルを持ってこちらにやってきた。

「すごいですね、自転車で来たんですか?」

私より少し若いぐらいの方だろうか、やや興奮気味な様子で聞いてきた。

私は今朝までの話を簡単に説明した。

「よかったら、ピザ食べません?焼き立てですよ。」とアルミホイルに乗ったピザを差し出してくれる。

 

「いいんですか?頂きます!」

朝食は朝食で食べたのだが、焼き立てのピザはとても美味しく、ペロッと食べてしまった。

 

少し立ち話をしたが、まさか20年前の学生時代ならいざ知らず、40歳を過ぎても、こんな風に話しかけられるなんて思いもしなかった。

 

旅にはいつも新しい発見があるな、と改めて思った。

 

話しかけてくれた女性のおかげで、なんだか新鮮な気持ちになってキャンプ場を後にした。

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ペダルを踏みながら、私は次の旅を考え始めていた。これが私のスタイルなら、これを続けていくしかないのかもしれない。

鯖街道針畑越え - 小入峠をめざして -

昼ご飯でやや食べ過ぎた感は否めないが、いざ目的地の小入峠を目指す。

※小入峠は「おにゅう峠」と平仮名表記が一般的のようだが、文章にすると読みにくいので漢字表記で記載する。

 

JR東小浜駅の前の道を南に真っ直ぐ進む。約19キロで峠のようだ。時間は午後一時。下ってからキャンプ場まで行く時間を考えると2時間で何とか登り切りたい。

 

アプローチの平坦区間をやや重たいギアで踏んでいく。

 

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少しずつ傾斜が出てくるが、ペースよく踏める。荷物の重さもそこまで気にならない。さすがリッチー。よく走るバイクだ。

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平坦区間が終わり、あからさまに斜度が急になる。ここから本格的な峠道のようだ。

フロントのチェーンリングを46Tから33Tに落とす。リアのギヤはまだゆとりがある。

出来るだけ淡々と踏む。斜度が上がるたび、リアのギアを軽くしていくが、一番軽い42Tは使わないようにした。最後の切り札、というところだ。

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時折、バイクと車が後ろから追い抜いていく。向かうからやって来たバイクのライダーが手を上げて挨拶をしてくれる。私も軽く手を上げて挨拶を返す。こんな些細なことだが、普段ではなかなかないことだ。自転車の荷物を見て、ツーリストと思ってくれたのだろう。何だかとても嬉しかった。

 

ひとりのロード乗りが向こうから降りてくる。あの人は峠を越えてきたのだろう。あとどのくらいあるのか。まだ私は上り始めたばかりだ。

 

数キロごとに出てくる大小様々な看板に「鯖街道」と書いてあり、手前は小浜、向こうは京都となっている。この小入峠越えのルートは針畑越えと呼ばれるもので、大きく分けて4ルートある鯖街道のうちの一本であるらしい。

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それにしてもかなりキツい斜度だ。

上根来の集落に地図があったので止まる。

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まだまだ先は長い。

 

道はほぼ一車線になり、急カーブと急斜面の道を向こうからバイクや車が降りてくるのはなかなかヒヤヒヤした。ただ、ほとんどの対向車は私に気がつくと通り過ぎるまで止まって待ってくれた。

ありがたい。

 

かなり進んだと思うが、まだまだ山の稜線は視界の上だ。気がつけばギアはもうない。

ときおりダンシングをしながらキツいところをやり過ごす。

短いヘアピンのコーナーが続き、短い距離で高度が更に上がる。向こうから自転車の集団がおりてきた。最初のライダーが「あの人、すごい荷物つけてるよ!」と私に聞こえるぐらいの声で後続に話しかけていた。私は何だか光栄な気分になった。

そしてそのあと見た最後尾の数名はEバイクだった。

「あれが正解だな。」思わず本音が漏れる。

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道の周りの紅葉はもうピークを過ぎているようだ。今回の旅の目的は素晴らしい紅葉の小入峠の風景だったはずだが、それがこの峠道を上っているうちに気持ちが変わってきた。

 

この先にある峠の景色が何であれ、この峠を自分の力で上りきりたい。そして、その景色を自分で手に入れたい。

 

そう思った。

これまでの旅でも、ずっとそうだった。

 

そしてそうやって手に入れて、自分のものにした景色は何ものにも変えがたいものだった。

 

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私は自分を奮い立たせ、ペダルを踏む足に力を込めた。

 

道の先にバイクが数台停まっているのが見える。

 

小入峠だ。

 

ついに来た。なんとキツい峠であったことか。

峠の反対側を見ると直ぐに滋賀県側の山々が見える。これほどはっきりと県境にあり、両側の山々が眼下に広がる峠はなかなかない。

これだけでも来た甲斐があった。

 

峠には何台の車とバイクがいた。道も狭いことであるし、きっと車やバイクでも大変だろう。

 

後で走行ログを見たら、上りの始まる区間の15.7キロからの平均勾配が5.1%で、そのうち最後の6.3キロの平均勾配が8.1%、さらに一番最後の2.4キロに至っては平坦勾配9.9%となっていた。

そりゃキツいわけだ。

 

私は自転車を立てかけると昼にスーパーで買った大福を食べる。柔らかい餅と甘い餡子が嬉しい。

 

若いバイクの兄ちゃん3人組が近くにいたので、声をかけて写真を撮ってもらう。ちょっとやんちゃ風だったがいい兄ちゃんたちだった。

 

「これでいいですかね。頑張ってください。」

 

自分より遥かに若い(もしかしたら10代だったかもしれない)人に励まされるなんて、なかなか出来る体験じゃないな、と思った。この一事だけでも旅に出てよかったと思った。

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峠道を滋賀県側に慎重に降りていく。

こちらも道は狭く、タイトコーナーが続き、スピードはあまり出せない。

私のブレーキはグロータックのワイヤー引きディスクだが、荷物を積んだバイクでも制動力に不安はなかった。

 

「ドスン」と何かが落ちた音がした。

 

私はすぐに止まり、バイクを置いた。

落ちたのはテントだった。

ガードレールのないところで、そのまま谷底まで落ちていたらと思うと冷や汗が出た。

 

道はやがて降り基調の平坦ルートになる。

 

予定のキャンプ場に暗くなる前に辿り着きたい。そう考えると、少しペースを上げる必要があったが、何もしなくてもかなりいいペースで走ることができた。

滋賀県側のほうが集落が多い。

 

途中でカフェののぼりを見つけて、道を少し逸れた。降りで身体が冷えてしまったので、何か温かいものが欲しかった。

 

山帰来」という山間地のコミュニティスペースといった感じのところで、移住者だろうか、若い女性が応対してくれた。

私はカフェオレを頼み、窓際の席に着いた。

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飾りっ気のないカフェオレは好感が持てた。

 

「ご馳走様でした。」

 

心も身体も温かくなり、私は外へ出た。

 

あとはキャンプ場まで走ればいい。

そう思っていたが、そうはいかなかったのである。

 

…続く

 

キャンプツーリングへ - 若狭湾-

数年前から行きたいと思っていた峠がある。

福井県滋賀県にまたがる小入(おにゅう)峠だ。

ある日、いつもお世話になっているGlocalbikeにあった日本の絶景の類の写真集をパラパラと見ていた時に、その紅葉の美しさに目を奪われた。

 

小入峠がどこにあるかから調べ始めて、滋賀のあたりらしい、そこまで遠いところではなないな、ということころまで調べると、しばらくそのままにしていた。

 

今回、たまたま日曜の仕事がキャンセルになったりして、週末が思いの外、動けそうだということに気がついたのが1週間ほど前。そして紅葉の季節に行きたかった小入峠ことを思い出した。

 

私は小入峠行きを決めると、その手段として一番好きなキャンプツーリングを選んだ。

数年ぶりにオルトリーブのパニアバッグにキャンプ用品を詰め始めた。寝袋、コッヘル、エアマットなどを詰めたあたりで手を止めた。

 

何を持って行き、何を置いて行くのか。

 

ここが一番難しい。登山の人も同様だろうが、「必要かもしれない」物まで持って行けば、心のゆとりができるが、その分荷物は重たくなる。今回、私は輪行で現地まで移動するが、バイク以外にパニアバッグやハンドルバッグを持って乗り換えをするのはかなり大変だ。そのため、荷物はコンパクトかつ軽いのが望ましい。自転車のツーリング、特に日本のツーリングでは、一日走ればどこかで必ず補給ができるので、食糧はあまり難しく考えなくていい。今回は防寒を中心に装備を厚くした。

 

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今回は春に新たに組んだグラベルバイク「Ritchey Outback V2」を使用する。リアセンターが長く、キャリアを付けるダボ穴もたくさんあり、ゆっくり長く乗るキャンプツーリングにはうってつけのバイクだ。

グラベルバイクを組んだのは、グラベルで遊ぶよりも、キャンプツーリングで使いたいという思いが強かった。ここに来てようやくそのチャンスが来た。

 

輪行袋に自転車と荷物を詰め込むと、豊橋駅から快速電車に乗り、旅のスタートに決めた敦賀に電車で移動する。

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豊橋から大垣まで快速電車で大垣から米原まで普通に乗り換え。この路線は若い頃はよく青春18切符を握りしめて輪行したものだ。米原から西へ行く快速に乗り、中国四国地方を何度も目指した。

米原で姫路行きの電車を見て懐かしくなると同時に、あの電車に乗ってしまいたい、という衝動に駆られた。

 

米原まで来れば目的地の敦賀までは快速で一本。

敦賀駅で降りたホームから改札までが遠くて参った。自転車とキャンプ装備を持って移動はかなり辛い。

 

敦賀で安いビジネスホテルにチェックインすると、街に出てしばらくぶらぶらしたが、いきなり土産を買っても荷物が増えるだけなので、夕食に海鮮丼の店に入り、ビールを飲んだ。

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ホテルに戻ると久しぶりの旅の興奮はあったが、日々の疲れもあって早々に眠りに落ちた。

 

翌朝目覚めると、コンビニメシで朝食を済ませるとパッキングをし、バイクに荷物を取り付けていく。

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本当はフロントフォークに荷物を付けたほうが楽なのだが、持っているアイテムの都合上、仕方がない。

 

朝の敦賀の街を西に向かってペダルを漕ぎ出した。

 

荷物でバイクが重い感覚が久しぶりで何だか嬉しい。街が動き出す景色を見ていたら、なぜかニュージーランドのウエストポートを思い出した。こうした普段なら思い出せないことを思い出すのも旅だなと思った。

 

旅の感覚は懐かしくもあり、新鮮でもあった。敦賀から西へ行くルートは20年ぐらい前に走ったはずかだが、若狭湾に抜ける関峠が大したことない、ということ以外、ほとんど記憶になかった。

目に映る景色全てが新しいものに見えた。

 

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関峠を降りると若狭湾が見える。

頭の中は小入峠でいっぱいだったこともあり、若狭湾のことは意識の外にあり、視界の先に広がった若狭湾を見てその美しさに殊更感動してしまった。

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日常から少し努力すれば、ここまで来られたのに、どうしてここまで来なかったのだろう。

怠惰に生きてきた自分が恥ずかしく思えた。

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小入峠には昼からアプローチすれば、充分間に合う。まだ時間は早い。予定にはなかったが、三方五湖に寄ることにした。

 

三方五湖の一つ、久々子湖

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地元の高校生だろうか。ボートの練習をしていた。

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スマホを置くのに丁度良いところがあったので記念撮影。


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久々子湖から浦見川の横を抜け水月湖菅湖三方湖の湖岸をゆく。

自転車でゆっくり走ることが、ただただ単純に楽しい。こういう感覚は忘れていた。

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道の駅三方五湖に寄る。

お弁当コーナーにちょうど寿司を搬入している業者さんがいたので中をのぞいてみると、焼き鯖とへしこのお寿司があった。へしこは鯖などの魚を塩と米糠で漬けた伝統食だが、売られているのは鯖一尾というものが多く、苦手だったらどうしようと買うのに躊躇していたので、この量ならといい機会なので購入した。

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駐車場にいたキッチンカーでカフェオレを買い、三方湖を見ながら休憩。地図を眺めてルートを考える。

私の旅のスタイルは僅かな目的地と宿泊予定地以外は現地に行ってから決めることが多い。

三方五湖から南に進み、小入峠のアプローチとなる東小浜に向かうことにした。

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南に向って伸びる広域農道が潔い直線で、スピードがぐんぐん伸びて行く。ペダルを踏むのが心地よい。これまでキャンプツーリングにはマウンテンバイクにスリックタイヤを履かせて乗っていたが、700cの太めのタイヤで走るグラベルバイクはスピードも良く出るし、安定感もある。

このスタイルは非常にいい。
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広域農道を進むと蛍光ベストを着けたサイクリストとすれ違う。近畿あたりでブルベをやっているようだ。私はすれ違う選手に手を振った。

 

東小浜の駅の辺りまで来て、スーパーに入った。

この先、宿泊を予定しているキャンプ場まで買い物が出来る場所が無さそうだったこと、それからローカルスーパーで売られているものが見て見たかったからだ。

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ママーストアー東小浜店に入る。

 

念のため夜のビールを2本、それから惣菜コーナーと魚売り場を見る。惣菜コーナーには地物のアジの唐揚げや小鯛の押し寿司が安い値段で並ぶ。

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また魚売り場には立派なハタハタの醤油漬けが。
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お菓子コーナーにあった餡子餅を補給食で購入。
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ローカルスーパーでの買い物を堪能し、近くの公園で昼食にした。

道の駅とスーパーで買ったお寿司を食べる。へしこの寿司は塩味が強いがなかなかいける。これは日本酒だな。ただ沢山は食べられないので、少量売っていたから土産に買おうと決めた。

 

満足な昼食を終えると、いよいよメインの小入峠に向かうことにする。

 

果たしてどんな風景と道だろうか。

 

…続く

 

 

 

 

ジャパンエコトラック東三河デジタルスタンプラリー - ライド奥三河 -

 

金曜に友人のタツマくんから土曜にライドに行かないかとお誘いの連絡が来た。

9月16日から開催されているジャパンエコトラックのデジタルスタンプラリーのルートをダモンデのいつものメンバーで走るという。

急な誘いではあったが、幸い都合がつきそうだ。私は「行きます」と返事した。

 

そもそも「ジャパンエコトラック」とは何か、であるが、ざっくり言うとアウトドアアクティビティを手段とした旅のスタイルでのことで、認定エリアはそれをサポートし、楽しめる地域ということである。東三河は昨年3月から公式エリアになっている。

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その公式エリアである我らが東三河地域で12月中旬までデジタルスタンプラリーが開催されているのだ。

 

デジタルスタンプラリーの対象となるところはサイクリングの6ルート、ハイキングの4ルート、そしてパドルスポーツの1フィールドである。

 

今回のライドは「豊川上流・つくでサイクリングルート」を行くそうだ。

 

朝、新城市桜淵公園に集合。私は家を出るのが遅れ、みんなを待たせてしまった。

今回のライドのメンバーはタツマくん、上野さん、エーシ、マサカズさん、私の5名。

 

ちょうどこの日は地元のイベントである「とよはしサイクルマラソン」の開催日で、桜淵公園はエイドステーションとなっていたため、多くのサイクリストで賑わっていた。

 

我々はまず、ジャパンエコトラックのアプリが入っているかを確認。アプリを起動してライドをし、指定のポイントに着くと、GPS情報からデジタルスタンプが付与されるようになっている。そして各ルートのスタンプを全て集めると賞品の抽選に応募できるようになっている。

この賞品がなかなか豪華で、ヘリノックスのチェアやジェットボイル、それから地元の本宮の湯の入浴券などなど。

 

私は既に豊川のサイクリングルートと豊橋のハイキングルートを回っており、勝手が分かっていたので、アプリのことなどみんなに説明した。

 

サイクルマラソンの参加者がいなくなった頃、我々はスタートした。

まず目指すのは鳳来にある旧黄柳橋

私が先頭を引くが、タツマくんとマサカズさんがグラベル系バイクで来ており、他のメンバーが乗るロードバイクのペースがきつかったようで、少しペースを落とす。

 

ほどなく黄柳橋に到着。

スマホを確認すると、スタンプを獲得したとの通知が。アプリはキチンと機能しているようだ。

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タツマくんが新しいバイクで来ていたので、みんなでいろいろ質問をする。

そして撮影会。

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なぜかマサカズさんが持つとそれらしく見えるので羨ましい。

 

我々は次のチェックポイントである鳳来寺山表参道に向かった。

 

表参道まではちょっとした峠を上る。

仲間から「えー、こっち行くの?」と不満が漏れるがまあいつものことである。行けば問題なく走れるメンバーだ。

 

表参道に着くとタツマくんが補給したいと言うので、しばし休憩。私はソフトクリームを食べた。

 

鳳来寺山の表参道からは、国道257号に入り、鳴沢の滝を目指す。

 

エコトラックで示されたルートは玖老勢から長楽の交差点に戻る道だったが、我々はそれより手前で257号に戻るルートを選択した。

 

このデジタルスタンプラリーは指定のポイントさえ回れば、厳密にモデルコースを走る必要はない。

地元ライダーである我々は、自分たちの好きな抜け道を行き、コースに合流することにした。

 

この日は青空の眩しい秋晴れで、走るには最高の陽気だった。

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257号沿のルートはほとんど川沿いの道で、奥三河の清流を眺めながら走るのは本当に気持ちがよかった。

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私は何度も「いいねぇ」と声に出していた。

 

次のチェックポイントである鳴沢の滝の手前でマサカズさんが次の予定のため離脱。

 

マサカズさんがみんなの写真を撮ってくれた。

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マサカズさんと別れ、鳴沢の滝へ向かって上っていく。この道は昔、ランドヌールクラブ名古屋の300キロで走ったところだ。ただ、そのときは夜中だったので記憶にあるのと大分様子が違う。あの頃のことはもう遠い過去のことのようだ。

 

鳴沢の滝に到着。

 

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かなりの迫力。

そしてなんだか水量が多い。

この1週間はあまり雨が降っていないはずだが、先週の台風やそれまでの雨で相当山に水が溜まっていたのだろう。途中の道もいつもより多く水が出ていたように思われる。

鳴沢の滝からのルートは土砂崩れの影響で現在は使用できない。行き違った他のライダーが自転車なら抜けられるのでは、とトライしたようだが、行けなかったらしい。

 

我々は迂回路を進んだ。

 

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鳴沢の滝から次は作手に入る。

時間はちょうどお昼。

 

今回のライドの目的はスタンプラリーもあったが、もう一つ、作手にあるカフェ「恋して!宇宙少年Cafe」でランチをすることであった。

 

いいタイミングでお店に到着。

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三河にしてはインパクト強めの外観だが、サイクリストにフレンドリーで、しかも食事が大変美味しい。

私は2度目の来訪だ。

 

ご主人は奥様とともにサーリーに乗る自転車乗りで、サイクリストの気持ちをよく理解されている。

私が最初訪れた際には私のバイクを見て、「カッコいいクロモリバイクですね!どこのバイクなんですか?」と聞いてくれた。最近尋ねられることも殆どないが、聞かれて一番嬉しい質問である。つまりいい印象しかないのだ。

そのときいただいたキーマカレーとプリンも私好みでまた来ようと思っていたのだ。

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そして今回、再訪が叶ったのである。

今回は前に気になっていた、きつねうどんとチーズケーキを注文した。

 

いい陽気なので、我々は屋外の席に座った。

なんて気持ちのいい日だろう。時折吹き抜ける風の心地よさよ。海外を旅したときはよく外の席で食事をしたな、とふと思い出した。

もっとも、不幸にも日向の席になってしまったエーシはやや暑そうだったが。

 

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しばらくしてうどんが運ばれてきた。

でっかいお揚げは地元、作手の豆腐屋さんのものらしい。ガッと大きめに齧ると甘い汁が口いっぱいに広がる。

 

美味い。

 

ライド中に汗で失った塩分を取り戻すようにうどんの汁を飲み干した。

いやはや、素晴らしい。

 

デザートのチーズケーキはしっかりした味わいだが、くどくなくこちらも美味しかった。

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こんなお店が奥三河に出来て本当に嬉しい限りである。作手まで行くのは、かなり上らないといけないのでハードルが高いが、「恋して!宇宙少年Cafe」に行く、という理由なら今までよりも作手に行ける気がする。

 

満足度の高かったランチを後にし、最後のチェックポイントである道の駅つくで手作り村へ。

 

ここでデジタルスタンプラリーのチェックポイントはコンプリート。

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ただスタンプが押されただけのだが、全て埋まると単純に嬉しい。

 

エコトラックのルートはまだあるが、チェックポイントを集め終われば、抽選に応募できるので、ひとまずここでデジタルスタンプラリーは終了。

 

道の駅からは本宮山スカイラインの入り口までアップダウン。みんないつも踏みすぎる、という話になったが、上り返しで、先行する仲間を追ったりしているうちに、結局いつものようにかけ合いになってしまった。

 

新城の市街に戻ってくると我らがホームである「ヤングキャッスル」へ。

ダモンデ代表の山田さんに今回のライドのことを話ながら、10月22日、23日の「ダモンデトレイル」のことを相談し、桜淵公園へと戻った。

 

仲間と走るライドと奥三河のよさを再認識した一日であった。

 

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表浜グラベル 

週末の朝ライドを主催しているクボゾーくんからいつものようにグループにライドのお誘いが入った。

 

マウンテンバイクが基本なのだが、最近はグラベルバイクでのライドもいろいろやっている。

 

一度グラベルライドに行きたいなと前から思っていたのだが、なかなかタイミングが合わず。ずっと行けないでいた。

今回ようやく都合がついて参加できることになった。

 

今回のメンバーはクボゾーくんと大西さん、若旦那さんの四人。

 

4月にはグラベルバイクを組んでからグラベルらしいグラベルを走りに行くのは始めてである。

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豊橋市の北東部、石巻山の麓から南下し、太平洋岸の表浜を目指す。

仕事に行く前にグラベルバイクで市内を流しているクボゾーくんはうまく市街地をパスするルートを走っていく。

途中、二川宿の路地を抜けていく。こういうところを知っているのは流石だ。

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そのあとは川沿いの道をいく。道はダブルトラックのグラベルになる。クボゾーくんが「川沿いや海沿いはグラベル多いからね。」と言うのを聞いて納得した。

 

川沿いの道を離れるとあまり馴染みのない道を行く。主だったコース以外はガーミンコネクトで引いたらしい。私も以前、wahooでルートを引いたことがあるが、ロードではスピードに乗れないような脇道を案内されて、使い勝手が微妙と思っていた。しかし、グラベルの速度なら、仲間とサドルトークをしながら走るのにちょうどいいなと感じた。

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ロードバイクでスピードを出すのも楽しいが、緩い速度で楽しむグラベルもいいな。

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やがて海が見えてくる。

海に向かって坂を降りていく。

 

自然と笑みがこぼれる。

海が見えるとどうしてこんなにワクワクするのだろう。

 

道から見える海はとても荒れていた。多くのサーファーが海に入っている。ここはサーフィンのメッカだ。

 

「ここからがメインだよ」とクボゾーくん。

 

海岸沿いのグラベルだ。

 

我々は西に向かった。

 

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最初はクボゾーくんの想定より道は荒れていないようだったが、途中からなかなかの道になった。

水たまりをよけるように走っていくが、足はすぐに泥だらけだ。

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道一杯に広がったある水たまりを走り抜けようとして、水たまりのど真ん中で足をついてしまった。

こうなるとどうでもよくなる。

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私は水たまりを積極的にさけるのをやめ、面倒なところはそのまま水たまりに突っ込んでいった。
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泥遊びはいくつになっても楽しい。

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海岸沿いのグラベルは思いの外、走りごたえがあった。

 

海岸沿いを離れ、道の駅とよはしへ。

フルーツサンドとコーヒーを買い、外の席で休憩。

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若い頃、旅をしたニュージーランドタスマニアではメインのハイウェイ以外はグラベル、というのはよくあったので、そういう国ならグラベルバイクもいいだろうが、日本ではどうだろう?と正直思っていた。しかし、今回こうして走ってみて悪くないなと思った。浜松在住の若旦那さんによれば浜松の海岸線はここまで走れないそうだ。

そう思うとこの東三河の自転車環境は非常に恵まれている。

 

道の駅を後にし、帰路に着いた。

 

バイクは海水の混じっているであろう泥まみれ。

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暑くて洗車する気力がなくなった私は、全体の泥を軽く水で流すとそのままGlocalbikeに持ち込んで洗車してもらった。

3000円程度で洗車と注油をしてくれ、不具合があれば教えてくれるので、非常にオススメである。

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ピカピカになったバイクを見て次のグラベルライドはどこがいいかな、と考え始めた。

 

BRM611 Nagoya300km 100周年記念ブルベ - 奥三河の最深部へ -

2022年6月11日はフランスで最初に300kmBRMが開催された日(1922年6月11日)から100周年にあたるという。

ランドヌールクラブ名古屋の金井代表からお誘いがあり、RC名古屋主催の100周年記念の300キロに参加した。

申し込みに際して、金井代表からは「コースはあのとみやま往復だよ。」と告げられたが。

とみやま300。毎年ブルベをやっていた頃に走ったが、キツかったことしか覚えていない。

 

冬が終わる頃、ロングライドのイベントに参加した際、右ひざを痛めてしまった。

それからしばらくは強度を上げて自転車に乗る事はなく、長くても100キロ程度しか自転車に乗らない日々が続いた。

本番が近づくにつれ、不安が募ってくる。本当に300キロ走るのだろうか。

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不安を減らすべく、数日前からバイクの準備をする。ロードバイクにハンドルバッグをつけ、サドルには大きいサドルバッグをつける。

普段ロードバイクに付けているカーボンレールのサドルでは、大きなサドルバッグのアタッチメントを取り付けることができないそのため、グラベルバイクについているシートポストとサドルをそのままロードバイクの間を差し替えた。

サドルは奇しくもロングライドの巨匠石原さんの遺していったアボセットO2。私も若い頃には、長旅に使っていたことがあり、重量はあるもののサドルとしては間違いない。

 

ブルベ当日の朝。スタート地点の豊田市の柳川瀬公園に到着する。天気は曇り。

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Glocalbikeのチームメイトである大西さんがわざわざ見送りに行ってくれた。それだけで頑張れる気がした。

他に何か知った顔がいないか探すと、カントリーモーニングのライダーであるケンシくんとKくんがいた。

ケンシくんはパリ・ブレスト・パリ1200キロを日本人最年少で完走した男である。そしてKくんもゴールデンウィークに四国の1200キロを完走したところであり、さらに2人は先週先々週と400キロ、600キロのブルベを完走している。

 

そんな20代の若者2人に、私はとても追いていけないので、スタートで彼らと別れ、ゆっくり走ろうと思っていた。
しかし2人は、私と一緒に行くと言う。

おいおい。


「まあまあ、一緒に行きましょう。大丈夫ですよ。」
私は膝のこともあり、正直心配でしかなかったが、ダメならダメなりにやめればいいだけで、それまでは一緒に走ろうと思った。

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若者2人はスタートからなかなかいいペースで踏んでいく。私の想定よりも平均速度で5キロ程度速い。とはいえ踏めないペースではないので、彼らのペースに任せてついていくことにする。

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ケンシくんは石原さんが最後に乗っていたロードバイクを受け継いでブルベに出ている。まさか再びこのバイクの後ろを追ってブルベを走ることになるとは。

 

私は不思議な感覚に襲われた。

 

20代の彼らと40代の私の年齢差を考えると、昔、石原さんと私が走っていたのと同じような状況なのに気がついた。

「石原さん、行きますよ!」

勢いよくそう声をかけると石原さんはちょっとドギマギしたような様子を見せていたが、今はその気持ちがよく分かった。

私もそれだけ歳を取り、かつての石原さんに年齢だけは近づいたのだ。

 

スタートから40キロ先の最初のチェックポイントであるコンビニに2時間弱で到着した。全く出来過ぎである。時間にゆとりができた。

 

若者たちとはと言うと、ケンシくんはまだ午前8時前だと言うのに、チャーハンを食べていた。その若さが羨ましい。

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ケンシくんはペロッとチャーハンを平らげるとさして休むことなく、出発の準備を始める。

「あれ、もう行くの?」

Kくんももういつでも出られます、という感じだ。もっと休みたいんだけど…という言葉を飲み込み、「行こう」と私は言った。

 

蒲郡のチェックポイントから、豊川市内を抜け、豊橋の北部に抜ける。ここからは普段の練習ルートだ。

先は長いというのに、いつもと変わらないペースで踏んでいく。

 

豊橋を抜け、新城市に入る頃、向こうから見慣れたバイクの集団が走ってくる。Glocalbikeの土曜壮行会の面々である。すれ違いざまに、店主のバスマンさんが大きく手を振ってくれた。

 

次のチェックポイントの新城市名号のファミリーマートまではまだしばらく距離がある。私は桜淵公園に寄るよう願いし、トイレ休憩をとり、ドリンクを補給した。

 

比較的平坦な区間はいいペースのまま進んでいく。

 

途中、飯田線三河槙原駅のホームに動けなくなった車両が放置されているのが見えた。線路脇の崖崩れにより、しばらく代行バスの運転が続いている。

その代行バスと数回すれ違った。帰りはあれに乗るんだろうか。

そんなことを口にすると「何言ってるんですか!帰りはほとんど下りですって!大丈夫。」とケンシくん。

いやいや、わざわざ輪行バッグまで持ってるんだが。

その後も私が弱音を吐くと彼らはその度に冗談と笑い飛ばし、私を先に連れて行ってくれた。

 

次のチェックポイントに到着。

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ここでも補給は軽め。今回コースがホームグラウンドなので、自販機の場所もよく分かっており、過剰な補給を避けることができた。

 

その先の往路最後のコンビニ、東栄町中設楽のファミリーマートに、RC名古屋のいずみさんがいた。

特にチェックポイントではないが、少し立ち寄る。いずみさんは若者たちに私のアシストをするようお願いしてくれていた。心配かけて申し訳ないが、ありがたい限りである。

 

そこから道はほぼ上りしかない。

豊根村との境にある太和金トンネル、そして豊根村役場を経由してみどり湖から旧富山村との境の霧石峠まで、途中若干の下り返しを挟みながらガンガン標高を上げていくのだ。

ペースは上がらないが、まずは太和金トンネルを超え、豊根村に入る。役場前を過ぎ、みどり湖へ。


豊根村役場までは昨年何度か来たが、みどり湖まで来るのは何年振りだろう。
水量はやや少ない。
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この辺りからさっぱりペダルが踏めなくなる。

元気のいいKくんは、こちらを気にしながらも速いペースで踏んでいく。ケンシくんは私を気遣いながら、見えるところを走ってくれた。

本当に申し訳ない。

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進むにつれ、道に野生動物の糞が目立つようになり、獣の気配が濃くなっていく。アスファルトの山道と朽ちた民家の跡が自然に飲み込まれそうだ。

 

霧石峠への分岐はまだか。

 

何度そう思ったが分からないが、先に富山への分岐の看板が見えた。

あれさえ上れば。

すでに軽いギアは使い切っていて、これ以上機材的にはどうしようもない。諦めて峠に取り付く。

 

いくつかコーナーを回ったところで、Kくんが「これ美味しいやつですよ!」と声をあげた。

道端にはオレンジ色の野いちご。

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私は一つ取り、口にいれた。

爽やかな優しい甘みが口に広がる。

「昔、アラスカでこうやって道端のベリーを取って食べていたよ。」そんなことを言いながら、しばらく周囲の野いちごを食べた。

 

野いちごのお陰で少し元気を取り戻し、だましだまし霧石峠を上がっていく。

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トンネルだ!

 

3人で歓喜の声を上げていると、トップの選手が折り返してきた。なんというスピードか。

知ってはいたが、一応聞いてみると、折り返しからの上りは酷いものということだ。

 

まあ、今は取り敢えず折り返しのとみやま来富館まで下ろう。

 

何年振りだろう、豊根村富山地区。

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何とかここまで来られた。

待っていたRC名古屋の金井代表にチェックを受ける。

建物の中に入り、休憩。

来富館さんがブルベのために用意してくれた特製おにぎりをいただく。梅干しとしぐれ煮のおにぎりが一個ずつ。疲れた体に嬉しい味だ。

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さて、復路である。まずは7キロ700mのアップの平均勾配10%の霧石峠を登り返す。

 

私はフロント34T、リア30Tが一番軽いギアであったが、全く足りない。若者たちはというと、ケンシくんはスギノのクランクでフロント30T、Kくんはディズナのクランクで31Tだという。なるほどブルベに特化した仕様だ。

そんなところに感心しつつ、3人で「キツいキツい」と文句を言いながら走っていると予想したより早くトンネルまで辿りついた。

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いざトンネルを越えてしまえば、あとは早い。

下りの途中で再び野いちごを補給して止まったが、そのあとは爽快に走っていく。みどり湖までの道もこんなに上っていたのか、と思えるほどスピードが出る。

 

途中の上り返しを淡々とこなし、名号のファミリーマートまで戻ってくる。

雨がやや強くなってきて、ケンシくんと私はレインジャケットを着る。ここまで来ればゴール出来る気がしてきた。

 

復路の平坦路も先頭を行くKくんのスピードは落ちない。豊橋の郊外も普段の私の練習ペースと遜色ない。ケンシくんに「けっこうキツいんだけど」と漏らすと「僕もです。」と返ってきて少し安心する。

 

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豊川市に入りだんだんと暗くなってくる。

市街地エリアに入り、信号待ちが増え、少し休めるようになった。

若者たちは、飲食店の前を通るたびに、ゴールしたらあれが食べたい、これが食べたいと言う。その気持ちはよくわかる。私もそうだったし、今もそうだ。

 

蒲郡のチェックポイントまで戻ってきた。

ここのクローズタイムまで4時間以上ある。あと残り40キロ。

 

暗くなった道を弱い雨に降られながら進んでいく。

 

ゴールまであと20キロと言うあたりで、ケンシ君が言った。

「シマダさん正直もっと遅いかと思ってました。このあたりに来る頃には、日付変わりそうな時間で、『シマダさん!まだ頑張れますよ。さあ、一緒に行きましょう』とか励ましながら走るのかなと思ってましたけど、全然普通に走れるじゃないですか。」

 

そう言われて、自分でも全くその通りの展開を予想したんだけどな、と思っていたが、そんなことより、ケンシくんが、始めから私と一緒に走ってサポートしてくれるつもりだったことが嬉しかった。

彼らには特に何もしてあけだことはないのだが。

 

岡崎の市街地を抜け、矢作川の堤防道路に出る。もうゴールはすぐそこだ。

 

ゴールの柳川瀬公園に到着。

 

タイムは15時間32分。我々は7番目のゴールだそうだ。タイムだけで見ても毎年ブルベをやっていた頃と遜色ない。

疲れる訳だ。

ブルベカードを記入し、金井代表から記念メダルを受け取った。

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文字通りここまで私を引っ張ってきてくれたケンシくんとKくんにお礼を言う。

 

これでしばらくブルベは出なくていいな、

 

そうつぶやくとケンシくんとKくんが即座に

「いやいや、400キロも600キロも記念ブルべやるんじゃないですか。」

 

勘弁してくれよ。

 

そう言いながら400は眠いから辛いんだよな、と思っている自分がいるのであった。

 

テラスで梅干しジェラートを- ライド奥三河 -

「いいね。」

 

すぐそばの茶畑と隣の山に見える田峯城。そして更に向こうに見える鳳来寺山

 

塩気と爽やかな風味の梅干しジェラートが、汗をかいた体に優しく入ってくる。


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気がつくとカップジェラートは空になっていた。

「ご馳走様でした。」

 

**********

 

朝から使える時間が出来て、日帰りで行けるところへ出かけようと思った。

いくつか候補が上がったが、向かったのはオープンから一年が経過した「道の駅したら」。何度か訪れてはいるが、食事をしたことがないのでランチを食べに行くことにした。うまくすれば、お世話になった人たちに会えるかもしれない。

 

朝ドラを見終わると、そのまま自宅を出た。

 

新城市まではいつものルート。

ルート上にある賀茂の菖蒲園では菖蒲まつりの最中だ。

少しだけ立ち寄る。

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思ったより人はいたが、多い、というほどではない。お年寄りは皆、律儀にマスクをしていたが、この屋外でそこまでいるのか、と思ってしまった。

 

賀茂の菖蒲園からは淡々と踏む。

来週末は久しぶりの300キロブルベに出場予定だ。ただ冬の終わりに膝を壊しており、どこまでやれるか正直怪しい。無理なくペダルを踏んだ。

 

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途中、日陰を求めて脇道に抜ける。

三河の川沿いの道は本当に気持ちがいい。

自宅から一時間あまりで、こんなところに来ることができるなんてなんと恵まれていることか。

いつも走る旧田口線のルートで新城市を抜け、設楽町へ。

 

稲目トンネルを慎重に通り抜け、設楽町に入る。

昼には少し早い。いい機会なので、田峯の集落に上ることにした。

久しぶりに南からアプローチしたが、登りがキツい。すぐにインナーローにギアを入れてしまう。来週のブルベが心配だ。もっと軽いギアを入れていこうと決める。

何とか集落の入り口まで上る。

 

昨日の新聞に閉校の記事が出ていた田峯小を横切る。
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この日は会えなかったが、前に生徒と道ですれ違ったときには「こんにちは!」と大きな声で挨拶してくれた。私にはとてもいい印象の小学校なだけに残念だ。

 

田峰観音のとなりの直売所に着いた。

高さがやや少し低めだが、ナイスなバイクラックが設置されている。
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少し前に出来たというテラス。なかなか立派だ。
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直売所で軽く補給をしようと思い、直売所に向かうと「ジェラート」の文字が。

暑いので迷うことなくこれにしようと決めた。


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ここの直売所にはしばしば訪れるのだが、来るたびに新しいお土産が増えているので感心する。地元の方々が頑張っているのだろう。

レジで予定通りジェラートを注文。

梅干しジェラートがあるというのでそれにする。レジのおばちゃんが「そこに並んでる梅干しを使って…」と説明してくれる。


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「テラスのほうでどうぞ。」

レジのおばちゃんにすすめられるがまま、テラスに出る。

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ここの景色はテラスができる前から変わらない。

三河で好きな景色の一つだ。

平らげたジェラートの器をレジに返す時、「いかがでしたか。」とおばちゃんにきかれたので、「汗をかいた体にちょうどいい塩気と甘さでとても美味しかったです。」と伝えると、とてもおばちゃんは嬉しそうだった。

こちらの直売所は何を食べても美味しいので、是非足を運んでいただきたい。

 

田峯の集落を降りて、となりの清崎地区へ。

道の駅したらである。

 

自転車で来るのは一年振りだろうか。

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2階にある観光協会に行くと昔からお世話になっている職員の方にお会いすることができた。しばらくお話をする。もう一人役場の方にもお会いしたかったのだが、昼過ぎまで出張らしい。

一旦私は、下の食堂てランチをとることにした。


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こちらのランチメニューは地元の特産である「絹姫サーモン」や鹿肉を使ったものなど、なかなか良さそうである。

私は鹿肉を使った「森の恵まぜそば」を注文。
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鹿肉は臭みもなく、しっとりジューシーで美味しい。五香粉の風味だろうか後味も爽快感があり、満足度の高いランチだった。

ランチの後は道の駅にある奥三河郷土館へ。f:id:independent-traveller:20220602202258j:image

こちらは入館料わずか300円だが、地元の昔の暮らしぶりから、地元の自然まで広い分野の展示があり、これを目的にここまで来てもいいぐらいの展示物と内容だった。またゆっくり見に来たいとろである。
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郷土館を出て、再び観光協会に寄り、出張から戻ってきた役場の方とお話しして、道の駅したらを後にした。

初夏の日差しと風を浴びて、豊川沿いを南下していくのはいつも気持ちいい。この感覚がまたここに来ようという気持ちにさせるのかもな、そんなことを考えながら家路に着いた。

 

2022 DA MONDE TRAIL Challenge Spring - スタッフから見た景色 -

「Damonde Trail」が開催された。選手として参加するわけはないが、我が家の年中行事だ。久しぶりの開催でとてもワクワクしていた。

 

毎回、私がスタッフとして参加し、家族はその間、ブースで買い物したり、会場に設置されたハンモックなどで遊んだりして、会場内の雰囲気を楽しんでいる。以前からダモンデのスタッフに興味のあった長女は、今回の大会から正式にスタッフとして参加させていただいた。

 

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大会当時の午前6時、スタッフは愛知県民の森モリトピアに集合する。スタッフは受付をしつつ、毎回、このダモンデの会場でしか会えない人と久しぶりの会話を楽しむところから始まる。私はエースくんやタツマくんといったおなじみの仲間と話しつつ、娘といっしょにボランティアをする鈴木夫妻に娘のことをお願いしておいた。


やがてスタッフミーティングが始まる。Damonde代表の山田さんから、スタッフのみんなに注意事項とメッセージ。

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注意事項はいつものとおり「自分がされたら嫌なことをしない、自身でそうした態度をとらないように心がけること」だ。

 

今回、山田さんが強調したことがある。

 

「困ったときは自分に言ってください。自分が最終責任者として判断・対応し、大会を支えてくれる皆さんへその最終的な責任が及ばないようにします」
山田さんからは、この難しい時代にこうしてここに集まったスタッフのみんなへの感謝と、スタッフとして集まった人々のコミュニティを守ろう、という強い意志が伝わってきた。

元々、地域を盛り上げるべく始まった大会で、運営に関わるスタッフはトレイルランと縁もゆかりもない人がほとんどだった。しかし、そんなスタッフも回数を重ねるにつれ「Damonde Trail」のスタッフのベテランになり、「Damonde Trail」はスタッフにとっても仲間と集まる大事な時間になっていった。
また、多くのスタッフが口にしていたが、スタッフの子供の世代が年数を重ね、成長し、スタッフとして関わるようになってきた。私の長女もその中のひとりだ。「Damonde Trail」はそれに関わる人たちが見守ってきた子供たちの成長を確かめる場にもなってきたのだ。

だからこそ、山田さんはスタッフのみんなを大事にしたい、ということをさかんに口にした。山田さんが守ってくれる、というのはスタッフにとってとても心強いことだろう。

そうしたこともあって、大会スタッフのモチベーションは非常に高く、選手とともに大会を楽しもう、という気持ちが強いのだと思う。
おかげで私が担当するコース誘導のメンバーが非常にしっかりしているので、いつも楽をさせてもらっている。

 

モリトピアでのミーティングが終わり、大会会場へ。

飲食や物販のブースのセッティングが進む。私はお友達のブースに挨拶して回る。

 

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コース誘導のスタッフがある程度集まったところで軽く打ち合わせ。今回、大会の前日まで雨が降り、いつもは涸れ沢を渡る場所が、普通の沢になっており、そこをどのように走ってもらうか、最終的な決定をしなくてはならなった。山田さんからは、沢を渡るのを避け、エスケープルートを取れるように、カラーコーンも配置してあると説明を受けるが、だんだん水位が下がって走れるのではないか、とのこと。

 

他のスタッフと現地に行き、コース誘導のスタッフとどのように走ってもらうか相談する。

 

現場を見ると、なるほど、いつもよりかなり水量がある。ジャンプしたら渡れないことはないが、子供には難しいかもしれない。

ダモンデトレイルは初心者にやさしい大会を掲げており、全体にコースはイージーだ。そんな大会でも、この沢渡りはコース上の重要なアクセントである。

危険があるから、とエスケープルートを使う判断をするのは簡単である。

そんなことを一人で考えていたが、そんな間にコース誘導のスタッフの仲間たちは、あーでもないこーでもないと言いながら、岩を運び、なんとか歩いて渡れる場所をつくっていた。

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ここを担当する中村さんが「必要があれば、沢に入ってサポートもするから大丈夫」と言ってくれたので、全くリスクはないとは言えないが、選手の楽しみの一つにもなるはず、ということで、そのまま行くことにした。みんな選手目線でしっかり考えてくれて本当に有り難い。

 

再び、大会のメイン会場である大芝生広場へ戻る。

山田さんに問題の箇所はそのまま行く旨を伝えた。

コースの状態を心配していたMC早川さんが、「コースどうだった?」と確認してくれる。沢の部分の注意を伝えると、早速アナウンスをしてくれた。

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こうした連携もスムーズなものである。

 

ここでしばらくスタート前まで誘導スタッフは休憩。適宜、朝食を摂ったり、ブースを見て回る。

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そうこうしていると、続々と選手たちがやってくる。

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選手たちはおそろいのウェアを着たり、凝ったコスプレを用意したりと、とにかく大会を楽しもうという意気込みが伝わってくる。そんな選手の様子を見るのはスタッフとしてもうれしいものだ。

 

スタート前に、コース誘導のスタッフを集めて最終確認を行う。

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「Damonde Trail」は救護・看護の体制もしっかりしており、そうした面でもスタッフも安心して関わることができる。


スタート30分前、コース誘導のスタッフはコース内の所定の場所に配置につく。

 

沢のところは山田さんが厚めに人を配置してくれたので、中村さんたちに任せて問題なしと判断し、エースくんがいるコース奥の木の階段が続くエリアに入る。

 

スタート時間の午前10時。スタートを告げる無線が山田さんからコース誘導のスタッフに入る。

 

 

いつもより最初の選手がやってくるのが早い気がしたが、特に大きなトラブルはなく、大会は進んでいく。

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 注意を呼びかけながら、通過する選手を応援していると、常連の選手や友達、前回は一緒にスタッフをした方などが声をかけてくれる。おかげで3時間もわりとあっという間に過ぎていく。

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 終盤で以前から壊れかけていた木の階段の破損があったものの、大きな怪我などで無線が飛ぶこともなく、3時間が経過した。

世代交代したスイーパーが声をかけて通過していく。

 

我々は、コーステープなどを回収しながら、本部へと戻った。


メイン会場の大芝生広場には、3時間を走りきった選手たちの満足そうな笑顔にあふれてた。

 

 

長女はちゃんと働いているかと目をやると、何か片付けを一生懸命やっていた。レース中もあの調子でやっていたのだろう。あとで鈴木夫妻に話しを聞くと「とてもしっかり働いていた」のだそうだ。大人に交じって働くことが刺激になればいいなと思った。

 

いつもコースから戻ると、昼食とお疲れのビール、という流れだが、子供たちに絡まれている間にビールが売れ切れてしまい、買いそびれるという痛恨のミスがあったのは想定外だった。まぁそういうときもある。

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表彰式が始まり、そのまま子供たちお楽しみのじゃんけん大会。

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我が家は次女が大活躍し、かなりいいものをいただいた。

最後に次回のアナウンスがあり、早くも秋が待ち遠しい。

次回のDamonde Trailは10月23日。

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またあの森でみんなに会いに行こう。

名もなき峠と古民家カフェ - 奥三河ライド -

冬のロングライドで膝を壊してしまい、この2か月ほどはあまり自転車に乗っていなかった。

 

膝の調子もぼちぼちかな、と思っていると、頼んであったグラベルバイクのフレームが届いたという。また時を同じくして別で頼んであったホイールも仕上げてくれて、なんとかゴールデンウィーク中に新しいバイクが組み上がった。

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一日自由時間をもらい、さっそく新しいバイクで出かけることにした。

 

最近は奥三河へライドに行くことも随分減ってしまった。久しぶりに会って挨拶したい方もいるし、新しく出来た店もある。私は北に向かった。

 

せっかくのグラベルバイクでのツーリングである。普段は通らない脇道を選んで進んだ。

田んぼの間の畦道が気持ちいい。

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ロードバイクと比べ、アップライトのリラックスしたポジション。のんびり走る感じはなるほどツーリング向きのバイクだ。どうして今までグラベルバイクを組もうとしなかったのだろう。旅のバイクにこんないい乗り物はない。このバイクで長い旅に出たいものだ。

 

久しぶりに桜淵公園に寄る。

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ここは大幅に改修がされ、砂利の駐車場はアスファルトになり、トイレもリニューアルされていた。また「ライド新城」の大きな看板が設置されていた。新城の自転車への力の入れようが垣間見えた。

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桜淵からは道の駅「もっくる新城」へ。

 

観光案内所で奥三河観光協議会の方々にご挨拶をする。最近の奥三河のお話などを教えてもらった。奥三河のことなら、観光はもちろん、それ以外のこともよくご存じの方々である。もっと話していたかったが、お客さんがひっきりなしに訪れていたので、長居せずに次の目的地を目指すことにした。

 

次に向かったのは、県道435号。

新城の広見ヤナの少し先の脇道を行くと峠があると、ある方から教えてもらっていて、一度行ってみたいと前から思っていたのだ。

 

寒狭川沿いに北に向かう。

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目指す県道435号には国道257号からアクセスする。

周囲の田んぼは田植えが始まったばかりだ。この田植えの季節、言い換えればサイクルウェアを半袖にするか長袖にするか悩む季節が、暑過ぎず寒過ぎずサイクリングをするには一番いい季節だ。

 

広見ヤナを過ぎ、しばらく行くと川の対岸に小さな橋が見える。名は島原橋というらしい。

何度も横を通過している橋だが、確かに一度も行ったことはない。

この先は地形的にどう見ても山しかないので、気合を入れる。

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橋を渡るとすぐに立派なお地蔵様がある。頭に毛糸の帽子を被っているところを見ると地域から大切にされているのだろう。田舎では珍しくない風景だ。だがこうした当たり前の田舎がそのままあるところが奥三河の良さだと思う。

道は予定通りなかなかの上り。

思いの外早くに軽いギアを使い切ってしまった。今回、グラベルバイクを組むに当たって、ロードバイクから外したコンポをそのまま載せ替えたが(50-34×11-28)、軽いギアが全く足りなかった。

諦めてダンシングを織り混ぜながら何とか上っていく。

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GPSのマップデータを見ながら走るが、なかなかピークにつかないので、弱音を吐きながらペダルを踏み続ける。

何度も引き返そうかと思ったが、何とか道の分岐まで辿り着く。

右へ行けば、海老集落でおそらく下りの遠回り。正面を行けば上りの近道。

次にいつ来られるか分からない、そう自分に言い聞かせて、正面の道を行く。

分岐を進んですぐ、またなかなかな斜度の上りが現れ、この道を来たことをすぐに後悔する。

少し行くと集落があり驚いた。

まだ奥三河には知らない集落がある。

 

更に北に向かい、いよいよピークが見えて来る。

道の脇に立派な石碑が。

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須山御嶽山という山の登り口らしい。訪れないと分からない場所が多いと今更ながら気付かされる。

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何とか上り切ったようだ。

少し進むと再び集落が。

須山地区というようだ。

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集落の高いところに観音菩薩堂があった。
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最近はこうした古い石仏に興味が出てきた。

いつの時代から地域の人が守ってきたのだろうか。

 

須山からは中々急勾配の下り。

 

稲目トンネルの上を抜け、四谷千枚田方面へ向かう。

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いつもは下からヒーヒー上ってくる四谷千枚田が眼下に見える。そりゃキツい筈だ。参考にコースを載せておく。

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四谷千枚田の入り口の連合地区まで降りてきた。

最近、このあたりにカフェが出来たと聞き、そちらへ向かう。

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古民家カフェたてば、というそうだ。

着いたのは昼頃で、予定よりだいぶ遅い。こちらでは昼前に着いて軽くお茶して次のポイントでしっかりお昼のつもりが、ここまでの道で思わぬ苦戦をして昼になってしまった。

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古民家というにはとても綺麗な建物だ。よほどきちんと手を入れたのだろう。

 

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お店の方が優しく出迎えてくれる。

私は座敷の端に座った。

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店内の装飾もセンスがいい。

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注文を取りに来た女性に「おススメは何ですか?」と尋ねると「珈琲でしたら、メニューのこちらに。そうですね、個人的におススメなのは小豆珈琲ですね。上はブラック、あとは下の小豆を混ぜて味を変えて楽しめるんです。」とのこと。私は小豆珈琲とプラス200円の「たてばセット」の和を注文した。
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お茶を飲みながら何度も「疲れた」と口にする。久しぶりのライドであの道は辛かった。

しばらくして「たてばセット」が運ばれてくる。

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キリッとした白飯のお握りが二つに野菜たっぷりのお味噌汁。そしてお漬物とフルーツ。これで200円は安すぎるのではないか。

 

消耗していた私にはこの正しい和の料理はとても有難かった。ジャガイモ、キャベツ、にんじんなどが入ったお味噌汁は野菜の旨味がしてとても美味しかった。また、付け合わせの漬物の小さなシソ巻きがとても良かった。

私はペロッと平らげた。正しい米とお味噌汁を外で食べるのは久しぶりではないだろうか。

続いて、小豆珈琲。

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お店の方のおススメとは言え、小豆珈琲はどうだろう?と思っていたが、こちらも思いの外美味しかった。

三河にまたいいお店が出来た。

この辺りは飲食店がなく、サイクリストは休憩、食事難民になるので大変有難いカフェが出来たものである。

 

お店の方にお米とお味噌汁が大変美味しかったと伝え、店を後にした。また仲間と来ることにしよう。

 

その後は、予定より時間が押したこともあって、中途半端に昼食を済ませて帰宅した。

 

まだまだ奥三河には行っていないところがあるんだなと、実感した一日だった。