定着から放浪へ 放浪から定着へ

アラスカ、ニュージーランド、タスマニアなどの自転車の旅、そのほか愛知奥三河のことなどについて書いています。

奥三河の夏のおもてなし② - 東栄町 マルカイ -

「cafe & bar みらいび」を後にし、次の上りへ向かう。次なる上りは津具の街中から茶臼山高原道路の折元インターまでの区間

普通にいけば、ダラダラ上る県道10号を九十九折に進んで行くところだが、地元民はこちらよりショートカットになる町道405号折元線を使う。こちらは九十九折のルートをまっすぐ突っ切る形で伸びており、距離は短いが当然斜度はキツく、また冬季は閉鎖になる道だ。

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予想通りエーシは「いや、そこは県道行きましょうよ。」と言う。

だが、タイキくんは当然のようにショートカットのつもりで、何なら斜度が何%なのか楽しみな感じだ。

私は上りは比較的得意な方なので、斜度がどうであれ、早く終わる方がいいという考えだ。

となれば、少数派のエーシの意見は却下、ショートカットのルートになる。

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前半はここまでと遜色のない上り。まだ3人でサドルトークする余裕がある。こちらのルートは周囲に木々が多く、涼しい。

しかし、水道施設がある辺りから急に上りがキツくなる。

タイキくんは例のごとく、ヘアピンコーナーで突然踏み出す。実際どうだか分からないが楽しくて仕方がないといった様子だ。私はロングライドの習慣から全開の8割ぐらいのペースまでに抑え上がっていく。

 

途中、斜度のキツいところでハンドルのサイクルコンピューターを確認するが10数%と思ったほどではなかった。とはいえキツいはキツい。

 

やや苦戦しながら上っていると、「みらいび」で会ったエーシの知り合いの方が車で追い抜き様に「頑張ってー!」と応援してくれた。

 

応援はいつでも歓迎、嬉しいものだ。私は手を振った。

 

最後の区間がまあショートカットと県道の合流地点に到着。

「思ったほどの斜度じゃなかったですね。」とタイキくん。確かに警戒したほどではなかった。なんだかんだ言いながらエーシはちゃんと上ってきた。えらい。

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ここから茶臼山高原道路に入る。

津具と茶臼山高原道路の合流地点である折元から茶臼山高原までは約8キロ。

標高を300mほど上げながらの上り基調の道はなかなか骨が折れる。

ここはさすがに各自のペースで進んでいく。

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稜線道の茶臼山高原道路は日陰が少ない。風が吹けば涼しいが、とにかく日差しが辛い。

道の脇に高原道路の起点までの距離を示す小さい標識があるのだが、なかなか数字が減らない。
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こういう場所は 一定ペースで淡々と踏むしかない。遅くないペースで足を回して行くのが一番いいと経験上知っている。そして、長い距離であれば、先行する選手に追いつける可能性があることも。

もしかしたら先行するタイキくんに追いつくのではと期待したが、サッパリ追いつかない。速いな若者。
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標高1200mを超えればあと少しのはず、と思っているとタイキくんが折り返してくる。もうすぐ高原道路と終点と教えてくれる。
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来たよ。茶臼山高原

ロードバイクで来るのは一体何年振りだろうか。

 

エーシと合流し、そのまま長野県方面に向かい、茶臼山高原のゲレンデ上の駐車場に出る。

 

駐車場は県内外のナンバーの車でほぼ満車。

 

バイクを置き、木陰を見つけると三人で腰をおろす。

 

「いやー、キツかったなー。」みんな顔が赤い。

 

「cafe & bar みらいび」さんでもらった補給の袋を開ける。シロップ漬けの梅をまずは一つずつ口に入れる。爽やかな梅の酸味とシロップの甘さが疲れた体に沁みる。

「いやー、最高のご褒美だね。」

 

梅と一緒に持たせていただいたブドウも頂く。

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氷といっしょに袋にいれていただいたおかげで冷たくて美味しかった。

エーシはその氷水を頭からかぶっていた。

「あー、気持ちいい!」

よく頑張ったよ、エーシ。


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茶臼山高原のリフト乗り場付近まで降りていくとカンモーの仲間たちが、マウンテンバイクのレンタルやランバイクレースの準備で動き回っていた。

カンモーメンバーは本当によく働く。

 

タイキくんが露店でたこ焼きを食べたいと言うので再び休憩。


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豊根村ゆるキャラ「ポンタ」が歩き回っていたが、普通にベンチに座っていて笑えた。

今回、茶臼山高原に来て驚いたのは、観光客の多さだ。駐車場は第三駐車場まで満車、路駐できるところも車でいっぱいで、ゲレンデ下のイベントエリアは人。人。人。

 

昔、私も夏に手伝いに来たことがあったと思うのだが、こんなに観光客がいただろうか。茶臼山高原は県内有数の夏の避暑地なのだな、と今更ながら実感した。

 

茶臼山高原からは国道151号方面へ。f:id:independent-traveller:20230816121747j:image

コーナーが連続する道をまずまずのスピードで降りていく。カーボンホイールとリムブレーキの組み合わせは若干の不安があるが、私のボーラWTOはブルベを含むこれまでの運用で問題ない。

 

「道の駅豊根グリーンポート宮嶋」まで一気に走る。

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昼には少し遅い時間になってしまったが、私がどうしてもここで昼ごはんを食べたかったので、二人に無理を言って連れてきた。

 

ここのレストランは地元のお母さんたちが作っていて、とても美味しい。食べたかった豊根村名物のチョウザメの甘酢団子の定食は残念ながら売り切れ。代わりに唐揚げ定食をいただいた。f:id:independent-traveller:20230816121754j:image

生姜の効いたジューシーな唐揚げはとても美味しかった。また来よう。

 

豊根村からはそのまま国道151号を南下。東栄町との境である太和金(たわがね)トンネルを越え、下り基調の道をペダルを踏み続ける。東栄町唯一のコンビニのある中設楽まで一気に降りてきた。

 

中設楽のコンビニは見たことのないほどの車で溢れていた。我々は混雑するコンビニを横目にさらに南下した。

途中、お友達のお家の無人販売を覗くがお目当てのブルーベリーは売り切れだった。残念。

 

151号に出てから曇り空だったこともあり、思ったより順調に進む。

JR飯田線東栄駅のところで一旦、151号から外れる。
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今回のライドの最後の目的地「マルカイ」さんに寄るためだ。

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マルカイさんは東栄駅前にあるお店で、東栄町を始めとした奥三河のお土産のセレクトショップだ。店主のナツキさんが選んだセンスのいい商品が並び、奥三河になかなかこうした品揃えの店はない。

コロナ以降、しばらくお店は閉めていたそうだが、今回、お盆に合わせて久しぶりに店を開ける、というのをSNSで見て、今回寄ろうと決めていた。

 

店主のナツキさんは我々を見てすぐに私に気がついてくれた。

「どちらを回ってきたんですか?茶臼山?疲れたでしょう、梅シロップあるので、ソーダ割りにしますね。」と梅ソーダを出してくれる。

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三河の人々は本当に優しい。

私は素直に「いただきます!」と答えた。
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「あ、こちらも良かったら。『SAPON』さんのチーズテリーヌ。」

SAPONさんはまだ行ったことのない東栄町のスイーツのお店だ。私はチーズケーキの類が大好きなので有り難くいただく。

 

おもてなしを受けながら、ナツキさんと久しぶりにお話する。この日我々が寄ってきた「cafe & bar みらいび」のことを話し、最近の東栄町のことやナツキさんの活動などなどを伺う。フィーリングの合う人となら地域というボーダーを考えずに仲間として活動するのがいいと思うという話は非常に共感できた。最近、私も強くそう思っているのだ。

マルカイさんには、お店をお手伝いされている方が2人いた。

知多から東栄に通ってきている方と今年、東栄町に移住してきたという、やまださん。やまださんは移住暮らしの様子をSNSやブログで発信している方で、お会いしたいと思っていた方だ。

【やまださんブログ】

やまださんの山里移住日記https://yamadasan-0106-izyu.blog.jp/

↑都会から移住してきた方の素直な感想が書いてあって面白いので是非読んでいただきたい。

実際にやまださんにお会いできてよかった。

 

私にはもうひとつ目的が。

 

マルカイの看板猫、チムチムである。
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私は実家で暮らしていた頃、猫を飼っていた。猫好きなのだが、身近に遊んでくれる猫がいないのである。

チムチムの様子がSNSで流れてきて、前から遊びたいと思っていたのだ。

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しかし、チムチム、暑いせいなのか、オッサンには興味ないのか全く構ってくれない。

まあ、猫ってこうだよね。

 

ソーダのおかわりまでいただき、すっかりおもてなしを受けて、いつまでも店先で話していたかったが、我々は新城までまだ戻らないといけない。

さらに言えば、この先、地味にツラい池場の坂が残っている。
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やまださんデザインのチムチムキーホルダーなどを土産に購入し、我々はマルカイのみなさんに見送られながら新城への帰路についた。

 

池場の坂を上りながらタイキくんが「移住もいいですね。」と言った。

 

ふふっ。またタイキくんを奥三河ライドに誘ってやろう、と決めた。

 

 

奥三河の夏のおもてなし① - cafe & bar みらいび -

仕事の後、お世話になっているバイクショップ「カントリーモーニング」に行くと、先日乗鞍に一緒に行ったタイキくんがいた。

 

「土曜日に茶臼山いきません?」

茶臼山の山の日のイベントでカンモー(カントリーモーニングの通称)の仲間がイベントの手伝いをしているのだという。思わぬ誘いだったが、ちょうどそろそろ豊根村方面も行きたいと思っていたところだったので、誘いに乗ることにした。

 

今回の茶臼山ライドにはタイキくんと私の他に乗鞍にも来たエーシが共に行くことになった。

新城総合公園を朝スタートし、まずは設楽町田口を目指す。この日の最高気温予想は35℃近い。とにかく比較的涼しい時間に標高を上げていく作戦だ。

 

走りやすさと最短ルートになるようバランスを取りながら、北に向かう。日陰で涼しいダモンデ定番の旧田口線跡のルートから、走りにくいが最短ルートとなる稲目トンネルを通過し、設楽町へ。

設楽町に入ると一旦国道を外れ、田内地区を走る。ちょうど道の道したらの川を挟んだ対岸になる。

観光客はほぼ通らないルートで車も少ない。また、どこか懐かしい集落の風景がなかなか素敵なところだ。

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設楽町出身のエーシが地元の解説をしてくれる。川の向こうの道の駅側が清崎地区で、こちら側が田内地区になるそうだ。まだまだ奥三河は知らないことが多い。

 

この日の最初の上りは国道257号の通称「安沢坂(あんざのさか)」。

設楽町の清崎地区から田口地区までの約4キロ区間、上り坂が続く。

まずはここを越えないといけないが、日陰がなくて辛い。ジリジリと体が焼かれていくのがわかる。安沢坂の後も茶臼山まではほとんど上りしかない。この先の体力も考え、淡々とペダルを踏む。

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安沢坂を上り切り田口地区に入る。

公衆トイレ前の休憩所で一休み。

三人ともすでに汗だくだ。気温はすでに29℃。標高450mほどの田口でこの気温だ。
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ボトルにはドリンクはまだあったが、補給できるところでと思い、自販機で缶ジュースを買った。しかしこの休憩所にはゴミ箱がなかった。いろんなゴミを捨てていく心無い人がいたのだろう。事情は分からないでもないが、サイクリストには辛いところだ。他のサイクリストの方も利用するときは気をつけてもらいたい。
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田口で休憩後は津具へ向かう。

「津具までの上りってどうだっけ?きつくはないけど、長い感じだよね?」とエーシに聞くと、

「いや、けっこうキツイと思いますよ。あとまあまあ日が当たると思います。」

エーシはすでに上りはウンザリ、といった様子だ。まだまだ先は長いのだが…

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エーシの言う通り、津具へと続く県道10号は日当たりがよく、体力を奪われていく。

上り区間では、乗鞍のときと同様にタイキくんがペースを上げ、私が少し後、そのあとをエーシが追ってくる格好になった。


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何とか津具まで上がってきた。

民家の周囲に広がる田畑が美しい。

標高こそ高くないものの急峻な山に囲まれた奥三河では、こうした景色はなかなか貴重である。

 

ここで今回の目的地の一つである「cafe & bar みらいび」に行く。

こちらは4月にオープンしたばかりの新しいカフェで、ある日SNSで情報が流れてきて気になっていたところだ。

 

津具はなかなか立ち寄りスポットがなく、サイクリスト待望の休憩ポイントではないかと期待していたのだ。

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「こんにちは」と入っていくとお店のオーナーさんだろうか、感じのいい女性が「どうぞ」と声をかけてくれた。

「自転車で来たんですか?どちらから?暑かったでしょう!」

私は豊橋在住で新城からスタートしてここまで来たこと、この先、茶臼山まで行くことを話した。

 

豊橋っていうと、もしかしてカントリーモーニングのお客さん?」とオーナーさん。

聞けば、ミズベリングというと豊川の牛川の渡しでやっていたイベントの関係で白谷さんと知り合ったそうだ。

東三河各地でアウトドア関係のイベントに携わるカントリーモーニングの白谷さんは多くの方に知られているが、まさかこんなところでそんな話になるとは。さすがだなと感心してしまった。

 

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アイスコーヒーを注文し、お冷のおかわりをもらう。お店の中は特に空調はかかっていないがとても涼しかった。ここまで暑い日差しの中走ってきた我々からすれば、涼しいところで座っているだけで贅沢だ。

開け放たれた大窓とドアから心地よい風が吹き込む。さすが標高700mの津具高原。

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お店の前には芝生が広がり、山が美しく見える。こちらでは、バーベキューやイベントをしているそうだ。

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そのさらに向こうの川では川遊びもできるという。

そんな話を伺っていると、お客さんがやってくる。地元の方らしく、エーシの知り合いであった。オーナーさんと親しげに話している。

 

オーナーさんはこちらで仕事をしながら、週末こちらでカフェをやっており、地元の方ではなく移住者だという。

 

その後も近所の方だろうか、常連ぽいおじいさんがやってきてカウンターに座った。

春にオープンしたばかりなのに、地元から愛されている様子だった。

 

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運ばれてきたアイスコーヒーをいただく。私の好きな苦味のしっかり効いたアイスコーヒー。

こんな気持ちのいいカフェなら、ここを目指してライドに来るのもいいな。

 

オーナーさんが、何やら瓶と氷の入った袋を持ってきた。

 

「これ、ここで採れた梅で作った梅シロップです。水で薄めますんで、ボトルに入れて持っていってください。あと、シロップ漬けの梅とブドウもよかったら後で食べてください。」

 

いやいやいや、いくら共通の知り合いがいるからとはいえ、そんなにしていただくと何だか申し訳ない。

 

だが、せっかくのご厚意だ。

有り難くいただくことにした。

 

気持ちがよくてずっと座っていたいなぁ、と呟くと、エーシが「ほんとですね。おれ、ここで待ってますよ。」と半ば本気で言う。

 

茶臼山まではまだ大きな上りが2つある。気持ちは分からないでもない。

 

「ほら、素敵な補給ももらったし、行くぞ。」

根っこが生えそうなエーシを急かす。

一方、若者のタイキくんはまだまだ余裕そうだ。

私といえば、まあ何とかなるだろうという感じ。

 

新しいカフェだが、おもてなしは奥三河らしい真心溢れてるところだった。

オーナーさんに別れを告げ、我々は次の上りを目指して再び自転車に跨った。

 

続く。


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Damonde クルーの夏休み - 乗鞍へ -

夏の恒例行事としてダモンデのサイクリストメンバーで毎年、乗鞍へヒルクライムに行っている。

 

ヒルクライム、と言っても別にタイムアタックする訳でもなく、仲間とサドルトークと休憩を繰り返して乗鞍エコーラインを登っていくのだ。

 

遠征予定日の数日前から天気予報は雨。

 

今回はダモンデ代表の山田さんと百名山を踏破中の横田さん、ロードバイクがないタツマくんは登山。それ以外の私を含めた4人がバイクチーム。

ただ、雨が濃厚な天気予報に私も登山に切り替えようかと悩んでいた。

そんなときバイクチームの他のメンバーに相談するとそのうちの一人、エーシが「せっかく行くなら自転車がいい」と言う。

あまりそういうことを言わないエーシの一言で、私の気持ちは自転車で行く方向に大きく傾いた。時を同じくして、上野さんから参加意向の連絡が来て、私は今回は自転車で行こう、と腹を決めた。

 

遠征当日。深夜と言うべきか早朝と言うべきか午前3時に集合し、現地に向けて出発。雨の中のバイクの積み込みで現地は大丈夫か心配になる。

 

ひたすら北に車を走らせ、日が昇り始める頃、雨が止んできた。

「これいけるんじゃない?」車内はそんな雰囲気になってきた。

八時過ぎに乗鞍観光センターの駐車場に到着。

 

天気は快晴。

 

バイクを車から下ろし、走る準備をする。

乗鞍のヒルクライム直前ということもあり、サイクリストが多い。

 

今回はダモンデバイクメンバーの最年少タイキくんが初参加。

私がテスト用で買ったサドルを使うか聞くと早速使ってみたいという。

タイキくんがサドルを取り付けている間にタイヤに空気を入れていると、私のタイヤから勢いよく空気が抜けた。パンクらしい。

 

いやはや。

 

チューブレスレディの私のタイヤ。シーラントまみれにならないようにサッとチューブを入れて応急処置。乗り出す前でよかった。

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気を取り直して出発。

 

期待以上の素晴らしい快晴で、ただ上っているだけなのに嬉しくて仕方がない。私はいつものように軽めのギアで踏んでいく。

上野さんがなかなかいいペースで前に出る。

「上野さんけっこう踏みますね。」

そんなことを話しながら調子よく進む。f:id:independent-traveller:20230809221217j:image

沢を見つけると沢登りをやるダモンデメンバーの話をしたり、タイキくんのサドルの調子を聞いてみたり、どうでもいい話をしながら、ペダルを踏んでいく。

 

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三本滝レストハウスに到着。

今回はいつもよりいいペースじゃないだろうか。

私は甘い缶コーヒーを買い、補給にする。

三本滝からはこの後上る道が高いところに見える。

休憩もそこそこに出発。

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乗鞍エコーラインのヘアピンコーナーのイン側は斜度が急だが、そうしたところに来るとタイキくんが猛烈に踏んで上がっていく。

「若いなぁ。」

私は何度も呟いた。


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そこからずっとタイキくんが先頭、それを私が追い、その後をエーシと上野さんがやってくるという形になった。
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ただただゆっくり上っていくだけなのだが、景色が良くて楽しくて仕方がない。


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景色のいいところで度々止まる。
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このくらいの緩い感じが我々にはちょうどいい。
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乗鞍に来るとお互いの写真を撮るので写真が多い。

途中、冷泉小屋で休憩。上からマウンテンバイカーが降りてきたと思ったら、友達のマルちゃんだった。

「あ!マルちゃん!」

声をかけるとマルちゃんは戻ってきてくれた。

マルちゃんは前日から来ているらしい。

またレース会場で会おうと約束し、マルちゃんは下っていった。

 

冷泉小屋の前でタイキくんがまあまあ踏んだおかげでエーシたちを置いてきてしまった。

 

二人を待っていると、見覚えのあるトレックに乗ったライダーが勢いよく下っていった。

「今のゴローさんじゃない?」とタイキくんに聞くと「あの特徴的な髪型はゴローさんですね。」とタイキくんも筧五郎氏と認識したらしい。

すると隣りにいたサイクリストが「朝、下にゴローさんいましたよ。」と教えてくれた。

さすが乗鞍。有名人も普通に練習に来ているのだ。


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冷泉小屋の後は位ヶ原山荘で休憩。ここまで来ればあとはボーナスステージだ。

周囲の植物が低木になり一気に雰囲気が変わる。

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そんな景色を楽しんでいると、eバイクに乗ったおじさんが話しかけてくる。

この斜度でeバイクとサドルトークはなかなか辛かったが「いやー、素晴らしいバイクですね!」なんて自分のバイクを褒められてしまったものだから、しばらく走りながら話してしまった。

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残り少しのヘアピンコーナーでタイキくんが待っていた。私は後続の二人を待った。

ほどなくエーシが上ってきたが、そのまま上がっていく。

私はその後を追った。

途中、さっきのeバイクの人に抜き去られた。

悔しかったが、私の実力はこんなものだ。

 

エコーラインの終点、畳平に到着。

 

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上は霧の世界だった。

 

仲間を待っていると、途中追い抜いてきたサイクリストが上がってくる。「お疲れ様」と自然に声が出る。20キロの山は誰にだってチャレンジだ。そしてそれを終えれば、みんな仲間と思えるのだ。

 

しばらくしてダモンデのメンバーが全員そろった。

畳平駐車場の方へ移動する。まだ登山組は戻っていないようだ。

 

ここで思わぬ有名人に遭遇した。

NHK BSチャリダーに出演している戸丸大地さんだ。ヒルクライマーの聖地乗鞍は伊達ではない。

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戸丸さんが乗るTOYOFRAMEのママチャリ。
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一度実物を見てみたいと思っていた。
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フェンダーとタイヤの隙間が殆どない。

どなたが組んだのか知らないが素晴らしい仕事だ。よくわかってらっしゃる。

「いや、素晴らしいバイクですね!」と戸丸さんとしばらくお話させていただく。

「カゴで隠れてますけど、カッコイイのはここなんですよ!」と嬉しそうにヘッドバッチを見せてくれた。

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戸丸さんは大きなカバンの中から自身のステッカーと反射素材でできた小さな動物のキーホルダーを出すと我々に配ってくれた。

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聞けば戸丸さんはふだんは納棺師の仕事をされていて、事故で亡くなるサイクリストを送り出すこともあるという。

「同じ自転車をやっている仲間が事故で亡くなるのは辛い。だから少しでも事故が減るようにこういうグッズを配ってるんです。ゴローさんに『自転車で稼いだお金は自転車で使え!』って教わりましたし」と戸丸さん。

 

テレビで見るペース配分無視の走り方をする戸丸さんとは別の一面を知ることができてよかった。


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そして戸丸さんはファンサービス旺盛な方であった。戸丸さんと偶然遭遇された場合はお話することをおススメする。

 

戸丸さんと別れ、しばらくすると登山組が山を降りてきた。タツマくんがけっこう飛ばしたようだ。

ダモンデメンバーが揃ったところで記念撮影。


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バスターミナルの上でみんなで食事をし、バスの時間がある登山組を先に送り出すと、ゆっくりカツカレーを食べるタイキくんが食べ終わるのを待ってバイク組も出発する。

 

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上ってきたときには見えなかった鶴ヶ池が見えた。

 

仲間たちと上ってきた道を下ってゆく。

 

結局、心配した雨には全く降られなかった。

いろいろな出会いもあり、幸せな乗鞍遠征であった。

 

夏のポタリング - ジャパンエコトラック東三河 -

8月。夏休みのこの時期、SNSでは日々様々なイベントが流れてくる。

土曜日の午前中、時間ができたので行きたいところを回りながらイベントを一つこなすことにした。

イベントは去年に引き続き開催されている「ジャパンエコトラック東三河 デジタルスタンプラリー」。今年は8月1日から1月8日までと期間が長い。

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指定のルートをチェックポイントでデジタルスタンプを獲得し、ルートのスタンプをコンプリートすると景品に応募できる、というもの。

今年は「どうする家康」に絡めて歴史スポットがチェックポイントになっている。

 

今回はジャパンエコトラックのルートのうち「豊川歴史探訪サイクリングルート」を走ることにした。

このルートなら自分が行きたい場所に寄りつつ、指定スポットも回ることができるためだ。

 

二日前にロードバイクで120キロ走ったところなので、今回はグラベルバイクでポタリング、ということにした。

 

デジタルスタンプラリーのチェックポイントになっている豊橋駅をスタートし、ルートを逆から回る。私の立ち寄りスポットの都合上、逆回りにしたが、逆回りでもデジタルスタンプラリーのチェックはちゃんと入る。

 

デジタルスタンプラリーのチェックポイント一つである豊川稲荷を経由し、その次の松永寺に向かう。

ここは鳥居強右衛門の生誕の地の石碑がある。

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敷地内は綺麗に芝生が刈られており、手入れの行き届いた綺麗なお寺であった。

先日訪れた作手の甘泉寺もだが、東三河には鳥居強右衛門のゆかりの地がいくつもある。強右衛門の地元での人気ぶりが分かる。

 

続いては今回のライドの目的地のひとつ、豊川市の赤塚山公園へ。

 

この4月にリニューアルオープンした赤塚山公園。屋根付きの休憩施設「GOOD-TIME PLACE」が新たに設けられ、週末にはコーヒースタンドがオープンしている。
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リニューアル後、赤塚山公園には何度か来ているが、こちらのコーヒースタンドを利用するのは初めてだ。

着いたのはまだ午前10時頃だったが、コーヒースタンドで迷わずかき氷を注文した。かき氷は夏休み限定だそうだ。

頼んだのはコーヒー専門店のコーヒーを使用したカフェ氷にコーヒーホイップをトッピングしたかき氷。

 

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私としては今季初のかき氷。

素晴らしいビジュアル。

午前中からこんなに食べられるかと思ったが、暑さもあってサラッと完食した。これは美味しい。カフェスペースの屋根のおかげで暑さも凌げるし、風を感じながらかき氷を食べることが出来ておススメである。


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その後、デジタルスタンプラリーのスポット、三河国分尼寺跡史跡公園から旧東海道に入り、大橋屋御油の松並木を通り抜けていく。

 

タイヤの空気圧が低く、思ったより速度が出ない。エアぐらい入れて出ればよかった。

 

ゆっくり旧東海道を走っていると祭りにぶつかった。御油夏祭りらしい。
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大きな山車が交差点をダイナミックに回っていく。山車に乗る若者の髪が紫色だった。

祭りの若者はこれぐらいであって欲しい。


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ライド中のこうした偶然の出会いはとても嬉しい。

しばらく祭りの様子を眺めた後、豊橋方面に戻る。


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最後の立ち寄りスポットは「ヤマサのちくわ」。

この日は周年祭でお買い得商品がたくさんあった。私はヤマサの練り物が好きなのだが、日常的には買えないので、ここぞとばかり買い物をした。もっとも金額的にはかなり安かったが。

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ヤマサのお土産を持って帰ると、ヤマサが好きな娘たちは大喜びで行ってよかったな、と思った。

 

午前中だけでこんなに楽しめる環境に感謝した土曜日だった。

自分の時間 - 奥三河ソロライド -

半年ほど仕事で激務が続き、先週、仕事中に激しい眩暈に襲われた。それから二日間、寝込んでいたが、何とか持ち直した。どうしてこんなに働いているのか。

 

幸い仕事はピークアウトした。

私は有休を取り、一人ライドに出た。

 

一人で一日ライドするなんて何日振りだろう。

行きたいところはどこだろう。

 

そういえば、そんなことを考える余裕さえ失っていたんだな。

 

しばらく考えてこの猛暑でも涼しいであろう標高600mの作手高原に向かうことにした。

 

ルートは使ったことのない萩峠を越え、くらがり渓谷から作手に上るルート。

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以前、筧五郎氏が九十九折の素晴らしい峠と評していた峠だが、私はまだ行ったことがなかった。

運動不足が響いて、峠に取り付いてもなかなか登っていかない。すぐにギアを使い切った。

「やれやれ。」

先が思いやらる。件の九十九折は短いがなかなかの斜度だった。

 

萩峠を越えたところで、通り雨に遭遇した。


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木の陰に隠れて雨をやり過ごす。

序盤から休憩だが、これはこれでいい。

雨宿りはロングツーリングをしていた頃のことを思い出す。タスマニアの辺境のハイウェイで強い雨に途方に暮れた、なんてこともあったな。

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雨が弱くなり、私は走り出した。道は杣坂峠からの道と合流し、くらがり渓谷へと入っていく。くらがり渓谷は夏休みとあって多くの家族連れで賑わっていた。

 

しばらく淡々と峠道を登っていく。

 

くらがり渓谷というだけあって、木々に覆われてた峠道は涼しい。東三河南部から作手にアプローチする場合は、国道301号を登るかくらがり渓谷を登るのが一般的だが、301は日当たりがいいので、この時期はくらがり渓谷から登るのがいい。


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道の途中に岩を割って育つ木を見つけた。

くらがり渓谷も何度も来ているはずだが今まで気が付かなかった。こういう発見はいつもある。

 

くらがり渓谷の峠道、田原坂を登り切ると作手まで一気に降りていく。

 

道の駅「作手り村」に着くが定休日。

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まあさして目的がある訳でもない。

 

道の駅の奥にある亀山城址に寄る。

何年か前にここでガイドさんに城のつくりなどを解説して頂いたことがある。
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亀山城址から眺める作手の景色は素晴らしかった。
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作手まで来たので久しぶりに「恋して宇宙少年カフェ」に寄る。
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相変わらずファンキーな外観だ。

この日は地元の中学生が職業体験をしており、中学生の女の子がメニューの説明をしてくれた。
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私はきつねうどんとバタフライピーのアイスティーを頼んだ。

我ながらなんという組み合わせかと思ったが、それはそれ、これはこれである。

青色のアイスティーは知らないとインパクト大だろう。私はよそでいただいたことがあり、分かって注文していたので、驚かない様子に中学生の女の子はがっかりしたかもしれない。


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こちらのカフェはカレーとプリンも大変美味しいが、個人的に好きなのはこのきつねうどんだ。

地元作手産の大きくてしっかりした揚げが美味しく、また少し甘めの出汁も私の好みで非常によい。汗をたくさんかいていたこともあり、出汁も全て飲み干した。幸せだな。

 

作手からは塩瀬方面に向かう。

 

途中、この地域を代表する山城「古宮城」の前を通過し、甘泉寺に立ち寄る。

 

ここは長篠•設楽原の戦いで名を馳せた「鳥居強右衛門」の墓があるという。


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参道は趣きがある。

 

甘泉寺は思ったより立派なお寺だった。

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寺の奥に鳥居強右衛門の墓があった。

強右衛門の墓の横には奥方の墓が並んでいた。

東三河各地には鳥居強右衛門にまつわる史跡がある。地域に愛される地元の英雄なのだ。

 

作手から塩瀬には川沿いの道を下ってゆく。終始日陰で、涼しく、非常に走りやすい。

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塩瀬のあたりは川と集落の風景が、いかにも日本の田舎の原風景といった佇まいで私の好きな奥三河の場所の一つだ。

 

そんな塩瀬には「リバーベース塩瀬」というキャンプ場と釣りなどが楽しめる場所が今年の6月に新しくオープンした。

 

気になってはいたが、まだ行ったことはなかった。見たいだけ、という理由でいきなりサイクリストが行くのもどうかと思ったが、せっかくなので行くことにした。
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幸い、お客さんのチェックイン前の時間で、スタッフさんがわざわざ場内を案内してくれた。
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キャンプエリアにはキッチンと簡易シャワーとトイレが整備され、隣の川で遊ぶ子供にはライフジャケットを無料で貸し出ししてくれるという。また釣り道具の貸し、スタッフの方が指導もしてくれるそうだ。

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オープン直前の豪雨で水が越水し、大変な被害があったそうだが、スタッフの方々の懸命の復帰作業で無事にオープンを迎えたとのこと。

この暑さの中でもキャンプのお客さんは来るそうで、真夏の暑いキャンプが嫌いな私は「暑さは大丈夫ですか」と尋ねると

「ここは川下から風がずっと吹いてますし、山に囲まれてるので、夕方4時くらいから暗くなります。だから夏でも夜は寒いぐらいですよ」と教えてくれた。

最近、釣りに目覚めた息子と来るにはちょうどいいところだなと思った。今度は息子と来よう。

 

丁寧に説明してくれたスタッフの方にお礼をいい、リバーベース塩瀬を後にした。

リバーベース塩瀬

リバーベース塩瀬 | 愛知のキャンプ場 | 管理釣り場

 

 

塩瀬の後は設楽町の道の駅に向かう。

 

道の駅したらで「設楽町ぐるぐるスタンプラリー」の台紙を見つけた。

「町内の道の駅や対象店舗で、お土産品や五平餅、ソフトクリームを買い求め、スタンプを集め応募すると、関谷醸造の空や段戸牛などの豪華な特産品が当たるスタンプラリー」とのこと。

 

段戸牛も空も長いこと口にした覚えがないな…

 

どれだけスタンプが集まるか分からないが、とりあえずトライすることにした。

 

時間は午後一時を回ってもうすぐ二時というところ。昼前に食べたうどんはどこへやら、お腹が空いてきた。

スタンプラリーもあることだし、道の駅のとなりの「八雲苑」に入った。

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今年は鮎が不漁なのか、鮎入手困難の看板が。

 

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しかし、それを見るとあるうちに食べたくなるものである。私は鮎の定食を注文した。

 

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鮎を食べるのは久しぶりだ。

三河は各地に鮎を出してくれる店があるので、ぜひいろいろな店を巡っていただきたいが、近年は大雨で鮎が流されることが多くて以前より貴重になっているらしい。

 

八雲苑のあとは田峯に向かう。

田峰観音の下にある直売所もぐるぐるスタンプラリーの対象店だ。

些細な話題で売店のおばちゃんと話が弾む。

 

こちらでは茶畑を見下ろしながら、休憩できるテラスでドリンクなどを楽しむのがいい。f:id:independent-traveller:20230804205706j:image

今回はすもものソーダをいただいた。

すももの酸味が爽やかに口に広がる。

 

「さて、行きますか」

 

この後、本当はもう一ヶ所寄りたいところがあったが、時間が遅くなってしまったのでこのまま家路についた。

 

一人で自由に過ごす時間がいかに幸せかを思い出すことができたソロライドだった。

いつも心に平穏を与えてくれる奥三河に感謝。

 

 

本日有休 -MTBでコーヒーライド-

仕事のスケジュールが急に空いたので、特に予定があった訳ではないが有休を取ることにした。

幸い、梅雨の晴れとなる天気予報だ。

たまには山でコーヒーを飲むのもいいなと思い、コーヒーセットを持ってマウンテンバイクに乗り、自宅を後にした。

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いつもは走らない街の裏道を縫う様に山に向かう。風が強く背中を強く押される。帰りは向かい風だろう。

 

林道に入っていく。

6月2日に東三河地方を襲った豪雨の影響がそこかしこに見える。なだらかだった林道も多くの水が流れたのだろう、深く抉られているところがいくつもあった。

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それから普段なら水の流れていないところに沢ができているなど、まだ山が多くの水を含んでいるのが分かった。

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平坦な区間まで上ると道のダメージは少なかった。

新緑の向こうに見える青い空が眩しい。

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日が高くなるにつれ、気温がどんどん上がっていく。しかし、木々に覆われた林道はほとんど日陰で、ときおり強く吹く風がなんとも心地よかった。

景色のいいところまで出ようと急坂を上る。

この坂道は全力でペダルを踏まないと坂が急過ぎて乗車したまま上まで行くのは難しい。二月ほど前に仲間から譲ってもらったマウンテンバイクでこの坂を上るのは初めてだ。

苔むした路面を踏んで一度リアタイヤのトラクションが抜けて、一瞬焦ったが何とか足を付かずに上まで登ることができた。

 

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山の上からは浜名湖が見える。風が強いおかげだろう、この時期はなかなか見られない浜名湖の向こうの遠州灘が見えた。

 

山の間を抜けていく風は相変わらず強いが、強いくらいの風が上りでほてった体には心地よい。

 

 

バイクを置いて木陰に腰を下ろし、持ってきたバーナーストーブで湯を沸かしコーヒーを淹れる。

 

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梅雨の晴れ間の眩しい景色とコーヒー。

 

ただそれだけだったが、とてもいい時間が過ごせた。

 

コーヒーを飲み終わると、私は再びマウンテンバイクに跨り、山を降りた。もっと山に来る時間を作ろう、そう思った。

 

山を降りると予想通り帰り道は向かい風。びっくりするほど進まない。

横道に逃げて小さな川沿いの道を行くと、何か獣の姿が見えた。

タヌキ?

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いや、ハクビシンのようだ。

こちらの姿を認めるとそのまま土手の草むらに逃げていった。

こういう遭遇も山に行くライドの醍醐味だろう。

 

その後、Glocalbikeに立ち寄り、店主のバスマンさんや知り合いのお客さんと少し話す。聞けばロードで出かけたが、風が強すぎてやめた、とのこと。たしかに今日の風はロードバイクにはキツイ。

 

気がつけば昼を回っていたので、お昼ご飯を食べにうどん•そばの店「十勝庵」に行く。

こちらのお店は何を食べても美味しいし、メニューも豊富だが、今日は迷わず「ころにかけうどん大盛り」を注文した。

久しぶりに「にかけ」が食べたかったのと今日は汗をかいて冷たいものがよかったのだ。豊橋市内にはうどん屋が多く、いずれの店にも「にかけ」があるが、出汁の味付けに店の個性があり、私は十勝庵のにかけが好きなのだ。

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大盛りではあったが私はサラッと食べてしまい、出汁も美味しくてほとんど飲み干した。

 

半日足らずの地元マウンテンバイクライドであったが、久しぶりに自分の時間を満喫した有休であった。

 

 

 

 

 

 

春の里 - ライド奥三河 -

今年は桜の咲くのが早い。

 

先週訪れた桜の名所、新城市市川でも地元の方がそんなことを言っていた。しかし、もう少し北ならまだ春の花が咲いているのではないか、と思っていたところ、タツマくんが声をかけてくれ、久しぶりに仲間と奥三河ライドに行くことになった。

 

今回のライドに参加したのは4人。タツマくん、ダモンデの山田さん、上野さん、そして私である。

 

ダモンデのメンバーで走るのは久しぶりだ。我々の定番コースは新城市街から四谷千枚田設楽町神田、東栄町、佐久間浦川を回るルート。今回はこの定番ルートをアレンジして行くことした。

 

新城総合公園に集合し、まずは四谷千枚田へ向かう。

最近は非常にあたたかい日が続いていたが、この日は東日本にあった低気圧の影響で、思いの外寒かった。

 

タツマくんと私は上は長袖の薄いジャージに下はビブショーツという格好で、二人ともその上からウィンドブレーカーを着てもまだ少し寒い、という状態だった。この季節のウェアは難しい。

 

旧田口線の道を北に向かい、四谷千枚田へ。

下から千枚田が見渡せる駐車場まで上る。

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毎年何度か訪れる場所だが、鞍掛山の山麓に広がる雄大でどこか懐かしい景色を見るといつも「来てよかった」と思える。こうした場所が自分たちの定番ルート上にあるのは恵まれているな、と思う。

 

休憩しながら雑談していると、一年ほど前にオープンしたカフェ「たてば」の貼り紙が目に入り、せっかくの機会でなので行こう、ということになった。

来た道を少し下り、横道を進むと古民家カフェ「たてば」だ。
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私はほぼ一年ぶりの訪問だが、みんなは初めて来るという。

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大きく取られた窓から差し込む自然の明かりが差し込む店内はとても落ち着く。

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さりげなく飾られた花がとても素敵でお店の方のセンスを伺わせる。

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10年くらい前は「奥三河にはライドで立ち寄るスポットが少ない」と嘆いていたが、最近はこちらのお店のように誰かを連れてまた行きたいお店が増えて嬉しい限りだ。

 

我々はコーヒーと和食のセットを注文。

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待つ間、いつの間にか新しくなっている仲間のヘルメットやらサングラスなどの使用感など自転車ウェアの話で盛り上がる。

 

しばらくして和食セットが運ばれてきた。f:id:independent-traveller:20230408220325j:image

湯気の立つおにぎりとお味噌汁がいかにも美味しそうだ。

ほかほかの塩握りと野菜の甘みと旨みが染み出したお味噌汁はとても優しい味がした。

 

「たてば」を後にすると、店の前の道をそのまま上っていく。こちらの道は四谷千枚田を抜け、仏坂トンネルへと続く県道と合流するはずだが、行ったことのないルートだ。

長年この地域でライドをしていても、行ったことのない道はまだまだある。

予想はしていたが、かなりの斜度で苦戦はしたが何とか予定通り県道と合流するところに出ることができた。

 

仏坂トンネルまでサドルトークをしながら上っていく。

午後から予定のある山田さんはここでお別れ。

山田さんは帰りに撮った写真を後で送ってくれた。

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山田さんが自転車に乗って切り取った春の奥三河の景色は撮った人の人柄のとおりの優しいものだった。

 

残りの3人は仏坂トンネルを越え、設楽町神田へ。以前、ここでタツマくんが路上の石でタイヤをバーストさせたので、慎重に下る。

 

途中のミツマタの群生地では、まだミツマタの花が咲いていたり、その先の不動滝ではいつもより水量が多く見応えがあったりと小さな発見があった。

 

神田の分岐で少し止まり、作戦会議。

数日前の情報で設楽町平山のハナモモが見ごろというのが設楽町観光協会SNSで出ていたので、そちらに向かう。


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平山は神田より高いところにある。逆からのアプローチで平山から神田に下ってきたことはあるが、上ったことはない。

 

途中、一度だけ下ってきたことがある町道を走ってみる。この日一番の急勾配で濡れた路面で踏み込むとリアタイヤがスリップしてひやひやした。

道は古い石垣がしっかり組まれた集落跡の間を抜けていく。奥三河には立派な石垣がたくさん残っている。正面にぽっこりした山が見える。あれがきっと平山明神山なのだろう。

 

平山明神山の登山口を過ぎると鮮やかな桃色の花が見える。平山の集落だ。


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平山と言えばアジサイの里として知られるが、ハナモモも素晴らしい。
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まさに桃源郷である。f:id:independent-traveller:20230408220340j:image

上りがキツく、苦戦していた上野さんだったが、「これは上って来るだけの価値あるよ!」と興奮気味だ。かく言う私もその美しさにひたすら感動していた。
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冬のモノトーンな奥三河の景色は春を迎えて集落に花が咲き、華やいでくる。この季節の奥三河ライドが特に私は好きだ。

 

平山の素晴らしいハナモモの集落を後にすると東栄町振草へと降りる。こちらも途中の民家のハナモモが素晴らしかった。
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景色は申し分なく美しいのだが、曇り空でずっと冷たい風が吹きつけて来る。そして風は強い。

 

とにかく寒いので、我々は東栄町の中心部、本郷まで一気に降ると昼ごはん場所を探す。東栄町は山間地域にも関わらず、最近でも新しい飲食店が増えている。

しかし、今回は新手の店はどこもお休みで結局、入ってしまう「山正」に行くことにした。

 

注文も悩んだが、結局いつもついつい食べてしまう唐揚げ定食。

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アツアツ大ぶりの唐揚げがたまらなくうまい。上野さんはお初のようで、カリカリの衣に驚いていた。今回も大変美味しくいただいた。

次に来るときにはラーメンを食べよう、そう思ったが、この前もそう思っていたのに、今回も唐揚げを食べたことを思い出して苦笑した。

 

会計を済ませると店の奥さんが「なんだか雲行きが怪しいわね。」と言う。確かに空が暗い。外に出ると昼過ぎだというのに寒い。

 

「服装間違えましたね。」何度目か分からないがタツマくんがそんなことを言う。

 

「寒いから最短コースで戻りでいいよね?」

私が念のため確認すると、2人とも異論は無いようだった。

 

国道151号をテンポよく南下していく。雨粒のようなものがときどき当たる気がするが無視して走る。急に晴れたと思うと、また空が暗くなり寒くなる。

まるでニュージーランドウェザーだな、と一日のうちで何度も天気が変わり翻弄されたニュージーランドを旅したときのことを思い出した。

 

鳳来峡インターのところで望月街道に入り、湯谷温泉方面へ。

 

湯谷温泉は目前というところで、雨が降ってくる。慌てて温泉街を抜け、飯田線湯谷温泉駅へ駆け込む。駅舎はなくなってしまったが、ホームの待合は健在だ。そこで少し雨宿りした。

 

この後、地元の友人と遭遇するというちょっとしたサプライズがあった。奥三河に来るとこういうことはよくあるのか。


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湯谷温泉を後にし、スタート地点まで無事に戻った。ゴールする頃には、先ほどまでの雨が嘘のように新城総合公園は明るく暖かかった。

 

次は仲間とどこに行こうか。

河津桜とクレープと -豊川ポタリング -

本日代休。今日は春の陽気らしい。

春は毎年、奥三河に花を見にライドに行くのが習慣だが、時期的にまだ少し早い。

さてどうしよう、と新聞を眺めていると豊川市の西古瀬川の河津桜の写真が出ていた。

 

今まで行ったことがないところだ。

 

よく考えたら豊川市内をメインでライドをしたことがない。そんなに遠い場所でもないので、私はグラベルバイクでゆっくりポタリングをしようと決めた。

 

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家を出る頃には昼近くなっていた。

まずは軽くお昼ごはん。

 

豊橋競輪場内にある「ORINBE」へ。

ここは「ORIBE」というラーメン屋さんが新たに始めたお店でまぜそばの他、ご飯ものがある。

 

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まぜそばは前にいただいたので、今回は「きつね飯」と水餃子。きつね飯は小ぶりの丼のご飯の上に甘辛いあげとゆで卵が載って270円。水餃子のほうは3つで250円。
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大変リーズナブルな上、美味しかった。

普通の食事と思うと少し足りないが、今日はあとで甘いものを食べる予定なのでちょうどよかった。

 

競輪場を出ると朝倉川沿いに国道1号方面に向かう。

風が強い。春物のロングスリーブのジャージにジレという格好だったが、やや寒い。

しかし、しばらく走ると体が温まってきてちょうどいい感じになった。

 

旧東海道に入る。

豊川放水路を越えるところで鉄橋を進む電車を見て、しばらく眺めていた。

グラベルバイクだと、ロードバイクに比べあまりスピードを出さないので、気になったところで止まったりしやすくていい。

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そういえば友人のK藤さんが、同じようなところ撮った写真をSNSにあげていたな。

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豊川放水路を越えてすぐにある山本製粉のアウトレットはスルーした。前に寄ったときに買いすぎてしまったのだ。東三河のご当地ラーメン「ポンポコラーメン」が好きな方はぜひ行っていただきたいスポットである。

 

旧東海道は昔の建物が残っている場所などもあり、車はやや多いところもあるが、国道1号ほどではないので自転車で走るにはいいところだ。ロードでときどき走る道だが、走るペースが違うと見える景色と印象が違う。グラベルバイクでゆっくり走ると、今まで気にしていなかった小さな川の存在に気がついたりと新しい発見があった。

 

旧東海道を外れ、目的地の西古瀬川へ。

もう一本東側の道はよく使うのだが、こんな場所があるなんて知らなかった。

小さな川の両側に濃いピンク色の河津桜と黄色菜の花があざやかに咲いている。

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春のような温かい陽気で、天気も快晴。

いい日和だ。
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平日の昼にも関わらず多くの人が歩いていた。私のように新聞を見て来た、という人も多いのかもしれない。どの人も笑顔だ。

花というのはいいな。

私は時折、自転車を降りてゆっくり歩いて春らしい河津桜の並木道を楽しんだ。
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西古瀬川を後にし、赤塚山公園に寄る。

塚山公園は現在、四月のオープンに向けて改装中だ。改装をしている事業者さんがお世話になっている方のところでもあり、気になっているのだ。

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工事の様子を見ながら横を通り過ぎると、木材のいい香りがした。人の集まる素敵な場所になるだろう。

塚山公園といえば、梅林も有名である。

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こちらのピークはもう少し先だろうか。

そういえば自宅の近所の公園にも梅があったな、と思い出した。また散歩しながら見に行こう。

 

今回のポタリングの目的は河津桜だけではない。

 

もう一つの目的は前からずっと気になっていた焼き菓子とクレープのお店「querofune」さんである。

以前からインスタでずっと見ていたが、なかなか行く機会がなかったのだ。

ついにこの日が来た。

 

期待を胸にお店に行く。

佐奈川沿いの小さなお店だ。

どうでもいいが、佐奈川の歩道の柵がバイクを立てかけるのにちょうどよい。

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店頭のメニューを見て悩む。

焼き菓子はカヌレとフィナンシェがある。前に妻がこちらのカヌレを買って来てくれて大変美味しかったので、これは買うと決めていた。

 

問題はクレープ。

 

プラリネか塩バターかキャラメルか。

悩んだ末にキャラメルに胡桃のトッピングで注文。

 

ご主人が丁寧にクレープ生地を焼いてくれる。

自転車で来た私を見て「どこから来たんですか?」とか「一日どのくらい乗れるものなんですか?」と話しかけてくれる。先日、ブルベの試走をしたところだったので、「300キロくらい」と言って驚かせてしまったが。

 

クリームたっぷりのクレープは見た目から最高だ。期待が高まる。

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ご主人からクレープを受け取ると私はクレープを持って佐奈川の土手に座ると早速いただいた。

 

パリッとしたクレープ生地としっかりとしたキャラメルソース。そしてなめらかな生クリーム。トッピングの胡桃もたっぷりで大変美味しかった。

「いやいや、最高でしょ」

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私は一人で感動してしまった。

美味しくてあっという間に食べてしまった。

ご主人に美味しかったと言いたかったが、お客さんが何人も並んでいたので、心の中で「ご馳走様でした」と言っておいた。

これはまた来なくてはなるまい。

 

querofuneさんを後にすると抜け道を選んで帰路についた。30キロにも満たないポタリングだったが、とてもいい時間を過ごすことができた。

 

こういうライドもいいな。またやろう。

 

 

 

 

ブルベ試走 - BRM225Nagoya300km御前崎 -

 

愛知県でブルベを主催する「ランドナーズクラブナゴヤ」(RC名古屋)の代表である金井さんとブルベの試走をさせていただくことになった。昔はよく今は亡き石原さんと400キロぐらいまでは一緒に行ったものだ。

 

今回、金井さんと試走するのは2月25日に開催される300キロのコースである。

 

豊田市南部の柳川瀬公園をスタートし、浜名湖を経由し、御前崎まで行って往復する300キロ。

 

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夜明け前の柳川瀬公園を午前6時過ぎにスタート。

 

岡崎大橋を越え、だんだん空が明るくなっていく岡崎市街を抜けて行く。

RC名古屋のスタートの景色だ。

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天気予報によれば朝の気温は4°、日中15°と寒暖差があるとのことだったので、私はレイヤリングを意識し、上はcraftの冬用のアンダーウェア(あまり厚くない)にメリノウールのロングジャージ、暑くなって脱いでもいいように半袖のジャージを着た。

下はやや薄いLE COFFEE RIDEの冬用のビブタイツ。これはパッドの形が微妙なので、合わせてアソスのレーサーパンツを履いた。

 

これに加え、ネックウォーマーとシューズカバー、それからレインギア上下を着て出発していた。雨の心配はない予報だったが、レインギアは私としては必携品だと思っているので、寒い時間、これで乗り切ればあとは春先の格好でいけると踏んだのだ。

 

岡崎市街を抜けると東名高速道路の側道を豊川方面に向かう。高速の側道はアップダウンだが、往路はそんなに気にならない。

 

やがて道は豊川市街に入る。

コンビニに寄り、私は履いていたレインパンツを脱いだ。

 

そこから豊川、豊橋を抜け、本坂トンネルで静岡県に入り、浜名湖北岸を細江まで行く30キロ強の一本道。

市街地の信号で何度も足留めを食うが比較的順調に細江気賀のチェックポイントまで辿り着く。

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制限時間との差は50分。スタートと途中で少しもたついたのが響いて思ったより余裕がない。気温が上がってきたので、私はここで着ていたレインジャケットを脱いだ。

 

チェックポイントのコンビニでは、本番にブルベライダーたちの来訪があるのでよろしくお願いします、と金井さんが店の方にお願いしていた。これも大事な仕事である。ブルベの主催団体はこうしたことを全てボランティアでやっているのだ。

 

気賀からは浜名湖舘山寺方面に南下、そのまま浜名湖南端の弁天島まで降りて行く。

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ここは私が普段からライドしているエリアでミスコースの心配はない。最もこのコース全般がRC名古屋でよく使用するルートだ。

 

85キロ地点の弁天島のチェックポイントに到着。

 

途中、金井さんのライトが飛んでいくというトラブルはあったが、少し時間を稼ぐことが出来た。

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ここからは折り返しの御前崎までチェックポイントはない。

 

風に乗ってひたすら進むのだ。

 

このコースについてRC名古屋のWEBサイトには「御前崎往復の平坦コースです。風向きが走りやすさを左右しそうです。」とある。

 

今回、私は風に関してかなり心配していた。

前日関東を襲った寒波の影響で、この地方にも雨が降り、晴れの当日は強風に晒されるのでは、また、想定される展開として、行きは冬の西風に押されて快調、帰りはそれが向かい風になって、ひたすら風に耐えて踏み続けることになるのでは、と考えていたからだ。

 

ところが東に向かうと追い風のようではあるが、そこまでの風ではない。

浜松の南、太平洋自転車道を掠め、磐田、掛川と順調に進む。115キロ地点のコンビニで小休止。

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ドリンクを飲みながら、富士山を眺める。静岡はどこからでも富士山が見えるんだなと、来るたびに思う。

 

御前崎まで約40キロ。復路の向かい風を考えるとここは時間を稼ぎたい。しかし、ここへ来て踏んでいる割に進んでいかない。

「風が巻いてるのかな。」信号待ち金井さんが言う。なんだかそんな感じだ。

しばらく苦しいながら踏み続けた。これもブルベ。

 

苦しい区間が終わり、御前崎が近づいてくる。

坂を下りはじめると遠くに灯台が見えた。

 

灯台だ!」

 

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私は下り坂で思わず声を上げた。

こういう象徴的な場所に向かって行くのはいいな、と素直に思った。

 

折り返しのチェックポイントであるセブンイレブン御前崎港店に到着。時間は午後2時30分。150キロ来て制限時間まで約二時間。少し余裕が出来た気がするが、帰りの風が向かい風ならこの2時間はすぐに吹き飛んでしまうだろう。

 

コンビニの向かいは「なぶら市場」である。

御前崎で食事や土産といえばここだ。

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寄りたかったが、帰りの風を考えるとそこまで時間的余裕はない。

なんと金井さんは行ったことがないらしい。ここまで何度も来ているはずだが…

また来ることを誓い、チェックを後にすると、来た道を西に向かう。

 

心配していた風はほとんどなく、むしろやや追い風になった。復路の方が早いくらいの感じだ。

 

日が傾いてきて、浜松の中田島砂丘近くのコンビニで夜に備えライトを点灯させる。

次のチェックポイントである弁天島までひたすら踏んだ。

 

復路の弁天島チェックポイントに午後6時前に到着。残り80キロで制限時間まで2時間半以上ある。悪くない。ここでの休憩は軽めにし、20キロ先の細江気賀のコンビニでゆっくり休むことになった。

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ここでの補給はおにぎりと飲み物だけとレジに並ぶが、ポカリを買ったつもりがカルピスウォーターを買ってしまう。レジまで気がつかなった。

 

こういうこともブルベではよくある。昔、600キロの復路で自販機でコーラを買おうとして、間違えてゼロカロリーのコーラを買って落胆した、なんてこともあった。

 

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日が落ちて風が吹くと少し冷えるが、レインジャケットは着なくても行けそうだ。

次の区間は少しアップダウンのある区間なので、少し心配したが、かなりいいペースで踏み、気賀のチェックポイントについた時には制限時間との差で3時間稼ぐことができた。

 

食事をしっかり食べて出発。

 

ここからはアップダウンの区間。ベテランの金井さんは寸座峠程度のアップダウンはサクサクこなしていく。

静岡・愛知の県境の本坂峠は静岡県側のほうが登りが長くてキツい。ここは踏ん張りどころと気合いを入れて踏んでいった。

 

県境を越えるとしばらく市街地区間。信号でなかなか進まない。信号でストップアンドゴーを繰り返した。

 

そんな中、信号待ちで私は出来るだけ右足をペダルから外すように心がけていた。実はスタートからしばらくして右膝に軽い違和感を感じ、できるだけ右膝に負荷をかけないよう、トルクをかける踏み出しは左足でするためだ。お陰で膝はそれ以上痛くなることなかった。

 

市街地を抜けると残り30キロ。

最後のコンビニ休憩をする。

 

 

ここからは高速道路の側道を行くが往路に比べて復路は上りが多い。一つ一つは短いがそれなりに斜度があり、数も多い。我々はジワジワ残った足を削られていった。

 

岡崎の市街地に入る。

空腹感のあるお腹に様々な飲食店の明かりが眩しい。王将とブロンコビリーは目の毒だ。

 

岡崎市街でも信号とアップダウンに苦しめられるが、岡崎大橋を越え、ゴールのセブンイレブン岡崎北野店にたどり着いた。

 

時間は午後10時45分。

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16時間45分で無事完走した。

 

金井さんと二人だけで走るのはかなり久しぶりだったはずだが、離れたりすることなく、お互いちょうどいい感じで走れて本当に走りやすかった。金井さんには感謝しかない。

 

スタート地点の柳川瀬公園に戻る道すがら、疲労感の中、これから何を食べようか考えた。

 

ラーメン?牛丼?ハンバーガー?

早くビールが飲みたいなぁ。

 

スタート前は完走できるかどうか心配していたが、そんなことを考えている自分を冷静に見て、ああ、ブルベを完走したんだな、と実感した。

 

帰宅後、家族が寝静まった我が家で一人乾杯したのは言うまでもない。

 

 

 

 

グラベルロードにロードホイールを - グラベルロードの可能性 -

実は11月の終わりにライド中、後ろから車に追突されてしまった。幸い怪我もバイクの損傷も大したことはなかった。ただバイクは念のため、診断に出している。

メインのロードバイクがそんな状況だが、身体は動くのでロードバイクには乗りたい。

そこで、妻の街乗り用にフラットバーで組んであったSOMA FABRICATIONSのペスカデロをドロップハンドルにして、ここ最近は乗っていた。

 

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タンゲプレステージのパイプで組まれたペスカデロは700c FAT PLUSでリムブレーキでありながら42cが入り、キャリアのダボなどもある。デザインがオシャレでしかも値段もフォーク込みで10万円程度と安かった。

「ゆっくり長く走る」に対応したバイク、とカタログにある。

私が普段乗るロードバイクもクロモリのロードだが、近代のネオクラシックと呼ばれる軽量で反応性も高いバイクで特性がまるで違う。

そんなペスカデロにいつものロードホイールを履かせ乗ってみると、初動は重いが(フォークもクロモリである)一度かかればなかなか走るバイクになり、それなりに楽しく乗っていたが、ブレーキに不満があった。

 

それはブレーキの効きが甘い、ということである。

ペスカデロは太めのリムを入れることを想定して作られており、通常のロード用のリムの細いホイールを入れるとブレーキキャリパーが届かない。そこでロングアーチのブレーキを入れるのだが、リアに関してはそれでも届かず、オフセットされたブレーキシューを入れているのだ。

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どうしてもブレーキ剛性が下り、高速(というほどのスピードは出なかったが…)で走ると事故の後ということもあり、ブレーキの効きが甘いのがストレスになってきた。

 

そんなときグラベルロードのリッチーアウトバックに乗ってみたときに「もしかしたらこれにロードホイール履かせたほうが、ペスカデロより走るのでは?」と疑問が湧いた。

前にキャンプツーリングで舗装路を長い時間走ったが、広めのリムに42cのグラベルタイヤでもよく走った。

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そんなとき、ランドヌールクラブ名古屋の金井代表から1月のブルベの試走の話が来て、いよいよグラベルロードのロードホイールでの運用を試す必要が出てきた。

 

普段からお世話になっているバイクショップ「Glocalbike」のバスマンさんに相談すると、ちょうど中古のロードホイールがあるという。さらにお友達がタイヤも出してくれたので、今日、リッチーアウトバックにロードホイールを履かせ軽くテストライドに出た。

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リアセンターが長いのが特徴のリッチーアウトバックグラベルタイヤだとあまり目立たないが細いロードホイールに細いロードタイヤを入れるとそれがよくわかる。

 

時間が限られていたので、近所の多米峠から浜名湖をかすめ、本坂峠を抜けるルートを試走に行く。

 

普段より軽いホイールと細いタイヤというだけで、面白いように走る。スピードが出るのが単純に楽しい。私はグラベルロードでオンロードを走ると速くて時速25キロというところだが、すぐに時速30キロぐらいまで出た。ロードバイクと遜色ない印象だ。

 

ちなみにギアだが、私はキャンプツーリングで不自由ないようフロントはダブルにしており、フロントはアウター46T、インナー33T、リアは11-42。

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ロードタイヤで走ってみて峠の下りはもう少し重たいギアがあってもいいかと思ったが、私は重たいギアは踏まず回転重視なので、これでも良いと思った。

 

走りながら思ったのが、ブルベに最適なのでは、ということ。

昨年参加した300キロのブルベの際、旧富山村から霧石峠までの上りでギアを使い切ってしまったので、このくらいのギア比ならもっと上りで余裕が出るだろう。上りで余裕が出るということは、長時間のライド中にそれだけ体力に余力が出るということになる。

また、ロードよりアップライトなポジションなので、長時間のライドにはよりいいのではないだろうか。

 

とにかく想像以上によく走った。

 

今年は5、6年振りに400キロのブルベを走る。もしかしたらグラベルロードで出るかもしれない。それほどの可能性を感じた。

 

ふと、私はトム・リッチーのバイクとロングライドをこよなく愛した私のヒーローの顔を思い浮かべた。

 

「それもいいと思うよ」

 

あの人ならきっとそう言うだろう、そう思った。